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転生武田義信

克全

第142話但馬国侵攻開始

1559年5月・京二条城の二ノ丸政務殿・鷹司義信・真田幸隆・黒影・織田信長ほか:鷹司義信視点

「御報告させていただきます。備前と但馬の国衆は、去就に迷っているようでございます。ですが城地の本領安堵を約束する、尼子晴久と尼子国久に味方する者の方が、若干多いようでございます」

「根切りなさいますか?」

「そういつも試すような事を申すな信長、城地召し上げの後で検地をして、半知分の玄米支給に応じる国衆と地侍は、六衛府で召し抱える」

「応じなければ根切りでございますか?!」

「折角の労働力を無駄にする事もあるまい、生き残った者は再度調略する」

「それでも刃向かう者はどうなされます?」

「討ち取るしかあるまいが、逃げる者は見逃してやる」

「備中、備後、安芸と、後退しつつ刃向かって来ますぞ、半知でも領地を認めてやってはどうです?」

「また心にもない事を申すではない。昔ならいざ知らず、今はこの国の平定は出来たも同然で、後は時間の問題だ。油断は大敵だが、事を急いで妥協すれば、天下百年の計はならん。理想を実現するには、時間はかかっても、国衆と地侍は領地と切り離さねばならん」

「それでは今までに城地を安堵した者や、半知の領地を認めた者からも、いずれは領地を召し上げになられるのですね?!」

「それも出来ん。一旦約束した事は、絶対守らなければならない。さもなければ君臣の信頼は築けぬし、忠誠心も得られぬ」

「信長殿、続きを話たいのだがな」

「それは失礼、黒影殿」

「改めて御話させていただきます。尼子晴久の山陰方面の敵も、尼子国久の山陽方面の敵も、平地での決戦を避けております。山岳地帯に城を築いて、我らを迎え討つ準備を進めています」

流石に晴久も国久も愚かではないな、大砲や大弩砲の運用が難しい、山岳地帯に籠ったか。

「山岳地帯を通って、我が軍の後方に出る可能性もある。山窩衆などの生産衆に山の権利を与え、警戒網を築かせよ。更に各地の地侍に道案内をさせ、京などの後方地帯を突かれないように、定期的に巡回させよ」

「承りました」

「後方地域の守備軍編成は、予定通り進んでいるか?」

「はい、御指示通り方面軍が移動した後の和泉、河内、摂津には、三好水軍に後方上陸されないように、自警団兼任の生産衆を移住させると共に、防衛逆撃用の師団を常駐させております」

「そうか」

流石に今回は、信長も分かり切った事を聞いたりはしてこない。

大勢が集まる大会議で、一条摂関家の力を奪う為に、土佐一条を見殺しにする事を話す訳にはいかない。

表向きは、尼子晴久と尼子国久が強敵で手古摺っているから、淡路と四国に侵攻出来ない事になっている。

「軍用道路の普請はどうなっている?」

「和泉、河内、摂津、播磨から備前に攻め込むための道と、京、丹波、丹後から但馬に攻め込む道、若狭や丹後から但馬に攻め込む道、更には播磨から但馬に攻め込む道の4街道を普請しておりますが、大砲や大弩砲を運用出来るだけの道幅と強度を確保するには、どんなに急いでも2年はかかります」

「銭の鋳造と、明国からの兵糧輸送は順調なのだな?」

「はい、薩摩芋の生産と、蝦夷国でのじゃが芋、麦、蕎麦の作付けも順調です」

「ならば生産衆に雇用した播磨の難民や、道普請が必要な国の民百姓を、農閑期に銭を払って大量投入しろ。尼子軍に備えながら投入できる全将兵も、道普請に使え」

「御所を御護りする、六衛府の6色兵団も投入して構いませんか?」

「京を奇襲させられないように、十分な警戒をした上でなら構わん」

今回の勝利で、今まで近衛府だけで御所の兵力の大半を占めていたのを改編した。

元からの近衛府六色軍を、色ごとに左右の近衛府・兵衛府・衛門府に分けたのだ。

そして多くの新兵と奴隷を、六衛府軍に配属して訓練させて、非常時には守備兵に転用できるようにした。

「1年後に備前と但馬に攻め込むが、その時には大砲と大弩砲を運用できるようにしておけ」

「承りました」

出来るだけ味方の死傷者は減らしたい、それに今の領地の生産力から考えれば、時間が経てば経つほど俺の方が有利になる。

年齢から言っても誰よりも若いし、健康にも気をつけている上に、医薬の知識もこの時代では最優秀だろう。

若年性の不治の病にかからない限り、圧倒的に俺の方が長生きできる、だから焦る必要などないのだ。

「方面軍だが、ここに書いてあるように大幅に改変する。移動は各地の地侍に案内させながら、尼子軍が京などに攻め込めないように、巡回させる部隊として活用しろ」

「承りました」


1559年7月・京二条城の二ノ丸政務殿・鷹司義信・真田幸隆・黒影・織田信長ほか:鷹司義信視点

「方面軍の再編でございますが、御指示通り今までの部隊を大規模に再編しました。その為の移動で多くの密偵を捕まえている事は、毎回御伝えしていましたが、ほぼ全員が寝返りました」

黒影が敵の忍びの動向とその後を報告してくれた。

「国に残した人質の家族は助け出せたのか?」

「鋭意救出中でございます」

「無理をする事はない。此方の将兵が死傷するくらいな、敵の密偵は逃がしてやればいい。此方の侵攻占領が完了すれば、家族ともども助け出せる」

「承りました」

「道普請が完了するまでは、無理することはない、深く静かに調略をしてくれればいい」

「承りました」

俺は急いで侵攻する心算は無かったのだが、だが情勢がそれを許さなかった。

但馬国は表向きは山名家が守護なのだが、四天王と言われる田結庄是義(鶴城・愛宕城)・八木豊信・太田垣朝延・垣屋続成が、山名政豊の四男・山名誠豊を担いで山名致豊を追いだし山名家の求心力を落とした後で、互いに覇を競って家臣団で内乱状態となっていた。

そしてその長年に渡る内乱は、山名家を鷹司家に降伏させるか、尼子晴久に味方するかの争いとなる。

俺に降伏し臣従を誓うように勧める田結庄是義(鶴城・愛宕城)派と、尼子晴久と連携して城地を守ろうとする、山名氏家臣団筆頭の垣屋豊継(竹野轟城主)・垣屋忠顕(宵田城主)・八木豊信 ・太田垣照延派との対立が、熾烈化してしまった。

俺の望まない形で、俺と尼子晴久の代理戦争が起こってしまった!

だが一旦味方すると約束した、田結庄是義を見捨てる訳にはいかない。

轟城主の垣屋宗時・水生城主の西村丹後守・林甫城主の長越前守・伊福城主の下津屋新三郎・国分寺城主の大坪又四郎・宮井城主の篠部伊賀守・国分寺城主の大坪又四郎・宿南城主の宿南修理太夫・浅間城主の佐々木義高・八木城主の藤井左京・上山城主の上山平左衛門・坂本城主の橋本兵庫・朝倉城主の朝倉大炊などの、多く国衆を敵に回してまで、俺との約束を守ろうとしている。

俺との約束を秘匿できない愚か者だし、一時的にでも相手の言い分に納得した振りをして、俺が攻め寄せた時に内応する策を使う事も出来ない。

そういう臨機応変の対応が出来ない国衆だが、それでも、愚直であろうとも約束を守ろうとするところは好きだ。

だから時期尚早ではあるが、播磨で道普請をしながら侵攻の時を伺っていた、滝川一益指揮下の但馬方面軍第1軍団の10万兵を、まず生野銀山を占領させるべく侵攻させた。

同時に丹後の久美浜城に駐屯していた、狗賓善狼指揮下の但馬方面軍第2軍団2万2000兵を、豊岡盆地に攻め込ませた。

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