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奴隷魔法使い

克全

第238話ある1日

『飯豊魔境・朝日魔境』

翌日も夜明け前に起き、朝食前の魔道具創りで始まり、大量の飲食を伴う魔力・身体の修練・魔力回復を行い、愉しみである再度の朝食で締める、1日の最初の仕事と言うか日課と言うか、俺と彩が生き延びる為の当たり前の事を行った。

(殿様、久保田伯爵家は早々に領地替えを願い出るでしょうか?)

(どうだろうね、米沢家の電光石火に動きには驚かされたけど、今やっても2番煎じだよね、だからやり易いとは言えるけど、長年掛けて開発してきた土地を手放すのは難しいからね。)

(そうですね、どの貴族家も土地への執着は強いですよね。)

(王家の分家や譜代貴族家は、結構頻繁に領地替えがあるけど、戦国期に王家と敵対していたり、独立独歩を貫いていた貴族家は余り領地替えの経験はないからね。)

(だとしたら、冒険者組合に狩場の開発を依頼するのでしょうか?)

(う~んどうだろうか? 冒険者組合に俺達と正面から敵対して久保田家の開発をする度胸があるかな?)

(でも私達が独自の冒険者組合を立ち上げたので、既存の冒険者組合は危機感を持っているのではありませんか?)

(持っているだろうけど、王家・王国が絡んで俺達が探し当てた狩場を勝手に開発すると、とんでもないしっぺ返しがくるだろうからね。俺も手抜きはしないよ、貸出している全魔法袋は引き上げるし、魔獣・魔竜も1匹だって競り依頼しないからね。)

(それでは逆らいようがありませんね。)

(冒険者組合の幹部も馬鹿じゃないから、それくらいの予測は出来るだろう、そんな馬鹿をするとしたら、御坊ちゃん育ちの貴族家の当主と、同じお坊ちゃんで構成された貴族家の家老達だろうね。)

(では有り得るのは、久保田伯爵家が独自開発しようとして、誰にも相手にされず失敗する事ですか?)

(そうだね、時間が掛かっても領地替えに行きつくか、失敗するかのどちらかだね。)

俺達は囮役のシズナ・スミエ・タエ・チナを鍛えつつ、念話を使って内緒で色々な相談をした。今4人が使っている飛行道具は、今まで俺達が使っていた大型防御魔法盾と同じ物で、重力軽減魔法や風魔法を組み合わせて自由自在に飛ばしていた物を、本当に盥舟宜しく乗り込んでいる。

問題は縁をと言うか、落下防止用の手摺や壁を付けるかどうかなのだが、ほぼ同じ能力の物を盾として手に持っているから、足元の盾兼空盥から落ちても問題は無い。いや何より足に固定しておれば問題は無い。

1番の問題に思えた、秘密兵器漏洩を恐れる王家・王国からの許可だが、空飛ぶ魔法盾は既に知れ渡っていたので、以外にすんなり許可された。問題となったのは漏洩より流出・盗難だったが、最終的にこの不安も払拭された。飛行魔法盾を国外に持ち出して知らない国で生きて行くより、国内に残って確実に士族に成りあがる方を選ぶだろうと予測されたからだ。

実績として俺と彩が貴族に成りあがり、俺達が支援した元奴隷が陪臣士族に成りあがっている。俺と彩を敵に回して国外で生きて行けるか? 先ず無理なのは馬鹿でもわかる。


『白神山地』

(殿様、属性魔竜ボスの気配がするのですが、同時に古代魔龍の濃厚な魔力も感じます。)

(そうだね、2頭が同居していることも無いとは言えないから、注意深く調査すべきだね。)

早朝からみっちり4時間飯豊魔境・朝日魔境で囮の指導を行ったが、俺達を恐れたのかボスは現れなかった。昼食後は昨日に引き続き東北地方の魔境調査を行ったが、どうも不思議な気配の魔境に出会った。

「唐津次席大臣閣下・飯豊次席大臣添役閣下、ここは白神山地と言う魔境なのですが、古代魔龍の住処なのでしょうか?」

俺達が難しい顔をしているのを見て不安になったのだろう、弘前伯爵家の案内役が恐る恐る聞いてくる。

「どうも異常な気配と魔力がある、十分な注意が必要だから皆は船の中央に避難しておれ。」

「念のために聞いておきますが、白神山地は何処の領地になるのですか?」

「御答えさせて頂きます、今いる此方側は我ら久保田伯爵家の領地となります。」

「御答えさせて頂きます、山地を越えた向こう側が我ら弘前伯爵家の領地となります。」

俺達の質問に案内役の中から久保田伯爵家と弘前伯爵家の陪臣が答えてくれたが、もしここが狩場に出来るなら、久保田伯爵家は米沢伯爵家のように2カ所の狩場を手に入れる事に成る。

「山地を越えると言うが、その道は分かっているか?」

『はい!』

「ならば案内いたせ、彩、俺はギリギリを巡るが空船は余裕を持って奥山側を巡れ。」

「分かりました。」

俺は空に飛び出し彩は空船に残って案内役の指示通りに飛ぶ。今回は古代魔龍が飛び出してくる恐れが極々少しだがある。俺の予測通りなら何の問題も無いが、絶対とは言い切れない。だから狩りをせず、魔境にも入り込まないようにして、慎重に魔境の外周部を巡って行く。

「飯豊次席大臣添役閣下、この街道を北上致しますと弘前伯爵様の御領内に入ります。」

久保田伯爵家の案内役の言葉に従って、彩は空船を移動させていくが、魔境との間をすり抜けるので、どうしても狭い人の領域を縫うように飛行する事に成る。

(殿様、右手にも古代魔龍の濃い気配と魔力を感じるのですが。)

(うんそうだね、右の山も古代魔龍の支配する魔境のようだね、一応案内役に確認しておいてくれ。)

(はい!)

「この右手にあるのは何と言う山です?」

「田代山と申します。」

「この魔境も古代魔龍が支配しています、間違っても手出ししてはいけません。」

「は! 御教示有り難き幸せに存じます。屋敷に帰りましたら国元にも連絡致します。」

(殿様、右手の山は田代山と言うそうです。しかし田代山を過ぎても左奥に古代魔龍の濃厚な気配と魔力を感じます。)

(そうだね、もう少し慎重に行こう。)

(はい。)

「今国境を越えまして御座います。」

「分かりました、これからも逐一報告しなさい。」

(今国境を越えたそうです。)

(有難う、今は右側の古代魔龍の気配が背後に有って、左側の古代魔龍の気配がまだ前方に有るね。)

(はい、私にも分かります。)

白神山地の魔境を左カーブして巡り、弘前伯爵家の居城を右側に臨む頃には、俺の想像通り左側に属性魔竜の気配と魔力を感じ、右側には古代魔龍の気配と魔力を感じる位置にいた。

「右手の山は何と言うのです?」

「御答えさせて頂きます、岩木山と申します。」

「あの魔境にも古代魔龍がいます、気を付けなさい。」

「重ね重ねの御教授感謝の言葉も御座いません、主君と家臣一同に成り代わり御礼申し上げます。」

「はい、感謝の言葉と心は確かに受け取りました。」

(殿様、右手の古代魔龍の山は岩木山と言うそうです。)

(有難う、分かったよ。どうやら岩木魔境と白神魔境の間を抜けて海に出れそうだね。)

(はい、ですが海側では万が一ボスのブレスを受けた時に、逃げる為の奥行きがないかもしれませんね。)

(そうだね、直接確認しないと何とも言えないけど、そうだとしたら弘前伯爵家側の狩場は限定されてしまうね。)

俺達は移動速度を速めて海側に出たが、想像通りに魔境と海の間を縫うような海岸線に、漁師の家々が建っている。とてもではないがブレスを受けた場合には、海に飛び込む以外逃げ場所が無い、この方面は熟練の囮役以外は任せられない。

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