転生武田義信
第166話終戦
1564年2月薩摩一宇治城城外:第3者視点
信龍近習衆第2陣は、面制圧射撃で多少の死傷者を出したものの、全く怯むことなく、伏兵の潜む場所に突撃して鉄砲兵をを蹴散らした。
第2陣に信龍がいたら、反撃することなく、ただただ逃げる事に専念するのだが、彼らの役割が信龍の撤退路の安全確保であったので、伏兵を討ち取ることが出来なくても、狙撃ポイントから追い散らす必要があったのだ。
第2陣が2つに分かれ、外周を警備する班と、中で鉄砲に弾薬を装填する班に分かれ、早合を使って手早く鉄砲を撃てるように準備した。
第2陣が出陣した後で、一旦閉められた野戦砦の城門が再び開けられ、第3陣が現れた。
中央には煌びやかな南蛮鎧を着込んだ総大将がいる。
狙撃から信龍を護るために作られた南蛮鎧は重く、その為に乗馬も人工的に大きくなるように繁殖された特別な馬だ。
明や女真に南蛮から取り寄せた大型馬同士をかけ合わせ馬は、今までの日本馬では考えられないくらい大きく力強かった。
だがその分目立ってしまい、敵味方の注目を集め、狙撃兵の恰好の的でもあった。
第3陣に信龍がいる事は、直ぐに敵に知られてしまい、その事がさらなる混乱を巻き起こすことになった。
「敵の背後を取る! 我に続け!」
信龍は突然号令をかけると、率いる第3陣と共に逃げるのではなく、左に周って長尾景虎の背後を取ろうとした。
城外の信龍軍が各自の陣を守り、奇襲軍のなすがままになっていた状況で、野戦砦の攻略に前のめりになっていた長尾軍は、野戦砦に突破口を開けたこともあり、背後への備えが疎かになっていた。
信龍第3陣の攻撃は不意を突くことになり、長尾軍を大混乱に陥れた。
だが余りに目立つ信龍の南蛮鎧が、裏切り組の功名心を激しく刺激して、今まで陣に籠っていた裏切り組が、長尾軍を攻め立てる第3陣を、さらに背後から襲いかかる状況となってしまった。
「我に続け!」
信龍の号令と共に、第3陣は長尾軍への攻撃を中止し、島津勢の方へ突撃をかけた。
島津勢は一宇治城から出陣し、付城の兵を討ち破り、野戦砦を攻めるという連戦で疲れており、第3陣に不意を付かれて大混乱となった。
しかも第3陣の後を、信龍の首を狙う裏切り組が攻めかかって来るので、野戦砦の周りは大乱戦状態になっている。
比較的大型の馬で揃えられた第3陣が、島津勢を討ち取ることより、軍勢を突破することを優先したので、ほとんど損害を受けずに島津勢を突き抜け、小笠原軍に攻めかかることになった。
よく目立つ信龍直卒の第3陣が、野戦砦をほぼ1周したことで、大名や国衆の裏切り者が全員釣り出され、信龍を追って長尾軍、島津勢、小笠原軍の背後を襲う形になってしまい、奇襲軍と島津勢の勢いを殺してしまった。
その時、野戦砦内から打たれていた各陣待機・各陣堅守も陣太鼓が止み、今度は打って変わって総掛かりの陣太鼓が打ち鳴らされた。
裏切り組が信龍を襲っているにもかかわらず、各陣待機・各陣堅守の陣太鼓が変わらず打ち鳴らされ、動くに動けずじりじりとした思いで待機していた各陣の大名と国衆は、総掛かりの陣太鼓を聞いて、満を持して奇襲軍と裏切り組に攻めかかった。
「爺、本当にこれでよかったのか」
「はい。これも軍略でございます」
「身代わりになってくれた者は無事であろうか」
「この歓声では、未だによき働きをしてくれているようでございます」
「我は何と声かければいいのだ。礼を言うだけでいいのだろうか」
「御大将の身代わりを務めさせていただけるなど、家臣冥利につきます。ただよくやったと言ってやれば宜しいのです」
「本当にそれだけでよいのか」
「はい。ですが、そうですね。大将軍閣下は卑しき忍びの者に対しても、御自ら庭先にまで降りて下さり、手を取って礼を申してくださりました」
「忍者は卑しくなどないぞ」
「それは大将軍閣下が、忍びの地位を上げて下さったからでございます。それまでは直接御声をかけていただけるなど、考えられない存在でございました」
「そうであったのか」
「はい」
「それで爺達は、命懸けの奉公をしてくれているのだな」
「大将軍閣下に頂いた御恩は、末代まで忠義を尽くさねばお返し出来ないモノでございます」
野戦砦内にまで攻め込んだ長尾景虎であったが、戦闘黒鍬兵の鉄砲で討ち取られた。
小笠原長時も、満を持して攻めかかってきた信龍軍に押し包まれ、善戦虚しく討ち取られてしまった。
神田将監も大軍に押し包まれ、矢の尽きるまで敵を射殺したものの、矢が尽きた所を長柄で四方八方から突かれ、最後は高々と突き上げられて討ち死にすることになった。
流石に島津や裏切り組が許されることはなく、一族郎党皆殺しになった。
早々に降伏臣従していた九州の大名国衆も、一族や家臣を細かく分家させられ、城地を召し上げられて100俵前後の扶持侍となった。
九州全土が悉く鷹司武田の直轄領・蔵入り地となった。
どうしても九州の地を離れたくない者は武士を捨て農民となったが、多くの者は扶持侍として各地に派遣された。
1564年6月京の御所
九州を完全制圧した鷹司武田軍は、主だった武将が京に凱旋し、武田信玄の諸侯王就任に列席した。
武田家の封土は蝦夷地以北以東と琉球以南に決められ、現時点では蝦夷(北海道)・樺太・千島・沿海と決められたが、これが本土に匹敵する面積だと知る者は少なかった。
諸侯王の王都は石狩に定められたが、実際には城代が治め、晴信王は近江余呉城を御座所として朝廷に睨みを利かせた。
義信は内城に御座所を定め、琉球以南を攻め取る準備を整えつつ、集結させた軍勢を遊ばせる事無く、九州全土の開墾開発を行った。
この時九州全土で238万9788石だった生産力を、幕末の457万0473石に近づけるべく、ダムや溜池を作るとともに、用水路と水車小屋を整備し、踏車や激龍水などの揚水装置を行き渡らせた。
各河川の堤防を整備し、決して決壊しない頑丈な部分と、あらかじめ入れられた空間の不連続な霞堤となっている。
空間部分には橋が掛けられ、馬車鉄道や人馬が渡れる構造となっており、河川の下流と上流の物流が促進されるようになる予定だ。
そして大雨の時に上流から流れていた肥沃な土砂は、堤の切れ目から遊水地に誘導される設計になっている。
海岸線にも防波堤兼用の馬車鉄道路・街道が整備され、九州全土の交通網を整備する計画が始まった。
もちろん鷹司武田海軍を活用した水運も整備される予定だ。
信龍は小田原を仮の御座所を定め、江戸城の築城と関東平野の開拓開発に力を入れることになったが、九州で導入される開拓開発は、既に始められれており、信龍の役目は不正防止と報奨であった。
天下の平定が朝廷から宣言され、外征を望むか国内開発を望むかを提出させ、軍の配備を変えることになったが、多くの武将が外征の参加を望んだ。
国内開発を望むは者は、開拓余地のある土地に扶持侍として送り込まれ、限界まで開墾する任務を与えられた。
百姓として平和に暮らすことを望む者には、甲斐や信濃のように、武田家が限界まで開墾した土地に封されることになった。
そして誰もが外征が始まるまでの間に、出来るだけ多くの子孫を残すように命じられた。
信龍近習衆第2陣は、面制圧射撃で多少の死傷者を出したものの、全く怯むことなく、伏兵の潜む場所に突撃して鉄砲兵をを蹴散らした。
第2陣に信龍がいたら、反撃することなく、ただただ逃げる事に専念するのだが、彼らの役割が信龍の撤退路の安全確保であったので、伏兵を討ち取ることが出来なくても、狙撃ポイントから追い散らす必要があったのだ。
第2陣が2つに分かれ、外周を警備する班と、中で鉄砲に弾薬を装填する班に分かれ、早合を使って手早く鉄砲を撃てるように準備した。
第2陣が出陣した後で、一旦閉められた野戦砦の城門が再び開けられ、第3陣が現れた。
中央には煌びやかな南蛮鎧を着込んだ総大将がいる。
狙撃から信龍を護るために作られた南蛮鎧は重く、その為に乗馬も人工的に大きくなるように繁殖された特別な馬だ。
明や女真に南蛮から取り寄せた大型馬同士をかけ合わせ馬は、今までの日本馬では考えられないくらい大きく力強かった。
だがその分目立ってしまい、敵味方の注目を集め、狙撃兵の恰好の的でもあった。
第3陣に信龍がいる事は、直ぐに敵に知られてしまい、その事がさらなる混乱を巻き起こすことになった。
「敵の背後を取る! 我に続け!」
信龍は突然号令をかけると、率いる第3陣と共に逃げるのではなく、左に周って長尾景虎の背後を取ろうとした。
城外の信龍軍が各自の陣を守り、奇襲軍のなすがままになっていた状況で、野戦砦の攻略に前のめりになっていた長尾軍は、野戦砦に突破口を開けたこともあり、背後への備えが疎かになっていた。
信龍第3陣の攻撃は不意を突くことになり、長尾軍を大混乱に陥れた。
だが余りに目立つ信龍の南蛮鎧が、裏切り組の功名心を激しく刺激して、今まで陣に籠っていた裏切り組が、長尾軍を攻め立てる第3陣を、さらに背後から襲いかかる状況となってしまった。
「我に続け!」
信龍の号令と共に、第3陣は長尾軍への攻撃を中止し、島津勢の方へ突撃をかけた。
島津勢は一宇治城から出陣し、付城の兵を討ち破り、野戦砦を攻めるという連戦で疲れており、第3陣に不意を付かれて大混乱となった。
しかも第3陣の後を、信龍の首を狙う裏切り組が攻めかかって来るので、野戦砦の周りは大乱戦状態になっている。
比較的大型の馬で揃えられた第3陣が、島津勢を討ち取ることより、軍勢を突破することを優先したので、ほとんど損害を受けずに島津勢を突き抜け、小笠原軍に攻めかかることになった。
よく目立つ信龍直卒の第3陣が、野戦砦をほぼ1周したことで、大名や国衆の裏切り者が全員釣り出され、信龍を追って長尾軍、島津勢、小笠原軍の背後を襲う形になってしまい、奇襲軍と島津勢の勢いを殺してしまった。
その時、野戦砦内から打たれていた各陣待機・各陣堅守も陣太鼓が止み、今度は打って変わって総掛かりの陣太鼓が打ち鳴らされた。
裏切り組が信龍を襲っているにもかかわらず、各陣待機・各陣堅守の陣太鼓が変わらず打ち鳴らされ、動くに動けずじりじりとした思いで待機していた各陣の大名と国衆は、総掛かりの陣太鼓を聞いて、満を持して奇襲軍と裏切り組に攻めかかった。
「爺、本当にこれでよかったのか」
「はい。これも軍略でございます」
「身代わりになってくれた者は無事であろうか」
「この歓声では、未だによき働きをしてくれているようでございます」
「我は何と声かければいいのだ。礼を言うだけでいいのだろうか」
「御大将の身代わりを務めさせていただけるなど、家臣冥利につきます。ただよくやったと言ってやれば宜しいのです」
「本当にそれだけでよいのか」
「はい。ですが、そうですね。大将軍閣下は卑しき忍びの者に対しても、御自ら庭先にまで降りて下さり、手を取って礼を申してくださりました」
「忍者は卑しくなどないぞ」
「それは大将軍閣下が、忍びの地位を上げて下さったからでございます。それまでは直接御声をかけていただけるなど、考えられない存在でございました」
「そうであったのか」
「はい」
「それで爺達は、命懸けの奉公をしてくれているのだな」
「大将軍閣下に頂いた御恩は、末代まで忠義を尽くさねばお返し出来ないモノでございます」
野戦砦内にまで攻め込んだ長尾景虎であったが、戦闘黒鍬兵の鉄砲で討ち取られた。
小笠原長時も、満を持して攻めかかってきた信龍軍に押し包まれ、善戦虚しく討ち取られてしまった。
神田将監も大軍に押し包まれ、矢の尽きるまで敵を射殺したものの、矢が尽きた所を長柄で四方八方から突かれ、最後は高々と突き上げられて討ち死にすることになった。
流石に島津や裏切り組が許されることはなく、一族郎党皆殺しになった。
早々に降伏臣従していた九州の大名国衆も、一族や家臣を細かく分家させられ、城地を召し上げられて100俵前後の扶持侍となった。
九州全土が悉く鷹司武田の直轄領・蔵入り地となった。
どうしても九州の地を離れたくない者は武士を捨て農民となったが、多くの者は扶持侍として各地に派遣された。
1564年6月京の御所
九州を完全制圧した鷹司武田軍は、主だった武将が京に凱旋し、武田信玄の諸侯王就任に列席した。
武田家の封土は蝦夷地以北以東と琉球以南に決められ、現時点では蝦夷(北海道)・樺太・千島・沿海と決められたが、これが本土に匹敵する面積だと知る者は少なかった。
諸侯王の王都は石狩に定められたが、実際には城代が治め、晴信王は近江余呉城を御座所として朝廷に睨みを利かせた。
義信は内城に御座所を定め、琉球以南を攻め取る準備を整えつつ、集結させた軍勢を遊ばせる事無く、九州全土の開墾開発を行った。
この時九州全土で238万9788石だった生産力を、幕末の457万0473石に近づけるべく、ダムや溜池を作るとともに、用水路と水車小屋を整備し、踏車や激龍水などの揚水装置を行き渡らせた。
各河川の堤防を整備し、決して決壊しない頑丈な部分と、あらかじめ入れられた空間の不連続な霞堤となっている。
空間部分には橋が掛けられ、馬車鉄道や人馬が渡れる構造となっており、河川の下流と上流の物流が促進されるようになる予定だ。
そして大雨の時に上流から流れていた肥沃な土砂は、堤の切れ目から遊水地に誘導される設計になっている。
海岸線にも防波堤兼用の馬車鉄道路・街道が整備され、九州全土の交通網を整備する計画が始まった。
もちろん鷹司武田海軍を活用した水運も整備される予定だ。
信龍は小田原を仮の御座所を定め、江戸城の築城と関東平野の開拓開発に力を入れることになったが、九州で導入される開拓開発は、既に始められれており、信龍の役目は不正防止と報奨であった。
天下の平定が朝廷から宣言され、外征を望むか国内開発を望むかを提出させ、軍の配備を変えることになったが、多くの武将が外征の参加を望んだ。
国内開発を望むは者は、開拓余地のある土地に扶持侍として送り込まれ、限界まで開墾する任務を与えられた。
百姓として平和に暮らすことを望む者には、甲斐や信濃のように、武田家が限界まで開墾した土地に封されることになった。
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