転生武田義信

克全

第156話武田信玄

1561年11月・京二条城の本丸政務殿・武田信玄と一族一門重臣衆:武田信玄視点

秋山左近大夫将監虎繁:鷹司家京都奉行・通称左近将監
佐竹左近衛大夫義頼 :史実の勝頼・通称左近太夫
武田左衛門督信繁  :義信叔父・安芸大宰

「太閤殿下から鳩が来た。四国攻めの件、喜んで儂の命に従うとのことだ」

「「「「「おう!」」」」」

「恐れながら御屋形様、それは公卿衆の願いはもちろん、御上や院の願いも無下にするという事でしょうか」

「そうだ。太閤殿下は公卿としての立場より、武田家の嫡男として、我が意に従うと言う事だ」

「「「「「おう!」」」」」

馬鹿な奴らだ。

はなから儂と太郎の芝居である事も理解できていない。

儂の旗下にいる武将共は、所詮この程度と言う事か。

今も諸将に、義信が武田家を優先して御上や院を蔑ろにする決断をしたことが、如何に重大なことだと分からせるために、左近将監が念押ししなければいけないほどだ。

「さて左近太夫、その方の役割は分かっておろうな」

「は、三好などに手出しさせることなく、この手で一条家と西園寺家を根切に致します」

「うむ、よう申した。武家として敵対した者を許すわけにはいかん。老若男女問わず、一条と西園寺の血をひくものは皆殺しに致せ」

「承りました」

四郎も頼もしい面構えになったものよ。

義信が幼き頃より兄弟の情愛を育ててきた御蔭か、四郎の義信に対する忠誠心は金鉄の如きものがある。

次郎も三郎も義信に対する忠誠心は盤石であるから、五郎以下の弟たちが何かを企んだとしても、武田の屋台骨が揺らぐことはあるまい。

「それとくれぐれも注意すべきは、義信に忠誠を誓った四国衆に対してのことだ。それが例え三好長慶や三好義興であろうと、既に義信の直臣である。彼らを不当に扱うは、義信に対して敵対することになる。もしそのようなことを致さば、例え我が兄弟や一門重臣であろうとも、決して許さぬ。左近太夫、もしそのような者がいれば遠慮は無用、この刀で切って捨てよ」

「は! しかと承りました」

刀を受け取る立ち振る舞い、誠に見事な所作よ!

本当に立派になったものだ。

関東征伐の総大将の任を経験したことで、大きく成長してくれた。

今回の移動命令も、一切不平不満を表すことなく、関東から紀伊に移動してきた。

まあ関東の後を託すのが義信であり、義信が儂の命を素直に受けたからであろうが、それでも1本命令の筋が通っていることは、武家として非常に大切なことだ。

「御屋形様、1つ御聞きしたいことがあるのですが、宜しいでしょうか」

「構わん。四国攻めにいささかな疑念もあってはならん。何でも聞くがよい」

「四国攻めの総大将でございますが、私でございますか、それとも左衛門督叔父上でございます」

「左衛門督が総大将で、副総大将が左近太夫だ。勘助、陣立ての名簿を張り出せ」

俺の命を受けて、義信と何度も何度も伝令をやり取りして話し合って作った、四国攻めの布陣表が張り出された。

『九州対応軍』
「山陰方面軍・長門駐屯軍団」
大将  滝川一益
近衛騎馬鉄砲隊   2000騎 滝川一益
近衛騎馬弓隊    1000騎
近衛武士団     3400兵
近衛足軽鉄砲隊   1000兵
近衛足軽弓隊    2000兵
近衛足軽槍隊    6000兵
近衛武士団     3400兵
長門衆       4000兵
石見衆       4000兵
計         3000騎 2万3800兵

『九州四国後詰』
「山陰方面軍・出雲駐屯軍団」
大将 狗賓善狼
近衛騎馬鉄砲隊   2000騎 常田隆永
僧騎馬弓隊     3000騎
僧兵鉄砲隊     4000兵 狗賓善狼
出雲衆       9000兵
伯耆衆       7000兵
計         5000騎 2万0000兵

「山陰方面軍・鳥取駐屯軍団」
大将 井伊直親
因幡衆       4000兵
但馬衆       4000兵
丹後衆       4000兵
計       1万2000兵

『四国侵攻軍』
総大将 :武田信繁
副総大将:佐竹義頼
「山陽方面軍・安芸駐屯軍」
大将 武田信繁
近衛騎馬鉄砲隊   2000騎 川部時貞
近衛武士団     2000兵
近衛足軽鉄砲隊   3000兵
近衛足軽槍隊    2000兵
足軽盾隊      4000兵
周防衆       5000兵 弘中隆兼
安芸衆       8000兵
備後衆       7000兵
計         2000騎 3万1000兵

「山陽方面軍・備中駐屯軍」
大将 猿渡飛影
副将 鮎川善繁
近衛騎馬鉄砲隊   4000騎 猿渡飛影・鎌原幸定
近衛武士団     2000兵
近衛足軽鉄砲隊   3000兵
近衛足軽槍隊    2000兵
足軽盾隊      4000兵
備中衆       7000兵
備前衆       9000兵
美作衆       5000兵
計         4000騎 3万2000兵


「山陽方面軍・摂津駐屯軍」
大将  相良友和
副将 八柏道為
近衛騎馬弓隊    2000騎 八柏道為
騎馬鉄砲隊     2000騎 相良友和
近衛武士団     1700兵
近衛足軽鉄砲隊   2000兵
近衛足軽弓隊    4000兵
近衛足軽槍隊    6000兵
摂津国衆      6000兵
播磨国衆      5000兵
計         4000騎・2万4700兵

「和泉駐屯軍」
総大将 :佐竹義頼
副総大将:武田信基
大将  :跡部昌秀
副将  :真田綱吉
近衛騎馬弓隊    2000騎・真田綱吉
騎馬鉄砲隊     2000騎・跡部昌秀
近衛武士団     1700兵
近衛足軽鉄砲隊   2000兵
近衛足軽弓隊    4000兵
近衛足軽槍隊    6000兵
和泉衆       5000兵
紀伊衆     2万5000兵
伊勢衆     1万8000兵
志摩衆        500兵
計         4000騎・6万2200兵

「河内駐屯軍」
大将 山県昌景
近衛武士団     1000兵
近衛足軽鉄砲隊   1000兵
近衛足軽弓隊    1000兵
近衛足軽槍隊    1000兵
近衛黒鍬輜重    9000兵
河内国衆      5000兵
計       1万8000兵

少々心配だった和泉駐屯軍の信基も、左近太夫が上にいれば大丈夫であろう。

「四国に渡海する各部隊は、なかなか他の部隊との連絡が出来ないであろう。それぞれの大将が責任をもって、臨機応変に対応するように。ただし、味方を約束している四国の国衆や地侍が裏切った場合は、3万を超える軍勢と戦うことになるやもしれぬ。その時は急ぎ伝令を送り、自らは攻めずに持久の策をとれ。持久している間に、他の部隊が味方に駆け付け、敵を挟撃することが出来る。軽々しく決戦を挑む事は、味方を危うくするので、固く固く禁じる」

「「「「「は!」」」」」

若武者や猪武者共は、何度言い聞かせても手柄欲しさに突貫するだろうが、左近太夫が信基と近習共も抑えてくれたら、全軍が崩壊する心配だけはないだろう。

安芸駐屯軍は信繁が頭にいる限り、大内の旧臣だろうが尼子の旧臣だろうが、上手く手綱を取って働かせてくれるだろう。

一向衆・雑賀衆・根来衆などの多い、紀伊と和泉の国衆が裏切った場合が心配だったが、義信が左近太夫の為につけた近習衆は、伊那のころから義信に仕えてきた、歴戦の忠臣ばかりだから、事前に裏切りそうな国衆や地侍は、上手く潰してくれるだろう。

手順とすれば、左近太夫指揮下の和泉駐屯軍の先遣部隊が淡路の洲本に渡るが、ここで三好が裏切るかどうか確かめる。

三好衆が確かに味方する事が確認出来たら、左近太夫の指揮のもと、和泉駐屯軍の4000騎6万2000兵が淡路の上陸して城砦を接収する。

次いで相良友和が指揮する摂津駐屯軍4000騎2万4000兵が、明石から淡路に上陸して和泉駐屯軍と合流する。

和泉駐屯軍から1万を淡路守備に残し、残りの4000騎5万2000兵と摂津駐屯軍4000騎2万4000兵で鳴門海峡を渡り阿波に入る。

阿波の城砦を三好から接収出来たら、安芸と備中の駐屯軍に伝令を送り、瀬戸内を渡海させて四国に上陸させる。

信繁が直卒する安芸駐屯軍からは、呉から芸予諸島を渡って松山に上陸する部隊と、三原と竹原から出て村上水軍を味方に加え、大三島などの城砦を接収してから今治に渡る部隊がある。

飛影が指揮する備中駐屯軍も、玉野を出て小豆島・備讃諸島・塩飽諸島の海賊衆を平らげて、各島々を全て接収してから高松に上陸する。

儂が根切を宣言している一条と西園寺以外は抵抗しないとは思うが、村上水軍の中には狂信的な一向衆が潜んでいる可能性もあるから、多少の抵抗や手違いが起こるかもしれん。

信繁と飛影に手抜かりなどあるはずもないが、海軍衆は船毎に独立独歩の気風が強いから、2人の指揮が十分伝わらない恐れがある。

万が一にも南蛮船や大砲が村上水軍や一向衆の手に渡ったら、武田の優位が一気に崩れる恐れもある。

この件に関しては、絶対に油断や手抜かりがあっては行かぬ故、今1度伝令を走らせて、海軍衆の引き締めを行わねばならん。

海戦に関しては儂も分からぬことが多いから、今1度義信に伝令を送り、手抜かりの無いように差配させねばならん。畿内の国衆や地侍にも、後詰の準備をさせておかねばならん。

「皆の者共、何か聞きたいことはあるか。なければ今日の軍議はこれまでといたすが、いかがじゃ」

さて、あとは一族一門譜代衆に、抜け駆けしないように釘を刺さねばならん。

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