転生武田義信
第14話日本狼
躑躅ヶ崎館:義信私室
「若君、狼を捕(とら)まえましたぞ!」
喜びを抑えきれない声色で、甘利信忠がやって来た。庭に運び込まれた檻の中に、動物の親子が入ってる、狼なのか?
「よくぞやってくれた、大変であっただろう」
あまりに嬉しそうな甘利信忠の表情に、俺も意味もなく嬉しくなってきた。
「山の中に網を仕掛けて追い込みました。いや~、何度も網を破られましたが、やっと昨日逃がさずに捕(とら)まえました」
そうか、普通なら網を破って逃げおおせるのだな、子供がいたから逃げ損ねたのか?
「そうか、あらかじめ網を仕掛けていたか、信忠は知恵者だな」
「そんなにお褒め頂けますと照れますな」
鬼瓦のような武士が照れてやがる、信忠は可愛げがある。
「善狼、この狼の親子は儂が群れで飼えるか試す、助けよ」
側に控える狗賓善狼に確認してみる。
「は、承りました、できる限り手伝わせていただきます」
「頼み置くぞ!」
俺は別に、漫画のような狼使いになりたいわけじゃない!
俺の心を占めているのは、飛影との初めての出会いなのだ。もし飛影が敵の刺客なら、俺はあの時に死んでいた。福与城と高遠城を攻めたときも、城主はすでに飛影の配下に殺されている。もし、他国の忍者が飛影以上の使い手であったら、俺の命はない。いや、飛影が別の任務で俺の側にいなかったら?
飛影が病で力を発揮できない時であったら?
俺の側に、野生の感覚を持つレーダー代わりの犬狼は必要不可欠なのだ。確かに昔小説で読んだK9部隊が実現できたら面白いし、漫画で読んだような犬軍団が創設できれば、簡単に日本を統一できるだろう。
いや、史実でも太田資正が、岩槻城で育てた犬50匹と松山城で育てた犬50匹を入れ替え、非常時の伝令として役立てたとある。
しかし、そんな事は夢物語だ。実際に太田資正が岩槻城と松山城を同時に領有していた時期は、ごく短い時期でしかない。どちらも1年ほどで松山城を失っているのだ。
最初は城代の上田朝直が裏切り、松山城は北条家に奪われてしまう。2度目は北条・武田連合軍によって攻め落とされている。だから犬を使えば全て上手く行くなどありえないし、今直ぐ難しい技を犬に教える事は不可能だ。
難しい事は時間を掛けて教えればいい、今俺に必要なのは忠誠無比の番犬、できればボディーガード犬!
躑躅ヶ崎館:信玄私室
「御屋形様、足利義晴将軍は管領細川晴元殿と争い、近江坂本に逃げておられると聞いておりますが、真でございますか?」
「そのようじゃの」
信玄は、俺が出した料理を貪る様に喰いながら返事する。そんなに美味いのか?
美味いのだろうが、もう少し綺麗に喰ってくれよ。信玄には、できるだけ長生きして欲しい。俺が躊躇(ちゅうちょ)するような悪行さえ、この戦国の世では必要悪なのだろう。卑怯なのは重々承知しているが、それは信玄に任せたい。だからこそ、信玄には史実よりも長生きしてもらうために、食事のバランスには気を付けている。栄養学は専門外なので自信はないが、自分が理解している五行思想を食事に取り入れた。
「今日の夕食」
1:木気の梅肉で、鯉(こい)の湯引きを和えた、鯉の気は知らないので計算外にした。
2:火気のタラの芽を天婦羅(てんぷら)にした。
3:土気の猪(いのしし)味噌漬けを焼き物した。
4:金気の干大根と葱を干椎茸と一緒に、水気の味噌で煮た。
「苦境の将軍に献金して、代償に鉄砲鍛冶を得られないものでしょうか?」
「幾らほど用意する心算だ?」
「500貫文用意しております」
「それほどの大金を投ずる価値があるのか?」
「最大の勝負所で大量投入いたします。それまでは無駄・役立たずになりますが、どうしても必要な物です」
「分かった、働きかけてみよう」
高遠城:大広間
「飛影、小笠原信定の鈴岡城と松尾城を手に入れ、天竜川沿いの全てを手に入れたい。何時もの様に、夜襲に見せかけ暗殺はできるか?」
「手筈(てはず)は整っております」
「虎昌、指揮は任せる」
「承りました」
福与城の足軽兵団1000兵、虎昌配下の800兵、合計1800兵で夜襲した。俺たちは何時も通りの手筈(てはず)で小笠原信定を討ち取ったことにして、鈴岡城を落城させた。松尾城の将兵には、降伏勧告を行い開城させた。鈴岡城と松尾城は、毛賀沢川を挟んで対岸にある。俺の手に入った以上、縄梯子を掛けて連郭城にでもするか?
この2つの城には、いつも通り飛影の推薦する修験者を城代に入れた。これにより、河原者や山窩の忠誠心を維持し続ける。彼らこそ俺に絶対の忠誠を誓ってくれる、最大最良の味方なのだ。歴史を知る俺には、甲斐の譜代衆など裏切り予備群でしかない。そもそも祖父・信虎より前は、常に反目して覇権争いをしていたのだ。
鈴岡城:大広間
「虎昌、助命と国外退去を条件に、神の峰城の知久頼元と座光寺城の座光寺為清に城明け渡しを交渉しろ」
「承りました、使者は誰にいたします?」
「某(それがし)にお任せください」
甲斐犬を抱きながら、秋山虎繁が志願する。史実の虎繁には、交渉能力があったよな?
「任せる」
雪解けしてから、周辺地域から続々と難民がやってくる。俺の支配下に入った河原者や山窩の手引きで、帰るべき家も国もない者たちがやってくる。自分たちの桃源郷を求めて、藁(わら)をもすがる想いでやってくるのだ。完璧など望むべきもないが、俺のできる範囲で、彼らには安心できる家を与えてやりたい。
「飛影、伊那の廃城を修築し難民の住居といたせ」
「承りました」
藤沢頼親を殺した時に接収し、いったん廃城とした城郭群を修復し難民達の生活拠点にする決意をした、元の持ち主である国衆の反感は覚悟の上だ。
(新設・修築・改修された難民居住城砦)
1:柴氏の居城だった羽場城
2:知久氏昔の居城だった上之平城
3:藤沢頼親の支城だった大出城
4:藤沢頼親の支城だった箕輪城
5:松島氏の居城だった松島城
6:古い時代に廃城になった北の城と下の城
7:古い時代に廃城になった大草城
8:高遠城の支城だった的場城
9:春日重親の居城だった春日城
10:殿島重国の居城だった殿島城
少しでも修築する価値のある廃城は、全て難民の拠点にする!
「それと飛影、投石機の生産練習は捗(はかど)っているか?」
「はい若殿、竹を使ったもの、革を使ったもの、毛や麻を編んだもので作らせております。」
鉄砲や弓矢は、訓練生産共に費用が高い。それに比べて河原の玉石を使う投石機は、訓練生産費用が安く済む。破壊力や殺傷能力は落ちるが、籠城戦では役に立つのだ。玉石が無料で集められるし、竹が材料のものは特に安価に作れる。
90cm程の長さの竹棹の先に割れ目を付け、石を包み込める幅広い部分を有(ゆう)する紐の一端を竹棹に括りつけ、紐の括っていない方の端側に結び目を作って割れ目にひっかけ、紐に石をセットして、振りかぶって一振りで飛ばす。射程距離は高速回転させて飛ばす通常のスリングより短くなるが、扱いが簡単で前方に飛ばしやすく、両腕の力を込める事ができるので、より重く大きい弾丸や岩を飛ばすことができる。
もう1つの安価な籠城武器は、革や編み物製の通常スリングだ。中央の石を包むための幅広い部分と、その両端の振り回して速い回転速度を得るための細長いひも状の部分からなり。ひも状の部分の一方の端は投げる時に手から離れないようループになっているか、手に巻き付けられる様にやや長くなっている。
長さは二つ折りの状態で、50cmから150cm程度だ。
「若君、狼を捕(とら)まえましたぞ!」
喜びを抑えきれない声色で、甘利信忠がやって来た。庭に運び込まれた檻の中に、動物の親子が入ってる、狼なのか?
「よくぞやってくれた、大変であっただろう」
あまりに嬉しそうな甘利信忠の表情に、俺も意味もなく嬉しくなってきた。
「山の中に網を仕掛けて追い込みました。いや~、何度も網を破られましたが、やっと昨日逃がさずに捕(とら)まえました」
そうか、普通なら網を破って逃げおおせるのだな、子供がいたから逃げ損ねたのか?
「そうか、あらかじめ網を仕掛けていたか、信忠は知恵者だな」
「そんなにお褒め頂けますと照れますな」
鬼瓦のような武士が照れてやがる、信忠は可愛げがある。
「善狼、この狼の親子は儂が群れで飼えるか試す、助けよ」
側に控える狗賓善狼に確認してみる。
「は、承りました、できる限り手伝わせていただきます」
「頼み置くぞ!」
俺は別に、漫画のような狼使いになりたいわけじゃない!
俺の心を占めているのは、飛影との初めての出会いなのだ。もし飛影が敵の刺客なら、俺はあの時に死んでいた。福与城と高遠城を攻めたときも、城主はすでに飛影の配下に殺されている。もし、他国の忍者が飛影以上の使い手であったら、俺の命はない。いや、飛影が別の任務で俺の側にいなかったら?
飛影が病で力を発揮できない時であったら?
俺の側に、野生の感覚を持つレーダー代わりの犬狼は必要不可欠なのだ。確かに昔小説で読んだK9部隊が実現できたら面白いし、漫画で読んだような犬軍団が創設できれば、簡単に日本を統一できるだろう。
いや、史実でも太田資正が、岩槻城で育てた犬50匹と松山城で育てた犬50匹を入れ替え、非常時の伝令として役立てたとある。
しかし、そんな事は夢物語だ。実際に太田資正が岩槻城と松山城を同時に領有していた時期は、ごく短い時期でしかない。どちらも1年ほどで松山城を失っているのだ。
最初は城代の上田朝直が裏切り、松山城は北条家に奪われてしまう。2度目は北条・武田連合軍によって攻め落とされている。だから犬を使えば全て上手く行くなどありえないし、今直ぐ難しい技を犬に教える事は不可能だ。
難しい事は時間を掛けて教えればいい、今俺に必要なのは忠誠無比の番犬、できればボディーガード犬!
躑躅ヶ崎館:信玄私室
「御屋形様、足利義晴将軍は管領細川晴元殿と争い、近江坂本に逃げておられると聞いておりますが、真でございますか?」
「そのようじゃの」
信玄は、俺が出した料理を貪る様に喰いながら返事する。そんなに美味いのか?
美味いのだろうが、もう少し綺麗に喰ってくれよ。信玄には、できるだけ長生きして欲しい。俺が躊躇(ちゅうちょ)するような悪行さえ、この戦国の世では必要悪なのだろう。卑怯なのは重々承知しているが、それは信玄に任せたい。だからこそ、信玄には史実よりも長生きしてもらうために、食事のバランスには気を付けている。栄養学は専門外なので自信はないが、自分が理解している五行思想を食事に取り入れた。
「今日の夕食」
1:木気の梅肉で、鯉(こい)の湯引きを和えた、鯉の気は知らないので計算外にした。
2:火気のタラの芽を天婦羅(てんぷら)にした。
3:土気の猪(いのしし)味噌漬けを焼き物した。
4:金気の干大根と葱を干椎茸と一緒に、水気の味噌で煮た。
「苦境の将軍に献金して、代償に鉄砲鍛冶を得られないものでしょうか?」
「幾らほど用意する心算だ?」
「500貫文用意しております」
「それほどの大金を投ずる価値があるのか?」
「最大の勝負所で大量投入いたします。それまでは無駄・役立たずになりますが、どうしても必要な物です」
「分かった、働きかけてみよう」
高遠城:大広間
「飛影、小笠原信定の鈴岡城と松尾城を手に入れ、天竜川沿いの全てを手に入れたい。何時もの様に、夜襲に見せかけ暗殺はできるか?」
「手筈(てはず)は整っております」
「虎昌、指揮は任せる」
「承りました」
福与城の足軽兵団1000兵、虎昌配下の800兵、合計1800兵で夜襲した。俺たちは何時も通りの手筈(てはず)で小笠原信定を討ち取ったことにして、鈴岡城を落城させた。松尾城の将兵には、降伏勧告を行い開城させた。鈴岡城と松尾城は、毛賀沢川を挟んで対岸にある。俺の手に入った以上、縄梯子を掛けて連郭城にでもするか?
この2つの城には、いつも通り飛影の推薦する修験者を城代に入れた。これにより、河原者や山窩の忠誠心を維持し続ける。彼らこそ俺に絶対の忠誠を誓ってくれる、最大最良の味方なのだ。歴史を知る俺には、甲斐の譜代衆など裏切り予備群でしかない。そもそも祖父・信虎より前は、常に反目して覇権争いをしていたのだ。
鈴岡城:大広間
「虎昌、助命と国外退去を条件に、神の峰城の知久頼元と座光寺城の座光寺為清に城明け渡しを交渉しろ」
「承りました、使者は誰にいたします?」
「某(それがし)にお任せください」
甲斐犬を抱きながら、秋山虎繁が志願する。史実の虎繁には、交渉能力があったよな?
「任せる」
雪解けしてから、周辺地域から続々と難民がやってくる。俺の支配下に入った河原者や山窩の手引きで、帰るべき家も国もない者たちがやってくる。自分たちの桃源郷を求めて、藁(わら)をもすがる想いでやってくるのだ。完璧など望むべきもないが、俺のできる範囲で、彼らには安心できる家を与えてやりたい。
「飛影、伊那の廃城を修築し難民の住居といたせ」
「承りました」
藤沢頼親を殺した時に接収し、いったん廃城とした城郭群を修復し難民達の生活拠点にする決意をした、元の持ち主である国衆の反感は覚悟の上だ。
(新設・修築・改修された難民居住城砦)
1:柴氏の居城だった羽場城
2:知久氏昔の居城だった上之平城
3:藤沢頼親の支城だった大出城
4:藤沢頼親の支城だった箕輪城
5:松島氏の居城だった松島城
6:古い時代に廃城になった北の城と下の城
7:古い時代に廃城になった大草城
8:高遠城の支城だった的場城
9:春日重親の居城だった春日城
10:殿島重国の居城だった殿島城
少しでも修築する価値のある廃城は、全て難民の拠点にする!
「それと飛影、投石機の生産練習は捗(はかど)っているか?」
「はい若殿、竹を使ったもの、革を使ったもの、毛や麻を編んだもので作らせております。」
鉄砲や弓矢は、訓練生産共に費用が高い。それに比べて河原の玉石を使う投石機は、訓練生産費用が安く済む。破壊力や殺傷能力は落ちるが、籠城戦では役に立つのだ。玉石が無料で集められるし、竹が材料のものは特に安価に作れる。
90cm程の長さの竹棹の先に割れ目を付け、石を包み込める幅広い部分を有(ゆう)する紐の一端を竹棹に括りつけ、紐の括っていない方の端側に結び目を作って割れ目にひっかけ、紐に石をセットして、振りかぶって一振りで飛ばす。射程距離は高速回転させて飛ばす通常のスリングより短くなるが、扱いが簡単で前方に飛ばしやすく、両腕の力を込める事ができるので、より重く大きい弾丸や岩を飛ばすことができる。
もう1つの安価な籠城武器は、革や編み物製の通常スリングだ。中央の石を包むための幅広い部分と、その両端の振り回して速い回転速度を得るための細長いひも状の部分からなり。ひも状の部分の一方の端は投げる時に手から離れないようループになっているか、手に巻き付けられる様にやや長くなっている。
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