転生武田義信
第43話武田義信誕生・長尾景虎(上杉謙信)守護代就任
9月22日深夜南熊井城外:神田将監視点
「うぉ~ん、うぉ~ん、うぉ~ん」
矢張り番犬の対応が早い、これでは火矢が郭に届かない。だが味方の士気を維持するには、馬防柵だけでも焼かねばならん!
「突撃!」
「止まれ!」
「射よ!」
大型の弩が飛んできた!
番犬の鳴き声を聞いてすぐに、大型弩砲(バリスタ)で反撃してきやがった!
他の城に再度攻撃をかけるしかない!
「撤退! 北熊井城に行くぞ!」
武田も夜襲慣れして、弓矢の射程外に番犬を配し、馬防柵も設置している。騎馬隊が移動しやすい道には、嫌らしい落とし穴を多数掘ってやがる。
俺たちが襲い難い、武田勢力圏奥深くのこの城にも、油断する事なく、大型弩砲を配備している。これほど素早く対応されては、城内の長屋1つ焼くのも命懸だ!
長屋1つのために騎馬1騎を失っては、とてもではないが割に合わない。練達の騎馬を産み育てるには、年齢と同じだけの歳月が必要だ。例え他の騎馬武者や徒武者を抜擢訓練しても、今度はその穴を足軽で埋めなければならなくなる。そうなると、どんどん将兵の質が落ちてしまう。
すでに6人の騎士と31頭の軍馬を失ってしまった。忌々しい番犬と大型弩砲のせいだ!
特に幅広十字鏃は馬の天敵だ!
脚が深く傷ついてしまった馬は、苦しまないように殺してやるしかない。
合戦の喧騒と殺し合いを怖がらない馬は、黄金よりも貴重だ。その上で敵と切り結ぶ時に有利な、輪乗りを覚えさせるのがどれほど難しいか!
源平合戦の頃は、関東武者が輪乗りできるのに比べ、西国武者ができなかった。それが源氏の勝利に結び付いたと伝え聞いている。輪乗りで人馬息を合わせて戦うことは、それくらい難しいのだ。
まして馬に後ずさりさせて、騎射しながら戦い、攻め寄せてきた敵と切り結ぶ事を覚えさすのは、至難の業なのだ。
馬は臆病な動物で、見えない後ろには下がりたくないのだ。本能では、馬首を返して逃げたいのだ。それを敵と切り結んでいる状態で、後ずさりする事を覚えさせなければならないのだ!
本拠の林城を始め、多数の城砦と領地を失った我が小笠原には、騎馬隊の再編強化など無理だ。それどころか、300騎を維持することにさえ四苦八苦している。だから不毛とも見える夜襲を、連日続けるしかない。
なぜなら戦国時代の年貢には、境目の慣例があるからだ。本来年貢は6公4民や7公3民が多いが、それは完全に支配下に置いた地域だけだ。合戦真っ盛りの境目の地区には、独特の作法があるのだ。
それは年貢の折半制度で、敵味方双方が6公4民の年貢など徴収したら、境目の百姓は死に絶えてしまう。いや、百姓はそれほど弱くない、村ごと他国に逃散してしまう。だからこそ折半なのだが、善信の偽善者が!
武田との密かな交渉で、奴らは6公4民の折半を提案して来た。つまり小笠原・武田で3公ずつの年貢だ。今の小笠原の現状では、その条件を飲むしかなかった。
だからこそ我らは危険を覚悟で、南熊井城を攻めている。この領域も合戦中の境目だと交渉するためにだ。なのに善信の偽善者は、境目の年貢免除を発布しやがった!
我ら小笠原には、免除する余裕がないのを見越してだ!
これで信濃の民の心は、完全に武田に傾いてしまう。銭に余裕がある善信の、嫌らしい策だが、分かっていても対応できない。民の心が離れていくのを知りながら、少しでも年貢を増やすために、危険を冒して合戦地域を武田勢力圏に広げるしかない。信玄相手ならもう少し楽に戦えたものを!
9月22日深夜北熊井城外:神田将監視点
「うぉ~ん、うぉ~ん、うぉ~ん」
北熊井城も、馬防柵を焼くくらいしかできぬか・・・・・
だからと言って、元々小笠原の領民だった村々を、略奪することはできない。そんなことをすれば、雪崩を打つように国衆が離反するだろう。半農半武の地侍に背かれては、国衆の首が危うい。
地侍が武田方について一揆を起こす事は、小笠原方国衆の悪夢以外の何物でもない。善信の配下になれば豊かになれると、すでに近隣諸国では評判だ。何時まで国衆や民は、小笠原に忠誠を示してくれるだろう・・・・
いっそ甲斐に行って略奪するか?
村上勢に見せかけて佐久から甲斐に乱入すれば!
「突撃!」
「止まれ!」
「射よ!」
だが今はここで全力を尽す!
犬甘城外:武田善信視点
稲の取入れが終わった。大盤振る舞いで、境目の年貢免除もやった。1度でも小笠原騎馬隊の侵攻があった地域すべてに、年貢の免除をおこなった。軍資金と兵糧に余裕のある俺にしかできない、いやらしい人心掌握策だ。これでさらに小笠原を追い詰めることができるだろう。
その上で、初雪を待って犬甘城を包囲した。今からではとてもではないが、城を落とすことはできない。そんな事は百も承知している。
だが5000の将兵が守る犬甘城を我攻めすれば、武田軍は大損害を受けるだろう。嶽影の城砦攻略部隊を投入すれば、大損害を出して撃退されたうえ、影衆の信頼と忠誠を失い、俺はただの戦国大名に成り下がってしまうだろう。そこまで俺は愚かではないので、今回の包囲はただの囮だ!
俺が全軍で犬甘城を囲んでいると、近隣諸国に噂が広まればいい。そうすれば飛騨の三木直頼と江馬時盛も、油断してくれるだろう。油断しなければ、油断するまで待てばいい。俺にはそれだけの余裕があるのだから。
飛影指揮下の特別足軽3000兵は、密かに木曽妻籠城から出陣した。飛騨勢に発見されないように、険(けわ)しい獣道を歩いて進軍する。事前に多数の物見を送り、道案内できる人材を確保しておいた上でだ。
もちろん山中泊ができる様に、山の民を動員して秘密の里も新設した。と言うか木曽を手に入れた時点で、山の民が狩猟採集のために飛騨方面に入り込んでいた。すでに猟師小屋や木地師の小屋はあったのだ。それを3000兵規模に拡大増強したのだ。
特別足軽3000兵は、夜明けと共に出陣し、山中で一泊して、さらに進軍する。彼らは日暮れ前までに、御前山の山麓に到着していた。物見を出し警戒しつつ仮眠を取り、夜が更けてから静かに山を下りて桜洞城を包囲した。城砦攻略部隊に城壁を越えさせ、城門を開けさせる。そして一気に城を落とした。逆臣・三木直頼と、その一族を皆殺しにした。
翌朝、宮地城・大威徳寺城・為坪城・楢尾山城・桜谷城・中根城・今井城・松倉城・伊波那谷城に、松尾信是改め姉小路信綱の名で降伏の使者を送った。三木直頼に付いていた者たちも、武田より姉小路に降る方がまだ体裁がいい。武士としての対面も保たれるし、忠義の心がある武士にとっても、心理的罪悪感が著しく軽くなる。
降伏の使者が携える書状には、添えの署名と花押を押させた。前姉小路当主で、現飛騨田向家当主・従三位参議の田向重継と俺だ。実質武田の支配下に入る事を意味しながら、朝廷と国司の体裁が整えられている。実に降伏しやすくなっていると思う。
全ては影衆に鮎川善繁を加えた極秘メンバーで、練りに練った作戦だ。
躑躅城義信郭の善信私室:善信視点
桜洞城攻略の知らせを受けた俺は、犬甘城の包囲を解いた。急いで扶持武士団500兵を桜洞城守備兵に送り、特別足軽兵団3000兵を花岡城に戻した。危険な桜洞城の守備を、特別足軽兵団にさせるわけにはいかない。彼らへの褒美は、一律騎士への昇格にした。善信騎馬隊の誕生だ!
全将兵に軍馬を与えることはできないが、騎乗資格だけは与えた。後は独自で軍馬を購入してもらうか、今は訓練と農耕に使用している、俺個人の所有馬を貸し与えるかで対応する。
足利義藤将軍は、俺の桜洞城攻略を知って、素早く対応して来た。もしかしたら細川晴元伯父上が、俺を後押ししてくれたのかもしれないし、日々の足利義藤将軍への付け届けの効果かもしれない。俺に飛騨守護職と諱を与えると言ってきた、これで飛騨守護・武田義信の誕生だ!
さらに朝廷に対しても、足利幕府の権威を主張したかったのだろう。飛騨国司の姉小路信綱叔父さんを、飛騨守護代に任命してきた。飛騨国司が飛騨守護より格下と、天下に示したかったのだろう。まるでお子ちゃまだ!
これで武田一門の官職は以下の様になった。
姉小路信綱:飛騨国司・従六位下
:足利幕府・飛騨守護代
三条実信 :従五位下・侍従に任官
三条三郎 :
武田信玄:従四位下・大膳大夫兼甲斐守
:足利幕府の礼式奉行・国持衆・甲斐守護
武田義信:従五位下・大膳亮
:足利幕府の准国持衆・飛騨守護・善信から義信に改名
田向重継:従三位参議・飛騨田向家当主
今気づいたけど、これって家内融和に悪くないかな?
信繁・信廉・信顕・信龍・宗智の叔父さんたちは、何か官職をもらっていたっけ?
駿河で信虎爺ちゃんと一緒にいる信顕叔父さんや、姉小路信綱の弟・信龍・宗智叔父さんはまだいい。だが兄である信繁・信廉叔父さんが、姉小路信綱叔父さんを嫉妬しないだろうか?
信玄と相談しよう!
信玄と相談の上で、信繁叔父さんには正六位下・左馬助を、信廉叔父さんには従六位上・大膳大進をもらえるように、朝廷工作することにした。実に面倒だが、この辺を手抜きすると、武田が不利になった時に、手痛いしっぺ返しを喰らうことになる。当主就任を約束して、子弟に裏切り工作するのは、戦国時代の常套手段(じょうとうしゅだん)、叔父さんたちへ目配り手配りするのは当然なのだ。
1月4日躑躅城義信郭の義信私室:義信視点
ついに長尾景虎(上杉謙信)が、越後守護代に就任した。昨年末の12月30日に、守護である上杉定実の調停で、兄の晴景養嗣子と体裁を整えた上で、晴景が隠退し景虎が三条(府内)長尾家の当主となった。
長尾景虎が春日山城に入り、弱冠19歳で守護代となってしまった!
これで武田信玄の最大の障壁が誕生してしまったが、俺はどうするべきか?
川中島と桶狭間のどちらを歴史転換点にすべきか?
今直ぐ決めるべきことではないが、常に四方に気を配り、敵味方の国力差・戦力差を正確に把握しなければならない。「彼を知り己を知れば百戦殆うからず」は守らなければならない。
新しく俺の下に来た焼酎杜氏や難民を、生産力・戦力化した。境目の年貢を免除した結果が以下だ。
『義信直轄力』
甲斐水田:1100町(1万1000反)
甲斐畑 :700町(7000反)
信濃水田:1900町(1万9000反)
信濃畑 :2400町(2万4000反)
取れ高
玄米:3万0000石
雑穀:6万2000石
備蓄兵糧
玄米:25万石
麦 :60万石
焼酎生産力
杜氏20人
杜氏1人当たり3石甕1000個前後
20×3×1000=6万石
6万石×(1合卸値45文)=270万貫文
鉄砲 :1728丁
三間槍 :4000本
三間薙刀:3000本
弓 :5000張
大型弩砲: 200基
打刀 :8000振
太刀 :3000振
足軽具足:1万3000具
足軽弓隊 :1200兵
足軽槍隊 :2500兵
扶持武士団:4900兵
騎馬隊 :3000兵
工夫兵 :4000兵
繁殖牝馬:1423頭
訓練育成中の軍馬
0歳馬:1406頭
1歳馬: 877頭
2歳馬: 467頭
3歳馬: 188頭
繁殖牝牛:824頭
育成中の牛
0歳牛:803頭
1歳牛:510頭
2歳牛:198頭
3歳牛:101頭
合戦・牛馬・武具・米麦・恩賞・裏工作費用など歳出
90万貫文
『軍資金』
使用不能な武田貨幣
金銀銅貨合計:2000万貫文(10文黄銅貨が特に使えない・半分は信玄保有)
使用可能な精銭・永楽銭
170万貫文
「うぉ~ん、うぉ~ん、うぉ~ん」
矢張り番犬の対応が早い、これでは火矢が郭に届かない。だが味方の士気を維持するには、馬防柵だけでも焼かねばならん!
「突撃!」
「止まれ!」
「射よ!」
大型の弩が飛んできた!
番犬の鳴き声を聞いてすぐに、大型弩砲(バリスタ)で反撃してきやがった!
他の城に再度攻撃をかけるしかない!
「撤退! 北熊井城に行くぞ!」
武田も夜襲慣れして、弓矢の射程外に番犬を配し、馬防柵も設置している。騎馬隊が移動しやすい道には、嫌らしい落とし穴を多数掘ってやがる。
俺たちが襲い難い、武田勢力圏奥深くのこの城にも、油断する事なく、大型弩砲を配備している。これほど素早く対応されては、城内の長屋1つ焼くのも命懸だ!
長屋1つのために騎馬1騎を失っては、とてもではないが割に合わない。練達の騎馬を産み育てるには、年齢と同じだけの歳月が必要だ。例え他の騎馬武者や徒武者を抜擢訓練しても、今度はその穴を足軽で埋めなければならなくなる。そうなると、どんどん将兵の質が落ちてしまう。
すでに6人の騎士と31頭の軍馬を失ってしまった。忌々しい番犬と大型弩砲のせいだ!
特に幅広十字鏃は馬の天敵だ!
脚が深く傷ついてしまった馬は、苦しまないように殺してやるしかない。
合戦の喧騒と殺し合いを怖がらない馬は、黄金よりも貴重だ。その上で敵と切り結ぶ時に有利な、輪乗りを覚えさせるのがどれほど難しいか!
源平合戦の頃は、関東武者が輪乗りできるのに比べ、西国武者ができなかった。それが源氏の勝利に結び付いたと伝え聞いている。輪乗りで人馬息を合わせて戦うことは、それくらい難しいのだ。
まして馬に後ずさりさせて、騎射しながら戦い、攻め寄せてきた敵と切り結ぶ事を覚えさすのは、至難の業なのだ。
馬は臆病な動物で、見えない後ろには下がりたくないのだ。本能では、馬首を返して逃げたいのだ。それを敵と切り結んでいる状態で、後ずさりする事を覚えさせなければならないのだ!
本拠の林城を始め、多数の城砦と領地を失った我が小笠原には、騎馬隊の再編強化など無理だ。それどころか、300騎を維持することにさえ四苦八苦している。だから不毛とも見える夜襲を、連日続けるしかない。
なぜなら戦国時代の年貢には、境目の慣例があるからだ。本来年貢は6公4民や7公3民が多いが、それは完全に支配下に置いた地域だけだ。合戦真っ盛りの境目の地区には、独特の作法があるのだ。
それは年貢の折半制度で、敵味方双方が6公4民の年貢など徴収したら、境目の百姓は死に絶えてしまう。いや、百姓はそれほど弱くない、村ごと他国に逃散してしまう。だからこそ折半なのだが、善信の偽善者が!
武田との密かな交渉で、奴らは6公4民の折半を提案して来た。つまり小笠原・武田で3公ずつの年貢だ。今の小笠原の現状では、その条件を飲むしかなかった。
だからこそ我らは危険を覚悟で、南熊井城を攻めている。この領域も合戦中の境目だと交渉するためにだ。なのに善信の偽善者は、境目の年貢免除を発布しやがった!
我ら小笠原には、免除する余裕がないのを見越してだ!
これで信濃の民の心は、完全に武田に傾いてしまう。銭に余裕がある善信の、嫌らしい策だが、分かっていても対応できない。民の心が離れていくのを知りながら、少しでも年貢を増やすために、危険を冒して合戦地域を武田勢力圏に広げるしかない。信玄相手ならもう少し楽に戦えたものを!
9月22日深夜北熊井城外:神田将監視点
「うぉ~ん、うぉ~ん、うぉ~ん」
北熊井城も、馬防柵を焼くくらいしかできぬか・・・・・
だからと言って、元々小笠原の領民だった村々を、略奪することはできない。そんなことをすれば、雪崩を打つように国衆が離反するだろう。半農半武の地侍に背かれては、国衆の首が危うい。
地侍が武田方について一揆を起こす事は、小笠原方国衆の悪夢以外の何物でもない。善信の配下になれば豊かになれると、すでに近隣諸国では評判だ。何時まで国衆や民は、小笠原に忠誠を示してくれるだろう・・・・
いっそ甲斐に行って略奪するか?
村上勢に見せかけて佐久から甲斐に乱入すれば!
「突撃!」
「止まれ!」
「射よ!」
だが今はここで全力を尽す!
犬甘城外:武田善信視点
稲の取入れが終わった。大盤振る舞いで、境目の年貢免除もやった。1度でも小笠原騎馬隊の侵攻があった地域すべてに、年貢の免除をおこなった。軍資金と兵糧に余裕のある俺にしかできない、いやらしい人心掌握策だ。これでさらに小笠原を追い詰めることができるだろう。
その上で、初雪を待って犬甘城を包囲した。今からではとてもではないが、城を落とすことはできない。そんな事は百も承知している。
だが5000の将兵が守る犬甘城を我攻めすれば、武田軍は大損害を受けるだろう。嶽影の城砦攻略部隊を投入すれば、大損害を出して撃退されたうえ、影衆の信頼と忠誠を失い、俺はただの戦国大名に成り下がってしまうだろう。そこまで俺は愚かではないので、今回の包囲はただの囮だ!
俺が全軍で犬甘城を囲んでいると、近隣諸国に噂が広まればいい。そうすれば飛騨の三木直頼と江馬時盛も、油断してくれるだろう。油断しなければ、油断するまで待てばいい。俺にはそれだけの余裕があるのだから。
飛影指揮下の特別足軽3000兵は、密かに木曽妻籠城から出陣した。飛騨勢に発見されないように、険(けわ)しい獣道を歩いて進軍する。事前に多数の物見を送り、道案内できる人材を確保しておいた上でだ。
もちろん山中泊ができる様に、山の民を動員して秘密の里も新設した。と言うか木曽を手に入れた時点で、山の民が狩猟採集のために飛騨方面に入り込んでいた。すでに猟師小屋や木地師の小屋はあったのだ。それを3000兵規模に拡大増強したのだ。
特別足軽3000兵は、夜明けと共に出陣し、山中で一泊して、さらに進軍する。彼らは日暮れ前までに、御前山の山麓に到着していた。物見を出し警戒しつつ仮眠を取り、夜が更けてから静かに山を下りて桜洞城を包囲した。城砦攻略部隊に城壁を越えさせ、城門を開けさせる。そして一気に城を落とした。逆臣・三木直頼と、その一族を皆殺しにした。
翌朝、宮地城・大威徳寺城・為坪城・楢尾山城・桜谷城・中根城・今井城・松倉城・伊波那谷城に、松尾信是改め姉小路信綱の名で降伏の使者を送った。三木直頼に付いていた者たちも、武田より姉小路に降る方がまだ体裁がいい。武士としての対面も保たれるし、忠義の心がある武士にとっても、心理的罪悪感が著しく軽くなる。
降伏の使者が携える書状には、添えの署名と花押を押させた。前姉小路当主で、現飛騨田向家当主・従三位参議の田向重継と俺だ。実質武田の支配下に入る事を意味しながら、朝廷と国司の体裁が整えられている。実に降伏しやすくなっていると思う。
全ては影衆に鮎川善繁を加えた極秘メンバーで、練りに練った作戦だ。
躑躅城義信郭の善信私室:善信視点
桜洞城攻略の知らせを受けた俺は、犬甘城の包囲を解いた。急いで扶持武士団500兵を桜洞城守備兵に送り、特別足軽兵団3000兵を花岡城に戻した。危険な桜洞城の守備を、特別足軽兵団にさせるわけにはいかない。彼らへの褒美は、一律騎士への昇格にした。善信騎馬隊の誕生だ!
全将兵に軍馬を与えることはできないが、騎乗資格だけは与えた。後は独自で軍馬を購入してもらうか、今は訓練と農耕に使用している、俺個人の所有馬を貸し与えるかで対応する。
足利義藤将軍は、俺の桜洞城攻略を知って、素早く対応して来た。もしかしたら細川晴元伯父上が、俺を後押ししてくれたのかもしれないし、日々の足利義藤将軍への付け届けの効果かもしれない。俺に飛騨守護職と諱を与えると言ってきた、これで飛騨守護・武田義信の誕生だ!
さらに朝廷に対しても、足利幕府の権威を主張したかったのだろう。飛騨国司の姉小路信綱叔父さんを、飛騨守護代に任命してきた。飛騨国司が飛騨守護より格下と、天下に示したかったのだろう。まるでお子ちゃまだ!
これで武田一門の官職は以下の様になった。
姉小路信綱:飛騨国司・従六位下
:足利幕府・飛騨守護代
三条実信 :従五位下・侍従に任官
三条三郎 :
武田信玄:従四位下・大膳大夫兼甲斐守
:足利幕府の礼式奉行・国持衆・甲斐守護
武田義信:従五位下・大膳亮
:足利幕府の准国持衆・飛騨守護・善信から義信に改名
田向重継:従三位参議・飛騨田向家当主
今気づいたけど、これって家内融和に悪くないかな?
信繁・信廉・信顕・信龍・宗智の叔父さんたちは、何か官職をもらっていたっけ?
駿河で信虎爺ちゃんと一緒にいる信顕叔父さんや、姉小路信綱の弟・信龍・宗智叔父さんはまだいい。だが兄である信繁・信廉叔父さんが、姉小路信綱叔父さんを嫉妬しないだろうか?
信玄と相談しよう!
信玄と相談の上で、信繁叔父さんには正六位下・左馬助を、信廉叔父さんには従六位上・大膳大進をもらえるように、朝廷工作することにした。実に面倒だが、この辺を手抜きすると、武田が不利になった時に、手痛いしっぺ返しを喰らうことになる。当主就任を約束して、子弟に裏切り工作するのは、戦国時代の常套手段(じょうとうしゅだん)、叔父さんたちへ目配り手配りするのは当然なのだ。
1月4日躑躅城義信郭の義信私室:義信視点
ついに長尾景虎(上杉謙信)が、越後守護代に就任した。昨年末の12月30日に、守護である上杉定実の調停で、兄の晴景養嗣子と体裁を整えた上で、晴景が隠退し景虎が三条(府内)長尾家の当主となった。
長尾景虎が春日山城に入り、弱冠19歳で守護代となってしまった!
これで武田信玄の最大の障壁が誕生してしまったが、俺はどうするべきか?
川中島と桶狭間のどちらを歴史転換点にすべきか?
今直ぐ決めるべきことではないが、常に四方に気を配り、敵味方の国力差・戦力差を正確に把握しなければならない。「彼を知り己を知れば百戦殆うからず」は守らなければならない。
新しく俺の下に来た焼酎杜氏や難民を、生産力・戦力化した。境目の年貢を免除した結果が以下だ。
『義信直轄力』
甲斐水田:1100町(1万1000反)
甲斐畑 :700町(7000反)
信濃水田:1900町(1万9000反)
信濃畑 :2400町(2万4000反)
取れ高
玄米:3万0000石
雑穀:6万2000石
備蓄兵糧
玄米:25万石
麦 :60万石
焼酎生産力
杜氏20人
杜氏1人当たり3石甕1000個前後
20×3×1000=6万石
6万石×(1合卸値45文)=270万貫文
鉄砲 :1728丁
三間槍 :4000本
三間薙刀:3000本
弓 :5000張
大型弩砲: 200基
打刀 :8000振
太刀 :3000振
足軽具足:1万3000具
足軽弓隊 :1200兵
足軽槍隊 :2500兵
扶持武士団:4900兵
騎馬隊 :3000兵
工夫兵 :4000兵
繁殖牝馬:1423頭
訓練育成中の軍馬
0歳馬:1406頭
1歳馬: 877頭
2歳馬: 467頭
3歳馬: 188頭
繁殖牝牛:824頭
育成中の牛
0歳牛:803頭
1歳牛:510頭
2歳牛:198頭
3歳牛:101頭
合戦・牛馬・武具・米麦・恩賞・裏工作費用など歳出
90万貫文
『軍資金』
使用不能な武田貨幣
金銀銅貨合計:2000万貫文(10文黄銅貨が特に使えない・半分は信玄保有)
使用可能な精銭・永楽銭
170万貫文
「転生武田義信」を読んでいる人はこの作品も読んでいます
-
-
2.1万
-
7万
-
-
6,644
-
2.9万
-
-
170
-
59
-
-
64
-
22
-
-
1.2万
-
4.8万
-
-
5,169
-
2.6万
-
-
5,030
-
1万
-
-
9,690
-
1.6万
-
-
8,169
-
5.5万
-
-
2,491
-
6,724
-
-
3,146
-
3,386
-
-
610
-
221
-
-
1.3万
-
2.2万
-
-
3,539
-
5,228
-
-
9,385
-
2.4万
-
-
6,176
-
2.6万
-
-
152
-
244
-
-
1,292
-
1,425
-
-
2,858
-
4,949
-
-
6,656
-
6,967
-
-
6,044
-
2.9万
-
-
1,288
-
8,764
-
-
3万
-
4.9万
-
-
341
-
841
-
-
6,205
-
3.1万
-
-
442
-
726
-
-
71
-
153
-
-
49
-
163
-
-
1,861
-
1,560
-
-
80
-
281
-
-
3,643
-
9,420
-
-
985
-
1,509
-
-
216
-
516
-
-
12
-
6
-
-
105
-
364
-
-
58
-
89
-
-
63
-
43
-
-
19
-
1
-
-
80
-
138
-
-
358
-
1,672
-
-
28
-
46
-
-
3
-
1
-
-
201
-
161
-
-
2,940
-
4,405
-
-
7,460
-
1.5万
-
-
2,620
-
7,283
-
-
191
-
926
-
-
23
-
2
-
-
9,166
-
2.3万
-
-
179
-
157
-
-
4,916
-
1.7万
-
-
1,640
-
2,764
-
-
37
-
52
-
-
59
-
87
-
-
98
-
15
-
-
86
-
30
-
-
400
-
439
-
-
33
-
83
-
-
3,202
-
1.5万
-
-
83
-
150
-
-
40
-
13
-
-
1,253
-
944
-
-
611
-
1,139
-
-
236
-
1,827
-
-
78
-
2,902
-
-
2,419
-
9,367
コメント