奴隷魔法使い
第248話西表島制圧
『琉球大公国・西表島』
「あなた様は何者でございますか?」
「私は王家からの使者だが、おやじ殿こそ何者だ?」
「私はこの村で世話役をしている那良伊源太てもんですが、王家とは琉球王家の方ですか?」
「いや俺達は本土の武蔵王家に仕える者だ、琉球家は大公であって王ではないぞ。」
「しかしこの西表では王と名乗っておられます。」
「それは不敬な事だな。本土に来れば大公と遜っているのに、此方では王と尊大にしているのだな。」
「はい、しかも琉球本島には掛けていない人頭税を、ここ西表と石垣・宮古には課しています。払えなければ女房子供を奴隷として連れ去っていきます。」
「それが武蔵王家の方に伝わってな、今度大公位を剥奪して領地も移動させられることになったのだ。」
「まことでございますか!」
「ああ、次の領主はまだ決まっていないが、最低でも琉球本島と同じ年貢になる予定だ。」
「おおおおお、神様ありがとうございます。」
「そこで新たな領主が来るに当たり、琉球大公家の代官を取り押さえておきたいのだが、何処にいるか分かるか?」
「ここは病の多い地で、祖納の代官は先日亡くなりました、いまは元々の島民しか住んでおらんのです。」
「なんだって! 病が多いのか?」
「はい、激しい高熱を繰り返し亡くなるのです。」
「尊、どうするの?」
「俺達には有り余る魔力があるから、何時でも治癒魔法をかけることが出来る、だから大丈夫だ。だが既に疫病に感染している可能性もあるから、発病前に互いに治癒魔法を掛けあおう。その上で念の為に、この地方特有の病に対する治癒魔法を書き記した書物を運んでもらおう。」
「連れてきた1000兵はどうするの?」
「しばらくは場内で訓練させる。」
「そうよね、下手の城外には出せないわね。」
「あの~」
「源太、この島で1番地位の高いのは誰だ?」
「慶来慶田城(けらいけだぐすく)家の用達様で、西表首里大屋子を務めておられます。」
「俺は唐津子爵の唐津尊。」
「私は飯豊男爵の飯豊彩。」
「なんと! 子爵様と男爵様が直々にこのような僻地に来てくださったのですか?!」
「大公家の改易と城地の受け渡しだからな、それに戦になった場合のためにも、魔法使いである我らが選ばれたのだ。」
「なんとなんと! 魔法使い様なのですか!」
「まあそんなことはいいのだ、慶来慶田城用達とやらのところに案内いてくれ。」
「へい、ついてきてください。」
『西表島・祖納村』
「慶来慶田城用達と申します。どうぞお見知りおき願います。」
「うむ、引き続き西表の民を束ねてもらう事になるが、それはあくまで王家の政に従う事が条件ですが、守ると誓えますか?」
「曾祖父の慶来慶田城用緒の名に掛けて、西表島民の安寧の為に働く事を誓います。」
「それでは西表島全ての集落に案内してもらおう。」
「はい、承りました。」
俺と彩は、西表島7カ所の集落と5つの島を飛んで回った。慶来慶田城用達をはじめとする全ての領民は、飛行魔法に驚き畏怖した。最初に訪れた祖納集落の代表者・慶来慶田城用達だけでなく、各集落の主だったもの5名を大型盥空船に乗せて一緒に廻った。
「この子達は?」
「はい・・・・・」
「咎めぬから正直に申すのだ!」
「琉球王家への年貢が払えず、母親が連れ去られてしまった為、食べる物にも事欠いているのです。」
「助けてやる者も無いのですか!?」
彩は同じ村の民に怒りを覚えたようだ。
「村の者達も同じでございます。助けてやりたくても自分達もぎりぎりなのです。次の年貢までに蓄えておかないと、妻や娘を連れ去られてしまうのです。」
「尊! 直ぐに大公家を滅ぼしましょう!」
「分かっているよ、でももう少し待ってくれ。離島を全て解放してから、減封転封に従うように通告する。それで王家の命に従わず抵抗したら滅ぼせばいい。先ずは民を助けてからだよ。」
「・・・・・分かった。」
「困窮する民には、俺と彩で食料を貸し与えるから、少しづつ返してくれればいい。返す方法は魚を捕って、それを干して保存食にしたり、塩を作ってくれれば買い取ろう。」
「塩作りと申されましても、そのような技術はありませんし、平地を塩作りに使えば耕作が出来なくなります。」
「技術指導は我が家から人を派遣する。塩作りをするのは、耕作に適していないところで、極力天日を利用して行おう。」
「そうですか、そうして頂ければ助かります。それと虫のいい話ではありますが、出来ましたら猪を狩っていただけないでしょうか。そうして頂ければ少しは収穫が多くなると思います。そうすれば年貢も借財の返済も多くすることができます。」
「なるほど、直ぐには無理だが、西表領の様子を見ながら決めることにしよう。」
「何卒よろしくお願い申し上げます。」
北西部、祖納岳の麓に拡がる祖納集落
北東部一帯の古見集落
仲間集落
上原集落
西部、船浮湾に面した集落
西部に位置する西表集落
南西部、鹿川湾に面する鹿川集落
上地島(かみぢじま)の集落
下地島(しもぢじま)の集落
由布島(ゆぶじま)の集落
波照間島(はてるまじま)の集落
与那国島(よなぐにじま)の集落
最後に築城した西表城に全員を連れて行った。いつの間にか島の奥地に巨大な城が出来ている事に、島の代表者たちは腰を抜かさんばかりに驚いていた。城は浦内川を遡り、桑木山を囲むように水源を確保して縄張りされていた。
「ここにいるのが城を預かる内藤信康だ。」
「唐津子爵家に仕える内藤信康と申す、今後は相談があれば何事によらず話してくれ。」
「「「「はっは~」」」」
「信康、この島には風土病があるようだから、暫らくは城に籠って一切出てはならん。」
「承りましたが、それで我らの役目が果たせませしょうか?」
「それは大丈夫だ、この島の代官は疫病で死んでいるし、領民達も臣従を誓っている、万が一敵が攻め込んできた場合は、領民をこの城に収容して守る事に専念してくれ。」
「敵と言うのは琉球大公家でしょうか?」
「それが主敵ではあるが、場合によっては清帝国や南蛮諸国が大公家に味方するかもしれない。」
「島に上陸する者は、何者であろうと敵とみなせばよいのでございますな。」
「そうだ、俺か飯豊男爵が同行していない者は、全て時だと思へ。いや、場合によったら魔法の使える家中の者を代理によこすかもしれない。」
「杜若智子殿や椿弘美殿でございますか?」
「そうだ、他にも唐津家魔術師団の誰かを使いに出すかもしれん。」
「承りました。」
「慶来慶田城用達、猪以外に何か要望があれば信康にもうしておけ。今の内に互いの事を理解しておくように。」
「御言葉に甘えて確かめさせて頂きますが、いざという時にはこの城に逃げ込んでよいとの事ですが、義倉として食料を納めておく必要があるのでしょうか?」
「唐津子爵様?」
「信康、自分で考えて返事してみなさい。」
彩が俺の意を汲んで、俺に聞こうとする信康に考え返事するように促してくれた。
「そうだな、暫らくは必要ない。非常時の食料は城の備蓄を分け与える。そうだな、島の生産が安定して、島民の生活が豊かになるのには5年はかかるだろう。5年後から義倉に食料を納めてくれればいい。それまでの年貢は王家も当家も4公6民に統一されている。」
「そんなに少なくてよいのですか?! 人頭税など、他に税があるのではありませんか?」
「合戦などがあれば別だが、基本はそれだけだ。いや狩猟漁労など、全ての生産物の4分を納めてもらう。田畑の耕作物だけではない。子爵様、男爵様、それで宜しゅうございますか?」
「それで大丈夫ですね、子爵殿。」
「ああ大丈夫だ。」
「「「「「有り難き幸せでございます!」」」」」
当家の家臣達は俺と彩の呼び方に苦労している。通常どの家も爵位に関係なく殿と呼ぶ場合がほとんどだが、当家は俺と彩の2人が爵位を保有している。その為、彩を奥方様と呼ぶのを憚り、俺を子爵様、彩を男爵様と呼ぶようになった。
内藤信康・西表島代官・西表城城代
「あなた様は何者でございますか?」
「私は王家からの使者だが、おやじ殿こそ何者だ?」
「私はこの村で世話役をしている那良伊源太てもんですが、王家とは琉球王家の方ですか?」
「いや俺達は本土の武蔵王家に仕える者だ、琉球家は大公であって王ではないぞ。」
「しかしこの西表では王と名乗っておられます。」
「それは不敬な事だな。本土に来れば大公と遜っているのに、此方では王と尊大にしているのだな。」
「はい、しかも琉球本島には掛けていない人頭税を、ここ西表と石垣・宮古には課しています。払えなければ女房子供を奴隷として連れ去っていきます。」
「それが武蔵王家の方に伝わってな、今度大公位を剥奪して領地も移動させられることになったのだ。」
「まことでございますか!」
「ああ、次の領主はまだ決まっていないが、最低でも琉球本島と同じ年貢になる予定だ。」
「おおおおお、神様ありがとうございます。」
「そこで新たな領主が来るに当たり、琉球大公家の代官を取り押さえておきたいのだが、何処にいるか分かるか?」
「ここは病の多い地で、祖納の代官は先日亡くなりました、いまは元々の島民しか住んでおらんのです。」
「なんだって! 病が多いのか?」
「はい、激しい高熱を繰り返し亡くなるのです。」
「尊、どうするの?」
「俺達には有り余る魔力があるから、何時でも治癒魔法をかけることが出来る、だから大丈夫だ。だが既に疫病に感染している可能性もあるから、発病前に互いに治癒魔法を掛けあおう。その上で念の為に、この地方特有の病に対する治癒魔法を書き記した書物を運んでもらおう。」
「連れてきた1000兵はどうするの?」
「しばらくは場内で訓練させる。」
「そうよね、下手の城外には出せないわね。」
「あの~」
「源太、この島で1番地位の高いのは誰だ?」
「慶来慶田城(けらいけだぐすく)家の用達様で、西表首里大屋子を務めておられます。」
「俺は唐津子爵の唐津尊。」
「私は飯豊男爵の飯豊彩。」
「なんと! 子爵様と男爵様が直々にこのような僻地に来てくださったのですか?!」
「大公家の改易と城地の受け渡しだからな、それに戦になった場合のためにも、魔法使いである我らが選ばれたのだ。」
「なんとなんと! 魔法使い様なのですか!」
「まあそんなことはいいのだ、慶来慶田城用達とやらのところに案内いてくれ。」
「へい、ついてきてください。」
『西表島・祖納村』
「慶来慶田城用達と申します。どうぞお見知りおき願います。」
「うむ、引き続き西表の民を束ねてもらう事になるが、それはあくまで王家の政に従う事が条件ですが、守ると誓えますか?」
「曾祖父の慶来慶田城用緒の名に掛けて、西表島民の安寧の為に働く事を誓います。」
「それでは西表島全ての集落に案内してもらおう。」
「はい、承りました。」
俺と彩は、西表島7カ所の集落と5つの島を飛んで回った。慶来慶田城用達をはじめとする全ての領民は、飛行魔法に驚き畏怖した。最初に訪れた祖納集落の代表者・慶来慶田城用達だけでなく、各集落の主だったもの5名を大型盥空船に乗せて一緒に廻った。
「この子達は?」
「はい・・・・・」
「咎めぬから正直に申すのだ!」
「琉球王家への年貢が払えず、母親が連れ去られてしまった為、食べる物にも事欠いているのです。」
「助けてやる者も無いのですか!?」
彩は同じ村の民に怒りを覚えたようだ。
「村の者達も同じでございます。助けてやりたくても自分達もぎりぎりなのです。次の年貢までに蓄えておかないと、妻や娘を連れ去られてしまうのです。」
「尊! 直ぐに大公家を滅ぼしましょう!」
「分かっているよ、でももう少し待ってくれ。離島を全て解放してから、減封転封に従うように通告する。それで王家の命に従わず抵抗したら滅ぼせばいい。先ずは民を助けてからだよ。」
「・・・・・分かった。」
「困窮する民には、俺と彩で食料を貸し与えるから、少しづつ返してくれればいい。返す方法は魚を捕って、それを干して保存食にしたり、塩を作ってくれれば買い取ろう。」
「塩作りと申されましても、そのような技術はありませんし、平地を塩作りに使えば耕作が出来なくなります。」
「技術指導は我が家から人を派遣する。塩作りをするのは、耕作に適していないところで、極力天日を利用して行おう。」
「そうですか、そうして頂ければ助かります。それと虫のいい話ではありますが、出来ましたら猪を狩っていただけないでしょうか。そうして頂ければ少しは収穫が多くなると思います。そうすれば年貢も借財の返済も多くすることができます。」
「なるほど、直ぐには無理だが、西表領の様子を見ながら決めることにしよう。」
「何卒よろしくお願い申し上げます。」
北西部、祖納岳の麓に拡がる祖納集落
北東部一帯の古見集落
仲間集落
上原集落
西部、船浮湾に面した集落
西部に位置する西表集落
南西部、鹿川湾に面する鹿川集落
上地島(かみぢじま)の集落
下地島(しもぢじま)の集落
由布島(ゆぶじま)の集落
波照間島(はてるまじま)の集落
与那国島(よなぐにじま)の集落
最後に築城した西表城に全員を連れて行った。いつの間にか島の奥地に巨大な城が出来ている事に、島の代表者たちは腰を抜かさんばかりに驚いていた。城は浦内川を遡り、桑木山を囲むように水源を確保して縄張りされていた。
「ここにいるのが城を預かる内藤信康だ。」
「唐津子爵家に仕える内藤信康と申す、今後は相談があれば何事によらず話してくれ。」
「「「「はっは~」」」」
「信康、この島には風土病があるようだから、暫らくは城に籠って一切出てはならん。」
「承りましたが、それで我らの役目が果たせませしょうか?」
「それは大丈夫だ、この島の代官は疫病で死んでいるし、領民達も臣従を誓っている、万が一敵が攻め込んできた場合は、領民をこの城に収容して守る事に専念してくれ。」
「敵と言うのは琉球大公家でしょうか?」
「それが主敵ではあるが、場合によっては清帝国や南蛮諸国が大公家に味方するかもしれない。」
「島に上陸する者は、何者であろうと敵とみなせばよいのでございますな。」
「そうだ、俺か飯豊男爵が同行していない者は、全て時だと思へ。いや、場合によったら魔法の使える家中の者を代理によこすかもしれない。」
「杜若智子殿や椿弘美殿でございますか?」
「そうだ、他にも唐津家魔術師団の誰かを使いに出すかもしれん。」
「承りました。」
「慶来慶田城用達、猪以外に何か要望があれば信康にもうしておけ。今の内に互いの事を理解しておくように。」
「御言葉に甘えて確かめさせて頂きますが、いざという時にはこの城に逃げ込んでよいとの事ですが、義倉として食料を納めておく必要があるのでしょうか?」
「唐津子爵様?」
「信康、自分で考えて返事してみなさい。」
彩が俺の意を汲んで、俺に聞こうとする信康に考え返事するように促してくれた。
「そうだな、暫らくは必要ない。非常時の食料は城の備蓄を分け与える。そうだな、島の生産が安定して、島民の生活が豊かになるのには5年はかかるだろう。5年後から義倉に食料を納めてくれればいい。それまでの年貢は王家も当家も4公6民に統一されている。」
「そんなに少なくてよいのですか?! 人頭税など、他に税があるのではありませんか?」
「合戦などがあれば別だが、基本はそれだけだ。いや狩猟漁労など、全ての生産物の4分を納めてもらう。田畑の耕作物だけではない。子爵様、男爵様、それで宜しゅうございますか?」
「それで大丈夫ですね、子爵殿。」
「ああ大丈夫だ。」
「「「「「有り難き幸せでございます!」」」」」
当家の家臣達は俺と彩の呼び方に苦労している。通常どの家も爵位に関係なく殿と呼ぶ場合がほとんどだが、当家は俺と彩の2人が爵位を保有している。その為、彩を奥方様と呼ぶのを憚り、俺を子爵様、彩を男爵様と呼ぶようになった。
内藤信康・西表島代官・西表城城代
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