「溺愛」「婚約破棄」「ざまあ」短編集3

克全

第4話古代神の巫女視点

私は不本意です。
なんでこうなるのでしょう。
ひとり自由気ままに旅を楽しむつもりだったのです。
神殿で覚えた知識と技がどのくらい世の中で通用するのか、確かめたかったのに。
それなのに、邪魔者が三人もついてきてしまいました。

カイ、コナー、ソニー。
若くして聖堂騎士団の百騎長に大抜擢されるほどの天才的な戦士。
勇猛果敢で個人の戦闘力も突出してる。
でも、その分癖が強くて鬱陶しいところもある。
できればお近づきにはなりたくない人達だ。

「なあ、今からでも戻らないか?
俺達三人がそろってお願いしたら、アメリを神殿に残してもらえると思うのだ」

コナーは本当に愚かでしつこいです。
あれだけ強く言ったのに、まだしつこく喰い下がります。
一度本気で叩きのめしたやりましょうか。

「だったらお前だけ帰れ!
なんならソニーも一緒に神殿に帰っていいぞ。
俺はあんな腐りきった神殿と縁が切れて清々しているんだからな。
これからはアメリと二人、色んな国を渡り歩いて、その地その地の美味しいモノを食べて暮らすんだ」

私はカイと二人で旅をする気など全くありません。
ただ色んな国を巡って、その地の美味しいモノを食べるのには賛成です。
どの国にどんな美味しいモノがあるのか、今からとても楽しみです。

「神殿のどこが腐っているのだ?
聖女を奉じ、守護神との契約を守っているではないか!」

「コナー。
お前にはビクトリアに聖女の力があるのが見えたのか?
あんなモノが聖女に選ばれて、神殿が守護神との契約を守っていると言えるのか?
そう見えて、そう思えるのなら、お前は糞だぞ」

ソニーが何の感情も顔に浮かべずに言い放ちます。
返答しだいではコナーに見切りをつけるのでしょう。
ソニーは知略縦横な智謀家な分、人間に対する優しさや思いやりが少ないのです。
そうしなければ、冷徹に軍略を立てられないのかもしれません。

「それは……
俺もおかしいと思っている……
……だが、何かどうしようもない理由があって……」

コナーの声がどんどん小さくなります。
私と同じように孤児院育ちだから、神殿に対する恩義も希望もあるのでしょう。
でももう少し冷静な目を持たないと、いいように教会に利用され、悪事の手先にされてしまいます。

まあ、私もコナーの事は非難しきれない点もあります。
神殿を見捨てきれない甘い部分があります。
このままでは、神殿の腐敗と汚職によって、守護神との契約が破綻してしまいますが、まだ少し時間が残されているのも確かです。
イリス様には悪いですが、イリス様が神殿で祈りを下げられている間は、守護神が契約を破棄される事はないでしょう。
まあ、次の聖女が選ばれる前に、イリス様が倒れてしまうようなことになってはいけませんから、いつでも戻れる距離にいた方がいいですね。


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