「溺愛」「婚約破棄」「ざまあ」短編集3

克全

第5話

「失礼するよ
賭け事をしたからといって、別に咎める気はないよ。
だからここを通りてくれ。
神殿の公用ではなく私用なんだ」

入ってきたのは、この都市の守護神、ポセイドン神殿の神殿騎士団長フィン・メイラーと副団長で大神官ケヴィンの息子アローン・ワイスだった。
フィンとアローンはいかめしい顔をしていたが、アローンは特に厳しい顔をしていたが、それも当然だろう。

「月神殿・聖堂騎士団」
ケヴィン・ワイス:大神官・ギャンブル依存症
フィン・メイラー:団長 ・蒼備え・方天戟
アローン・ワイス:副団長・緑備え・長槍
テオ・ジェイムズ:先駆け・赤備え・長槍
ラウル・ペーター:幹部 ・黄備え・青龍偃月刀
ベリル・アーネス:幹部 ・白備え・蛇矛

(神殿長、今日はもう絶対に許しません。
神殿の懺悔室に入ってもらいます)

博打とマリーに狂った実の父ケヴィン・ワイス大神官に、聖堂騎士団副団長のアローン・ワイスは殺意を込めてささやいた。
その殺意は揺るぐ事がなく、神殿の名誉を守るためなら、この場で父親であり神殿長であるケヴィンを殺す決意をしていた。
さすがに実の息子に明確な殺意を向けられて、ケヴィンも正気を取り戻した。

(すまん、もう二度とやらん)

だがアローンはもちろんフィンも神殿長の言葉を信じなかった。
これまで何回も、いや、何十回も同じ言葉を聞いていた。
だがら今度は実力行使に出る事を決断していた。
アローンにはもう父ケヴィンの使いこんだ公金を補充する事ができなかった。
これまでワイス家の私財だけでなく、アローン個人のお金まで公金の穴埋めに使っていたのだ。

今回ケヴィンの持ち出した公金は、フィンが幼馴染で盟友のアローンを救うため、自分のへそくりを融通していた。
もうこれ以上はどうしようもなかったので、懺悔室といいながら、正道騎士団の拠点にある牢にケヴィンを幽閉する覚悟をしていた。

病気療養中という名目で幽閉さえしておけば、これ以上博打にお金を使うこともないし、何より公金を横領することもない。
今回勝負が引き分けに終わった金貨四十枚が戻ってきたら、フィンが立て替えた金貨二十枚を返した上に、もう二十枚が戻ってくる。
そうなればアローンが泣く泣く手放した武具の一部を買い戻す事も可能だ。

「やれ、やれ。
せっかくの大勝負が中途半端に終わってしまったな。
今宵また勝負してもらえるかな?」

ケヴィンが幽鬼のような真っ青な顔で、息子と聖堂騎士団長に連れて行かれた後で、自由騎士ゴードンが全然懲りていない表情で問いかけた。

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