「溺愛」「婚約破棄」「ざまあ」短編集3

克全

第58話

「サンディランズ公爵家ルシア嬢!
聖女級の魔力です!
軽々と聖女級です!
この国は聖国を名乗れます!
ここ数十年名乗る国がなかった、聖国になれるのです!」

「「「「「うぉおおおお」」」」」

嘘、でしょ?!
皇族級の魔力になっている可能性があるとは思っていました。
でもそれはほんの少し頭の片隅にあっただけです。
私が想定していたのは、皇族級に近い王族です。
ウィリアムとイライアスと日々接して、そのくらいだと思っていました。

ですが、まあ、いいです。
この国の名乗りが、王国であろうと皇国であろうと聖国であろうと、私にはどうでもいいことです。
恐らくこれで、皇族級の魔力があるネイが目立たなくなります。
ネイが心静かに暮らせれば、それが一番です。
私がネイの盾になれるのなら本望です。

ですが少々腹が立つのも事実です。
満足そうな国王の顔を見ると、怒りを感じてしまいます。
私がこの国を逃げ出さなければいけなくなったのは、王に正邪を見抜く力がなく、指導力がなかったからです。
まあ、悪夢の話ではあるのですが。
逃げ出さなければ必ず悪夢通りになったと思っています。

しかし全然会場が治まりません。
彼らにとっては、私が聖女で国が聖国になるのは、国際交易上重要です。
色々と有利になる事があるのは私も理解しています。
ですが、だからといって、私に近づこうとするのは止めて欲しいです。
近衛騎士が防いでくれていますが、相手は魔力の多い貴族達です。
このままでは防ぎ切れなくなるのは明白です。

でも、まあ、大丈夫でしょう。
私も冒険者として何度も死地を掻い潜ってきました。
魔力も意外なほど強い聖女級でした。
先頭の数十人を吹き飛ばせば、みな大人しくなるでしょう。
このまま混乱してくれれば、ネイの魔力検査が行われない可能性もあります。
私にはその方が好都合です。

「控えよ!
まだ魔力検査は終わっていないぞ!
これ以上騒げば、聖女ルシアに嫌われてしまうぞ。
それでもいいのか?
聖女に悪い印象を与えて、今後生きていけると思っているのか?」

国王が騒ぎ立てる貴族を一喝して止めてしまいました。
本当に余計な事をしてくれます。
このまま混乱してくれればよかったのです。
本当に腹が立ちます!

「それにまだ期待の令嬢がいるのだぞ。
聖女ルシア嬢が養女に迎えるほどの令嬢がいるのだぞ。
彼女の魔力を量らなくていいのか?
ネイ嬢の魔力しだいでは、二代続けて聖国を名乗れるかもしれないのだぞ。
いや、聖国や皇国などは早々長く名乗れるモノではない。
だがだ、ネイ嬢が王族級の魔力を持っているのなら、少なくとも後継者に悩み苦しむ必要はなくなるのだ。
静まってネイ嬢の魔力検査を見守ろうではないか」

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