転生武田義信
第170話地固め
1565年正月:薩摩内城の義信寝室:義信と紅ちゃんたち:義信視点
「若様、1つ御聞きしていいですか?」
「1つと言わず、聞きたいことは何でも聞いてくれた方がいいよ。紅ちゃんたち影衆には、俺の真意を分かって貰っておかないと、諜報で集めるべき情報が間違ってしまうからね」
「では遠慮せず御聞きしますが、何故御上から諱を拝領することを御断りになられたのですか?」
「ああ、それは運が変わるのが嫌だったのだよ」
「運でございますか? 若様がその様な事を気になされるとは思われませんでしたが?」
「ここまで幸運が続いて今の地位を築けたからね。ここで諱を頂き名を変える事で、流れが変わっては一大事だからね」
まあ本当は、義信と言う名が前世でとても思い入れのある名前だったから、何事を成すにしても義信の名前で行い、歴史に義信の名前を残したいと言う想いなんだけど、こればかりは妻妾や子供達にも話せない。
「そうでございましたか。私は若様が、御上や院の命であろうと従わぬこともあると、天下に宣言される御心算だったのかと思いました」
「そういう面も確かにあるよ。だけどそれは少しだけだよ」
「しかし御上や院は勿論、天下万民も誤解するかもしれません」
「それは困るね。紅ちゃんから影衆に噂を広めるようにしてくれるかい」
「どういう風に広めれば宜しのですか?」
「折角静まった天下を、再び戦乱の世に戻さないために、些細な事であろうと変えたくないと俺が考えてるとね」
「承りました。それと内部の話なのですが」
「武田家内に不都合でも起きているのかい?」
「叛意とまでは申しませんが、若様譜代の重臣の方の中に、少々不満を漏らされている方がおられます?」
「父王陛下ではなく俺の譜代がかい? 誰がどんな不満を言っているんだい?」
「飯富虎昌様をはじめとする老臣の方々が、後方に回されたことを嘆かれておられます」
「嘆かれてか。気を使っているね」
「まぁ」
「そうだね。俺の傅役になって以来、常に最前線か重大な拠点を任せてきたから、後方で後進の指導を頼むと手紙で送ったのは、寂し事だったのかもしれないね」
「はい。他の老臣の方々も、若様に年寄り扱いされたと嘆いておられます」
「そうだね。ここは手当てしておく方がいいね」
「どうなされるのでございますか?」
「手紙を送るよ。先遣部隊に何かあった場合に、中軍として経験の少ない若者を率いて異国に攻め込んでもらわねばならぬから、元寇の逆にならないように、老練な虎昌達に若武者を鍛えてもらいたいのだとね」
「承りました。若様の手紙を受け取った後で、老臣の方々がどう言われておられるか、配下の者共に引き続き探らせます」
「頼んだよ。僅かな心の行き違いで、身内で争うなど愚の骨頂だからね。紅ちゃん達が送り込んでくれたたくノ一衆は、順調に信頼を得てくれているのだね?」
「若様が幼き頃から大切に育ててこられた嬢子軍も、御手付きにならなかった者達が、知信王陛下の養女として各家に送り込まれております。若様の御情けを頂けなかったとはいえ、若様への忠誠心に変わりはございません」
「ありがとう。まあ嬢子軍全員に情けをかけるなんて無理な話だし、父王陛下との約束で、非常時には歩き巫女や白拍子にする事になっていたからね」
「はい。その事は私も最初から聞いておりました。私も含めて、皆行く場もなく、飢えて死ぬか、身を売るしかなかった娘達でございます。特に明国から買われてきた娘達は、最初はどのように扱われるのかと怯えておりましたから、衣食住が不足なく与えられただけでなく、慈しんで育てていただいた事で、心から忠誠を誓っております」
「そうか。それで寝屋での事なのだが、みな励んでおるか?」
「はい。若様の命に従い、隠居も若武者も、万が一の事を考えて子孫を残すべく、連日連夜励んでいると報告が来ております」
「父王陛下の養女を娶った者も、遠慮せず側室を迎えているか?」
「はい。一騎でも多く武士を産み育てよと言う若様の命の御蔭で、陛下に遠慮せず妻妾を設けております」
「そうか。それでこそ前々から女奴隷を買っておいたかいがある」
転生前の倫理や道徳には反するけれど、俺が買わなければ遊女として異国に売られる者達や、実際に明国から俺に売られてきた女達だ。
現実にあわせて出来るだけのことをするしかない。
「はい。それと海賊衆の事なのでございますが」
「村上水軍をはじめとする各地の水軍衆は、鷹司海軍のやり方に従ってくれそうかい?」
「はい。最初は隙あらば謀叛を起こそうと企んでいたようでございますが、若様が日ノ本を統一されるだけでなく、ルソンやアユタヤ、更には天竺にまで攻め込もうとなされていると知り、それに便乗する方が利があると考えたようでございます」
「そうか。まあ忠誠心は徐々に育てるしかないな」
「はい。それと交易艦隊でございますが、大きな利を得ているにもかかわらず、上納金を誤魔化している者が多くおります」
「監軍に付けた者が裏切ったのか?」
「はい。情けない事ながら、僅かな利に眼がくらみ、若様を裏切る者がおります」
「見せしめに証拠を押さえた者を、一族郎党全てを鉱山送りにしてくれ」
「承りました。それとこれは僭越なのですが、どうしても御伺いしたいことがございます」
「なんだい?」
「私達を此方に御呼びになられたのに、何故九条簾中を御呼びになられないのでございますか?」
「ああ、その事か」
「僭越ながら、御正室の九条簾中様から御生まれになる御子は、1人でも多く設けられた方がいいいのではありませんか」
「それはそうなんでけどね。それよりも大切なのは、方信達の事なのだよ」
「方信様と弟君達の事でございますね?」
「ああ。方信達はまだ若いから、影衆や生産衆から選び抜いた傅役や後見役を付けてはいるけれど、父母の存在が大きいからね」
「そのために九条簾中を此方に御呼びにならないのでございますね」
「これは噂にするなよ」
「承知しております。そのような噂が流れれば、方信様を侮る者が出るやもしれません」
「そう言う事だよ。それと万が一俺と九条の仲を怪しむ噂が出たら、直ぐに打ち消してくれ」
「承りました。具体的にはどのように致しましょうか?」
「毎日の伝令に、俺が九条に愛を込めた手紙を送っているとしてくれ。それと郵便の方はどうなっている」
「その伝令を郵便として料金を取る事でございますが、利用する者が徐々に増えております。しかしながら、まだ郵便だけで利が出るようなモノではなく、荷役のついでになっております」
「馬車鉄道や街道が整備され、合い子船の小早が増え、船郵便が安定してくれば、いずれ利が出てくるだろう。どうせ日本中の武田家や鷹司家の城砦を結ぶ伝令を整備しなければならないから、その費用の一部でも回収できれば御の字だよ」
「左様でございますね」
「それとさっきの九条との仲だが、影衆が考えた内容で収まらないようなら、1日でも早く九州を安定させ、そなたの下に戻りたいと言う手紙を、俺が九条に書いていると噂が流してくれ」
「承りました。ですがそうなると、早めに九州を離れる事になりますが、大丈夫でございますか?」
「まあ大丈夫だろう。元々九州にいた武士や足軽は、細切れにして各大名や国衆の下につけている。扇動しそうな自作農も、農地を倍増すことを条件に徐々に他国に移動させているから、謀叛を行いたくても無理だと思う」
「それを全て行ったら、九条簾中の所に戻られるのでございますか」
「ああ。その心算だよ」
「九州と四国の開墾が終わるまでとか、琉球や高砂討伐を見守るまで、こちらにおられる心算ではないのですね」
「それはしないよ。もう少し方信達を直接鍛えたいからね」
「安心したしました。では約束通り、3年は戦止めをなされるのですね」
「兵糧を蓄え、万が一船戦で先遣部隊が全滅した場合でも、子孫が残り配下の家が断絶しないように、準備万端整ってから戦を始めるよ」
「その噂を流しても宜しのですね」
「大丈夫だよ。それくらいすれば、三好も村上も安心して異国で戦ってくれるだろうよ」
「はい。承りました」
「では、もう少し子孫繁栄に励むとするか」
「「「「「はい」」」」」
「若様、1つ御聞きしていいですか?」
「1つと言わず、聞きたいことは何でも聞いてくれた方がいいよ。紅ちゃんたち影衆には、俺の真意を分かって貰っておかないと、諜報で集めるべき情報が間違ってしまうからね」
「では遠慮せず御聞きしますが、何故御上から諱を拝領することを御断りになられたのですか?」
「ああ、それは運が変わるのが嫌だったのだよ」
「運でございますか? 若様がその様な事を気になされるとは思われませんでしたが?」
「ここまで幸運が続いて今の地位を築けたからね。ここで諱を頂き名を変える事で、流れが変わっては一大事だからね」
まあ本当は、義信と言う名が前世でとても思い入れのある名前だったから、何事を成すにしても義信の名前で行い、歴史に義信の名前を残したいと言う想いなんだけど、こればかりは妻妾や子供達にも話せない。
「そうでございましたか。私は若様が、御上や院の命であろうと従わぬこともあると、天下に宣言される御心算だったのかと思いました」
「そういう面も確かにあるよ。だけどそれは少しだけだよ」
「しかし御上や院は勿論、天下万民も誤解するかもしれません」
「それは困るね。紅ちゃんから影衆に噂を広めるようにしてくれるかい」
「どういう風に広めれば宜しのですか?」
「折角静まった天下を、再び戦乱の世に戻さないために、些細な事であろうと変えたくないと俺が考えてるとね」
「承りました。それと内部の話なのですが」
「武田家内に不都合でも起きているのかい?」
「叛意とまでは申しませんが、若様譜代の重臣の方の中に、少々不満を漏らされている方がおられます?」
「父王陛下ではなく俺の譜代がかい? 誰がどんな不満を言っているんだい?」
「飯富虎昌様をはじめとする老臣の方々が、後方に回されたことを嘆かれておられます」
「嘆かれてか。気を使っているね」
「まぁ」
「そうだね。俺の傅役になって以来、常に最前線か重大な拠点を任せてきたから、後方で後進の指導を頼むと手紙で送ったのは、寂し事だったのかもしれないね」
「はい。他の老臣の方々も、若様に年寄り扱いされたと嘆いておられます」
「そうだね。ここは手当てしておく方がいいね」
「どうなされるのでございますか?」
「手紙を送るよ。先遣部隊に何かあった場合に、中軍として経験の少ない若者を率いて異国に攻め込んでもらわねばならぬから、元寇の逆にならないように、老練な虎昌達に若武者を鍛えてもらいたいのだとね」
「承りました。若様の手紙を受け取った後で、老臣の方々がどう言われておられるか、配下の者共に引き続き探らせます」
「頼んだよ。僅かな心の行き違いで、身内で争うなど愚の骨頂だからね。紅ちゃん達が送り込んでくれたたくノ一衆は、順調に信頼を得てくれているのだね?」
「若様が幼き頃から大切に育ててこられた嬢子軍も、御手付きにならなかった者達が、知信王陛下の養女として各家に送り込まれております。若様の御情けを頂けなかったとはいえ、若様への忠誠心に変わりはございません」
「ありがとう。まあ嬢子軍全員に情けをかけるなんて無理な話だし、父王陛下との約束で、非常時には歩き巫女や白拍子にする事になっていたからね」
「はい。その事は私も最初から聞いておりました。私も含めて、皆行く場もなく、飢えて死ぬか、身を売るしかなかった娘達でございます。特に明国から買われてきた娘達は、最初はどのように扱われるのかと怯えておりましたから、衣食住が不足なく与えられただけでなく、慈しんで育てていただいた事で、心から忠誠を誓っております」
「そうか。それで寝屋での事なのだが、みな励んでおるか?」
「はい。若様の命に従い、隠居も若武者も、万が一の事を考えて子孫を残すべく、連日連夜励んでいると報告が来ております」
「父王陛下の養女を娶った者も、遠慮せず側室を迎えているか?」
「はい。一騎でも多く武士を産み育てよと言う若様の命の御蔭で、陛下に遠慮せず妻妾を設けております」
「そうか。それでこそ前々から女奴隷を買っておいたかいがある」
転生前の倫理や道徳には反するけれど、俺が買わなければ遊女として異国に売られる者達や、実際に明国から俺に売られてきた女達だ。
現実にあわせて出来るだけのことをするしかない。
「はい。それと海賊衆の事なのでございますが」
「村上水軍をはじめとする各地の水軍衆は、鷹司海軍のやり方に従ってくれそうかい?」
「はい。最初は隙あらば謀叛を起こそうと企んでいたようでございますが、若様が日ノ本を統一されるだけでなく、ルソンやアユタヤ、更には天竺にまで攻め込もうとなされていると知り、それに便乗する方が利があると考えたようでございます」
「そうか。まあ忠誠心は徐々に育てるしかないな」
「はい。それと交易艦隊でございますが、大きな利を得ているにもかかわらず、上納金を誤魔化している者が多くおります」
「監軍に付けた者が裏切ったのか?」
「はい。情けない事ながら、僅かな利に眼がくらみ、若様を裏切る者がおります」
「見せしめに証拠を押さえた者を、一族郎党全てを鉱山送りにしてくれ」
「承りました。それとこれは僭越なのですが、どうしても御伺いしたいことがございます」
「なんだい?」
「私達を此方に御呼びになられたのに、何故九条簾中を御呼びになられないのでございますか?」
「ああ、その事か」
「僭越ながら、御正室の九条簾中様から御生まれになる御子は、1人でも多く設けられた方がいいいのではありませんか」
「それはそうなんでけどね。それよりも大切なのは、方信達の事なのだよ」
「方信様と弟君達の事でございますね?」
「ああ。方信達はまだ若いから、影衆や生産衆から選び抜いた傅役や後見役を付けてはいるけれど、父母の存在が大きいからね」
「そのために九条簾中を此方に御呼びにならないのでございますね」
「これは噂にするなよ」
「承知しております。そのような噂が流れれば、方信様を侮る者が出るやもしれません」
「そう言う事だよ。それと万が一俺と九条の仲を怪しむ噂が出たら、直ぐに打ち消してくれ」
「承りました。具体的にはどのように致しましょうか?」
「毎日の伝令に、俺が九条に愛を込めた手紙を送っているとしてくれ。それと郵便の方はどうなっている」
「その伝令を郵便として料金を取る事でございますが、利用する者が徐々に増えております。しかしながら、まだ郵便だけで利が出るようなモノではなく、荷役のついでになっております」
「馬車鉄道や街道が整備され、合い子船の小早が増え、船郵便が安定してくれば、いずれ利が出てくるだろう。どうせ日本中の武田家や鷹司家の城砦を結ぶ伝令を整備しなければならないから、その費用の一部でも回収できれば御の字だよ」
「左様でございますね」
「それとさっきの九条との仲だが、影衆が考えた内容で収まらないようなら、1日でも早く九州を安定させ、そなたの下に戻りたいと言う手紙を、俺が九条に書いていると噂が流してくれ」
「承りました。ですがそうなると、早めに九州を離れる事になりますが、大丈夫でございますか?」
「まあ大丈夫だろう。元々九州にいた武士や足軽は、細切れにして各大名や国衆の下につけている。扇動しそうな自作農も、農地を倍増すことを条件に徐々に他国に移動させているから、謀叛を行いたくても無理だと思う」
「それを全て行ったら、九条簾中の所に戻られるのでございますか」
「ああ。その心算だよ」
「九州と四国の開墾が終わるまでとか、琉球や高砂討伐を見守るまで、こちらにおられる心算ではないのですね」
「それはしないよ。もう少し方信達を直接鍛えたいからね」
「安心したしました。では約束通り、3年は戦止めをなされるのですね」
「兵糧を蓄え、万が一船戦で先遣部隊が全滅した場合でも、子孫が残り配下の家が断絶しないように、準備万端整ってから戦を始めるよ」
「その噂を流しても宜しのですね」
「大丈夫だよ。それくらいすれば、三好も村上も安心して異国で戦ってくれるだろうよ」
「はい。承りました」
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