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転生武田義信

克全

第92話群雄割拠・駿河・遠江・三河・尾張の国衆動向

4月信濃諏訪城:鷹司義信視点

「黒影、報告を聞こうか」

「は! 最初に御屋形様の戦況でございますが、大弩砲を使われ葛谷城を落とされたとの事でございます」

「うむ」

「しかしながら今川も潰走する事なく撤退に成功し、富士川左岸の高原城に籠り、富士川右岸の白鳥山城、尾崎城、北松野城と連携しつつ、御屋形様の進軍を阻止しております」

「あの辺りには、富士信忠が守る富士城(大宮城)があったよな?」

「はい、富士城は富士一族が籠っております」

「富士家は富士山本宮浅間大社の大宮司を継承する社家だったよな?」

「はい」

「御屋形様が手出しされなければいいのだがな、宗教戦争をこれ以上広げるのは分が悪すぎる」

「は、御屋形様も富士城には備えの兵だけを置き、高原城に主力を置かれております」

「そうか、それならば安心だな」

「ただ気掛りな事がございます」

「何だ申してみよ?」

「御屋形様に北条から同盟援軍の申し入れがあったのですが、御断りになったそうでございます」

「同盟援軍の条件は判るか?」

「駿河を富士川で分け盗ると言うものでございます。」

「御屋形様が断られた理由はなんだ?」

「山本官兵衛殿から伝言がございました。独力で今川を下せると判断された事と、佐竹と関東管領上杉に備えるため、北条が出せる援軍が少数で、損得を考えた上での事でありました」

「その判断は黒影が集めた情報を参考に下されたのだろう? 北条はどんな状態なのだ?」

「まずは今川の事から話させて頂いて宜しいですか?」

「構わん、話せ」

「当初今川は北条を味方に取り込むことと、敵に回った時の対応を同時に行いました。ですが伊那侵攻が不発に終わり、若殿が勝つと判断した北条が、新九郎殿の敵討ちもあり、若殿との同盟に動いたと判断したようでございます。結局佐竹と関東管領上杉に、対北条同盟を申し込みました」

「うむ、それは理解しておる」

「それにより北条は、国境で佐竹や関東管領上杉との小競り合いが頻発し、兵を動かせない状態でありました。ですが危急の状態になった今川が、今度は北条、佐竹、関東管領上杉に対武田同盟を申し込んだのでございます」

「それが上手くいかなかった?」

「関東武者と北条家は不倶戴天の敵同士、まして直前に今川家からの同盟申し入れで争ったばかりでございます。むしろ佐竹と関東管領上杉は、北条家への圧迫を強めております」

「その情報があるから御屋形様は、北条は大軍を駿河に入れられないと判断されたのだな」

「はい、味方に引き入れても、駿河半国の価値はないと判断されたものと思われます」

「しかしよくそれだけの情報が手に入るものだな、今は戦時で忍びが情報戦を展開しているだろう?」

「若殿の御蔭でございます。今若殿の下で暮らし働いている元難民は、全て周辺国の出身でございます。友人知人一族は、何処にでもおります。何かあれば伊那に逃げ込みたいと思っておりますから、進んで協力してくれます」

「黒影の事だから、相応の礼をしてくれているだろうが、今川や北条に睨まれるようなら、我が領内に逃がしてやってくれ」

「心得ております。次に先程御下問のあった、北条に事でございますが、若殿が二郎法師殿を側室に迎えた事を知り、姫を側室に送ろとしているようでございます」

「それは御屋形様が援軍を断る前か後か?」

「前も後もでございます。」

「武田の勝ちは揺るがぬと判断したのか? しかし北条がそこまで下手に出るとは裏があるのか?」

「北条は今川と同盟しても、若殿には勝てぬと判断したものと考えられます。さらに若殿と早く婚姻を結ばねば、佐竹、関東管領上杉、上総武田と同盟を結んだ若殿に、攻め滅ぼされると判断したものと考えられます。それ故に氏政殿の正室に、武田の姫をもらいたいと申し入れていると考えられます」

「随分と平身低頭の申し入れをしてきているな、自分娘は俺の側室で、御屋形様の娘を氏政殿の正室か。韓信の股くぐりなら油断ならんな」

「は! その恐れはあると思われます」

「御屋形様が、その申し入れを御受けになられるかどうかだな。その事は聞いておらぬのか?」

「御受けになる心算と聞き及んでおります」

「俺の身が持つのかね? まあ実質人質だから仕方ないな、それで今川の状況はどうだ?」

「義元は、駿河と遠江国衆の引き締めと慰撫に、躍起に成っております。今味方している国衆に、裏切った国衆の所領を全て与えると約束して、反攻の準備を進めております」

「今年の実りを計算しておらぬのか?」

「今まで若殿のお陰で、莫大な関料を手にしておりますし、鉱山収入も備蓄しております。田畑は女子供中心に耕しておりますが、最前線の城砦でも鎧兜と武具を畦道に置き、何時でも出陣できる状態で田仕事している兵も多うございます」

「死力を尽くしているのだな」

「はい、では次に遠江の状況を説明させて頂きます」

「うむ」

「天竜川の合戦の後に、天方城主の天方山城守通興以外の、天野一族が降伏臣従してまいりました。また富部城主の久貝正勝が、臣従を誓っております。全員楠浦虎常殿の指揮下で、光明城の朝比奈太郎泰方を包囲しております」

「光明城に援軍に来るとしたら、掛川城主の朝比奈泰能と、天方城主の天方通興であろうか?」

「信智様が率いられる軍が天竜川を越えた為、朝比奈泰能、天方通興ともに城を出る事ができません」

「信智叔父上はどうされておられる?」

「飛影様と昌景様が、信智様を盛り立てておられます。臣従した遠江国衆を先陣に使い、城主の匂坂長能が三河岡崎城在番で不在の、匂坂城を囲みました。その上で長能の助命と本領扶持化安堵で、匂坂城を開城させられました。さらに向笠城に向かわれたところ、城主の向笠資易は進んで降伏臣従し参りました。最終的には加賀爪館の加賀爪政豊、久野城主の久野宗忠が降伏臣従しております。今は楠浦虎常殿と連動すべく、飯田城主の山内通泰を囲むと言うのが最後の連絡でございます」

「信智叔父上は、順調に遠江攻略を成されておられるのだな。問題は三河の情勢か?」

「はい、三河と尾張は、織田信長が形振り構わぬ動きを見せております。三河一向宗を蜂起させて、三河を混乱させております。鷹司、今川、織田の名を借りた国衆が、夫々隣地の国衆と群雄割拠の様相でございます」

「滝川一益では抑えきれないのか?」

「一益殿の問題と言うよりは、信長の知略を褒めるべきかと考えます」

「どう言う事だい?」

「一益殿が指揮するのは、騎馬鉄砲隊4000騎でございますが、尾張、美濃、伊勢の一向宗が、遮二無二三河に乱入いたしました。その折に若殿が以前使われた大竹盾を使い、一益殿の鉄砲一斉射撃に対抗してまいりました」

「足軽を持たない一益は、盾隊や槍衾で戦線を維持する事ができなかったのだな? 降伏したばかりの三河の城に籠れば、裏切られる恐れがあり、機動攻撃で一向宗を漸減するにも盾で防がれた。つまりは俺が、兵種兵数の配置を誤ったと言う事だ」

「・・・・・・・・・」

「気を使うな、真実は変えようがない。至急一益に連絡を取り、遠江の狗賓善狼の僧兵8000と共同して、三河は気にせず遠江国境を守る様に伝えよ」

「承りました」

「それと美濃の相良友和に連絡して、潰走降伏して来た細川晴元軍1万兵を至急再編して、三河に乱入した一向宗の背後を襲うように伝えよ」

「承りました」

「それと信長は、大竹盾以外に俺の真似はしていないか?」

「それが不確かな噂話しか入っておりません」

「噂でも構わん、何を真似しておる?」

「大弩砲と十文字大竹矢、弩を作らせているという噂でございます」

「美濃の我が城砦にはまだ使っていないのだな?」

「はい、それどころか室原城、塩河城、今城の包囲を解き、持てる勢力全てを三河に乱入させているようでございます」

「美濃の我が軍が、尾張に攻め込む事が無いと読んでいるのだな」

「恐らくは、左様に考えていると思われます」

「また読み損ねてしまったな、御屋形様はその事を御存じなのか?」

「至急の伝書鳩を送りましたが、それに対応する御指示は帰って来ておりません」

「そうすると、北条への対応が変わる事もあり得るな」

「私には分かりかねます」

「ああすまん、返答のできない事を聞いてしまったな。そうだな、今分かる範囲の、駿河、遠江、三河、尾張の国衆の動静を書き表してくれ。特に松平一門が、鷹司、今川、織田の何所についているのかを書き表してくれ」

「承りました」

「駿河・今川家臣」
庵原城主:朝比奈元長
:朝比奈信置 飯尾乗連の娘婿・松井宗信、飯尾連龍は義兄弟
北松野城:萩清誉
庵原城主:庵原之政 庵原忠縁 庵原忠春 庵原忠良
富士浅間神社大宮司家:大宮城主:富士信忠
安倍七騎:駿河在地の武士
蒲原城:蒲原氏徳
由比城:由比正信
今橋城:伊東元実
久能城主:久能元宗・久能元経・久能氏忠・久能宗政・久能宗能
曳馬城主で家老:三好為連
丸子城:岡部信綱
清水城:岡部正綱
駿河一色城:長谷川正長
駿河横山城:興津清房 水軍
伊丹康直:海賊奉行
岡部貞綱:水軍の将
葛山城:葛山氏元
安部信貞 安倍元真 安倍元真
一宮宗是
江尻親良
蒲原徳兼
川井与四郎
中川通秀
堀越城:瀬名氏俊・瀬名氏明
持舟(用宗)城:関口氏広・関口氏経
花沢城:三浦右衛門佐義鎮

「遠江・今川残留国衆」
掛川(懸川)城:朝比奈泰能と朝比奈泰朝
新野城:新野親矩
光明城:朝比奈太郎泰方
二俣城:松井宗信
頭陀寺城:松下之綱
飯田城:山内通泰
高天神城:小笠原長忠
外郭城砦群(獅子ヶ鼻砦・三井山砦・小笠山砦・中村城山砦・能ヶ坂砦・火ヶ峰砦)
馬伏塚城:小笠原長忠
岡崎城:四ノ宮右近
天方城:天方山城守通興

「遠江・武田臣従国衆」
堀越城:堀越貞基
曳馬城:飯尾連竜・飯尾賢連・飯尾乗連 元・西条吉良家臣
浜名城:浜名重政
日比沢城:後藤真泰
堀江城:大沢基相 大沢基胤
坂左右城:都築秀綱・500貫の所領

井伊谷城:井伊直親
「井伊谷三人衆」
近藤康用 知行221貫文
菅沼忠久
鈴木重時

「遠江・武田軍に囲まれ降伏臣従した国衆」
犬居城:天野氏宗家の天野景泰と元景の親子
篠ヶ嶺城:天野宮内右衛門藤秀
富部城:久貝正勝
匂坂城:匂坂六郎五郎長能
向笠城:向笠資易
久野城:久野宗忠
加賀爪館:加賀爪政豊

「三河・今川残留国衆」
岡崎城代:山田景隆・飯尾乗連・二俣持長・三浦義保、糟谷備前
岡崎城在番:匂坂六郎五郎長能
今川家三河奉行人:二俣持長・飯尾乗連 山田景隆
上郷城:鵜殿長持と鵜殿長照の親子
八面城:荒川義広(吉良義広)
浅井政敏
田原城:朝比奈元智
吉田城:尾張大高城代・朝比奈輝勝
吉田城:伊東元実・小原鎮実
安祥城:天野景泰
羽城城:長田重元
山吉田白倉山城:鈴木重勝
西郷正勝:三河国内で三千貫

「親今川派 松平一門」
東条松平家:松平忠茂
東条城:東条・津平
津平城:松平忠次:東条松平家陣代・幡豆郡津平城主
平岩元重:東条松平家臣・松平忠茂・家忠の家老。
大給松平家:松平親乗
松平維信
松平親将
長沢松平家:松平政忠
長沢松平家:松平忠良
滝脇松平家:松平宗次
能見松平家:松平重吉
能見松平家:松平重利
高力正重
松平家広
松平親重
宝飯郡竹谷城主:竹谷松平家・松平清善と松平清宗の親子
真弓山城:足助重直(鈴木重直)
寺部城:鈴木重辰・鈴木重教
青山忠門

「尾張・今川残留国衆」
大高城:朝比奈輝勝
沓掛城:近藤景春
戸部城:戸部政直
鳴海城:山口教継と教吉の親子
笠寺城:三浦義就
岩崎城:丹羽氏職と丹羽氏勝の親子
:丹羽茂昌・岩崎丹羽家家老・1551年代に鉄砲隊30人を率いる

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