転生武田義信
第96話三好軍
5月近江観音寺城:第3者視点
美濃から這(ほ)う這(ほ)うの体(てい)で逃げ帰った細川晴元は、六角義賢の支援と残っている軍資金で、軍勢の再建を急いでいた。
だが京での実情を知った能登7人衆は、美濃の大敗直後に離反していまい、元々の配下と雑兵と伴って鷹司軍に投降していた。
晴元の下に残ってくれたのは、香西元成とその家臣団に、畠山在氏と尚誠の畠山総州家の家臣団だけだった。
一番痛かったのは、軍資金で整えていた鉄砲2000丁(肩付けの小筒か中筒)の大半を失ったことだ。
鷹司義信の鉄砲隊が、大戦果をあげているのを知った細川晴元は、近江国友村が鉄砲の産地であったので、集められるだけ集めていたのだ。
だが細川晴元は、2000丁もの鉄砲があるのに、何の戦果も上げることができなかった。将兵の忠誠心を得ていない大将では、士気を上げることもできず、勝てない手本のような戦いだった。
「管領殿、矢張り鷹司卿と和解してはどうだ?」
「しかしもう武田家との縁は切れてしまっておる。義賢殿には悪いが、前妻の三条が嫡男を産んでおれば、こうはならなかったのだがな」
「それを言っても始まるまい、管領殿は我妹を妻にしたのだからな」
「三条が死んだのだ、後添えを迎えるのは当然だ、義賢殿の妹を妻に迎えて氏綱を叩きのめしたかったのだ」
「で、どうするのだ?」
「和解などはむりだよ。そうだな、播磨の赤松晴政と義祐を頼るとするか。義祐に娘の尚を嫁がせればよかろう」
「それは無理であろう。先年尼子に、備前と美作の守護職を与えたではないか、守護職を奪われた晴政殿は、恨みを抱いておるぞ」
「ならば晴政に、備前と美作守護職を与えてやろう」
「将軍不在の御教書に、どれほどの価値があるのだ。それに正当性があるとも思われん。第一それでは、尼子を敵に回すではないか、そうなれば尼子の影響力が強い、若狭武田の去就が不安だぞ。それでは鷹司包囲網は瓦解するぞ」
「ではどうせよというのだ?」
「尚殿と顕殿は、三条夫人との娘であろう。彼女たちを使ってはどうだ?」
「娘を鷹司家の人質に使えというのか? それはいくらなんでも外聞が悪いだろう」
「今更何を言ってるのだ。三好元長と長慶の親子を、どれほど裏切ってきたのだ。それにあれほど支援してくれていた鷹司家を裏切ったのだぞ、信頼を裏切り忠誠心を失った、その結果が美濃での敗北ではないか」
「ふん、家臣が我に尽くすのは当たり前ではないか、下郎どもが不義不忠なだけだ。幕府を導き戦に勝つために、仕方がなかったことだ」
「だから今回は、尚殿と顕殿を使って鷹司家と和解せよと言っているのだ」
「具体的にどうせよと言うのだ?」
「2人を武田の一族に嫁がせればいい、そのうえで新たな同盟を結び、軍資金を支援して貰えばいいではないか」
「ふむ、だがそれでは武田に何の利もあるまい?」
「今の状況を見れば、遠江と駿河の守護職を与えればよかろう」
「今川を切る捨てるのか? それにその程度の褒美でいいのか?」
「今川はもう持たんよ。褒美が少ないか? そうだな、その程度では義信はともかく晴信が納得せんだろうな。だが尾張と三河の守護職は、一向衆との関係を考えれば与えられんしな。そうだ! 義信は最上を滅ぼしたのだな、では最上家が持っていた羽州探題をくれてやればよい。なんなら伊達家の陸奥守護と、大崎家の奥州探題もくれてやれ。義信の目が東国に向き、近江や京から離れればそれでよいではないか」
「だがさっき、将軍不在の御教書など無意味と言っていなかったか?」
「だから義信に、義秋殿の将軍就任を後押ししてもらうのだよ。義信が後押しすれば、帝も朝廷も認めるであろう。その後で将軍からの御内書も送ればよかろう」
「尚と顕を義信を送って軍資金が再開されるなら、何の問題もないが、送った後で約束を反故にしたりはせぬかな?」
「管領殿ならするだろうが、義信は義理堅いから守るであろうよ。どうしても心配なら、最初に尚殿だけ送って、顕殿は手元に残しておけばよかろう。後は1度に100万貫文要求するかだな、それだと互いに後腐れないだろうよ」
「そんな大金運ぶこともできまい、まあ言うだけ言ってみてもよいか?」
「畠山総州家」
畠山在氏:細川晴元軍 畠山総州家5代当主
畠山尚誠:細川晴元軍 在氏の長男 畠山総州家6代当主
家臣 :平左衛門大夫誠佐・遊佐越中守家盛
香西元成:讃岐国勝賀城主
「能登7人衆」
伊丹総堅・平総知・長続連・温井総貞・三宅総広・遊佐宗円・遊佐続光
5月摂津芥川山城主の三好長慶と松永長頼:第3者視点
もはや史実とは大きく食い違ってきていた。
御所周辺は、鷹司義信が再建した北面の武士団によって守られており、御所を灰燼(かいじん)に帰す覚悟がなければ、三好長慶もおいそれと入京できなかった。
三好長慶自信も、応仁の乱や相国寺の戦いのような悪名は、できる事なら避けたかったようだ。
それに当初は義信の影響で、足利義藤と細川晴元軍が強大であったため、三好家の伸長も小さかった。
だがこの世界では、三好長慶の舅である遊佐長教が暗殺されておらず、むしろ史実より畿内の基盤は安定しているほうであった。
そこに足利と細川が愚かにも武田と疎遠になり、足利義藤が戦死し、細川晴元が大敗北したのである。ここは一気に、細川晴元を攻め滅ぼす時と考えたようだ。
「長頼、ここはどうすべきか?」
「公方様(義維)と氏綱様を押し立てて近江に攻め込み、義秋と晴元を攻め滅ぼす好機でございます」
「具体的な手立てはどう考えておる」
「農閑期に四国勢と畿内勢を集結させ、山科を抜けて大津に入りましょう」
「御所の近衛軍はどうするのだ?」
「鷹司卿と晴元が敵対している今が、千載一遇の好機でございます。近衛軍は絶対御所を離れません。こちらが御所に近づかない限り、大丈夫でございます」
「雑兵共が乱暴狼藉をせねばよいのだがな」
「乱暴狼藉の恐れがある者どもは、宇治を越えて瀬田川沿いを上らせましょう」
「ならば全軍そちらを行軍させてはどうじゃ?」
「山科の一向衆が心配でございます。彼らに背後を襲われる恐れがあります。近江に入る前に、山科に集まってる一向衆は、殲滅しておかなければなりません」
「それは今の内に、あの者にやらせればいいのではないか」
「景虎殿の事でございますか?」
「そうだ、将軍家を弑逆した際に、一向衆も虐殺しておる。それ以来各地で、一向衆と戦い抜いておる。ここは足軽勢を率いるあの者に、今から山科を攻め落とさせよ」
「しかしあの軍勢は乱暴者揃い、それこそ御所の近衛軍の怒りを買いましょう」
「戦の折には、鬼神の如き働きをしておるではないか?」
「戦場ではよく戦いますが、その分平素の乱暴狼藉も激しゅうございます」
「ならば仕方あるまい。瀬田川を上らせ、六角勢の田仕事の邪魔をさせよ」
「承りました」
「それと六角を滅ぼし近江を取った後の問題じゃ、近江をとれば鷹司卿と国を接する事になる。長頼は鷹司卿をどう見る?」
「そうでございますね、卿は当初伯父である晴元の支援をしておりました。しかしながら御母上の三条夫人の影響か、徐々に将軍家や晴元よりも、帝や朝廷への支援に重きを置いておられたように思われます。しかしながら、それでも晴元への支援を続けておられました。晴元に嫁いでおられた伯母上が亡くなられ、幕府の役目を全て辞退された後も、晴元への支援を止めることはありませんでした。随分と義理堅く、道義を重んじる方とお見受けします」
「卿は我らをどう見ておられると思うか? 不義不忠の者として成敗されるおつもりか、それとも義維様を次代の将軍家と認めて下さるだろうか?」
「何とも申し上げかねますが、帝の御心次第ではないでしょうか?」
「帝の御心?」
「はい、椿姫様の入内の折も、菖蒲姫の御輿入れの折も、決して無理強いではなかったと御聞きしております。普光内親王殿下と薨御(こうぎょ)なされた永高内親王殿下の降家話も、当初は卿御自身の正室で進められたいたものを、帝の御心を慮って弟に譲ったとの噂でございます。御所の修理と新築は言うに及ばず、帝の譲位内意を受けて、密かに上皇の御所造営しておるとの噂もございます。帝が義維様を次代の将軍家と御認め下されば、けっして逆らわられることはないでしょう」
「確かにな、今川が伊那に攻めてきた折も、あれほど良い機会であったのに、帝の和睦に応じておられたな。しかし今回は、父の晴信を大将に、和睦を破って今川を攻めておる。時と場合に応じて、鷹司と武田の家名を使い分ける強か者とは言えまいか?」
「そうとも申せますが、それほどまで帝と朝廷に気遣いなされているとも申せます」
「そうであるな、なれば帝の生死を握っている限り、鷹司卿が京に攻め上る恐れはないな」
「殿!」
「左様な事はせぬよ、だが理不尽に滅ぼされる気もない。父上の様に、忠誠を尽した主君に裏切られるのは御免だ。いくら忠誠を尽くそうとも、将軍家も管領家も平気で裏切るものよ」
「殿・・・・・」
「だからこの切り札だけは、絶対に握っておかねばならぬ。鷹司卿が帝を何よりも大切に思われておられるのなら、帝が我らを滅ぼせと言えば、何の落ち度がなくとも攻め滅ぼされる恐れもある。だから六角を攻め滅ぼすより、帝だけは御動座できぬように抑えておけ」
「承りました」
「それと鷹司卿の官位官職だが、摂関将軍の前例もある。鷹司卿のまま征東大将軍か鎮守府大将軍に就任していただく条件で、義維様を征夷大将軍に任じていただけないか、朝廷と交渉してまいれ」
「承りました」
「三好家」
三好長慶:当主・長兄 摂津の芥川山城主
三好実休:次弟・阿波の実力者・阿波衆・阿波水軍
安宅冬康:三弟・淡路衆・淡路国の水軍
十河一存:四弟・讃岐衆・讃岐水軍
野口冬長:五弟・淡路志知・野口水軍・史実と違い戦死せず
三好慶興:三好家嫡男
「三好家家臣・味方」
松永久秀:摂津滝山城主
松永長頼:久永・弟
岩成友通:三好長慶の奉行人
三好長逸:三好一族重臣
内藤国貞:八木城主・丹波守護代
「細川京兆家」
細川氏綱:第18代細川京兆家当主・室町幕府第35代管領
5月信濃諏訪城:鷹司義信視点
「どうだ? どれくらい増産が可能だ?」
「若殿のお陰で材料に不足はございませんが、杜氏等の作り手に限界がございます。今年は20万石を超えるのは無理でございます。弟子を多くとり修行させておりますので、後1年御待ち下さい。来年には一気に30万石を超えて御覧に入れます」
「そうか、よくやってくれた。それと蕎麦と芋を使った焼酎だが、完成したのか?」
「今年のでき上がりしだいでございます」
「そうか、よくやってくれた。蕎麦と芋で焼酎を作ることが出できれば、それだけ麦も民に食わせてやれる」
「お褒めいただき恐悦至極でございますが、できが悪ければまだまだ年月がかかります」
「構わん、目途がついただけでも大手柄じゃ。それと手間であろうが、戦場の者たちのために、養生酒をはじめとする薬種と、消毒の為の強酒を多く造ってやってくれ」
「承りました」
美濃から這(ほ)う這(ほ)うの体(てい)で逃げ帰った細川晴元は、六角義賢の支援と残っている軍資金で、軍勢の再建を急いでいた。
だが京での実情を知った能登7人衆は、美濃の大敗直後に離反していまい、元々の配下と雑兵と伴って鷹司軍に投降していた。
晴元の下に残ってくれたのは、香西元成とその家臣団に、畠山在氏と尚誠の畠山総州家の家臣団だけだった。
一番痛かったのは、軍資金で整えていた鉄砲2000丁(肩付けの小筒か中筒)の大半を失ったことだ。
鷹司義信の鉄砲隊が、大戦果をあげているのを知った細川晴元は、近江国友村が鉄砲の産地であったので、集められるだけ集めていたのだ。
だが細川晴元は、2000丁もの鉄砲があるのに、何の戦果も上げることができなかった。将兵の忠誠心を得ていない大将では、士気を上げることもできず、勝てない手本のような戦いだった。
「管領殿、矢張り鷹司卿と和解してはどうだ?」
「しかしもう武田家との縁は切れてしまっておる。義賢殿には悪いが、前妻の三条が嫡男を産んでおれば、こうはならなかったのだがな」
「それを言っても始まるまい、管領殿は我妹を妻にしたのだからな」
「三条が死んだのだ、後添えを迎えるのは当然だ、義賢殿の妹を妻に迎えて氏綱を叩きのめしたかったのだ」
「で、どうするのだ?」
「和解などはむりだよ。そうだな、播磨の赤松晴政と義祐を頼るとするか。義祐に娘の尚を嫁がせればよかろう」
「それは無理であろう。先年尼子に、備前と美作の守護職を与えたではないか、守護職を奪われた晴政殿は、恨みを抱いておるぞ」
「ならば晴政に、備前と美作守護職を与えてやろう」
「将軍不在の御教書に、どれほどの価値があるのだ。それに正当性があるとも思われん。第一それでは、尼子を敵に回すではないか、そうなれば尼子の影響力が強い、若狭武田の去就が不安だぞ。それでは鷹司包囲網は瓦解するぞ」
「ではどうせよというのだ?」
「尚殿と顕殿は、三条夫人との娘であろう。彼女たちを使ってはどうだ?」
「娘を鷹司家の人質に使えというのか? それはいくらなんでも外聞が悪いだろう」
「今更何を言ってるのだ。三好元長と長慶の親子を、どれほど裏切ってきたのだ。それにあれほど支援してくれていた鷹司家を裏切ったのだぞ、信頼を裏切り忠誠心を失った、その結果が美濃での敗北ではないか」
「ふん、家臣が我に尽くすのは当たり前ではないか、下郎どもが不義不忠なだけだ。幕府を導き戦に勝つために、仕方がなかったことだ」
「だから今回は、尚殿と顕殿を使って鷹司家と和解せよと言っているのだ」
「具体的にどうせよと言うのだ?」
「2人を武田の一族に嫁がせればいい、そのうえで新たな同盟を結び、軍資金を支援して貰えばいいではないか」
「ふむ、だがそれでは武田に何の利もあるまい?」
「今の状況を見れば、遠江と駿河の守護職を与えればよかろう」
「今川を切る捨てるのか? それにその程度の褒美でいいのか?」
「今川はもう持たんよ。褒美が少ないか? そうだな、その程度では義信はともかく晴信が納得せんだろうな。だが尾張と三河の守護職は、一向衆との関係を考えれば与えられんしな。そうだ! 義信は最上を滅ぼしたのだな、では最上家が持っていた羽州探題をくれてやればよい。なんなら伊達家の陸奥守護と、大崎家の奥州探題もくれてやれ。義信の目が東国に向き、近江や京から離れればそれでよいではないか」
「だがさっき、将軍不在の御教書など無意味と言っていなかったか?」
「だから義信に、義秋殿の将軍就任を後押ししてもらうのだよ。義信が後押しすれば、帝も朝廷も認めるであろう。その後で将軍からの御内書も送ればよかろう」
「尚と顕を義信を送って軍資金が再開されるなら、何の問題もないが、送った後で約束を反故にしたりはせぬかな?」
「管領殿ならするだろうが、義信は義理堅いから守るであろうよ。どうしても心配なら、最初に尚殿だけ送って、顕殿は手元に残しておけばよかろう。後は1度に100万貫文要求するかだな、それだと互いに後腐れないだろうよ」
「そんな大金運ぶこともできまい、まあ言うだけ言ってみてもよいか?」
「畠山総州家」
畠山在氏:細川晴元軍 畠山総州家5代当主
畠山尚誠:細川晴元軍 在氏の長男 畠山総州家6代当主
家臣 :平左衛門大夫誠佐・遊佐越中守家盛
香西元成:讃岐国勝賀城主
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伊丹総堅・平総知・長続連・温井総貞・三宅総広・遊佐宗円・遊佐続光
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もはや史実とは大きく食い違ってきていた。
御所周辺は、鷹司義信が再建した北面の武士団によって守られており、御所を灰燼(かいじん)に帰す覚悟がなければ、三好長慶もおいそれと入京できなかった。
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それに当初は義信の影響で、足利義藤と細川晴元軍が強大であったため、三好家の伸長も小さかった。
だがこの世界では、三好長慶の舅である遊佐長教が暗殺されておらず、むしろ史実より畿内の基盤は安定しているほうであった。
そこに足利と細川が愚かにも武田と疎遠になり、足利義藤が戦死し、細川晴元が大敗北したのである。ここは一気に、細川晴元を攻め滅ぼす時と考えたようだ。
「長頼、ここはどうすべきか?」
「公方様(義維)と氏綱様を押し立てて近江に攻め込み、義秋と晴元を攻め滅ぼす好機でございます」
「具体的な手立てはどう考えておる」
「農閑期に四国勢と畿内勢を集結させ、山科を抜けて大津に入りましょう」
「御所の近衛軍はどうするのだ?」
「鷹司卿と晴元が敵対している今が、千載一遇の好機でございます。近衛軍は絶対御所を離れません。こちらが御所に近づかない限り、大丈夫でございます」
「雑兵共が乱暴狼藉をせねばよいのだがな」
「乱暴狼藉の恐れがある者どもは、宇治を越えて瀬田川沿いを上らせましょう」
「ならば全軍そちらを行軍させてはどうじゃ?」
「山科の一向衆が心配でございます。彼らに背後を襲われる恐れがあります。近江に入る前に、山科に集まってる一向衆は、殲滅しておかなければなりません」
「それは今の内に、あの者にやらせればいいのではないか」
「景虎殿の事でございますか?」
「そうだ、将軍家を弑逆した際に、一向衆も虐殺しておる。それ以来各地で、一向衆と戦い抜いておる。ここは足軽勢を率いるあの者に、今から山科を攻め落とさせよ」
「しかしあの軍勢は乱暴者揃い、それこそ御所の近衛軍の怒りを買いましょう」
「戦の折には、鬼神の如き働きをしておるではないか?」
「戦場ではよく戦いますが、その分平素の乱暴狼藉も激しゅうございます」
「ならば仕方あるまい。瀬田川を上らせ、六角勢の田仕事の邪魔をさせよ」
「承りました」
「それと六角を滅ぼし近江を取った後の問題じゃ、近江をとれば鷹司卿と国を接する事になる。長頼は鷹司卿をどう見る?」
「そうでございますね、卿は当初伯父である晴元の支援をしておりました。しかしながら御母上の三条夫人の影響か、徐々に将軍家や晴元よりも、帝や朝廷への支援に重きを置いておられたように思われます。しかしながら、それでも晴元への支援を続けておられました。晴元に嫁いでおられた伯母上が亡くなられ、幕府の役目を全て辞退された後も、晴元への支援を止めることはありませんでした。随分と義理堅く、道義を重んじる方とお見受けします」
「卿は我らをどう見ておられると思うか? 不義不忠の者として成敗されるおつもりか、それとも義維様を次代の将軍家と認めて下さるだろうか?」
「何とも申し上げかねますが、帝の御心次第ではないでしょうか?」
「帝の御心?」
「はい、椿姫様の入内の折も、菖蒲姫の御輿入れの折も、決して無理強いではなかったと御聞きしております。普光内親王殿下と薨御(こうぎょ)なされた永高内親王殿下の降家話も、当初は卿御自身の正室で進められたいたものを、帝の御心を慮って弟に譲ったとの噂でございます。御所の修理と新築は言うに及ばず、帝の譲位内意を受けて、密かに上皇の御所造営しておるとの噂もございます。帝が義維様を次代の将軍家と御認め下されば、けっして逆らわられることはないでしょう」
「確かにな、今川が伊那に攻めてきた折も、あれほど良い機会であったのに、帝の和睦に応じておられたな。しかし今回は、父の晴信を大将に、和睦を破って今川を攻めておる。時と場合に応じて、鷹司と武田の家名を使い分ける強か者とは言えまいか?」
「そうとも申せますが、それほどまで帝と朝廷に気遣いなされているとも申せます」
「そうであるな、なれば帝の生死を握っている限り、鷹司卿が京に攻め上る恐れはないな」
「殿!」
「左様な事はせぬよ、だが理不尽に滅ぼされる気もない。父上の様に、忠誠を尽した主君に裏切られるのは御免だ。いくら忠誠を尽くそうとも、将軍家も管領家も平気で裏切るものよ」
「殿・・・・・」
「だからこの切り札だけは、絶対に握っておかねばならぬ。鷹司卿が帝を何よりも大切に思われておられるのなら、帝が我らを滅ぼせと言えば、何の落ち度がなくとも攻め滅ぼされる恐れもある。だから六角を攻め滅ぼすより、帝だけは御動座できぬように抑えておけ」
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「承りました」
「三好家」
三好長慶:当主・長兄 摂津の芥川山城主
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安宅冬康:三弟・淡路衆・淡路国の水軍
十河一存:四弟・讃岐衆・讃岐水軍
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「三好家家臣・味方」
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三好長逸:三好一族重臣
内藤国貞:八木城主・丹波守護代
「細川京兆家」
細川氏綱:第18代細川京兆家当主・室町幕府第35代管領
5月信濃諏訪城:鷹司義信視点
「どうだ? どれくらい増産が可能だ?」
「若殿のお陰で材料に不足はございませんが、杜氏等の作り手に限界がございます。今年は20万石を超えるのは無理でございます。弟子を多くとり修行させておりますので、後1年御待ち下さい。来年には一気に30万石を超えて御覧に入れます」
「そうか、よくやってくれた。それと蕎麦と芋を使った焼酎だが、完成したのか?」
「今年のでき上がりしだいでございます」
「そうか、よくやってくれた。蕎麦と芋で焼酎を作ることが出できれば、それだけ麦も民に食わせてやれる」
「お褒めいただき恐悦至極でございますが、できが悪ければまだまだ年月がかかります」
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