奴隷魔法使い
第242話琉球大公国
『王都・王城・謁見の間』
「尊・彩、紹介しよう、琉球大公の公孫・尚益だ。」
「お初に御目にかかります、唐津子爵殿・飯豊男爵殿、琉球大公の孫・尚益と申します、以後お見知りおきください。」
「これはこれは丁寧な挨拶を頂き痛み入ります、私が唐津尊と申します。」
「丁寧な御挨拶を頂き恐悦至極で御座います、私は飯豊彩と申します。」
「堅苦しい挨拶はその程度にして本題に入りたいのだがいいか?」
間部筆頭大臣は早く本題に入りたいようだ、陛下も間部殿も予定が詰まっているのだろう。
『結構でございます。』
思いがけず俺・彩・尚益が同時に返事をした。
「唐津次席大臣殿と飯豊次席大臣添役殿は、琉球大公国の事はどこまで御存じかな?」
「寡聞にして何も存じません。」
「私もでございます。」
「では説明しよう、元々琉球大公国は独立した王国だった、しかし建国王の許可を受けた薩摩辺境伯家の侵攻を受けて降伏し、実質的には薩摩辺境伯家の監督下にある大公国になったが、諸外国に対しては王国として振る舞っている。」
「えらくややこしい立場なのですね。」
「まあ薩摩辺境伯家は表高より実高が著しく低かったのでな、独力で他国を切り取れるならと建国王が認められたと伝えられているが、確かな事は分からない、はっきりしているのは戦国の動乱で、なぜか薩摩辺境伯家けだけ籾で石高を計算していることだ。」
「え~と、普通は玄米で石高は計算しますよね、家の唐津領は玄米で5万石ですから、籾で測れば10万石になりますよね。」
「そうだ、だから薩摩辺境伯家の実質的な国力は36万石になる、しかもそれはここにおられる尚益殿の琉球大公国を加えての事だ。」
「率直に確認しますが、琉球と言う所は対外的には独立王国として振る舞っていますが、実質的には王国の1辺境伯家の属領でしかなくなっていると言う事ですか?」
「もう少し詳しく私から説明させて頂きます。」
尚益殿は苦渋の表情で話しだした。
「我が琉球王国は、清国と柵封貿易を行っております、また南方の国々との貿易も行っておりますが、その富の全てを薩摩辺境伯家に奪われ、国民は塗炭の苦しみを味わっております。」
(殿様、民が可哀想です。)
(そうだね、でも実際の生活を見てみないと断定は出来ないよ、交渉を有利に運ぶための嘘の可能性もあるからね。)
(それはそうですね、でも本当なら助けてあげたいです。)
(分かった、その心算で話すよ。)
「具体的にはどういうことなのですか?」
「清国との柵封は、出兵を命令されることもありますが、逆に冊封国が攻撃を受けた場合は清国に対して救援を求めることができるという関係です。我が国は貢物を皇帝に献上しなりませんが、清国皇帝はその数倍もの賜物を授けてくださいますし、清国は薩摩辺境伯家のように我が国を収奪したり内政干渉したりしません。」
「それなら清国に救援を求めればいいではありませんか?」
「清国は海禁政策を取っており、我が国への援軍は望めません。」
「さきほどは、出兵を命令される代わり援軍を求める事が出来る、互いに助け助けられる関係と言われていましたね?」
「建前と本音でございます。」
(殿様の言われた通りですね、嘘だったのですね。)
(交渉だからね、これからも話を鵜呑みにしちゃ駄目だよ。)
(はい。)
「我が国の稲作は、温暖な気候を利用して年間2回ないし3回収穫できる非常に収率の高いものでした。けれども、薩摩辺境伯家はそれまで活発に行われていた稲作を、商品価値の高いサトウキビ生産へと強制的に転換させたのです。台風の被害を受けやすい我が国にとって、稲の余剰生産は重要なものなのです、サトウキビ栽培への転換による稲の作付減少は、我が国の食糧供給を極めて不安定なものにしているのです。」
「それは薩摩辺境伯家からの独立を嘆願しているのですか? それとも王国から薩摩辺境伯家に政策転換を命じて欲しいのですか?」
「我が国は王国に対して朝貢させて頂き、柵封国となります、ですから薩摩辺境伯家を我が国から追い出して欲しいのです。」
(本気なのかな?)
(いや言ってることが支離滅裂だ、まともに取り合わない方がいい。)
「しかし先程からの話を聞くと、尚益殿は清国を随分慕っているようですね、我が国と柵封関係になったとして、清国との柵封貿易をどうされるのですか?」
「もちろん続けさせて頂きます。」
「二重家臣の状態ですね? 同時に2つの国の家臣になるのはおかしくないですか?」
「大国に挟まれた小国は両属するのは当たり前の事でございます、それより我が国では、薩摩辺境伯家の収奪が激しく、15歳から50歳までの男女を対象に、年齢と居住地域の耕地状況を組み合わせて算定された額が、人頭税として課すしかない状態になっております。そのため民はいくら働いても貧窮が増すばかりとなり、人身売買までも行われるようになっております、どうかお助け頂きたい。」
(可哀想だけど、信じていいのかな?)
(確認してみないといけないね。)
「間部筆頭大臣殿、本当の事ですか?」
「一部だけ本当の事です、人頭税は琉球の全ての民に課せられているのではなく、琉球大公家が侵略した植民地、宮古・八重山・与那国地方だけです。要するに自分達も、植民地にした所には悪逆な政策を行っていると言う事です。」
「尚益殿、この事はどう思っているのですか?」
「征服された者が不利益を受けるのは仕方のない事です、征服した我らは優れているのですから、それに相応しい利益を受けるのは当然の事です。」
(この人言ってることがおかしいです、殿様が言われたように支離滅裂です。)
(ああ、問題はこのような者と俺たちを会せた、国王陛下と間部筆頭大臣の思惑だよ。)
(そうですね、私達に何をさせる心算なんでしょうか?)
(うかつな返事はしない方がいいよ。)
(はい。)
「では琉球大公家を征服した薩摩辺境伯家は優れており、劣った琉球大公家から利益を得るのは当然なのではないですか?」
「はい、ですから薩摩辺境伯家を征服した王家と柵封関係を構築し、外交力で薩摩辺境伯家を超えて逆転するのです、軍事力では負けましたが外交力で勝てば、我が国の方が優れているのです。」
「なるほど、そう言う視点で勝負されているのですね。」
(言葉に出さず謀略としていれば、1つの策と考えられるのでしょうか?)
(身勝手な王家・貴族家らしい考え方だとも言えるけど、公言した時点で台無しだね。)
「そうなのだ、それで唐津子爵殿と飯豊男爵殿は、海魔獣・海魔竜を狩ってとてつもなく裕福と聞く、我が国に来て頂き狩りをして頂きたいと思っているのです。」
「ほう、それは大公家領内での狩りを認めると言う事ですね、それで条件はどうなるのです?」
「通常の条件です、2割を税として治めて頂ければ十分です。」
(殿様はどう思われますか?)
(属性魔竜ボスを倒したり、古代魔龍と試しに戦うにはいい条件だと思う、最悪異国の方に逃げれば王国に実害はないと思う。)
(琉球の民は大丈夫でしょうか?)
(海の属性魔竜ボスなら大丈夫だと思うよ。)
(陛下と間部様もそのお心算なのでしょうか?)
(後で確認してみよう。)
「おもしろい条件では有りますが、私達は国王陛下臣下です、陛下の下知に従うのみです。」
尚益大公孫は優雅に国王陛下に礼を取ってから、改めて俺たちにむきなおった。
「陛下は唐津子爵殿と飯豊男爵殿の返事次第と申されておられました。」
「そうですか、でしたら陛下や間部殿と今後の優先順位を御相談させてもらいたいのです。」
「分かりました、国の政策に優先順位がある事は理解しております、ですがなるべく早く来て頂きたいと心から願っております。」
「尚益殿、陛下は唐津子爵殿・飯豊男爵殿と魔境に開発優先順位を話し合われる、多くの貴族家からその件で陳情が来ておる、今日はこのまま下城して頂きたい。」
「承りました。」
尚益殿は優雅に部屋を出て行った。
「尊・彩、紹介しよう、琉球大公の公孫・尚益だ。」
「お初に御目にかかります、唐津子爵殿・飯豊男爵殿、琉球大公の孫・尚益と申します、以後お見知りおきください。」
「これはこれは丁寧な挨拶を頂き痛み入ります、私が唐津尊と申します。」
「丁寧な御挨拶を頂き恐悦至極で御座います、私は飯豊彩と申します。」
「堅苦しい挨拶はその程度にして本題に入りたいのだがいいか?」
間部筆頭大臣は早く本題に入りたいようだ、陛下も間部殿も予定が詰まっているのだろう。
『結構でございます。』
思いがけず俺・彩・尚益が同時に返事をした。
「唐津次席大臣殿と飯豊次席大臣添役殿は、琉球大公国の事はどこまで御存じかな?」
「寡聞にして何も存じません。」
「私もでございます。」
「では説明しよう、元々琉球大公国は独立した王国だった、しかし建国王の許可を受けた薩摩辺境伯家の侵攻を受けて降伏し、実質的には薩摩辺境伯家の監督下にある大公国になったが、諸外国に対しては王国として振る舞っている。」
「えらくややこしい立場なのですね。」
「まあ薩摩辺境伯家は表高より実高が著しく低かったのでな、独力で他国を切り取れるならと建国王が認められたと伝えられているが、確かな事は分からない、はっきりしているのは戦国の動乱で、なぜか薩摩辺境伯家けだけ籾で石高を計算していることだ。」
「え~と、普通は玄米で石高は計算しますよね、家の唐津領は玄米で5万石ですから、籾で測れば10万石になりますよね。」
「そうだ、だから薩摩辺境伯家の実質的な国力は36万石になる、しかもそれはここにおられる尚益殿の琉球大公国を加えての事だ。」
「率直に確認しますが、琉球と言う所は対外的には独立王国として振る舞っていますが、実質的には王国の1辺境伯家の属領でしかなくなっていると言う事ですか?」
「もう少し詳しく私から説明させて頂きます。」
尚益殿は苦渋の表情で話しだした。
「我が琉球王国は、清国と柵封貿易を行っております、また南方の国々との貿易も行っておりますが、その富の全てを薩摩辺境伯家に奪われ、国民は塗炭の苦しみを味わっております。」
(殿様、民が可哀想です。)
(そうだね、でも実際の生活を見てみないと断定は出来ないよ、交渉を有利に運ぶための嘘の可能性もあるからね。)
(それはそうですね、でも本当なら助けてあげたいです。)
(分かった、その心算で話すよ。)
「具体的にはどういうことなのですか?」
「清国との柵封は、出兵を命令されることもありますが、逆に冊封国が攻撃を受けた場合は清国に対して救援を求めることができるという関係です。我が国は貢物を皇帝に献上しなりませんが、清国皇帝はその数倍もの賜物を授けてくださいますし、清国は薩摩辺境伯家のように我が国を収奪したり内政干渉したりしません。」
「それなら清国に救援を求めればいいではありませんか?」
「清国は海禁政策を取っており、我が国への援軍は望めません。」
「さきほどは、出兵を命令される代わり援軍を求める事が出来る、互いに助け助けられる関係と言われていましたね?」
「建前と本音でございます。」
(殿様の言われた通りですね、嘘だったのですね。)
(交渉だからね、これからも話を鵜呑みにしちゃ駄目だよ。)
(はい。)
「我が国の稲作は、温暖な気候を利用して年間2回ないし3回収穫できる非常に収率の高いものでした。けれども、薩摩辺境伯家はそれまで活発に行われていた稲作を、商品価値の高いサトウキビ生産へと強制的に転換させたのです。台風の被害を受けやすい我が国にとって、稲の余剰生産は重要なものなのです、サトウキビ栽培への転換による稲の作付減少は、我が国の食糧供給を極めて不安定なものにしているのです。」
「それは薩摩辺境伯家からの独立を嘆願しているのですか? それとも王国から薩摩辺境伯家に政策転換を命じて欲しいのですか?」
「我が国は王国に対して朝貢させて頂き、柵封国となります、ですから薩摩辺境伯家を我が国から追い出して欲しいのです。」
(本気なのかな?)
(いや言ってることが支離滅裂だ、まともに取り合わない方がいい。)
「しかし先程からの話を聞くと、尚益殿は清国を随分慕っているようですね、我が国と柵封関係になったとして、清国との柵封貿易をどうされるのですか?」
「もちろん続けさせて頂きます。」
「二重家臣の状態ですね? 同時に2つの国の家臣になるのはおかしくないですか?」
「大国に挟まれた小国は両属するのは当たり前の事でございます、それより我が国では、薩摩辺境伯家の収奪が激しく、15歳から50歳までの男女を対象に、年齢と居住地域の耕地状況を組み合わせて算定された額が、人頭税として課すしかない状態になっております。そのため民はいくら働いても貧窮が増すばかりとなり、人身売買までも行われるようになっております、どうかお助け頂きたい。」
(可哀想だけど、信じていいのかな?)
(確認してみないといけないね。)
「間部筆頭大臣殿、本当の事ですか?」
「一部だけ本当の事です、人頭税は琉球の全ての民に課せられているのではなく、琉球大公家が侵略した植民地、宮古・八重山・与那国地方だけです。要するに自分達も、植民地にした所には悪逆な政策を行っていると言う事です。」
「尚益殿、この事はどう思っているのですか?」
「征服された者が不利益を受けるのは仕方のない事です、征服した我らは優れているのですから、それに相応しい利益を受けるのは当然の事です。」
(この人言ってることがおかしいです、殿様が言われたように支離滅裂です。)
(ああ、問題はこのような者と俺たちを会せた、国王陛下と間部筆頭大臣の思惑だよ。)
(そうですね、私達に何をさせる心算なんでしょうか?)
(うかつな返事はしない方がいいよ。)
(はい。)
「では琉球大公家を征服した薩摩辺境伯家は優れており、劣った琉球大公家から利益を得るのは当然なのではないですか?」
「はい、ですから薩摩辺境伯家を征服した王家と柵封関係を構築し、外交力で薩摩辺境伯家を超えて逆転するのです、軍事力では負けましたが外交力で勝てば、我が国の方が優れているのです。」
「なるほど、そう言う視点で勝負されているのですね。」
(言葉に出さず謀略としていれば、1つの策と考えられるのでしょうか?)
(身勝手な王家・貴族家らしい考え方だとも言えるけど、公言した時点で台無しだね。)
「そうなのだ、それで唐津子爵殿と飯豊男爵殿は、海魔獣・海魔竜を狩ってとてつもなく裕福と聞く、我が国に来て頂き狩りをして頂きたいと思っているのです。」
「ほう、それは大公家領内での狩りを認めると言う事ですね、それで条件はどうなるのです?」
「通常の条件です、2割を税として治めて頂ければ十分です。」
(殿様はどう思われますか?)
(属性魔竜ボスを倒したり、古代魔龍と試しに戦うにはいい条件だと思う、最悪異国の方に逃げれば王国に実害はないと思う。)
(琉球の民は大丈夫でしょうか?)
(海の属性魔竜ボスなら大丈夫だと思うよ。)
(陛下と間部様もそのお心算なのでしょうか?)
(後で確認してみよう。)
「おもしろい条件では有りますが、私達は国王陛下臣下です、陛下の下知に従うのみです。」
尚益大公孫は優雅に国王陛下に礼を取ってから、改めて俺たちにむきなおった。
「陛下は唐津子爵殿と飯豊男爵殿の返事次第と申されておられました。」
「そうですか、でしたら陛下や間部殿と今後の優先順位を御相談させてもらいたいのです。」
「分かりました、国の政策に優先順位がある事は理解しております、ですがなるべく早く来て頂きたいと心から願っております。」
「尚益殿、陛下は唐津子爵殿・飯豊男爵殿と魔境に開発優先順位を話し合われる、多くの貴族家からその件で陳情が来ておる、今日はこのまま下城して頂きたい。」
「承りました。」
尚益殿は優雅に部屋を出て行った。
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