転生武田義信
第33話井伊直親
6月6日:赤木南城の大広間
「若殿、西牧信道殿は何と返事してきたのですか?」
今日の議長の市川昌房が、俺が降伏の使者を出した、西牧城主(北条城)である西牧信道からの返信内容を聞いてきた。
「城地を本領安堵してくれるなら、降伏すると書いてある」
表向きは諸将を集めて今後の戦略戦術を話し合う場所だが、本当は武人馬鹿(ぶじんばか)に戦略戦術を学ばせる場所で、100兵以上を率いる武将には、ある程度の戦略眼を持たせるために毎日行っている。
「いかがなされますか?」
市川昌房が確認して来る。
「放置しておく、降伏する国衆は城地と切り離す」
「今我らが確保している淡路城、櫛木城、波田山城は、梓川を挟んで西牧信道殿の勢力圏と接しております。西牧信道殿が小笠原に味方して、攻め寄せて来たらどうなさいます?」
「本領と同じ扶持を条件に、降伏の使者を出しているのだ。それを断って攻め寄せるようなら、御屋形様の指図に従わねばならん。可哀想(かわいそう)だが、領民ともども志賀城の様に根切りするしかあるまい。儂が御屋形様にとりなすにも限界がある」
信玄に悪者に成ってもらおう。信玄が志賀城で行った悪行は、信濃中で鳴り響いている。
「御屋形様からは、根切りの指図が出ておるのですか?」
丸山善廉がおずおずと聞いてくる。降伏したばかりだから、発言を遠慮(えんりょ)しているのかな?
「うむ、御屋形様からは、従わない国衆は根切りにするようお指図を受けておる。ただ善信の願いを聞いてくださり、1度だけは降伏の使者を出すことを許してくださった」
「若殿、ならばもう西牧に使者は送られないのですか?」
丸山善知が重ねて聞いてくる。
「そうだ、だからもう儂から使者は出さん。次は城攻めじゃが、凄惨(せいさん)な戦となろう、覚悟いたせ!」
「「「「「はい!」」」」」
大広間にいる全ての者が返事したが、中には嬉しそうにする者もいる。乱暴狼藉できると喜んでいるのだろう。だがそうはさせん、無辜(むこ)の民を害させるものか!
「ただし、お前たちが調略を行い降伏させるのは自由じゃ。御屋形様からも、お前たちが独自に調略を行う許可は頂いている。お前たちが失敗しても、御屋形様や儂の面子(めんつ)は傷つかぬからな。上手く西牧信道殿を調略できれば大手柄じゃな!」
「「「「「はい!」」」」」
この場にいる全員の顔色が変わったな、ライバルに先を越される訳にいかんよな。特に降伏したばかりの丸山や外様の諏訪衆は、この機会に手柄を立てて、武田家内で確固たる地位を築きたいはずだ。
「若殿、条件は城地と同じ貫高の扶持を与える。それでよろしゅうございますか?」
福山善沖が丸山より先に聞いてきた、質問も先陣争いかよ。
「そうじゃ、だが福山たちがそうであったように、今後の働きに応じて感状と褒賞銭を与えよう。いや、働きが大きければ扶持の増額もある」
「「「「「はい!」」」」」
目の色が変わったな。俺の富裕は甲斐信濃で鳴り響いているし、今回の合戦でも、降伏早々に功名をあげた武将や足軽には、その場で褒賞銭を与えたり、扶持増額の約束状を書き与えている。この場にいる全員が、手柄を立てて大量の銭を手にする夢を見ているな。
林城の大広間
「え~い、糞、糞、糞! 皆日和見(みなひよりみ)しおって! 信濃が甲斐の鬼畜(きちく)の物になってもよいのか!」
「御屋形様、国衆も一族一門領民の命がかかっております。どちらが勝つか見極まるまで、動くに動けないのは仕方ありますまい」
知勇兼備で弓の名手、神田将監が答える。
「何を言うか! 信濃武者の誇りは何処に行った!」
「されど御屋形様、一戦して我らが勝てば流れは変わります。日和見している国衆も、雪崩(なだれ)を打ってお味方しましょう。我らは勝てばよいのです!」
「ふむ、ならば打って出るか?」
「武田勢の動き次第でございます。西山を攻めるようなら、梓川を渡ったところで西山勢と協力し、武田を挟み撃ちにいたしましょう」
「ふむ、だが直接この林城に攻め寄せてきたらどうする?」
「我らは林城に籠城し、武田が城を囲んだ所を、山家衆、犬甘衆などに背後を突かせます。武田が山家衆や犬甘衆を迎え撃つところを、我らが城を討って出て挟み撃ちにいたします」
「うむ、それならば勝てるな!」
「は、万事大丈夫でございます」
「だが、武田が先に犬甘衆の城を攻めたらどうする?」
「同じでございます。犬甘衆が籠城している城を武田が囲めば、我らが林城を討って出て背後を突けばよろしゅうございます。我らは今まで通り国衆に参戦を呼びかけ、この城で営気を養えばよろしいのです」
「うむ、武田がすきを見せるまで待てと言う事だな、あい分かった」
赤木南城の善信私室
「若殿、陣借りの申し出があります」
「黒影と一緒に来て、わざわざ俺に取り次ぐと言う事は、何かいわくがあるのだな?」
鮎川善繁・黒影・嶽影・狗賓善狼がそろう中、訳ありの事情を確認する。
「若殿は井伊家をご存じですか?」
井伊?
井伊直政の家か?
前世で、徳川家康の三人衆とか四天王とか言われていた武将だよな?
「いや、分からん」
この時代のこまやかな状況は分からん、詳しく聞いてみよう。
「井伊家は遠江井伊谷を本拠とする国衆で、今川家に従っておるのですが、先年一族の者が我が武田の先代信虎様との通謀を疑われ、今川義元様に切腹させられております」
「ほう、だがそれは事実なのか?」
「確かなことは私にも分かりませんが、井伊家では小野道高の讒言(ざんげん)と信じておるようでございます」
黒影が答える。
「ふむ、それで」
「遺児の井伊直親が、汚名を晴らすための陣借りを望み、この城に参っております」
「1人か?」
「家臣郎党併せ、23兵でございます」
「今川義元殿の探索を逃れて潜伏していたのだろう? よくそれ程の手勢を集められたな」
「忠臣の今村正実が、手勢を纏(まと)めていたようでございます」
さてどうする?
井伊家と縁ができるなら、1万貫文で召し抱えても惜(お)しくはないが。
「井伊谷は誰が領しているんだ?」
「井伊本家の、井伊直盛殿でございます」
なるほど、取り潰された訳ではなく、本家があるのか。だが信虎爺ちゃんと通謀(つうぼう)を疑われた者を、俺が使うの不味(まず)くね?
「たとえ陣借りであろうとも、配下に抱えるとなれば御屋形様と今川殿の許可がいる。取りあえず衣食住は保証するから、今村正実と一緒に連れて来てくれ」
「は、呼んで参ります」
鮎川善繁が2人を呼びに出て行った。
「井伊直親でございます、謁見を賜り恐悦至極にございます」
苦労してるだけあって、若いのに鍛えられているな。いや、家老の今村正実の薫陶(くんとう)がいいのか?
「よくぞ参られた、儂としても直親殿の汚名を晴らす手伝いはしてやりたい。だが事の発端(ほったん)が、我が武田の先代信虎公との通謀を疑われた事だと聞く。この善信に陣借りしたとあっては、疑いを証明することになるやもしれん」
「発言してよろしゅうございますか?」
今村正実が許可を求めて来た。
「許す、何じゃ?」
「僭越(せんえつ)ではございますが、通謀の真偽を信虎公に確認していただきとうございます。直親様の実父直満様も叔父の直義様も、敵と通謀するような卑劣漢ではございませんでした。全ては佞臣(ねいしん)小野道高の讒言(ざんげん)でございます」
「その噂話は聞いておる、だがそれを今川義元殿が信じておられれば、通謀は真実に成ってしまう」
「「そんな!」」
「戦国の世は虚々実々、何が真実なのかが大切ではない。騙し騙されないようにせねば、生き残って行けない。残念な事だが、直満殿の様にな」
「忠義の心が、佞臣によって踏みにじられるのが正道と申されますか!」
「戦国の武将なら、忠義の心を主君に認めさせる手管(てくだ)を施(ほどこ)すのも、佞臣を蔓延(はびこ)らせぬ忠義の1つだと思え!」
「は! 思い違いをして居りました! 目から鱗が落ちる思いでございます。忠義とは主君に見てもらうものではなく、見せつけねばならぬのでございますな?」
「そうだ。ただ一人の主君に忠義を尽くすのも武士の道なら、よい主君を求めて仕官を繰り返すも武士の道だ。ただ忠義の心が踏み躙(にじ)られぬ様に、常日頃から目配り手配りを忘れてはならぬ」
「「その御言葉、生涯忘れません」」
「御屋形様と今川殿に文を書こう。直親殿の今川帰参か、我が家臣とし召し抱えるかの許可をもらう。何方にしても悪いようにせんから、しばらくはこの城で武芸の修練に励(はげ)まれよ」
「有り難き幸せにございます! 今より直親と呼び捨て願います」
「うむ、分かったぞ、直親。ただしばらくは主従ともに名は伏せておれ。井伊直親の名が知られては、今川殿への手柄欲しさに襲う者が出るかもしれん」
「直親殿、長屋で申し訳ないが、主従ともに暮らせる場所に案内いたす」
鮎川善繁が案内して出て行った。
さて、信玄に文を書いて義元と交渉してもらおう。我が家臣に迎えられればそれが一番だが、さてどうなるか?
井伊直政が誰の子供か分からんが、直親の子供ならよし。本家か分家の誰かの子でもよし。井伊と縁が出来たのだ、必ず我が家臣に迎えてみせる、逃しはしないさ。
6月7日:赤木南城
「出陣じゃ~」
俺は夜が明ける前に出陣したが、理由は払暁(ふつぎょう)に敵城攻略に取り掛かれるようにだ。勝ち戦が続いたので、日当や食事目当ての足軽が続々と集まっている。小笠原や村上に属していた足軽が、こちらに逃亡して来ているようで、風はこちらに吹いている。
だがここで一戦でも負ければ、あっと言う間に逆風に変わってしまう!
ここは慎重にいくのが正解だろう。新たに加わった足軽や農民兵を加えたことで、攻略した諸城に詰めさせた800兵を補う事が出来た。もちろん降伏して来た信濃衆も数に入っている。
総大将 :武田義信:4100兵
副将 :松尾信是
軍師 :鮎川善繁
相談役 :楠浦虎常・漆戸虎光
侍大将 :加津野昌世・米倉重継・於曾信安・板垣信憲
足軽大将:狗賓善狼・市川昌房
武将 :酒依昌光・板垣信廣・丸山善廉・福山義沖・花岡善秋・有賀善内・武居善種・金刺善悦・矢崎善且・小坂善蔵
「若殿、西牧信道殿は何と返事してきたのですか?」
今日の議長の市川昌房が、俺が降伏の使者を出した、西牧城主(北条城)である西牧信道からの返信内容を聞いてきた。
「城地を本領安堵してくれるなら、降伏すると書いてある」
表向きは諸将を集めて今後の戦略戦術を話し合う場所だが、本当は武人馬鹿(ぶじんばか)に戦略戦術を学ばせる場所で、100兵以上を率いる武将には、ある程度の戦略眼を持たせるために毎日行っている。
「いかがなされますか?」
市川昌房が確認して来る。
「放置しておく、降伏する国衆は城地と切り離す」
「今我らが確保している淡路城、櫛木城、波田山城は、梓川を挟んで西牧信道殿の勢力圏と接しております。西牧信道殿が小笠原に味方して、攻め寄せて来たらどうなさいます?」
「本領と同じ扶持を条件に、降伏の使者を出しているのだ。それを断って攻め寄せるようなら、御屋形様の指図に従わねばならん。可哀想(かわいそう)だが、領民ともども志賀城の様に根切りするしかあるまい。儂が御屋形様にとりなすにも限界がある」
信玄に悪者に成ってもらおう。信玄が志賀城で行った悪行は、信濃中で鳴り響いている。
「御屋形様からは、根切りの指図が出ておるのですか?」
丸山善廉がおずおずと聞いてくる。降伏したばかりだから、発言を遠慮(えんりょ)しているのかな?
「うむ、御屋形様からは、従わない国衆は根切りにするようお指図を受けておる。ただ善信の願いを聞いてくださり、1度だけは降伏の使者を出すことを許してくださった」
「若殿、ならばもう西牧に使者は送られないのですか?」
丸山善知が重ねて聞いてくる。
「そうだ、だからもう儂から使者は出さん。次は城攻めじゃが、凄惨(せいさん)な戦となろう、覚悟いたせ!」
「「「「「はい!」」」」」
大広間にいる全ての者が返事したが、中には嬉しそうにする者もいる。乱暴狼藉できると喜んでいるのだろう。だがそうはさせん、無辜(むこ)の民を害させるものか!
「ただし、お前たちが調略を行い降伏させるのは自由じゃ。御屋形様からも、お前たちが独自に調略を行う許可は頂いている。お前たちが失敗しても、御屋形様や儂の面子(めんつ)は傷つかぬからな。上手く西牧信道殿を調略できれば大手柄じゃな!」
「「「「「はい!」」」」」
この場にいる全員の顔色が変わったな、ライバルに先を越される訳にいかんよな。特に降伏したばかりの丸山や外様の諏訪衆は、この機会に手柄を立てて、武田家内で確固たる地位を築きたいはずだ。
「若殿、条件は城地と同じ貫高の扶持を与える。それでよろしゅうございますか?」
福山善沖が丸山より先に聞いてきた、質問も先陣争いかよ。
「そうじゃ、だが福山たちがそうであったように、今後の働きに応じて感状と褒賞銭を与えよう。いや、働きが大きければ扶持の増額もある」
「「「「「はい!」」」」」
目の色が変わったな。俺の富裕は甲斐信濃で鳴り響いているし、今回の合戦でも、降伏早々に功名をあげた武将や足軽には、その場で褒賞銭を与えたり、扶持増額の約束状を書き与えている。この場にいる全員が、手柄を立てて大量の銭を手にする夢を見ているな。
林城の大広間
「え~い、糞、糞、糞! 皆日和見(みなひよりみ)しおって! 信濃が甲斐の鬼畜(きちく)の物になってもよいのか!」
「御屋形様、国衆も一族一門領民の命がかかっております。どちらが勝つか見極まるまで、動くに動けないのは仕方ありますまい」
知勇兼備で弓の名手、神田将監が答える。
「何を言うか! 信濃武者の誇りは何処に行った!」
「されど御屋形様、一戦して我らが勝てば流れは変わります。日和見している国衆も、雪崩(なだれ)を打ってお味方しましょう。我らは勝てばよいのです!」
「ふむ、ならば打って出るか?」
「武田勢の動き次第でございます。西山を攻めるようなら、梓川を渡ったところで西山勢と協力し、武田を挟み撃ちにいたしましょう」
「ふむ、だが直接この林城に攻め寄せてきたらどうする?」
「我らは林城に籠城し、武田が城を囲んだ所を、山家衆、犬甘衆などに背後を突かせます。武田が山家衆や犬甘衆を迎え撃つところを、我らが城を討って出て挟み撃ちにいたします」
「うむ、それならば勝てるな!」
「は、万事大丈夫でございます」
「だが、武田が先に犬甘衆の城を攻めたらどうする?」
「同じでございます。犬甘衆が籠城している城を武田が囲めば、我らが林城を討って出て背後を突けばよろしゅうございます。我らは今まで通り国衆に参戦を呼びかけ、この城で営気を養えばよろしいのです」
「うむ、武田がすきを見せるまで待てと言う事だな、あい分かった」
赤木南城の善信私室
「若殿、陣借りの申し出があります」
「黒影と一緒に来て、わざわざ俺に取り次ぐと言う事は、何かいわくがあるのだな?」
鮎川善繁・黒影・嶽影・狗賓善狼がそろう中、訳ありの事情を確認する。
「若殿は井伊家をご存じですか?」
井伊?
井伊直政の家か?
前世で、徳川家康の三人衆とか四天王とか言われていた武将だよな?
「いや、分からん」
この時代のこまやかな状況は分からん、詳しく聞いてみよう。
「井伊家は遠江井伊谷を本拠とする国衆で、今川家に従っておるのですが、先年一族の者が我が武田の先代信虎様との通謀を疑われ、今川義元様に切腹させられております」
「ほう、だがそれは事実なのか?」
「確かなことは私にも分かりませんが、井伊家では小野道高の讒言(ざんげん)と信じておるようでございます」
黒影が答える。
「ふむ、それで」
「遺児の井伊直親が、汚名を晴らすための陣借りを望み、この城に参っております」
「1人か?」
「家臣郎党併せ、23兵でございます」
「今川義元殿の探索を逃れて潜伏していたのだろう? よくそれ程の手勢を集められたな」
「忠臣の今村正実が、手勢を纏(まと)めていたようでございます」
さてどうする?
井伊家と縁ができるなら、1万貫文で召し抱えても惜(お)しくはないが。
「井伊谷は誰が領しているんだ?」
「井伊本家の、井伊直盛殿でございます」
なるほど、取り潰された訳ではなく、本家があるのか。だが信虎爺ちゃんと通謀(つうぼう)を疑われた者を、俺が使うの不味(まず)くね?
「たとえ陣借りであろうとも、配下に抱えるとなれば御屋形様と今川殿の許可がいる。取りあえず衣食住は保証するから、今村正実と一緒に連れて来てくれ」
「は、呼んで参ります」
鮎川善繁が2人を呼びに出て行った。
「井伊直親でございます、謁見を賜り恐悦至極にございます」
苦労してるだけあって、若いのに鍛えられているな。いや、家老の今村正実の薫陶(くんとう)がいいのか?
「よくぞ参られた、儂としても直親殿の汚名を晴らす手伝いはしてやりたい。だが事の発端(ほったん)が、我が武田の先代信虎公との通謀を疑われた事だと聞く。この善信に陣借りしたとあっては、疑いを証明することになるやもしれん」
「発言してよろしゅうございますか?」
今村正実が許可を求めて来た。
「許す、何じゃ?」
「僭越(せんえつ)ではございますが、通謀の真偽を信虎公に確認していただきとうございます。直親様の実父直満様も叔父の直義様も、敵と通謀するような卑劣漢ではございませんでした。全ては佞臣(ねいしん)小野道高の讒言(ざんげん)でございます」
「その噂話は聞いておる、だがそれを今川義元殿が信じておられれば、通謀は真実に成ってしまう」
「「そんな!」」
「戦国の世は虚々実々、何が真実なのかが大切ではない。騙し騙されないようにせねば、生き残って行けない。残念な事だが、直満殿の様にな」
「忠義の心が、佞臣によって踏みにじられるのが正道と申されますか!」
「戦国の武将なら、忠義の心を主君に認めさせる手管(てくだ)を施(ほどこ)すのも、佞臣を蔓延(はびこ)らせぬ忠義の1つだと思え!」
「は! 思い違いをして居りました! 目から鱗が落ちる思いでございます。忠義とは主君に見てもらうものではなく、見せつけねばならぬのでございますな?」
「そうだ。ただ一人の主君に忠義を尽くすのも武士の道なら、よい主君を求めて仕官を繰り返すも武士の道だ。ただ忠義の心が踏み躙(にじ)られぬ様に、常日頃から目配り手配りを忘れてはならぬ」
「「その御言葉、生涯忘れません」」
「御屋形様と今川殿に文を書こう。直親殿の今川帰参か、我が家臣とし召し抱えるかの許可をもらう。何方にしても悪いようにせんから、しばらくはこの城で武芸の修練に励(はげ)まれよ」
「有り難き幸せにございます! 今より直親と呼び捨て願います」
「うむ、分かったぞ、直親。ただしばらくは主従ともに名は伏せておれ。井伊直親の名が知られては、今川殿への手柄欲しさに襲う者が出るかもしれん」
「直親殿、長屋で申し訳ないが、主従ともに暮らせる場所に案内いたす」
鮎川善繁が案内して出て行った。
さて、信玄に文を書いて義元と交渉してもらおう。我が家臣に迎えられればそれが一番だが、さてどうなるか?
井伊直政が誰の子供か分からんが、直親の子供ならよし。本家か分家の誰かの子でもよし。井伊と縁が出来たのだ、必ず我が家臣に迎えてみせる、逃しはしないさ。
6月7日:赤木南城
「出陣じゃ~」
俺は夜が明ける前に出陣したが、理由は払暁(ふつぎょう)に敵城攻略に取り掛かれるようにだ。勝ち戦が続いたので、日当や食事目当ての足軽が続々と集まっている。小笠原や村上に属していた足軽が、こちらに逃亡して来ているようで、風はこちらに吹いている。
だがここで一戦でも負ければ、あっと言う間に逆風に変わってしまう!
ここは慎重にいくのが正解だろう。新たに加わった足軽や農民兵を加えたことで、攻略した諸城に詰めさせた800兵を補う事が出来た。もちろん降伏して来た信濃衆も数に入っている。
総大将 :武田義信:4100兵
副将 :松尾信是
軍師 :鮎川善繁
相談役 :楠浦虎常・漆戸虎光
侍大将 :加津野昌世・米倉重継・於曾信安・板垣信憲
足軽大将:狗賓善狼・市川昌房
武将 :酒依昌光・板垣信廣・丸山善廉・福山義沖・花岡善秋・有賀善内・武居善種・金刺善悦・矢崎善且・小坂善蔵
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