「溺愛」「婚約破棄」「ざまあ」短編集3

克全

第29話

「分かった!
私たちはポーラの指示に従うよ。
なんだって言ってくれ」

リーダーのダニエラが、会心の笑みを浮かべて承諾してくれました。
これほどいい笑顔を見るのは久しぶりですね。
それに、私の事をルシア嬢と呼ぶのを、ポーラと呼び捨てにしてくれます。
同じパーティーメンバーとして、肩を並べて戦うと言ってくれているのです。
背中を預けて戦うと言ってくれているのです。
私もその心意気に応えないといけません。

「私の愛馬に念話を届けました。
私のモノになった軍馬を率いて暴れてくれるそうです。
これで二之丸三之丸は大混乱になるはずです。
その混乱を利用して、この国を出ます。
まずはソフィア。
貴女が城外に出て逃走準備をしてください」

「分かった。
だが少し確認させてくれ。
拠点の屋敷に残してきたモノは、全て捨てていくんだね?」

「はい、命に勝るモノはりません。
生きてさえいれば、取り返せる可能性もあります。
自分の力で新たに手に入れる事もできます。
まずは生きて逃げる事を考えます」

「分かった。
私もその考えに同意する。
まずは生き残る事だけ考えよう」

「じゃあ、準備と覚悟はいいですか?」

「ああ、何時でも飛ばしておくれ」

ソフィアに確認を取って、空に送り出しました。
そこそこのスピードで城外に向けて飛ばしたのですが、見張りがちゃんと仕事をしていたようです。

「逃げたぞ!
一人空を飛んで逃げたぞ!
あいつら、飛行魔術を使うぞ。
追え、急いで追うんだ!」

見張りが周囲に知らせます。
急いで矢を射る者まで現れました。

「殺すな!
矢を使いうんじゃない、バカモノ!
急いでここを開けろ、さっさと扉を壊さんか!
逃げた者を追え!
絶対に逃がすな!」

腐れ外道のエリアス王太子が怒鳴り散らしています。
想定外の事が起こって慌てふためいているのでしょう。
いい気味です。

「うわああああ!
馬が、馬が暴れています!
伝令が蹴り殺されました。
追撃の指示が伝えられません!」

「バカかお前は!
次の伝令をだせ!
四人五人だぜ!
いや、徒士隊十人全員を伝令に出せ!」

ティシュトリヤが上手くやってくれています。
本当に賢い馬です。
なんといっても、私をウィリアム様たちに出会わせてくれた馬です。
普通の馬とは全く違います。
私の願いを聞いてくれた時から、伝令を潰すために準備してくれていたとしか思えない対応です。

「二人目です!
二人目が飛行魔術で逃げます。
本当に逃がしていいんですか?
矢を射らなくていいんですか?」

「誰が逃がせと言った!
絶対に逃がすな!
だが殺してはならん。
絶対に殺してはならん!
生け捕りにしろ!」

エリアスの腐れ外道が、思い通りにいかなくて、配下に罵詈雑言を浴びせていますが、その程度では、信望が地に落ちて権力を失ったりはしないのでしょうね。
まあ、いいです。
地道にいきましょう。
次はヴァレリアを王都外に送ります。

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