転生武田義信
第122話近江決戦
近江坂本周辺・鷹司義信・真田幸隆・織田信長・黒影:鷹司義信視点
足利義維公を中心に、反鷹司武田大同盟が結成されていた。
三好・畠山・一向宗・叡山を中心に、畿内周辺の大名や国衆に地侍までもが結集した、30万兵もの前代未聞の大軍団だった。
死を恐れぬ一向衆と、歴戦の三好勢を中核とした、とても手強い軍勢だ。
俺達は、甲斐で採れた水晶を使った望遠鏡で、敵軍の状況を確認する。
透明度の高い水晶を使っているので、かなり高価なものだが、戦況を出来るだけ早くつかむことは勝敗に直結するので、高級指揮官には貸与するようにしている。
「大将軍閣下、凄い大軍ですな」
「ああ、根こそぎ動員して来たようだな」
「最前線の足軽が持っているのは竹把ですが、厚みも幅も尋常ではありませんね」
「士筒対策だろうな、我が軍の士筒は、足利軍の小筒や中筒とは破壊力が違うからな」
「どうなされるのですか?」
「敵の最前線部隊は、重い竹把を動かしているから動きが悪い。引き付けてから攻撃をしても、十分間に合う」
「小笠原騎馬隊はどう動きます?」
ずっと黙っていた信長が聞いてきた。
「ここを決戦とした時点で、小笠原に働き場はない。近淡海(ちかつあふみ)(琵琶湖)と比叡山に挟まれた、とても狭い地域だ。水軍は我らが圧倒しているから、湖上を迂回して後方上陸も出来ない」
「叡山の生臭坊主が、我らの敵に回ると聞いていますが?」
「いい機会だ、叩きのめす」
「閣下の命で、狗賓軍団の鉄砲僧兵を、生臭坊主の抑えにまわしております」
黒影は油断する事なく、叡山の動向を探っていた。
それによれば、叡山は足利義維に味方して、勝った場合は以前のように、近江や京で好き勝手に振る舞える約定を交わしたようだ。
そんな民を虐げる身勝手な事をさせる訳にはいかないので、黒影が調べ上げた叡山侵攻予定地に、4000兵の鉄砲隊を配置させた。
「敵軍がドンドン迫って来ております」
「敵軍の後詰はどうしている!」
「大津と山科方向に、三好兵が残っております!」
敵の動向や兵力配置を知る為に、高さ18mもの野戦井楼を築かせ、更に大型望遠鏡を設置して、敵の動向を逐一報告させている。
なぜ俺自身が井楼に登って、直接現状を把握しないのかと言えば、俺は生まれ変わる前から高所恐怖症なのだ。
普通に高い所が怖いのに、急造の野戦築陣の井楼に登るなんて、恐ろしくて恐ろしくて絶対無理だ。
「叡山から僧兵が襲って来ました!」
野戦井楼から報告が入る。
「迎撃させろ!」
「閣下!」
敵が予め最終ラインと決めていた場所に到達した、重い竹把を担いだ敵兵が必死て走り出したのだ。
叡山と連携して、2カ所で同時に攻撃する心算なのだろう。
敵が大型弩砲やフランキ砲に加えて、カノン砲まで持っている可能性も考慮して、射程400mを決戦距離としていた。
井楼からの報告では、確かに三好軍は、数門の大砲と100を超える大型弩砲を後方に用意していた。
だがまだ今は、こちらが攻撃を受ける心配はない場所に、大砲と大型弩砲は配備されている。
「放て!」
ドーン!
俺の最終兵器が火を噴いた。
1貫砲100門の一斉斉射だ!
轟音と共に、3・736kgの鉄の塊200個が、密集していた敵の竹把を吹き飛ばした。
同時に味方の陣にある大型弩砲から、十字鏃の大竹矢が放たれた。
1貫砲の初弾は、竹把を吹き飛ばす目的で、通常弾(丸弾)を2発装填で発射した。
最前列の竹把を吹っ飛ばすための通常弾だったが、砲弾に込められた運動エネルギーは、後方にいた十数人の敵兵も殺戮して跳ねていった。
大型弩砲は、竹把後方の敵兵を薙ぎ倒して、多数の死傷者を出す心算で放たれていた。
想定通り十字大竹矢は、主に敵の脚を骨折させ、与えられた運動エネルギーが尽きるまで跳ねまわった。
敵は大混乱に陥っていた。
鉄砲が広まって以来、人馬ともに鉄砲の轟音にも耐えられるように、日々絶え間ない訓練調教をしてきた。
だが100門の大砲による轟音と、200個の砲弾による大量殺戮の対策など、今の三好家や将軍家に出来ているはずもない。
砲撃を受けた敵の陣では馬が暴れ出して、騎乗の将を振り落としてその場を逃げ出した。
将兵の中には、茫然自失になり立ちつくしてしまう者、失禁脱糞してその場にへたり込んでしまう者が続出した。
ドーン!
1貫砲100門が第2斉射を行った。
ドーン!
1貫砲100門が第3斉射を行った。
「ギャァー!」
敵兵は、言葉にならない叫びをあげて逃げ出した。
中にはその場にへたり込んで動かない者もいた、しかし多くの敵兵は。鷹司軍に背を向けて潰走を始めた。
「仰角を上げて射撃を続けろ」
予め決めておいた通り、1貫砲と大型弩砲部隊が砲撃を続けた。
通常行われる追撃と追い討ちは、今暫く行われない。
よくある抜け駆けをする者は、今回に関しては皆無だった。
当然だろう、1貫砲と大型弩砲に、背後から撃たれたい者などいるはずがない。
「大砲隊、弩砲隊攻撃止め! 追撃開始!」
我が軍はゆっくりと追撃を開始した。
主な仕事は、取り残された敵兵と降伏して来た敵兵を捕虜にする事だ。
戦争神経症になり、2度と兵としては動員出来ないかもしれないが、農作業や生産に従事させる事は出来るかもしれないのだ。
食料生産力増大のための労働者増員は、常に考慮しておかねばならない。
勿論通常の追撃部隊や追い討ち部隊も存在はする。
だが敵軍が1貫砲の射程内にいる間は追撃しなかったため、今から追いかけることが出来るのは、狗賓軍団の近衛騎馬鉄砲隊4000騎と、僧騎馬弓隊の3000騎だけだった。
「止まれ! 構え! 放て!」
ダッーン!
各部隊長の指示によって、士筒を装備した騎馬鉄砲兵が射撃を行う。
4000騎の部隊が、日頃の調練の厳しさが窺える一糸乱れぬ動きで、射撃を繰り返す。
1000騎づつ4隊に分かれ、射撃・装填・前進・停止を行い、間断なく射撃出来るように動いていた。
もちろん僧騎馬弓隊の3000騎も遊んではいない。
決死の敵兵が騎馬鉄砲兵を襲わないように気を配りつつ、放物線を描くように遠距離面制圧弓射を繰り返す。
大津方面の三好長慶:第3者視点
「あの音は何だ?!」
「調べて参ります!」
三好長慶は驚き焦っていた。
鷹司に対する備えは、十分取ったはずだった。
大型の竹把を大量に用意したし、最前線には死を恐れぬ一向衆を配した。
比叡山とも結んで同時攻撃を企んでいたし、叡山の僧兵が少しでもは平野部を確保すれば、小笠原騎馬隊を鷹司軍の背後に回らせる段取りだった。
だがこの戦場では、自分達の兵馬を鉄砲に慣れさせるための訓練では、見聞きした事が無いような轟音が響き渡っている。
「殿! 鷹司は恐ろしく大きな鉄砲を撃ち放っています!」
「フランキか?!」
「分かりません! しかし恐ろしい数の大きな鉄砲です」
「いったいどれくらいのフランキを持っているのだ?!」
「百、いや二百の砲があるようです!」
「なんだと?! いったいどこからそれほどのフランキを手に入れたのだ?!」
「分かりません、しかし死を恐れぬはずの一向衆が、武器を捨てて逃げ出してしまっています。十分な訓練を施したはずの小笠原騎馬隊も、馬が暴れ出して戦う前に壊乱してしまいました」
「なに!? 小笠原騎馬隊までもか?! 後方の鉄砲隊の所で陣を組み直せ!」
「もはや手遅れでございます、鉄砲隊も既に逃げ出しております」
「本陣を押し出す、それで前線の崩壊を押し止める。それでも逃げてくるなら、鉄砲や矢を射て督戦する」
「承りました!」
三好長慶は、後詰・本陣・中陣の要所に配置していた三好勢をもって、戦線の立て直しを図った。
友崩れ起こして、もはや軍の体制を維持していなかった足利軍だが、督戦隊が放つ味方攻撃で、鷹司と挟み撃ちにされた。
逃亡を図った足利前線部隊だが、味方にまで攻撃され、足軽大将や侍大将の必死の呼びかけもあり、漸く踏みとどまった。
「止まれ! 構え! 放て!」
ダッーン!
だが踏みとどまってはみたものの、ほとんどの兵は逃亡する為に、竹把・槍・刀を放り投げてしまっていた。
鷹司軍に対抗する術が全く無いのだ。
武器も防具も持たない状態で、徐々に迫って来ては間断なく射撃する、鷹司騎馬鉄砲隊への恐怖は尋常では無かった。
「全軍止まれ! 敵兵に告ぐ! 降伏する者は命を助ける!」
真田綱吉は、自分の言葉が敵兵達に染み込むまで暫く待った。
戦場は一瞬で静寂に見舞われ、敵味方が次の言葉を固唾を飲んで待つ状態となった。
「繰り返し敵兵に告ぐ! 降伏する者は命を助けた上で鷹司家で召し抱える! 武器を捨てて地に臥せよ! 繰り返し敵兵に告ぐ! 降伏する者は命を助けた上で、鷹司家で召し抱える! 武器を捨てて地に臥せよ!」
最初は何も起こらなかった。
直ぐに信じることが出来なかったのかもしれない。
だが1人の雑兵が地に臥せた途端、次々と足利軍最前線兵は地に身を投げ出した。
1人の一向衆徒が「無量寿経」を唱え始めた。
戦場は異様な風景となっていった。
本来命を惜しまず仏敵を倒すはずの一向衆が、地に臥して「無量寿経」を唱えて、鷹司軍に命乞いをしてる。
敵兵が地に臥して降伏しております!」
「捕虜確保にむかわせろ。」
敵兵が降伏した場合は、足軽槍隊が敵兵を捕虜にするように、事前に話し合っていた。
捕虜は後方の城砦に用意されている牢屋に、一時収容することになっていた。
「このまま伏せておれ、立てば殺されるぞ!」
近衛騎馬鉄砲隊4000騎と僧騎馬弓隊の3000騎は、降伏した兵を馬蹄にかけないように気をつけながら、徐々に前進した。
「繰り返し敵兵に告ぐ! 降伏する者は命を助けた上で鷹司家で召し抱える! 武器を捨てて地に臥せよ!」
真田綱吉は降伏勧告しながら、徐々に前進する。
声の聞こえる範囲にいる足利兵は、次々に武器を捨てて地に伏せて行く。
降伏した足利兵は後ろ手に縄をかけられ、後でで暴れ出さないようにされて、後方城砦に連行されていく。
足利軍は三好勢を中核に、態勢の立て直しが完了した。
鷹司軍の1貫砲を斉射を受けた部隊と、近衛騎馬鉄砲隊4000騎に鉄砲の繰り撃ちを受けた部隊、最前線にいた一向衆10万兵は、死傷するか鷹司軍に降伏した。
三好軍は六角軍に備えていた部隊の竹把を流用し、急いで新たな最前線を構築した。
「全軍停止!」
真田綱吉は近衛騎馬鉄砲隊4000騎と、僧騎馬弓隊の3000騎を停止させ、第2ラウンドに備えた。
「大砲隊、大弩砲隊前進!」
義信の命令で、荷車と馬車に搭載された1貫砲と大型弩砲が、安全を確認しながら前進を開始した。
悪路を前進する為に、車輪の前に木盾などが地面に敷かれていく。
義信は砲を使って、足利軍を完膚なきまで叩く心算のようだ。
後方にいた三好長慶は、大砲の破壊力と恐怖を実感できていなかった。
最前線を使い捨ての一向衆で固めた弊害が、この場で出てしまった。
鷹司が南蛮とは関係なく大砲を開発していた為、1貫砲(3・736kg)2貫砲(7・472kg)という重量の大砲が開発された。南蛮の基準は9ポンド砲(4・077kg)であり、対抗上は艦艇を大きくして、9ポンド搭載の南蛮船には2貫砲搭載艦艇で対抗し、18ポンド搭載南蛮船には4貫砲搭載艦艇で対抗する予定だった。
足利義維公を中心に、反鷹司武田大同盟が結成されていた。
三好・畠山・一向宗・叡山を中心に、畿内周辺の大名や国衆に地侍までもが結集した、30万兵もの前代未聞の大軍団だった。
死を恐れぬ一向衆と、歴戦の三好勢を中核とした、とても手強い軍勢だ。
俺達は、甲斐で採れた水晶を使った望遠鏡で、敵軍の状況を確認する。
透明度の高い水晶を使っているので、かなり高価なものだが、戦況を出来るだけ早くつかむことは勝敗に直結するので、高級指揮官には貸与するようにしている。
「大将軍閣下、凄い大軍ですな」
「ああ、根こそぎ動員して来たようだな」
「最前線の足軽が持っているのは竹把ですが、厚みも幅も尋常ではありませんね」
「士筒対策だろうな、我が軍の士筒は、足利軍の小筒や中筒とは破壊力が違うからな」
「どうなされるのですか?」
「敵の最前線部隊は、重い竹把を動かしているから動きが悪い。引き付けてから攻撃をしても、十分間に合う」
「小笠原騎馬隊はどう動きます?」
ずっと黙っていた信長が聞いてきた。
「ここを決戦とした時点で、小笠原に働き場はない。近淡海(ちかつあふみ)(琵琶湖)と比叡山に挟まれた、とても狭い地域だ。水軍は我らが圧倒しているから、湖上を迂回して後方上陸も出来ない」
「叡山の生臭坊主が、我らの敵に回ると聞いていますが?」
「いい機会だ、叩きのめす」
「閣下の命で、狗賓軍団の鉄砲僧兵を、生臭坊主の抑えにまわしております」
黒影は油断する事なく、叡山の動向を探っていた。
それによれば、叡山は足利義維に味方して、勝った場合は以前のように、近江や京で好き勝手に振る舞える約定を交わしたようだ。
そんな民を虐げる身勝手な事をさせる訳にはいかないので、黒影が調べ上げた叡山侵攻予定地に、4000兵の鉄砲隊を配置させた。
「敵軍がドンドン迫って来ております」
「敵軍の後詰はどうしている!」
「大津と山科方向に、三好兵が残っております!」
敵の動向や兵力配置を知る為に、高さ18mもの野戦井楼を築かせ、更に大型望遠鏡を設置して、敵の動向を逐一報告させている。
なぜ俺自身が井楼に登って、直接現状を把握しないのかと言えば、俺は生まれ変わる前から高所恐怖症なのだ。
普通に高い所が怖いのに、急造の野戦築陣の井楼に登るなんて、恐ろしくて恐ろしくて絶対無理だ。
「叡山から僧兵が襲って来ました!」
野戦井楼から報告が入る。
「迎撃させろ!」
「閣下!」
敵が予め最終ラインと決めていた場所に到達した、重い竹把を担いだ敵兵が必死て走り出したのだ。
叡山と連携して、2カ所で同時に攻撃する心算なのだろう。
敵が大型弩砲やフランキ砲に加えて、カノン砲まで持っている可能性も考慮して、射程400mを決戦距離としていた。
井楼からの報告では、確かに三好軍は、数門の大砲と100を超える大型弩砲を後方に用意していた。
だがまだ今は、こちらが攻撃を受ける心配はない場所に、大砲と大型弩砲は配備されている。
「放て!」
ドーン!
俺の最終兵器が火を噴いた。
1貫砲100門の一斉斉射だ!
轟音と共に、3・736kgの鉄の塊200個が、密集していた敵の竹把を吹き飛ばした。
同時に味方の陣にある大型弩砲から、十字鏃の大竹矢が放たれた。
1貫砲の初弾は、竹把を吹き飛ばす目的で、通常弾(丸弾)を2発装填で発射した。
最前列の竹把を吹っ飛ばすための通常弾だったが、砲弾に込められた運動エネルギーは、後方にいた十数人の敵兵も殺戮して跳ねていった。
大型弩砲は、竹把後方の敵兵を薙ぎ倒して、多数の死傷者を出す心算で放たれていた。
想定通り十字大竹矢は、主に敵の脚を骨折させ、与えられた運動エネルギーが尽きるまで跳ねまわった。
敵は大混乱に陥っていた。
鉄砲が広まって以来、人馬ともに鉄砲の轟音にも耐えられるように、日々絶え間ない訓練調教をしてきた。
だが100門の大砲による轟音と、200個の砲弾による大量殺戮の対策など、今の三好家や将軍家に出来ているはずもない。
砲撃を受けた敵の陣では馬が暴れ出して、騎乗の将を振り落としてその場を逃げ出した。
将兵の中には、茫然自失になり立ちつくしてしまう者、失禁脱糞してその場にへたり込んでしまう者が続出した。
ドーン!
1貫砲100門が第2斉射を行った。
ドーン!
1貫砲100門が第3斉射を行った。
「ギャァー!」
敵兵は、言葉にならない叫びをあげて逃げ出した。
中にはその場にへたり込んで動かない者もいた、しかし多くの敵兵は。鷹司軍に背を向けて潰走を始めた。
「仰角を上げて射撃を続けろ」
予め決めておいた通り、1貫砲と大型弩砲部隊が砲撃を続けた。
通常行われる追撃と追い討ちは、今暫く行われない。
よくある抜け駆けをする者は、今回に関しては皆無だった。
当然だろう、1貫砲と大型弩砲に、背後から撃たれたい者などいるはずがない。
「大砲隊、弩砲隊攻撃止め! 追撃開始!」
我が軍はゆっくりと追撃を開始した。
主な仕事は、取り残された敵兵と降伏して来た敵兵を捕虜にする事だ。
戦争神経症になり、2度と兵としては動員出来ないかもしれないが、農作業や生産に従事させる事は出来るかもしれないのだ。
食料生産力増大のための労働者増員は、常に考慮しておかねばならない。
勿論通常の追撃部隊や追い討ち部隊も存在はする。
だが敵軍が1貫砲の射程内にいる間は追撃しなかったため、今から追いかけることが出来るのは、狗賓軍団の近衛騎馬鉄砲隊4000騎と、僧騎馬弓隊の3000騎だけだった。
「止まれ! 構え! 放て!」
ダッーン!
各部隊長の指示によって、士筒を装備した騎馬鉄砲兵が射撃を行う。
4000騎の部隊が、日頃の調練の厳しさが窺える一糸乱れぬ動きで、射撃を繰り返す。
1000騎づつ4隊に分かれ、射撃・装填・前進・停止を行い、間断なく射撃出来るように動いていた。
もちろん僧騎馬弓隊の3000騎も遊んではいない。
決死の敵兵が騎馬鉄砲兵を襲わないように気を配りつつ、放物線を描くように遠距離面制圧弓射を繰り返す。
大津方面の三好長慶:第3者視点
「あの音は何だ?!」
「調べて参ります!」
三好長慶は驚き焦っていた。
鷹司に対する備えは、十分取ったはずだった。
大型の竹把を大量に用意したし、最前線には死を恐れぬ一向衆を配した。
比叡山とも結んで同時攻撃を企んでいたし、叡山の僧兵が少しでもは平野部を確保すれば、小笠原騎馬隊を鷹司軍の背後に回らせる段取りだった。
だがこの戦場では、自分達の兵馬を鉄砲に慣れさせるための訓練では、見聞きした事が無いような轟音が響き渡っている。
「殿! 鷹司は恐ろしく大きな鉄砲を撃ち放っています!」
「フランキか?!」
「分かりません! しかし恐ろしい数の大きな鉄砲です」
「いったいどれくらいのフランキを持っているのだ?!」
「百、いや二百の砲があるようです!」
「なんだと?! いったいどこからそれほどのフランキを手に入れたのだ?!」
「分かりません、しかし死を恐れぬはずの一向衆が、武器を捨てて逃げ出してしまっています。十分な訓練を施したはずの小笠原騎馬隊も、馬が暴れ出して戦う前に壊乱してしまいました」
「なに!? 小笠原騎馬隊までもか?! 後方の鉄砲隊の所で陣を組み直せ!」
「もはや手遅れでございます、鉄砲隊も既に逃げ出しております」
「本陣を押し出す、それで前線の崩壊を押し止める。それでも逃げてくるなら、鉄砲や矢を射て督戦する」
「承りました!」
三好長慶は、後詰・本陣・中陣の要所に配置していた三好勢をもって、戦線の立て直しを図った。
友崩れ起こして、もはや軍の体制を維持していなかった足利軍だが、督戦隊が放つ味方攻撃で、鷹司と挟み撃ちにされた。
逃亡を図った足利前線部隊だが、味方にまで攻撃され、足軽大将や侍大将の必死の呼びかけもあり、漸く踏みとどまった。
「止まれ! 構え! 放て!」
ダッーン!
だが踏みとどまってはみたものの、ほとんどの兵は逃亡する為に、竹把・槍・刀を放り投げてしまっていた。
鷹司軍に対抗する術が全く無いのだ。
武器も防具も持たない状態で、徐々に迫って来ては間断なく射撃する、鷹司騎馬鉄砲隊への恐怖は尋常では無かった。
「全軍止まれ! 敵兵に告ぐ! 降伏する者は命を助ける!」
真田綱吉は、自分の言葉が敵兵達に染み込むまで暫く待った。
戦場は一瞬で静寂に見舞われ、敵味方が次の言葉を固唾を飲んで待つ状態となった。
「繰り返し敵兵に告ぐ! 降伏する者は命を助けた上で鷹司家で召し抱える! 武器を捨てて地に臥せよ! 繰り返し敵兵に告ぐ! 降伏する者は命を助けた上で、鷹司家で召し抱える! 武器を捨てて地に臥せよ!」
最初は何も起こらなかった。
直ぐに信じることが出来なかったのかもしれない。
だが1人の雑兵が地に臥せた途端、次々と足利軍最前線兵は地に身を投げ出した。
1人の一向衆徒が「無量寿経」を唱え始めた。
戦場は異様な風景となっていった。
本来命を惜しまず仏敵を倒すはずの一向衆が、地に臥して「無量寿経」を唱えて、鷹司軍に命乞いをしてる。
敵兵が地に臥して降伏しております!」
「捕虜確保にむかわせろ。」
敵兵が降伏した場合は、足軽槍隊が敵兵を捕虜にするように、事前に話し合っていた。
捕虜は後方の城砦に用意されている牢屋に、一時収容することになっていた。
「このまま伏せておれ、立てば殺されるぞ!」
近衛騎馬鉄砲隊4000騎と僧騎馬弓隊の3000騎は、降伏した兵を馬蹄にかけないように気をつけながら、徐々に前進した。
「繰り返し敵兵に告ぐ! 降伏する者は命を助けた上で鷹司家で召し抱える! 武器を捨てて地に臥せよ!」
真田綱吉は降伏勧告しながら、徐々に前進する。
声の聞こえる範囲にいる足利兵は、次々に武器を捨てて地に伏せて行く。
降伏した足利兵は後ろ手に縄をかけられ、後でで暴れ出さないようにされて、後方城砦に連行されていく。
足利軍は三好勢を中核に、態勢の立て直しが完了した。
鷹司軍の1貫砲を斉射を受けた部隊と、近衛騎馬鉄砲隊4000騎に鉄砲の繰り撃ちを受けた部隊、最前線にいた一向衆10万兵は、死傷するか鷹司軍に降伏した。
三好軍は六角軍に備えていた部隊の竹把を流用し、急いで新たな最前線を構築した。
「全軍停止!」
真田綱吉は近衛騎馬鉄砲隊4000騎と、僧騎馬弓隊の3000騎を停止させ、第2ラウンドに備えた。
「大砲隊、大弩砲隊前進!」
義信の命令で、荷車と馬車に搭載された1貫砲と大型弩砲が、安全を確認しながら前進を開始した。
悪路を前進する為に、車輪の前に木盾などが地面に敷かれていく。
義信は砲を使って、足利軍を完膚なきまで叩く心算のようだ。
後方にいた三好長慶は、大砲の破壊力と恐怖を実感できていなかった。
最前線を使い捨ての一向衆で固めた弊害が、この場で出てしまった。
鷹司が南蛮とは関係なく大砲を開発していた為、1貫砲(3・736kg)2貫砲(7・472kg)という重量の大砲が開発された。南蛮の基準は9ポンド砲(4・077kg)であり、対抗上は艦艇を大きくして、9ポンド搭載の南蛮船には2貫砲搭載艦艇で対抗し、18ポンド搭載南蛮船には4貫砲搭載艦艇で対抗する予定だった。
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