閉じる

転生武田義信

克全

第143話但馬国始末

さて但馬国への侵攻なのだが、10万を超える大兵力が、1万を超える士筒鉄砲を伴って攻め込んだのだから、余程のへまをしなければ負ける事などなかった。

第1軍団長の滝川一益と、第2軍団長の狗賓善狼がへまをするわけもなく、着々と侵攻路の城砦を調略させていった。

勿論いつもの3種の矢文を籠城する城に射込めば、城内で裏切り者が出て簡単に攻略することが出来る。

それに無敵に近い鉄砲隊を持つ鷹司軍に、野戦を挑む馬鹿も当然いない。

さてここで問題となるのが、味方をすると言う約束を守り、周囲を敵に回しても籠城して踏ん張っていた田結庄是義への待遇だ。

本領安堵をするか、一旦城地を召し上げてから他国に加増した上で城地を与えるか、正直迷ってしまった。

だがここは心を鬼にして、当初の予定通りいくことにした。

但馬を平定した後で、田結庄是義立ち会いの元で検地を行い、5割増しの城地を他国で与える事にした。

だが俺が攻め込ませた後で寝返った、卑怯者に配慮する必要などなかった。

佐々木義高や篠部伊賀守など、多くの国衆と地侍が降伏の使者を送ってきたそうだが、滝川一益と狗賓善狼は一切容赦せず城地を召し上げた。

俺の事前の指示通り、遅れて降伏臣従してきた者の配下を全て直臣とする事で力を奪い、最低限の扶持を保証した上で、本人に能力を確認することにさせていたからだ。

将としての力量があるなら高位に就け、それなりの兵を率いさせるが、そうでなければ下級指揮官として使い潰すようにとも指示してある。

俺が狗賓善狼に配慮させたのは、但馬海賊衆を率いる奈良宗孟だけだった。

彼らは日本海一帯に勢力を持つだけでなく、独自に蝦夷国や中国大陸の渤海とも直接交易するほどの航海技術を持っている。

彼らをを無為に攻め殺すなど、才能技術の損失にしかならない。





1559年8月但馬国美方郡温泉城:狗賓善狼視点

「どうかな右近将監殿、関白殿下は貴殿の才能を心から惜しんでおられる、ここは素直に降伏してはどうだ?」

「関白殿下から直々に降伏の文を頂き、朝廷の為に働くように勧めて頂けるのは光栄の極みではございますが、私も長年に渡り山名家の恩を受けた武士でございます。ここで山名家を裏切るのは忍びなく、また武士としての名誉にもかかわる事でございます」

「うむ、右近将監殿の武人としての立派な心掛けには、心から感服いたします。ですがこのまま帰って復命するだけでは、私としても右近将監殿の才能を惜しまれる関白殿下に顔向けが出来ません。ここはどうでしょうか、右近将監殿の山名家家臣として武士としの面目を立てつつ、降伏する方法を共に考えませんか?」

「そうして頂けるなら、私としても家臣領民を戦に巻き込み、無為に死傷させることが無いので助かります」

「ではまず関白殿下への降伏では、武家同士の争いと言う側面のあるでしょう。それを御上や後奈良院からの勅命を受けての降伏ならどうです?」

「そうして頂けるのなら、私としても大義名分が立ち、有り難い事でございます」

「では私は抑えの兵だけ残しておきますから、右近将監殿はこのまま籠城されて下さい。ただ何も知らない右近将監殿の家臣が、命を惜しみ恩賞に目が眩んで謀反を起こしては大変です。家臣の皆には関白殿下と話がついて、勅命が降ってから降伏する事になっていると、正直に説明しておいてください」

「重ね重ねの御配慮、心から感謝いたします。ここまで御配慮頂いた上に厚顔無恥な御願をするのは心苦しいのですが、もう1つ御願いしたいことがあるのです」

「何でしょうか?」

「我が主君、右衛門督様の事でございます。右衛門督様も決して無能な方ではありません、関白殿下の下で働かせていただく訳にはまいらないでしょうか?」

若殿が想定された通りの願いをしてきたな!

恐らく断っても右近将監殿は家臣の列に加わるだろう。
これはあくまでも右近将監殿の心を軽くする為だけの御願いだ。
俺は主君の為に最後まで頑張ったが、それを閣下や俺が認めなかったと言う体裁を取りたのだろう。
こう言う建前や心理上のことを考慮しないと、想定外の場面で感情が爆発して、裏切り謀叛に繋がる危険がある、だがら事前の対応策は話し合って決めてある。

「分かった、右近将監殿の忠誠心に免じて、私が関白殿下から内々に与えられている、最大限の城地や官職を右衛門督殿に認めようではないか」

「どのような官職を御与え下さるのでしょうか?!」

「1000石の羽林家として、京に迎えようではないか」

「右衛門督様は公家に成れるのでございますか?」

「そうだ、この戦国の世を終わらせるには、大領を武家に与える事は出来ない。それは右近将監殿も、分かってくれるな?」

「はい、私が公家に成るなど思いもよりません。関白殿下に従えば、海上で税を課すことは禁止されますが、引き続き船の所有と自由な交易を認めて頂ければ、家臣領民を食べさせて行くことは出来ます」

「望む一族一門家臣衆は、鷹司海軍の将兵として召し抱えると、関白殿下は申されておられる。これからいくらでも、功名の機会はありますよ」

「有り難き幸せにございます」


さて、奈良宗孟率いる但馬海賊衆は、想定通りに味方に加える事が出来た。

だが同じく想定通り山名右衛門督祐豊は、降伏臣従して公家になる事を拒んだ。

鷹司軍将兵や降伏して来た但馬国衆を使者に使えば、とち狂った山名祐豊が使者を殺してしまうかもしれない。

そこで朝廷からの降伏の使者として、それなりの公家を送る事にした。

これは俺が山名祐豊を謀殺したり約束を反故にしない保証でもあるのだが、但馬と因幡の守護家として復権を目指す、山名祐豊には飲める内容では無かった。

ここで尼子晴久が、賢明な判断をした。

但馬国の平野部と盆地を抑えられ、山岳部分の一部城砦だけしか残らない山名祐豊から、因幡国を奪うのは簡単だった。

だがここで因幡国を山名祐豊から奪えば、因幡国と但馬国の国衆と地侍は、一斉に殿下に降伏臣従するだろう。

だがら山名祐豊を因幡国に後退せて、山名家家中で忠誠心の厚い者を山岳部に籠城させ、時間稼ぎをする策に出たのだ。

その上で足利公方を活用し、微妙な関係の尼子国久を播磨国に攻め込ませ牽制させようとした。

「転生武田義信」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「歴史」の人気作品

コメント

コメントを書く