転生武田義信
第181話吉林野戦
1567年6月:中国東北部・吉林郊外・ウラ城近郊:第3者視点
戦機は着々と満ちていた。
武田信繁によって進められた調略は順調で、沿海州はもちろん、明国の勢力圏の最東北部であるアムール川流域(現在のロシアアムール州)に住む諸部族を支配下に置いていた。
次に野人女真も交易により支配下に組み込んだため、彼らが支配していた豆満江流域を領土に組み込むことになった。
これにより現世の北朝鮮領地である、長白山脈の北部は武田家の領地になったが、長白山脈の南部は建州女真の白山女真・鴨緑江(やるぎやんぐ)部の支配下のままだった。
更に現世の中華人民共和国の牡丹江(ぼたんこう)と松花江(しょうかこう)流域の諸部族を支配下に入れていた。
エヴェンキ族、オロチョン族などが武田家に支配下に入りたい朝貢させて下さいと願い出てきた。
だが朝貢とはいっても武田家も無理して不利な交易をしているわけではない。
武田家で安価に作れるようになった陶磁器や硝子細工、酒や砂糖をに加え真珠を対価に、満州の良馬と毛皮や薬草を手に入れていた。
その御蔭で伊春市・綏化市・哈爾濱市などを支配下に置くことが出来たので、当初義信が望んでいた、満州油田地帯は既に支配下に置いていた。
問題は満州油田地帯と、そこから産出される原油や精油した石油を、日本本土まで輸送するのに必要な地帯を、恒久的な武田領に出来るかどうかだった。
だが女真族の全てが武田家に友好的だった訳ではなく、海西女真の4部国と建州女真の8部国とは緊張関係にあった。
特に武田家が大陸に上陸するまでは、野人女真に強い影響力を持ち、豆満江付近まで支配下に置いていた海西女真の烏拉国は、武田家に強い敵意を持っていた。
烏拉国の族長は、同じ海西女真の輝発国・哈達国・葉赫国に使者を送り、対武田の同盟締結に成功していた。
いや、海西女真だけではなく、モンゴルのダウール族と七旗ハルハの15部族を味方につけていた。
特に期待されていたのは、烏拉国の族長一族であった王台(ワンハン)が建国した哈達国で、王台は個人の武力が抜きんでいるだけではなく、人を引き付ける魅力を持ち、明国との交易を大々的に成功させる経済能力を兼ね備えていた。
「殿下、そろそろでございますぞ」
「そうなのか」
「はい。徐々に気配が張り詰めております。前線では敵が視界に入っているのかもしれません」
「我が陣の見張り台からは何も言ってこぬな」
「最前線の見張り台からはかなり距離がありますから、同じようにはいきません」
「余は悔しいぞ。決して死んではならぬはずの、世継ぎの兄上様が危険な最前線を任されたのに、次男である余が後詰に回されるなど、余の武勇が低く見られているのではないか」
今までは歴戦の大叔父・武田信繁公の差配に従っていた鷹司信鷹だったが、開戦直前となって遂に本音を吐き出した。
「それは違いますぞ」
「何が違うのだ」
「諸王太孫殿下の初陣には、諸王太子殿下が後見されておられました。どのような危険な戦場に諸王太孫殿下を送り込まれても、万が一戦死なさることがあっても、諸王太子殿下を非難される方はおられません。ですが信繁公が信鷹殿下を危険な戦場に配置すれば、信繁公を追い落とす好機とする者が出てきてしまいます」
「なんじゃと。味方の足を引っ張り、追い落とそうとする者がおるのか」
「はい。諸王陛下と諸王太子殿下の信頼絶大な信繁公を追い落とすことが出来れば、信鷹殿下を傀儡として、武田諸王家を下克上することも可能でございます」
「なに。余が佞臣に操られ、御爺様や御父上様、いや、兄上様を追い落として天下を狙うと申すか」
「現に何故信繁公が殿下をこの位置に布陣させたかを考えず、多くの者が聞いているこの場所で、信繁公を非難する言葉を吐かれております」
「う」
「爺を含め、近習であろうと疑われなされませ。殿下を操り、武田家をの乗っ取ることが出来れば、日ノ本だけでなく、蝦夷や沿海、満州に及ぶ広大な帝国の支配者になれるのでございますぞ。時期を見て殿下を弑逆すれば、大王になれるのでございます」
「爺は、幼き頃から共に育った近習すら信じるなと申すか」
「諸王太子殿下は、幼き頃から共に戦ってきた配下であろうと、七分信じて三分疑われておられます。それくらい慎重でなければ、天下を平定するまでに命を奪われておられました」
爺の諫言を受けて、信鷹は歯を食いしばって怒りを抑えていたが、しばらく黙っていたものの、何とか胸に渦巻く激情を抑え込めたのだろう。
「そうか。余が未熟という事だな」
「殿下の御歳で初陣に臨まれるのです。それも武田諸王家の未来を左右する重大な一戦でございます。その大切な戦で、戦局を左右するような後詰を任されたことも理解出来ぬようでは、未熟としか言いようがございません」
「なに。後詰が戦局を左右するような重大な一戦と申すのか」
「はい」
「そうか。ならば余が未熟な事は認めよう。だがその理由を申せ。未熟な余に後詰が大切な理由を申すのだ」
「では説明申し上げます」
「この一戦の相手は、我々より馬術に優れた女真族でございます。その中には古には南蛮まで征服した元の一族すら含まれております」
「うむ。それは余も知っておる」
ゴーン・ゴーン・ゴーン
「敵が攻め寄せて参りましたな」
本陣から敵の攻撃を知らせる鐘の音が聞こえてきた。
「うむ」
思わず緊張する信鷹に対して、傅役の元影衆は淡々と話しを続けた。
「敵は機動力のある騎馬軍団ですので、馬鹿正直に突撃するとは限りませぬ。臨機応変に位置を変え、信繁公の本陣や殿下の後詰を狙う可能性がございます」
「なに」
「昔、諸王太子殿下を苦しめた神田将監のように、遠距離弓射を駆使して後方の村々を襲ったら、どうなさる御心算でございますか」
「女真族が小笠原流弓馬術を知っていると申すのか」
「何を申されます。日ノ本の武者の馬術など、騎馬民族の馬術に及ぶはずがございません。小笠原流弓馬術を超える攻撃があると想定しておく必要がございます」
「大叔父上の本陣が抜かれると申すのか」
「抜かれる事も、万が一討ち取られる可能性も覚悟の上で、後詰の務められませ。そもそも女真族は、明国への略奪を生業とする部族でございますぞ。今は味方に付いている女真族が、何時裏切っても対応できるようになされませ」
「なんと。調略に応じた者共が裏切ると申すのか」
「裏切るかどうかは分かりません。ですが裏切ったとしても勝てるように。勝てないまでも生きて城に戻れるように手配りなされませ」
「そうか。だが余には何をするべきか分からぬ。矢張り余は未熟なのだな」
「ならばどうすべきか臣下に聞かれませ。分からぬ事は複数の臣下に御下問され、納得できた策を取り上げられませ」
「爺はどうすべきだと思うか」
「既に手配りしておりますが、物見を多く放つ事でございます」
「後詰が独自で物見を放つのか」
「はい。特に後方に物見を放たねばなりません」
「後方。敵の奇襲に備えるのか」
「はい。後詰が奇襲を受け、裏崩れを起こしてしまえば、どれほど先鋒が有利に戦っていても、全軍が崩壊してしまいます。後詰の油断は敗軍の一歩でございます」
「そうか。だが既に爺が物見の手配をしてくれているのだな」
「はい」
ダッーン
「銃撃だな」
「はい。これが続くようなら、女真族は愚かな突撃を繰り返しています。しかし途中で銃撃が止まり、突撃の陣太鼓が叩かれないようなら、女真族の中に賢明な者がいると言う事でございます」
ダッーン
「2射目が放たれたな」
「はい」
ダッーン
「3射目だな」
「はい。女真は略奪を生業とする騎馬民族でございます。不利を悟れば素早く逃げる可能性がございますが、逃げずに後方に周りこもうとした場合が問題でございます」
「どうすべきなのだ」
「各陣は手旗信号で連絡を取っておりますので、左右の陣に敵の影がないか確認されませ」
「余が命令を出してよいのか」
「殿下は後詰を全軍任されておられます。万が一本陣が壊滅した場合は、殿下がここに踏ん張り、逃げてくる味方を迎え入れなければなりません。手旗信号で本陣に戦況を確認されませ」
「分かった」
信鷹が初陣で実戦を学んでいる頃、はぐれ女真族が武田家の支配領域に入り込み、武田家との交易で豊かになった諸部族を襲おうとしていた。
だが武田家も、一旦支配下に組み込んだ諸部族を護らなければ、盟主としても信頼にかかわる大問題なので、敵対勢力との境界線には城を築いて万全の準備を整えていた。
広く迂回してアムール州の村々を襲おうとした元の末裔、七旗ハルハに属する盗賊達も、武田家が定める国境を越えることが出来なかった。
馬術では劣る武田軍ではあったが、騎馬鉄砲隊の遠距離射撃で、元の弓射の射程外から先制攻撃を仕掛け、一斉斉射の大音声で元の馬を恐慌状態に陥らせ、混乱する元の騎馬隊が立ち直る前に追撃して討ち取っていった。
「鉄砲の音が止んだな」
「女真族もやりますな」
「逃げたのではないのか」
「逃げたのなら追撃の陣太鼓が聞こえてきます。それがないというのは、不利を悟って素早く引いたのでございましょう。強敵でございますぞ」
「望む所だ。それで大叔父上はどうなされるのだ」
「敵の動き次第でございます。陣を出て野戦を挑めば、味方の利を捨てることになります。ですが敵が攻めかかって来なければ、持久戦になります。持久戦になれば、兵站を任された殿下の働きが勝敗を分けることになります。諸王太子殿下は殊の外兵站を大切になされておられます」
「後詰を成功させることが、味方を勝利に導き、父上様に認めていただけることだというのだな」
「はい。諸王太子殿下は、初陣の頃より万全の補給を整えてから戦を始められました。今では黒鍬を近衛戦闘工兵隊に、小荷駄を近衛戦闘輸送隊として、近衛武士団と同格とするほど大切にされておられます。殿下が後方を守り切られれば、殊の外御喜びになられましょう」
「分かった。心してかかろう。だが具体的にどうすればいいのだ」
「まずは落ち着かれませ。前線からの知らせや、物見からの知らせがない限り、身体を休めておくことも大将の仕事でございます」
「そうか」
互いの長所を知る武田軍と女真軍は、小手調べの戦いの後は膠着状態に入った。
戦機は着々と満ちていた。
武田信繁によって進められた調略は順調で、沿海州はもちろん、明国の勢力圏の最東北部であるアムール川流域(現在のロシアアムール州)に住む諸部族を支配下に置いていた。
次に野人女真も交易により支配下に組み込んだため、彼らが支配していた豆満江流域を領土に組み込むことになった。
これにより現世の北朝鮮領地である、長白山脈の北部は武田家の領地になったが、長白山脈の南部は建州女真の白山女真・鴨緑江(やるぎやんぐ)部の支配下のままだった。
更に現世の中華人民共和国の牡丹江(ぼたんこう)と松花江(しょうかこう)流域の諸部族を支配下に入れていた。
エヴェンキ族、オロチョン族などが武田家に支配下に入りたい朝貢させて下さいと願い出てきた。
だが朝貢とはいっても武田家も無理して不利な交易をしているわけではない。
武田家で安価に作れるようになった陶磁器や硝子細工、酒や砂糖をに加え真珠を対価に、満州の良馬と毛皮や薬草を手に入れていた。
その御蔭で伊春市・綏化市・哈爾濱市などを支配下に置くことが出来たので、当初義信が望んでいた、満州油田地帯は既に支配下に置いていた。
問題は満州油田地帯と、そこから産出される原油や精油した石油を、日本本土まで輸送するのに必要な地帯を、恒久的な武田領に出来るかどうかだった。
だが女真族の全てが武田家に友好的だった訳ではなく、海西女真の4部国と建州女真の8部国とは緊張関係にあった。
特に武田家が大陸に上陸するまでは、野人女真に強い影響力を持ち、豆満江付近まで支配下に置いていた海西女真の烏拉国は、武田家に強い敵意を持っていた。
烏拉国の族長は、同じ海西女真の輝発国・哈達国・葉赫国に使者を送り、対武田の同盟締結に成功していた。
いや、海西女真だけではなく、モンゴルのダウール族と七旗ハルハの15部族を味方につけていた。
特に期待されていたのは、烏拉国の族長一族であった王台(ワンハン)が建国した哈達国で、王台は個人の武力が抜きんでいるだけではなく、人を引き付ける魅力を持ち、明国との交易を大々的に成功させる経済能力を兼ね備えていた。
「殿下、そろそろでございますぞ」
「そうなのか」
「はい。徐々に気配が張り詰めております。前線では敵が視界に入っているのかもしれません」
「我が陣の見張り台からは何も言ってこぬな」
「最前線の見張り台からはかなり距離がありますから、同じようにはいきません」
「余は悔しいぞ。決して死んではならぬはずの、世継ぎの兄上様が危険な最前線を任されたのに、次男である余が後詰に回されるなど、余の武勇が低く見られているのではないか」
今までは歴戦の大叔父・武田信繁公の差配に従っていた鷹司信鷹だったが、開戦直前となって遂に本音を吐き出した。
「それは違いますぞ」
「何が違うのだ」
「諸王太孫殿下の初陣には、諸王太子殿下が後見されておられました。どのような危険な戦場に諸王太孫殿下を送り込まれても、万が一戦死なさることがあっても、諸王太子殿下を非難される方はおられません。ですが信繁公が信鷹殿下を危険な戦場に配置すれば、信繁公を追い落とす好機とする者が出てきてしまいます」
「なんじゃと。味方の足を引っ張り、追い落とそうとする者がおるのか」
「はい。諸王陛下と諸王太子殿下の信頼絶大な信繁公を追い落とすことが出来れば、信鷹殿下を傀儡として、武田諸王家を下克上することも可能でございます」
「なに。余が佞臣に操られ、御爺様や御父上様、いや、兄上様を追い落として天下を狙うと申すか」
「現に何故信繁公が殿下をこの位置に布陣させたかを考えず、多くの者が聞いているこの場所で、信繁公を非難する言葉を吐かれております」
「う」
「爺を含め、近習であろうと疑われなされませ。殿下を操り、武田家をの乗っ取ることが出来れば、日ノ本だけでなく、蝦夷や沿海、満州に及ぶ広大な帝国の支配者になれるのでございますぞ。時期を見て殿下を弑逆すれば、大王になれるのでございます」
「爺は、幼き頃から共に育った近習すら信じるなと申すか」
「諸王太子殿下は、幼き頃から共に戦ってきた配下であろうと、七分信じて三分疑われておられます。それくらい慎重でなければ、天下を平定するまでに命を奪われておられました」
爺の諫言を受けて、信鷹は歯を食いしばって怒りを抑えていたが、しばらく黙っていたものの、何とか胸に渦巻く激情を抑え込めたのだろう。
「そうか。余が未熟という事だな」
「殿下の御歳で初陣に臨まれるのです。それも武田諸王家の未来を左右する重大な一戦でございます。その大切な戦で、戦局を左右するような後詰を任されたことも理解出来ぬようでは、未熟としか言いようがございません」
「なに。後詰が戦局を左右するような重大な一戦と申すのか」
「はい」
「そうか。ならば余が未熟な事は認めよう。だがその理由を申せ。未熟な余に後詰が大切な理由を申すのだ」
「では説明申し上げます」
「この一戦の相手は、我々より馬術に優れた女真族でございます。その中には古には南蛮まで征服した元の一族すら含まれております」
「うむ。それは余も知っておる」
ゴーン・ゴーン・ゴーン
「敵が攻め寄せて参りましたな」
本陣から敵の攻撃を知らせる鐘の音が聞こえてきた。
「うむ」
思わず緊張する信鷹に対して、傅役の元影衆は淡々と話しを続けた。
「敵は機動力のある騎馬軍団ですので、馬鹿正直に突撃するとは限りませぬ。臨機応変に位置を変え、信繁公の本陣や殿下の後詰を狙う可能性がございます」
「なに」
「昔、諸王太子殿下を苦しめた神田将監のように、遠距離弓射を駆使して後方の村々を襲ったら、どうなさる御心算でございますか」
「女真族が小笠原流弓馬術を知っていると申すのか」
「何を申されます。日ノ本の武者の馬術など、騎馬民族の馬術に及ぶはずがございません。小笠原流弓馬術を超える攻撃があると想定しておく必要がございます」
「大叔父上の本陣が抜かれると申すのか」
「抜かれる事も、万が一討ち取られる可能性も覚悟の上で、後詰の務められませ。そもそも女真族は、明国への略奪を生業とする部族でございますぞ。今は味方に付いている女真族が、何時裏切っても対応できるようになされませ」
「なんと。調略に応じた者共が裏切ると申すのか」
「裏切るかどうかは分かりません。ですが裏切ったとしても勝てるように。勝てないまでも生きて城に戻れるように手配りなされませ」
「そうか。だが余には何をするべきか分からぬ。矢張り余は未熟なのだな」
「ならばどうすべきか臣下に聞かれませ。分からぬ事は複数の臣下に御下問され、納得できた策を取り上げられませ」
「爺はどうすべきだと思うか」
「既に手配りしておりますが、物見を多く放つ事でございます」
「後詰が独自で物見を放つのか」
「はい。特に後方に物見を放たねばなりません」
「後方。敵の奇襲に備えるのか」
「はい。後詰が奇襲を受け、裏崩れを起こしてしまえば、どれほど先鋒が有利に戦っていても、全軍が崩壊してしまいます。後詰の油断は敗軍の一歩でございます」
「そうか。だが既に爺が物見の手配をしてくれているのだな」
「はい」
ダッーン
「銃撃だな」
「はい。これが続くようなら、女真族は愚かな突撃を繰り返しています。しかし途中で銃撃が止まり、突撃の陣太鼓が叩かれないようなら、女真族の中に賢明な者がいると言う事でございます」
ダッーン
「2射目が放たれたな」
「はい」
ダッーン
「3射目だな」
「はい。女真は略奪を生業とする騎馬民族でございます。不利を悟れば素早く逃げる可能性がございますが、逃げずに後方に周りこもうとした場合が問題でございます」
「どうすべきなのだ」
「各陣は手旗信号で連絡を取っておりますので、左右の陣に敵の影がないか確認されませ」
「余が命令を出してよいのか」
「殿下は後詰を全軍任されておられます。万が一本陣が壊滅した場合は、殿下がここに踏ん張り、逃げてくる味方を迎え入れなければなりません。手旗信号で本陣に戦況を確認されませ」
「分かった」
信鷹が初陣で実戦を学んでいる頃、はぐれ女真族が武田家の支配領域に入り込み、武田家との交易で豊かになった諸部族を襲おうとしていた。
だが武田家も、一旦支配下に組み込んだ諸部族を護らなければ、盟主としても信頼にかかわる大問題なので、敵対勢力との境界線には城を築いて万全の準備を整えていた。
広く迂回してアムール州の村々を襲おうとした元の末裔、七旗ハルハに属する盗賊達も、武田家が定める国境を越えることが出来なかった。
馬術では劣る武田軍ではあったが、騎馬鉄砲隊の遠距離射撃で、元の弓射の射程外から先制攻撃を仕掛け、一斉斉射の大音声で元の馬を恐慌状態に陥らせ、混乱する元の騎馬隊が立ち直る前に追撃して討ち取っていった。
「鉄砲の音が止んだな」
「女真族もやりますな」
「逃げたのではないのか」
「逃げたのなら追撃の陣太鼓が聞こえてきます。それがないというのは、不利を悟って素早く引いたのでございましょう。強敵でございますぞ」
「望む所だ。それで大叔父上はどうなされるのだ」
「敵の動き次第でございます。陣を出て野戦を挑めば、味方の利を捨てることになります。ですが敵が攻めかかって来なければ、持久戦になります。持久戦になれば、兵站を任された殿下の働きが勝敗を分けることになります。諸王太子殿下は殊の外兵站を大切になされておられます」
「後詰を成功させることが、味方を勝利に導き、父上様に認めていただけることだというのだな」
「はい。諸王太子殿下は、初陣の頃より万全の補給を整えてから戦を始められました。今では黒鍬を近衛戦闘工兵隊に、小荷駄を近衛戦闘輸送隊として、近衛武士団と同格とするほど大切にされておられます。殿下が後方を守り切られれば、殊の外御喜びになられましょう」
「分かった。心してかかろう。だが具体的にどうすればいいのだ」
「まずは落ち着かれませ。前線からの知らせや、物見からの知らせがない限り、身体を休めておくことも大将の仕事でございます」
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