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転生武田義信

克全

第152話尼子義久

1560年9月・京二条城の二ノ丸政務殿:鷹司義信・鷹司家家臣団・宇山飛騨守久兼・山中鹿之介幸盛・牛尾久清・立原源太兵衛尉久綱、熊谷新右衛門など:鷹司義信視点

「御前に控えますは、尼子右衛門督義久の家臣だった宇山飛騨守久兼殿でございます」

「宇山久兼でございます」

今回の尼子降伏に伴い、俺が直臣に召し抱える事になった武将達が、大広間にずらりと並んでいる。

1人1人声をかけて、その心を掴む必要がある。

「飛騨守、よくぞ参ってくれた、その方が余に仕える決断をしてくれたこと、心から嬉しく思うぞ」

「とんでもない事でございます。恐れ多くも関白殿下から直答を許された事、光栄至極でございます」

「なあに、その方の様な忠臣を迎えるに当たり、人を介して話すなど思いもよらぬよ」

「は、有り難き事でございます」

「唯、飛騨守のような忠勇兼備の将に対して申し訳ない事なのだが、鷹司家のこの度の戦いの決まりで、知行地は1000石までしか認められんのだ」

「いえ、讒言を信じた愚かな主君に手打ちにされそうになったところを、殿下の家臣にお助けいただきました。助けて頂けなかったら、我だけではなく、一族一門が身に覚えのない汚名で誅殺されておりました。我と一族の名誉を護って頂けただけで十分でございます」

史実でも宇山飛騨守久兼は、兵糧攻めで苦しむ主家を助けるため、私財を投げうって兵糧を購入していたが、大塚与三衛門の讒言を信じた尼子義久によって、籠城中の月山富田城内で殺害されている。

俺は忠義の心を持った家臣を少しでも多く集めたかった。

戦国で生き残るために、境目の国衆がコロコロ裏切るのは当たり前で、目くじらを立てるような事ではないのは理解している。

だからこそ、命懸けで忠誠を尽す武将は、宝石のように貴重なのだ。

伝承が正しいかどうかは分からないが、忠義の士と伝えられる武将には、密かに影衆の護りをつけて真実を見極め、伝承通りなら家臣にスカウトして来たのだ。

「そうか、そう言ってくれると助かる。まあそれに、四国九州とこれから征伐せねばならぬ地は多い。幾らでも武名を上げ功名を手に入れる機会はある」

「「「「「は!」」」」」

皆一様に感服してくれているようだが、3人ほど決意に満ちた眼差しをしている者がいる。

史実を知っているから、これからどうなるか大体予想はつくが、少し残念だ。

「御恐れながらお願いがございます」

「無礼者!」

「よい! 話をさせてやれ」

「は」

一応真田幸隆が一喝してくれたが、俺が事前に話していたから、この場にいる近習衆は全てこうなる可能性は想定していたし、万が一の場合の護りも覚悟してくれている。

「御勘如を賜り、感謝いたします」

「よい、それで何が望みだ」

「は、殿下の御厚情を持ちまして家名存続を許された主君・尼子義久に、これからも引き続き仕えたく思います。その事お許し願えますでしょうか」

「さて、先ほども申したが、今回の戦いで降伏した者に許す石高は、最高で1000石と言う決まりになっている。源太兵衛尉は知勇兼備の将ゆえ、単独で1000石を許す心算であったが、右衛門督に仕え続けたいと言うのであれば、その話はなかったことになるがいいのかな」

「構いません。忠義の士は二君にに仕えぬと申します」

「ふむ、それは讒言を信じて忠義の家臣を誅殺しようとするような、無知蒙昧な主君でもか」

「孔子は孝経で、君君たらずといえども臣臣たらざるべからず、と申しております」

「そうか、ならば仕方がない。右衛門督に許したのは500石の扶持だ。右衛門督がその範囲で源太兵衛尉を召し抱えると言うのであれば、余がとやかく言うことではない。好きにするがよい」

「有り難き幸せでございます」

「恐れながら、若輩者ではございますが、某も引き続き右衛門督様に御仕えさせて頂きとうございます」

「某も御願でございます」

やれやれ、尼子三傑は俺に仕えてはくれないか。

「よかろう。1000石を捨てて忠誠を尽したいと言うのなら、その願い聞き届けよう」

「「「有り難き幸せでございます」」」

やれやれ、尼子晴久なら警戒も必要だが、尼子義久なら心配する必要もない。

尼子晴久は敗戦に継ぐ敗戦と、籠城戦の心労で急死していた。

恐らく心筋梗塞なのだろうが、親兄弟さえ信じられない戦国では、その心労は筆舌に尽し難いものだったう。

前線に出れば背後の味方が裏切り、籠城しても家臣に寝首を掻かれる可能性が高い。

俺の今までの戦術を研究すれば、おちおち眠ることも出来ないのだから、身心を病むのも当然だろう。

まあそれがあるからこそ、尼子義久も佞臣に踊らされ、忠臣を殺そうとしてしまうのだから、最も人間が悪いのは俺だろう。

悪人ついでに、忠勇の家臣を持つ尼子義久には、先駆けを務めてもらおう。

尼子国久がまだしぶとく籠城しているから、裏切って高嶺城に逃げ込むことも覚悟の上で、城攻めの先陣を命じることにしよう。

四国では三好と一条を軸に、長曾我部や西園寺に河野までもが熾烈な戦いを繰り返している。

まあ誰も四国を統一出来ないように、負けて弱体化した国衆には秘かに武具兵糧を支援しているから、それぞれが徐々に疲弊して俺に対抗できなくなっている。

それでも万が一の渡航を警戒して、瀬戸内海と大坂湾の対岸である、安芸・備後・備中・摂津・和泉・紀伊の対岸に兵を集めている。

何時でも四国に渡海して、三好一条を攻め滅ぼす事は簡単だが、一条を攻め滅ぼすのは体裁が悪いから、三好が一条を滅ぼすのを待っているのだが、以外と一条がしぶとい。

さてどうしたものか。

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