「溺愛」「婚約破棄」「ざまあ」短編集3

克全

第57話

「オドニ男爵ウィリアム卿!
王族級の魔力です!
軽々と王族級です!
皇族級に近い王族級です!

「「「「「うぉおおおお」」」」」

魔力検査場がどよめいています。
暇な人間が多すぎます。
まあ、それも仕方ありません。
父サンディランズ公爵が圧力をかけたのにも関わらず、サンディランズ公爵一族とウィリアムとイライアスの検査日が一緒になってしまったのです。

私の予定では、前日にウィリアムとイライアスが王族級の魔力を叩きだし、多くの貴族士族が国王候補に踊りだした二人に近づこうと、水面下で蠢動する間隙を突いて、私とネイの魔力検査を行うつもりだったのです。
ですが、それを誰かに見抜かれていたのでしょう。
国王はサンディランズ公爵の圧力に屈することなく、毅然とした態度でサンディランズ公爵一門と二人の検査日を一緒にしたのです。

「ギマラ男爵イライアス卿!
王族級の魔力です!
軽々と王族級です!
皇族級に近い王族級です!」

「「「「「うぉおおおお」」」」」

魔力検査場は興奮の坩堝とかしています。
それも仕方ない事でしょう。
王族級の魔力持ちがいなくて、王家が絶えそうな状態だったのです。
国は存続したとしても、名乗りを王国から大公国や公国に落とさなければいけない、絶体絶命の状態から脱したのです。

でも貴族士族達は忘れているのです。
ウィリアムとイライアスが、最近金で男爵位を買っただけの流れ者だという事を。
他国の流れ者に忠誠を誓わなければいけない事を想い、彼らがどう動くのか見てみたい気もしますが、それはかなわない事でしょうね。

「ああああ、サンディランズ公爵ドレド卿。
大公級です……
残念ながら、僅かに王族級には足りません。
残念です……」

私も残念です。
父が王族級なら、まだやりようがあったのですが、仕方ありません。
私が目立つしかありません。
ネイに向けられる視線の盾にならなければいけません!
それが母である私の務めです!

ですが私の前に、叔父や従兄弟達が検査を受けます。
王という激務と、後継者を心安らかに生む女性の高貴な役割を考えれば、表向きの役割は男性が務める方がいいのです。
精神的な負担や、戦闘での負傷などがあると、胎児に悪影響が及び、魔力の低い子供が生まれてしまう弊害があるのです。

それを回避するためには、女性は常に心身の健康を優先しなければいけません。
寵愛争いが激しいく、最悪毒殺の恐れまである王族が、王族級の子供に恵まれずに絶えるのは、そのためなのです。

「サンディランズ公爵末弟ニルス卿。
侯爵級魔力です。
伯爵級に近い侯爵級です」

「「「「「うぉおおおお」」」」」

会場がどよめいています。
降爵の恐れのある貴族が、養子候補として期待しているのでしょう。
ですが、父がほくそ笑んでいます。
後継者争いしていた弟が、魔力を偽っていたことがはっきりして、もう二度と侯爵家の家督争いに加われなくなって、心から満足なのでしょう。

          

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