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奴隷魔法使い

克全

第240話競売

『飯豊魔境・朝日魔境』

翌日も夜明け前に起き、朝食前に魔力の半分を使って莫大な収容力の有る汎用魔法を創り出した。昨夜の白鯨型や超大型の海魔獣・海魔竜を狩るとすれば、今後はこれくらいの汎用魔法袋が必要になってくる。俺とは著しく魔力差はあるけれど、彩も魔力の半分を使って汎用魔法袋を創り出した。そして大量の飲食を伴う魔力・身体の修練・魔力回復を行い、愉しみである再度の朝食で締めた。俺と彩が生き延びる為の当たり前の日課、朝食・昼食・間食・夕食・夜食の1日5度の日課だ。

「シズナ、もっと早く!」

「はい!」

「スミエ、周囲の注意を怠らない!」

「はい!」

「タエ! 気を緩めない! 死ぬよ!」

「はい!」

彩がスパルタで囮役候補を鍛えている。10人の囮役候補が、飛行盾に乗って縦横に空を駆ける練習をしている。10人の装備は俺と彩が創り出して貸し与えているもので、足元には飛行盾、左手にも飛行盾、右手には連発魔竜弩か魔竜杖、身に纏うのは魔竜鎧と魔竜兜に魔竜外套、これだけの装備が有れば少々の事で死ぬ事は無い。

だが彩が操る飛行盾の攻撃は別だ、同じ性能の飛行盾とは言っても、彩が操れば段違いの破壊力を叩きだす。10人の囮役候補は、1人1個の飛行盾に追い回され攻撃される訳では無い、10個の飛行盾が他の候補生の向こうから攻撃を仕掛けてくる事も有るのだ、まるで10個の飛行盾に襲われているかのようだ。

彩が候補生が生き残れるように訓練している間に、俺は飯豊魔境・朝日魔境を行き来して狩りを行った。もちろん狩場の安全を図る為の囮役なのだが、俺の気配を恐れた両魔境のボスは出てこない。御陰で約束の4時間は殆ど充魔に当てる事が出来た。

昨日の佐渡魔境狩りで不足している、競売用の魔獣・魔竜は30分ほどで狩り終えた。それでもボスが出てこないので、魔窯で創り出した魔晶石・魔鋼玉・魔黄玉・魔金剛石に魔力を充填した。普段はどうしても魔力を汎用魔法袋などの魔道具創作に費やしてしまい、沢山創り上げた魔金剛石などは創作時に一緒にいれた魔樹の魔力だけになっている。

普段狩っている魔獣・魔竜の魔晶石が膨大な量手元に残っているから、無理して創作魔石に充魔する必要も無いかもしれないが、それでも貧乏性なのだろうか? 少しでも魔力を無駄にしないようにしてしまう。もちろん充魔して減った魔力は大量の飲食と魔力回復術で元に戻す。

『長崎出島』

「唐津次席大臣閣下・飯豊次席大臣添役閣下、今日も御疲れ様でございます。」

「多門、出迎え御苦労だな、だが今日は私用の競売出品だから出迎えは不要だぞ?」

「確かにそうとも言えますが、両閣下が出品される売り上げの2割は王家・王国の国庫に入ります。財政難だった王国にとっては、両閣下の警備も不正の防止も大切な役目でございます。」

「そうか、そう言う見方もあるな。確かに我らは王家・王国の要人、長崎奉行が詮議を受けて牢屋入りして入る以上、多門が我らの警備をする必要も有るな。」

「それで多門、容疑者の詮議は進んでおるのですか?」

彩は闇奴隷売買の一味の事が何より気懸りなのだろう、競売の収益などは気にならないようだ。

「自白していない者もおりますが、駒木根政方・長崎奉行と木村重長・長崎奉行所・支配組頭が自白しておりますので、下役の者共も嘘を申したり黙秘をすれば、九族が奴隷として異国に売られる事を知っております。商人以外は皆素直に自白しております。」

「南蛮や清国の商人で加担した者は分かっておるのですか?」

「はい、自白は調書に残しております。ただ全てを自白したのか、異国に逃れる為に首魁を秘匿しているのかが判断できません。ですので今は間部筆頭大臣閣下と唐津次席大臣閣下の支配下で動いている、鈴木目付殿の配下の者達が再度の詮議と捜査をしております。」

「自分が助かりたいばかりに、他人に罪を押し付ける者を見つけ出す為ですか?」

「左様でございます飯豊次席大臣添役閣下、濡れ衣を着せられる者があってはなりませんので、彼らの詮議が終わったら再度我らが3度目の詮議を行います。その為の人員も王都から送って頂く事に成っております。」

「うむ、5日後の競りに長崎に来る時には、幾人かの増員を連れて来れるであろう。」

「唐津次席大臣閣下にはお手数をお掛け致します。」

「気にするでない。」

俺と彩は多門に案内されて、勝手知ったる競り場にやって来た。九州・中国・清国・南蛮の商人が必死の形相で待ち構えている。まず最初に今日出品される商品の現物が見せられ、謂れや説明が為されるのだが、今日初めて出品した大型種の草食魔竜・肉食魔竜がどよめきを持って迎えられた。最後に出された新種の超巨大海月などは、逆に息を飲んでしまって開場が静寂に満ちてしまった。

少し意外だったのだが、大型の陸上魔竜の競り値が王都の相場を遥かに超えて値上がっていく。もしかしたら南蛮や清国でも大型種の魔竜は狩られてないのかもしれない。これなら相場が1割に暴落する恐れはなかったかもしれない。いや一般冒険者が狩れる種類は暴落するのだろう。

最後に出品された超巨大海月だが、天井知らずに暴騰するので俺の判断で自己落札にした。こいつはもう1度狩れるかどうかわからない貴重種だ、もっと高騰する可能性も有れば、俺と彩に害をなす魔道具を産み出す材料になるかもしれない。ここはもう1匹狩れるまでは売り渋ろう。

「多門、今は多門の配下が競売を仕切っているのだな?」

「はい左様でございます。」

「念話を使って、今日の競りの結果を各地の競り場と冒険者組合に送れ、今まで国内で売買されていた大型魔竜の値段は5倍で異国に売れる。」

「左様でございますな、私も陸上の魔竜は異国では安値かと思っておりましたが、大型種は高値が付くようでございますな。」

「どうやらある程度以上の大きさと強さを持つ種は、異国でも狩る事が出来ないようだ、そのような魔竜を今持っている者は、長崎で競りに出せば莫大な富を手に入れる事が出来る。その事実が知れ渡れば長崎の競りはもっと盛況になり、王家・王国の財政は安定するだろう。」

「承りました、さっそく指示してまいります。」

「では我らは王都に帰るが、見送りはせずともよい、この場から飛び立つ。」

「は! 御気を付けて御帰りなされませ。」

「うむ。」

「多門、今日は御苦労でした、闇奴隷売買の詮議をくれぐれも頼みますよ。」

「飯豊次席大臣添役閣下、身命を投げ出して御役目に務めさせていただきます。」

「はい。」

多門重共 王国目付・長崎赴任中

競りが白熱して時間が掛かり、俺と彩は深夜になっての王都帰還になりそうだったが、今日は唐津によって窯で魔石を創り、夜食と日課をする事にした。

「殿様、今日はこの後で佐渡に狩りに行かれないのですか?」

「昨日の白鯨と遣り合う事になるけど大丈夫?」

「素早く狩って素早く帰る事は不可能でしょうか?」

「いや、大丈夫だけど随分やる気だね?」

「異国に売られた人々を買い戻す費用は、王家・王国が負担する事になっていますが、それが何時まで続くか判りません。」

「確かにそうだね、国王陛下が御存命の間は大丈夫だけど、人の寿命はいつ尽きるか分からないからね。」

「はい、ですから少しでも資金は持っておきたいのです。」

「わかった、じゃあ行こう!」

『佐渡魔境海上』

俺と彩は完全防備の武装を整えた上で今回の狩りに臨んだ。絹肌着・ソフト魔竜革鎧・魔金属鎖帷子・ハード魔竜革鎧・魔竜鱗を挟んだ魔金属完全鎧・魔金属兜・魔竜外套・飛行盾とまさにどうやったら殺せるか分からないような完全装備だ。そしてその全ての魔道具に魔術式が魔竜の血で刻み込まれ、魔力供給源の魔晶石が縫い込まれている。

(彩、支援を頼む。)

(はい!)

俺は海面すれすれを囮となって浮遊し、手当たり次第に海魔獣・海魔竜を狩る。彩は昨晩の白鯨の跳躍力と退避速度を考えて、十分な安全余裕を取った上で支援魔法を撃てる準備をしている。もちろん飛行盾を操って何時でも防御魔法陣を展開できる準備もしている。

やはり深夜の海上での狩りは恐ろしい。それに昨日と白鯨の攻撃を思い出してしまうと、何時深海から白鯨が勢いを付けて海上に飛び出してくるかと不安になる。飛魚のように泳いで勢いをつけた上で、魔力でさらに加速して鋭い角や嘴で刺し殺そうとする、飛行魔魚が乱舞しだした。

囮の為に昨日より海面近くにいた為だろう、とんでもない凶暴な群れに取り囲まれてしまった。飛んで襲ってくる魔魚には多くの種がいるようで、それこそ30cm程度の嘴の有る飛魚から、ダツのように1mを超える物、5mを超え空を飛んで襲ってくるカジキなど、並の人間には恐怖そのものだろう。

だが残念ながら俺には単なる資金源で、このような珍しい新種の魔魚は美味しい存在で、飛行盾と防御魔法・汎用魔法袋を活用して、ポンポンサクサクと汎用魔法袋に魔魚を誘い込んでいく。

(彩狩るよ。)

(はい!)

俺の魔力に誘われたのか? それとも魔魚の群れを追って来たのか? 超巨大海月が海中から姿を現した! 急所が分からないから殺すのでは無く、汎用魔法袋を念動魔法で駆使して生きたまま収用してやった。流石に汎用魔法袋の中で生き続けられるのかは不明だが、これも実験の一環だ。

(逃げろ!)

海底の奥深くから巨大な魔力を持つ生き物が突進してくる! 間違いなく白鯨の野郎だ、俺は彩が退避した反対側の斜め後方に逃げるが、白鯨は海中で器用に方向を変えて追って来る!

山のような海水を噴き上げて白鯨が海面に飛び出し、そのまま俺を飲みこまんと大きく口を開けて追ってくる。昨日と同じように白鯨の横をすり抜けて、皮を削いでやろうとするが、白鯨は防御魔法の応用だろうか、俺の逃げる方向に壁を作って逃がさないようにしやがった。

一瞬の判断で後方に逃げ切る事も不可能! 側方の魔法壁を破るより他に手は無し! 一瞬で籠められる最大魔力を魔法壁に叩き付けて破って逃げる。その上で白鯨の皮を削いで魔境の外へ逃げる!

(彩、魔境外に出て!)

彩は俺を心配して遠距離魔法を白鯨に叩き付けている。白鯨は身体中に大きな傷を付けて、空中には白鯨の皮付き肉塊・血液が飛び散っている。彩も強くなった、攻撃するにしても商品価値があるように、風の圧縮魔法を叩き付けて身体を手に入れている。

(沢山白鯨の素材を手に入れたね、俺より強かだね。)

(殿様の妻ですから。)

(そうだね、今日はこれで帰ろう。)

(はい旦那様。)

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