「溺愛」「婚約破棄」「ざまあ」短編集3

克全

第11話

子供を大切に思う、親の真心がひしひしと伝わってきます。
助けてあげたい気になりますが、私もこの村に住み続けたいのです。
神々の戦いが起こるまで、どれほどの時間が残されているのか分かりませんが、この村で、気の好い人達と歌い踊り騒いで、愉しく暮らしたいのです。

養父母が気の毒そうな顔で入って来てしまいました。
これはいけませんね。
人の好い養父母は、私が万病に効く薬を作れることを、話してしまうでしょう。
なにしろ、死にかけている養父母を万病薬で助けたのが、この村に住むことになるきっかけだったのですから。

「アルバンさん、息子さんの事はとても気の毒に思う。
だが分かって欲しい。
こんな小さく力のない村が、エリクサーを作ることができたり、金二百枚も持っている事が広まってしまうと、貴族や神殿に難癖をつけられるだけではすまんのだ。
山賊や盗賊に襲撃されてしまう。
寒村は貧しく暮らしているから無事でいられるのだ」

「オレール殿!
それはこの村にエリクサーを作れいる者がいるという事か?!
だったらエリクサーを十個金貨二千枚で買いとる。
金二千枚あれば、自由戦士を十人以上二年は雇うことができる。
自由戦士は俺が紹介する。
自由戦士がこの村に来るまでは、私がこの村に留まるから。
私の護衛がこの村を守るから。
だからエリクサーを売ってくれ。
頼む!」

ああ、ダメです。
もう誤魔化しようがありません。
ここで売らなければ、アルバンさんは村人を皆殺しにしてでも万病薬を手に入れようとするでしょう。
ここが潮時ですね。
最悪の場合は、この村を捨てて逃げるしかありませんね。

「分かりました。
養父が口にしてしまった以上、もう秘密にすることはできませんね。
エリクサーを十個とってきますから、待っていてください」

「え?!
君なのか?!
君がエリクサーを創り出したというのか?!」

アルバンさんが随分と驚いていますが、それもしかたがない事でしょう。
私のような若い娘が、エリクサーを創り出せるなんて、普通は想像もしません。
一般的なイメージでは、エリクサーの作り手は、長年研究を続けてきた老齢の魔導師か錬金術師でしょう。

「ここにある十個の瓶にエリクサーが入っています。
十個全部がエリクサーで高価がある事を証明するために、好きな瓶をとってバルナベさんに使って下てください。
ただ直ぐに効果があるわけではありません。
バルナベさんは、頭の中と内臓にまで強い毒が入っています。
全ての毒が消えて完治するまでには、丸一日必要になります」

アルバンさんが、素焼きの小さな小瓶を見て驚愕しています。
何を驚いているのでしょうか?



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