「溺愛」「婚約破棄」「ざまあ」短編集3

克全

第10話

「素晴らしいです!
これなら文句なしでクランの結成が認められます。
団員の募集依頼をだされますか?」

「ええ、頼みます。
ただ条件が少し変わっているのですが、いいですか?」

「どのような条件でしょうか?
規約に違反していないか、詳しく教えてください」

私たちは冒険者ギルドの職員と亜竜狩りを行いました。
とは言っても、亜竜種の中で最も小さく弱い鉤竜です。
それ以上の相手だと、素材を傷つけるような斃し方になってしまいます。
命懸けで斃すのですから、売り物にならないような斃し方をしては無意味です。
亜竜種の中では最小最弱の鉤竜でも、亜竜は亜竜なのです。
斃せば玉鋼級冒険者に認定されるのです。
玉鋼級冒険者パーティになって初めて、クランの設立が認められるのです。

「条件は職人の募集です。
狩りに必要な武器や防具、保存食や小道具、羊皮紙や魔術巻物を制作する工房で働く職人を募集したいのです」

「それは、本当にクランに必要なのですか?
荷運びや弟子、料理人や掃除婦を募集したクランなら今までもありましたが、普通はケガをしたり歳を取ったりして狩りができなくなった仲間を雇うのです」

「ここにいるポーラは魔術巻物を作ることができるのですよ。
ですがその知識と技術は、魔術師の秘中の秘です。
おいそれと教えることなどできません。
ですが安全に効率的に狩りをするのなら、狩りにポーラを同行させなければいけません。
それでは直ぐに魔術巻物が不足してしまいます。
だから弟子をとって魔術巻物を創らそうと思うのですが、ポーラは女です。
素性や性格の確かでない男を弟子にはできません。
そこで団員契約で縛り、安全を確保したいのです。
多めに創り出せるようになったら、冒険者ギルドを通して販売も可能です。
冒険者ギルドも魔術巻物は必要なのではありませんか?」

「理由は分かりました。
確かにギルドとしても魔術巻物は喉から手が出るほど欲しいです。
ギルド所属のクランが魔術巻物は創って売ってくれるのなら、大助かりです。
ですが私の独断で決められる問題ではありません。
ギルドの規約に抵触していないが、マスターを含めた幹部の判断が必要です」

「分かりました。
ギルドの判断をお待ちします」

私たちはギルドが認めると確信していました。
そこで大人数が共同生活ができて、しかも工房として利用できる拠点を探すことにしました。
転ばぬ先の杖ですが、これが想像以上に難航してしまいました。
なんといっても王都は住民数に比べて狭いのです。
多くの冒険者が集まり、彼らが狩った素材を買い求める商人も多数集まり、繁栄に職と食を求めた貧民が集まっているのです。
しかも国が大きくなるほど貴族士族が増えるのです。
家不足は当然なのです。

「おねえちゃん。
なにか食べるものをめぐんでください」

          

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