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奴隷魔法使い

克全

第251話薩摩辺境伯家

『薩摩辺境伯家・鶴丸城』

俺と彩は島々の治療を優先させつつ、奄美大島・屋久島・種子島を制圧して行った。そろそろ薩摩辺境伯家からの反撃を想定していたが、現地の代官主従以外は一切なの抵抗もなかった。長年闇奴隷売買を行って来た薩摩辺境伯家なら、それなりの魔法使いを戦力として残していると考えていた。その魔法使いを戦力として投入して来ると思ったのだが、想定外の無反応だった。

「尊、どっちから攻め落とすの?」

「彩はどっちからがいいと思う。」

「薩摩辺境伯家がいいと思うわ。」

「理由は?」

「薩摩辺境伯家を攻め落とせば、属国の琉球大公家は戦わずして降伏すると思うわ。」

「俺も彩の言う通りだと思っているよ」

「じゃあ決まりね。」

俺と彩は無人の野を行くが如く薩摩国の空を飛んで鶴丸城に迫った。家中の兵達には制圧した島々を守らせ、島民の生活を守らせた。

「待て! ここは薩摩辺境伯家の御領地だぞ! 何者であろうとこれ以上御城に接近することは許さん!」

遂に俺と彩の前に、薩摩辺境伯家の魔法使い達が立ちはだかった。1辺境伯家の魔法使いの数とは思えない、50名以上の魔法使いがいる。恐らく各地の奴隷冒険者千人砦から攫われた者もいるのだろう。

「儂は王家からの正使・唐津子爵だ。」

「私は王家からの副使・飯豊男爵です。」

「辺境伯家は闇奴隷売買の首謀者として罰せられることになった。この処置に素直に従わない場合は、辺境伯家は御取り潰しになる事になる。ここは素直に処罰を受けいれ、王家の御情けに縋るがいい。」

「黙れ! 王家の不当な処分になど従ういわれはない。命が惜しければ早々に尻尾を巻いて王都に帰るがいい!

「家柄だけで選ばれた三下魔法使いに用はない。攫われて嫌々従っている者は後ろに下がっていろ。人質ごと無傷で助けてやる!」

明らかに指揮している者より魔力が大きい者達の顔色が変わった。どうやら彼らが攫われて嫌々仕えている者達だろう。攫われる前からの家族や愛する人を人質に取られたか、攫われて仕える内に愛する者が出来たのかは分からない。だが今の彼らには守るべき者がいるのだろう。

「何をしている! さっさと攻撃せんか!」

「黙りなさい!」

家格に胡坐をかき、能力も伴わないのに有能な魔法使いに理不尽な命令を下した敵は、彩の怒りに火をつけてしまった。奴隷救出解放を目指す彩に取って、この指揮官は許しがたかったのだろう。圧倒的な魔力で、理不尽なまでの力差がある麻痺魔法を叩き付けた。

哀れな指揮官は一切の行動を封じられ、魔力の発動も止まってしまい、地上に真っ逆さまに落ちて行った。彩も殺す気まではなかったようで、ぎりぎり地上激突前に浮遊魔法を使って助けてやっていた。

「もう1度繰り返す! 俺と飯豊男爵ならば、魔法を使って一瞬の内に城内の全ての人を眠らせる事も麻痺させることも可能だ。そうすれば君たちの大切な人を無傷で助け出す事も出来る。ここは抵抗することなく王家の処置に従ってもらいたい。」

「本当に家族を助けてもらえるのか?」

「貴様裏切る心算か!」

「黙りなさい!」

また1人の敵魔法使いが、彩の麻痺魔法を受けて地上に落下して行った。辺境伯家出身の魔法使いなのだろう。また彩が地上すれすれで助けていたが、実力の違いはこの場にいた魔法使い全ての眼には明白だ。これでもまだ俺と彩に逆らうとしたら、忠義者かもしれないが馬鹿以外の何者でもない。

「まあいい、反抗的な目をしている者はしばらく眠ってもらう。」

俺も時間を掛けるのが嫌になった。彩の2度の魔法で、辺境伯家に忠実な者と仕方なく仕えている者の判別は出来ている。忠実な者全てに強烈な麻痺魔法を喰らわせてやった。

「さて、残った者達には教えてもらいたいことがある。鶴丸城に魔法を防御する仕掛けはあるか?」

「・・・・・・」

「人質に取られている家族のことを思って、言いたくないのは分かっている。だが魔法の効かない場所に大量の兵が隠れていると、諸君の家族を無傷で助けにくくなる。だがら知っているなら正直に答えて欲しい。魔法の効果を無効化する場所は城内にあるのか?」

「私の知る範囲ではありません。しかし私達攫われてきた魔法使いは、ほとんど何も知らされておりません。ただ命じられるままに魔法を使うだけです。」

「他の者はどうだ? 何か知っている事はないか?」

俺の問いに、残った魔法使い達は互いの顔を見合わせている。どうやら本当に何も知らされていないようだ。城内に何の仕掛けも無ければ安心だが、在るのに分からないのは危険だ。俺と彩をどうにかできるような仕掛けがこの世に存在するとは思えないが、人質が巻き添えを喰って犠牲になる事は防がないといけない。

「まずは貴君らの家族を助け出す。何所に囚われているのか分かっているか?」

「二之丸の地下に囚われております。」

「そうか。約束通り擦り傷1つ負わせないように努力しよう。」

(どうする心算?)

(二之丸全体に麻痺魔法と睡魔魔法をかける。)

(魔力の無駄遣いだけど仕方ないわよね?)

(ああ、今後の事もある。魔法使い達の信頼は掛け替えがないからね。)

俺は彩と念話で打ち合わせした後、無造作に鶴丸城二之丸全域に2つの魔法をかけた。それを側で見ていた辺境伯家の魔法使いは唖然としている。まあ当然だろう、使われた魔力の総量を考えれ、ばどれほどの実力差があるか一目瞭然だ。

「人質の家族を救い出す。案内してもらおうか。」

「はい!」

「先程俺の質問に答えてくれた男が、率先して案内してくれることになった。」

俺と彩は万が一の裏切りを考慮して、魔法使い達を先に行かせて後ろからついて行く形を取った。そして2つの魔法に抵抗して待ち伏せする者がいないか、最大の警戒をしながら進む事にした。

「尊の魔法に抵抗出来る人なんているかな?」

「まずいないと思うけど、大陸から魔法使いを迎えている可能性もあるからね。」

「そうね! 油断大敵だね。」

二之丸内の屋敷の下に、元々は罪人を収容しておく為の地下牢が設けられていた。家臣の列に加えたはずの魔法使いの家族を、このような場所に監禁するなど辺境伯家の下劣な家風をよく表していた。幸いにして、2つの魔法に耐性のある者など存在しなかったようだ。全く何の抵抗を受ける事無く地下牢に辿り着いた。

「一朗太! 朝日! 美由紀!」

地下牢の床に倒れ伏している人影を見て、先頭に立って俺達を案内してくれていた魔法使いが駆けだした。他の魔法使い達も、それぞれ家族の名前を叫びながら駆け出して行った。

何時までも彼らに不安を与える訳に行かないから、素早く全員に回復魔法をかけた。勿論1人1人掛けるのは面倒なので、範囲魔法で一斉に麻痺と睡魔から回復させた。家族が回復したので安心したのか、魔法使い達は一斉に俺と彩の家臣になる事を誓った。俺と彩にしても、今後の事を考えれば魔法使い冒険者家臣以外の、自由に指図できる家臣は喉から手が出るほど欲しかったから渡りに船だ。

早速魔法使いとその家族を纏めて家臣の列に加えた。そして最初の仕事として、麻痺と睡魔で転がっている辺境伯家の家臣達を縄で縛って確保してもらった。勿論地下牢に放り込んでもらった。その上で、俺は鶴丸城本丸と城下にも麻痺と睡魔の魔法を大々的にかけた。

剛勇無比と言われた薩摩辺境伯家の家臣団も、圧倒的な魔力の前には無力だった。麻痺と睡魔で動けない辺境伯家の一族や家臣縛り確保するだけでと言う、恐ろしくあっけない結末だった。日々怠る事無く魔力鍛錬を行って来たことで、正面からの戦いになれば俺と彩に対抗できる者など存在しなくなっていた。

王都から追加の兵力を運び、薩摩辺境伯家の外城を1つ1つ制圧して行った。勿論最初に麻痺と睡魔の魔法をかけて抵抗できないようにしておき、その上で家臣達に捕縛させると言う方法を取った。薩摩・大隅両国の外城を全て制圧する頃には、琉球大公家も進んで降伏して来た。

最終的に薩摩辺境伯家は、王家の処分に抵抗した事が問題となり廃絶処分となった。ただ一門から1人だけ5000石士族として家名を残すことが許された。そして琉球大公家は、一旦廃絶処分となった。しかし新規取り立てと言う体裁で、大隅の中から1万石を再検地の上で、準男爵家として王家の家臣の列に加わった。

そして俺と彩の処遇なのだが、俺は琉球大公家の領地であった島々を新規で与えられ、唐津領を含めて唐津伯爵に陞爵される事になり。彩は薩摩から4万石を新規で与えられ子爵に陞爵される事になった。

彩はこれで和人奴隷解放に専念できると喜んでいたが、果たしてそう上手く運ぶかどうか不安な面もある。だが彩がやりたいというなら、万難を排して手助けするしかないだろう。

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