転生武田義信
第34話井伊直親仕官
6月7日の払暁に尾池砦を取り囲んだが、流石に敵も警戒していたので、奇襲に成らなかった。小笠原長時の城砦群の中でも、最も堅固な山城が埴原城で、その山麓にあるのが尾池砦だ。
今回も、諏訪衆・降伏衆を先方に抜擢したが、やはり板垣信憲は突撃の途中でこけた!
先方の最後尾を足を引きずりながら付いて行くが、わざとらしい!
しかし、戦争神経症なら仕方なのかもしれない、これは本気で隠居させないと、軍全体に手抜き参戦が蔓延(まんえん)しかねない。
板垣信憲以外の諏訪衆・降伏衆の活躍で、たった1時間の攻防で尾池砦を攻め落とせた。小笠原長時も馬鹿な奴だ、200兵程度の少数の兵を置くくらいなら、尾池砦を放棄して林城に兵力を集めればいいのだ。そうすれば決戦時に、200兵多い軍を編制できる。200兵の差で勝敗が決することもあるのだ。
まあ小笠原長時の立場で考えれば、尾池砦周辺の年貢を確保したかったのだろう。だが失った兵と家族の忠誠は、もう2度と取り返せない。同時に兵が見殺しにされるのを見ていた、林城の将兵や国衆・地侍・領民の忠誠心もだ。
「丸山貞政、この度の1番槍天晴(いちばんやりあっぱれ)である、感状と共に褒賞玄米1石を与える」
今年も甲斐信濃は不作だから、一時の褒賞なら銭より玄米が喜ばれるだろう。永続的な扶持の増額は銭で、一時的な褒賞は玄米で支給しよう。
「は、有り難き幸せ!」
「金刺善悦、この度の1番首天晴である、感状と共に扶持銭1貫文を増額する」
「は、有り難き幸せ」
「狗賓善狼、この度の大将首天晴である、感状と共に扶持銭10貫文を増額する」
「は、有り難き幸せ」
「皆の者、この度は小砦ゆえ恩賞は少ないが、林城を落とし小笠原長時を討ち取れば、大きな恩賞を与える。これからも励むように」
「「「「「は!」」」」」
「城に帰るぞ、勝鬨をあげよ!」
「「「「「えいえいお~! えいえいお~! えいえいお~!」」」」」
さて、山上の埴原城将兵が怖気づいてくれればいいのだが。
赤木南城:大広間
「信憲、今日も先方にもかかわらず最後尾を歩いていたな!」
「申し訳次第もありません、泥に足を取られ転んでしまいました」
「左様か、この事も御屋形様への文に書き記した。信憲、昌光、信廣、信安、違いがなければ連署いたせ! 皆の者、板垣信憲は先方を与えたにもかかわらず、たびたび最後尾を付いて行くだけで何の手柄も上げなかった。亡き板垣信方の旧功もあり見逃してきたが、もはや我慢ならん、厳しくしかり置き、御屋形様に報告の上処分を決定する」
「「「「「は!」」」」」
俺は板垣信憲2人の弟、酒依昌光・板垣信廣と義弟の於曾信安に連署させた上で、諸将の面前で叱責した。これで手抜きする者を少しでも減らせるだろう。
6月8日:花岡城
俺は、赤木南城を叔父の松尾信是と鮎川善繁・楠浦虎常・漆戸虎光に任せて、飛影・闇影・黒影・嶽影・狗賓善狼・近習衆と共に花岡城の拡張工事現場にやって来た。
「工事の人夫は何人兵に動員できる?」
俺は工事を差配している者に確認した。
「壮年の男だけなら1500人、女子供老人を加えるならあと2500人、合計4000人でございます」
「全員に、具足と武器を貸し与えた上で、赤木南城に連れて来てくれ」
「具足と武器を各城砦から集めるのに時間が掛かります。人夫を各城砦に行かせて時間を短縮させても、往復10日は掛かります」
俺が愚かだったな、動員をすると想定していたなら、各城砦に分散配備してある具足と武器を、最初から集めておくべきだった!
悔やんでも仕方がないが、反省の上で次に生かさないと、自分の命で代償を支払う事になってしまう。
「10日後でよい、人夫は戦(いくさ)に動員する訳ではない。村井城(小屋館)の拡張をしてもらうだけだ。人夫たちには、万が一小笠原が攻めてきた時のために、けがさせないように貸し与えるだけと伝えてくれ」
「承りました」
塹壕用(ざんごうよう)ショベルを量産させてるが、まだまだ数がそろわない。優先順位は3間馬上用薙刀・3間足軽用刺又(さんげんあしがるようさすまた)・打ち刀の次で4番目だから、生産数が少ないのだ。
将来は、歩兵全部を戦闘工兵にしたいのだ。だがそれは、自動小銃が開発されるはるか未来の話で、今はその手始めとして戦闘黒鍬衆としよう。鉄砲達者の信長や雑賀・根来と戦う頃には、塹壕戦を導入することになるだろうが、今使えば彼らに真似(まね)されてしまう。斬新な新戦法は、乾坤一擲の勝負時に導入しないと、自分が導入した戦法で殺されてしまう恐れがある!
6月9日:赤木南城の大広間
「皆の者、拠点を村井城に移し、小笠原長時に圧力を掛ける。村井城から井川城に攻め寄せれば、小笠原長時が林城から援軍を出しても、田川を濠代わりに迎え討つことができる。荒井城や平瀬城からの援軍は、奈良井川を濠代わりに迎え討つ事ができる。万が一渡河されても、敵は背水の陣となる。我らの勝利にいささかの心配もなくなる。そのために諸将には、築城の手伝いをしてもらう、よろしいかな?」
「「「「「は!」」」」」
さて、働かす以上は飯を食わさないといけないが、どうせ喰わすなら豪勢に行くか!
最前線だから麦焼酎は出せないが、魚肉を張り込んで出そう。塩や味噌もケチらずにたっぷり出して、小笠原との待遇の違いを示してやる!
小笠原の足軽さん、美味しい物を腹一杯食べさせてあげるから、たくさん逃げてらっしゃい!
村井城(小屋館):善信私室
さて、俺と小笠原長時の戦力比較だが、奴の忠臣と叛臣を見分けないといけない。俺は黒影から忠臣だと報告を受けた者たちを思い浮かべていた。
「小笠原軍の忠臣」
小笠原長時 :大将
神田将監 :智謀に優れた弓の名手・小笠原長時の後見役
塔ノ原長門守:安曇郡塔ノ原城主
二木重高 :安曇郡西牧中塔城主
平瀬義兼 :安曇郡平瀬城主
征矢野宗信 :千見城主
後庁重常 :井深城
古厩盛兼 :安曇郡古厩城主
小岩盛親 :安曇郡小岩嶽城主
犬甘政徳 :筑摩郡犬甘城主
桐原長真 :犬甘政徳家臣・桐原城主
有賀又左衛門:馬廻衆
小笠原頼貞 :馬廻衆
島立貞知 :馬廻衆
征矢野宗澄 :馬廻衆・征矢野宗信の嫡男
征矢野宗功 :馬廻衆
伴野貞慶 :馬廻衆
細萱長知 :馬廻衆
耳塚元直 :馬廻衆
一方以下の武将たちは、一癖も二癖もある海千山千の国衆、こちらの出方次第では裏切るかもしれない。
山家昌治:山家城主
仁科盛能:安曇郡森城主
赤沢経康:筑摩郡稲倉城主
西牧信道:西牧城主(北条城)
俺自身が降伏の使者を出すのは、1度限りと公言してしまっている。それなりの部下か諏訪・安曇野・筑摩の味方が文を出すのは、御屋形様から許可を頂いている。恩賞欲しさに頑張ってくれるとよいのだが。
調略を仕掛けるとしたら、赤沢経康が狙い目だろう。赤沢経康は、持城の洞山砦(早落城)を小笠原長時に奪われている。小笠原長時は洞山砦(早落城)奪った上で、井深城主の後庁重常に与えている。絶対に恨んでいるはずだ!
さて、誰がこれを突いて調略してくれるか?
6月13日:赤木南城の善信私室
俺は、村井城を叔父の松尾信是と鮎川善繁・楠浦虎常・漆戸虎光に任せて、飛影・闇影・黒影・嶽影・狗賓善狼・近習衆と共に赤木南城に戻って来ていた。もともと赤木南城には4100兵を収容していたため、縄張りには余裕がある。三々五々参加して来る野武士や牢人、小笠原長時勢から逃げてくる足軽を収容し、戦力として再編するにはちょうどいい城なのだ。
「直親、御屋形様からのご指示が届いた。不服があるなら咎(とが)めぬゆえ、寺に戻るがよい」
「は、有難きお言葉、何なりとお話ください」
「御屋形様は、今川義元公は疑心が激しく、我が武田に直親が仕えた場合、今川への帰参は永遠に叶わなくなるだろうと書かれている。正実はどう考える」
俺は、井伊直親に言い聞かせた上で、忠臣今村正実に確認してみた。
「情けなき事ながら、信玄公の書かれている通りかと思われます。義元公の疑心激しく、一度疑われた者が信頼を取り戻すことは、至難の業と言わざるを得ません。まして直親様は、父上が先代信虎公との通謀を疑われて、切腹させられております。ここで武田家に陣借りするのは、今川への帰参を諦める覚悟が必要と考えます」
「善信様、直親は覚悟を決めました。善信様の家臣の端に加えていただきとうございます!」
「よう申した! だがここでもう一つ問題があると、御屋形様は書かれておられる」
「何でございましょうか?」
「井伊谷の本家の事じゃ。直親が武田に仕えたことを義元公が知れば、義元公は本家を攻め滅ぼすかもしれん。いや、小野道高が必ず讒言(ざんげん)する。さらにその上で、井伊家を横領しようとするだろう。息子の小野道好を、井伊直盛殿の娘婿に押し込む可能性が一番高い」
「確かに佞臣小野道高ならば、それくらいの事はやりかねません。あ、申し訳ございません、思わず言葉が出てしまいました、お許しください」
今村正実が思わず直答してきた。
「構わぬ、我との軍議密談の時は、そのようなささいな事は、一切気にせずともよい」
「有り難き幸せ!」
「そこで御屋形様が確認されておる。両名は家臣ともども氏素性を隠し、新たな名で武田に、いやこの善信に仕える覚悟はあるか?」
「有り難き幸せ! 直親身命を賭してお仕えさせていただきます!」
「不肖正実も、微力ながらお仕えさせて頂きます!」
「ならば我が諱を与えて、新しき氏名を与える。直親は武田の田と善信の善を与え、田上善親(たがみよしちか)と名乗るがよい」
「有り難き幸せ! 身命を賭して名に恥じぬ働きをお約束いたします」
「うむ、期待しておるぞ。正実にも武田の田と忠義の忠、我が善信の善を与える。田村善忠(たむらよしただ)を名乗るがよい」
「有り難き幸せ! 善親様を助け、善信様のため、身命を賭して名に恥じぬ働きをお約束いたします」
「田上善親、田村善忠、それぞれを足軽大将に任じ、扶持10貫文を与える。連れて来た郎党も、全て足軽として召し抱える。さらに足軽100兵ずつを同心させる。善忠は善親を助け、200の兵を1つにして奉公いたせ!」
今回も、諏訪衆・降伏衆を先方に抜擢したが、やはり板垣信憲は突撃の途中でこけた!
先方の最後尾を足を引きずりながら付いて行くが、わざとらしい!
しかし、戦争神経症なら仕方なのかもしれない、これは本気で隠居させないと、軍全体に手抜き参戦が蔓延(まんえん)しかねない。
板垣信憲以外の諏訪衆・降伏衆の活躍で、たった1時間の攻防で尾池砦を攻め落とせた。小笠原長時も馬鹿な奴だ、200兵程度の少数の兵を置くくらいなら、尾池砦を放棄して林城に兵力を集めればいいのだ。そうすれば決戦時に、200兵多い軍を編制できる。200兵の差で勝敗が決することもあるのだ。
まあ小笠原長時の立場で考えれば、尾池砦周辺の年貢を確保したかったのだろう。だが失った兵と家族の忠誠は、もう2度と取り返せない。同時に兵が見殺しにされるのを見ていた、林城の将兵や国衆・地侍・領民の忠誠心もだ。
「丸山貞政、この度の1番槍天晴(いちばんやりあっぱれ)である、感状と共に褒賞玄米1石を与える」
今年も甲斐信濃は不作だから、一時の褒賞なら銭より玄米が喜ばれるだろう。永続的な扶持の増額は銭で、一時的な褒賞は玄米で支給しよう。
「は、有り難き幸せ!」
「金刺善悦、この度の1番首天晴である、感状と共に扶持銭1貫文を増額する」
「は、有り難き幸せ」
「狗賓善狼、この度の大将首天晴である、感状と共に扶持銭10貫文を増額する」
「は、有り難き幸せ」
「皆の者、この度は小砦ゆえ恩賞は少ないが、林城を落とし小笠原長時を討ち取れば、大きな恩賞を与える。これからも励むように」
「「「「「は!」」」」」
「城に帰るぞ、勝鬨をあげよ!」
「「「「「えいえいお~! えいえいお~! えいえいお~!」」」」」
さて、山上の埴原城将兵が怖気づいてくれればいいのだが。
赤木南城:大広間
「信憲、今日も先方にもかかわらず最後尾を歩いていたな!」
「申し訳次第もありません、泥に足を取られ転んでしまいました」
「左様か、この事も御屋形様への文に書き記した。信憲、昌光、信廣、信安、違いがなければ連署いたせ! 皆の者、板垣信憲は先方を与えたにもかかわらず、たびたび最後尾を付いて行くだけで何の手柄も上げなかった。亡き板垣信方の旧功もあり見逃してきたが、もはや我慢ならん、厳しくしかり置き、御屋形様に報告の上処分を決定する」
「「「「「は!」」」」」
俺は板垣信憲2人の弟、酒依昌光・板垣信廣と義弟の於曾信安に連署させた上で、諸将の面前で叱責した。これで手抜きする者を少しでも減らせるだろう。
6月8日:花岡城
俺は、赤木南城を叔父の松尾信是と鮎川善繁・楠浦虎常・漆戸虎光に任せて、飛影・闇影・黒影・嶽影・狗賓善狼・近習衆と共に花岡城の拡張工事現場にやって来た。
「工事の人夫は何人兵に動員できる?」
俺は工事を差配している者に確認した。
「壮年の男だけなら1500人、女子供老人を加えるならあと2500人、合計4000人でございます」
「全員に、具足と武器を貸し与えた上で、赤木南城に連れて来てくれ」
「具足と武器を各城砦から集めるのに時間が掛かります。人夫を各城砦に行かせて時間を短縮させても、往復10日は掛かります」
俺が愚かだったな、動員をすると想定していたなら、各城砦に分散配備してある具足と武器を、最初から集めておくべきだった!
悔やんでも仕方がないが、反省の上で次に生かさないと、自分の命で代償を支払う事になってしまう。
「10日後でよい、人夫は戦(いくさ)に動員する訳ではない。村井城(小屋館)の拡張をしてもらうだけだ。人夫たちには、万が一小笠原が攻めてきた時のために、けがさせないように貸し与えるだけと伝えてくれ」
「承りました」
塹壕用(ざんごうよう)ショベルを量産させてるが、まだまだ数がそろわない。優先順位は3間馬上用薙刀・3間足軽用刺又(さんげんあしがるようさすまた)・打ち刀の次で4番目だから、生産数が少ないのだ。
将来は、歩兵全部を戦闘工兵にしたいのだ。だがそれは、自動小銃が開発されるはるか未来の話で、今はその手始めとして戦闘黒鍬衆としよう。鉄砲達者の信長や雑賀・根来と戦う頃には、塹壕戦を導入することになるだろうが、今使えば彼らに真似(まね)されてしまう。斬新な新戦法は、乾坤一擲の勝負時に導入しないと、自分が導入した戦法で殺されてしまう恐れがある!
6月9日:赤木南城の大広間
「皆の者、拠点を村井城に移し、小笠原長時に圧力を掛ける。村井城から井川城に攻め寄せれば、小笠原長時が林城から援軍を出しても、田川を濠代わりに迎え討つことができる。荒井城や平瀬城からの援軍は、奈良井川を濠代わりに迎え討つ事ができる。万が一渡河されても、敵は背水の陣となる。我らの勝利にいささかの心配もなくなる。そのために諸将には、築城の手伝いをしてもらう、よろしいかな?」
「「「「「は!」」」」」
さて、働かす以上は飯を食わさないといけないが、どうせ喰わすなら豪勢に行くか!
最前線だから麦焼酎は出せないが、魚肉を張り込んで出そう。塩や味噌もケチらずにたっぷり出して、小笠原との待遇の違いを示してやる!
小笠原の足軽さん、美味しい物を腹一杯食べさせてあげるから、たくさん逃げてらっしゃい!
村井城(小屋館):善信私室
さて、俺と小笠原長時の戦力比較だが、奴の忠臣と叛臣を見分けないといけない。俺は黒影から忠臣だと報告を受けた者たちを思い浮かべていた。
「小笠原軍の忠臣」
小笠原長時 :大将
神田将監 :智謀に優れた弓の名手・小笠原長時の後見役
塔ノ原長門守:安曇郡塔ノ原城主
二木重高 :安曇郡西牧中塔城主
平瀬義兼 :安曇郡平瀬城主
征矢野宗信 :千見城主
後庁重常 :井深城
古厩盛兼 :安曇郡古厩城主
小岩盛親 :安曇郡小岩嶽城主
犬甘政徳 :筑摩郡犬甘城主
桐原長真 :犬甘政徳家臣・桐原城主
有賀又左衛門:馬廻衆
小笠原頼貞 :馬廻衆
島立貞知 :馬廻衆
征矢野宗澄 :馬廻衆・征矢野宗信の嫡男
征矢野宗功 :馬廻衆
伴野貞慶 :馬廻衆
細萱長知 :馬廻衆
耳塚元直 :馬廻衆
一方以下の武将たちは、一癖も二癖もある海千山千の国衆、こちらの出方次第では裏切るかもしれない。
山家昌治:山家城主
仁科盛能:安曇郡森城主
赤沢経康:筑摩郡稲倉城主
西牧信道:西牧城主(北条城)
俺自身が降伏の使者を出すのは、1度限りと公言してしまっている。それなりの部下か諏訪・安曇野・筑摩の味方が文を出すのは、御屋形様から許可を頂いている。恩賞欲しさに頑張ってくれるとよいのだが。
調略を仕掛けるとしたら、赤沢経康が狙い目だろう。赤沢経康は、持城の洞山砦(早落城)を小笠原長時に奪われている。小笠原長時は洞山砦(早落城)奪った上で、井深城主の後庁重常に与えている。絶対に恨んでいるはずだ!
さて、誰がこれを突いて調略してくれるか?
6月13日:赤木南城の善信私室
俺は、村井城を叔父の松尾信是と鮎川善繁・楠浦虎常・漆戸虎光に任せて、飛影・闇影・黒影・嶽影・狗賓善狼・近習衆と共に赤木南城に戻って来ていた。もともと赤木南城には4100兵を収容していたため、縄張りには余裕がある。三々五々参加して来る野武士や牢人、小笠原長時勢から逃げてくる足軽を収容し、戦力として再編するにはちょうどいい城なのだ。
「直親、御屋形様からのご指示が届いた。不服があるなら咎(とが)めぬゆえ、寺に戻るがよい」
「は、有難きお言葉、何なりとお話ください」
「御屋形様は、今川義元公は疑心が激しく、我が武田に直親が仕えた場合、今川への帰参は永遠に叶わなくなるだろうと書かれている。正実はどう考える」
俺は、井伊直親に言い聞かせた上で、忠臣今村正実に確認してみた。
「情けなき事ながら、信玄公の書かれている通りかと思われます。義元公の疑心激しく、一度疑われた者が信頼を取り戻すことは、至難の業と言わざるを得ません。まして直親様は、父上が先代信虎公との通謀を疑われて、切腹させられております。ここで武田家に陣借りするのは、今川への帰参を諦める覚悟が必要と考えます」
「善信様、直親は覚悟を決めました。善信様の家臣の端に加えていただきとうございます!」
「よう申した! だがここでもう一つ問題があると、御屋形様は書かれておられる」
「何でございましょうか?」
「井伊谷の本家の事じゃ。直親が武田に仕えたことを義元公が知れば、義元公は本家を攻め滅ぼすかもしれん。いや、小野道高が必ず讒言(ざんげん)する。さらにその上で、井伊家を横領しようとするだろう。息子の小野道好を、井伊直盛殿の娘婿に押し込む可能性が一番高い」
「確かに佞臣小野道高ならば、それくらいの事はやりかねません。あ、申し訳ございません、思わず言葉が出てしまいました、お許しください」
今村正実が思わず直答してきた。
「構わぬ、我との軍議密談の時は、そのようなささいな事は、一切気にせずともよい」
「有り難き幸せ!」
「そこで御屋形様が確認されておる。両名は家臣ともども氏素性を隠し、新たな名で武田に、いやこの善信に仕える覚悟はあるか?」
「有り難き幸せ! 直親身命を賭してお仕えさせていただきます!」
「不肖正実も、微力ながらお仕えさせて頂きます!」
「ならば我が諱を与えて、新しき氏名を与える。直親は武田の田と善信の善を与え、田上善親(たがみよしちか)と名乗るがよい」
「有り難き幸せ! 身命を賭して名に恥じぬ働きをお約束いたします」
「うむ、期待しておるぞ。正実にも武田の田と忠義の忠、我が善信の善を与える。田村善忠(たむらよしただ)を名乗るがよい」
「有り難き幸せ! 善親様を助け、善信様のため、身命を賭して名に恥じぬ働きをお約束いたします」
「田上善親、田村善忠、それぞれを足軽大将に任じ、扶持10貫文を与える。連れて来た郎党も、全て足軽として召し抱える。さらに足軽100兵ずつを同心させる。善忠は善親を助け、200の兵を1つにして奉公いたせ!」
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