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奴隷魔法使い

克全

第236話飛行下駄・魔法盾・三井屋裁き

『飯豊魔境・朝日魔境』

「タエ、これは空飛ぶ下駄です、これを履けば今までより早く空を飛べます。空に浮かぶのは今まで通り自分の魔法を使い、移動にこの道具を使えばボスにも追いつかれることはありません、十分に修練しなさい。それとこれは防御魔法の盾です、ボスのブレスも防ぐ力がありますが、魔晶石に蓄えられている魔力量には常に気を配りなさい。」

「はい! 頑張ります!」

飛行下駄は真円形の為、歩く時は左右が当たり躓き転倒し易いのが問題なのだが、思い付きで創作したので色々改良する必要があるだろう。

防御魔法盾は、俺と彩が長年改良してきたものだから、2人には使い勝手の好いものなのだが、如何せん重いのだ。重力軽減魔法や念動力が桁違いの俺達なら、十数個の盾を易々と扱えるのだが、全身を護る大型盾は並の人間が扱うにはとても重い。

俺と彩は場所を入れ替わり、俺が飯豊魔境の南端に陣取りシズナに飛行下駄・防御魔法盾の練習をさえつつボスの来襲に備え、彩が朝日魔境の北端に陣取りタエに飛行下駄・防御魔法盾の練習をさせつつボスを引き付ける。

(彩、これは失敗したな。)

(左様ですね、下駄では空中でバランスを取れず、一瞬でボスに殺されてしまいます。それに盾もこの子たちには重すぎて扱えそうにありません。)

(そうだね、ここでは囮に長めの時間稼ぎして貰わないといけないからな。座布団位の大きさで盾と一体型が好いのかな?)

(そうですね、その方が実用的かと思われます。)

俺と彩は目の前で意味不明な空中ダンスを踊る囮役を眺めながら、念話で今後の方針を打ち合わせる。貸し与えることのできる新兵器は厳選しなければならない、遠距離攻撃に使える魔銃は絶対に秘密にしなければいけない。飛行魔道具も狩りに使い勝手が好い物は軍事用にも最適だ、ましてボスのブレスを防げるほどの防御魔法盾など他国に渡せない。

『米沢城・裁きの間』

「三井屋、我は王国奴隷千人頭の井出正行である! この度は詮議の為に連行いたしたが、直接聞かねばならぬ重大な嫌疑がある故、特別に唐津次席大臣閣下と飯豊男爵閣下が直答を許される、心して答えるが好い。」

「恐れながら申し上げます、詮議とはいかなることでございましょうか? 私には全く思い当たることがございません、何かのお間違いではございませんか?」

「黙れ! お前には奴隷売買と言う重罪の嫌疑がかかっておる、思い当たる事が無いとは白々しにも程がある!」

「奴隷売買などと言う大それた事をした覚えはございません、それは何かの間違いでがありませんか?」

「黙れ! お前が会津伯爵家の家臣達に対して、借金の形に妻や娘に無理矢理妾奉公させたこと、すでに多くの証言が集まっておる!」

「恐れながら申し上げます、それは良縁を紹介させて頂いただけでございます、決して奴隷売買などではございません。」

「え~い白々しい申し開きをしおって!」

「ならばもう1つ! 王国で定めたる貸付金利は年1割5分が上限なのに、10割の倍もの金利を取っておるではないか、その暴利を持って無理矢理奴隷奉公を強いたであろう!」

「恐れながら申し上げます、金利は王国の定めを守り1割5分を守っております。ただ手元にお貸しするお金がなく、仕方なくお貸しくださる方を紹介したことはございます。その場合の紹介料を頂いた事はございますが、貸したのは私ではなく他の方でございます。」

「え~い! いちいち白々しい言い訳をしおって! ならば月の金利を25日に区切り、遅れれば残りの月5日間に1割5分の金利を取り、結局3割の金利を取っておるではないか!」

「それは相対でのお約束でございまして、三井屋としての商いではございません。商いとしてはお貸し出来ない借金の多い方に対して、私個人が好意でお貸ししているのでございます。」

(殿様! もう許せません!)

(分かっているよ、そろそろ頃合いだね。)

「三井屋、往生際が悪いな、お前の死罪は決まっている。問題は家族を奴隷として異国に売り払うかどうかの判断をしているだけだ。」

「何を申されます! 私に何の罪があると申されるのですか!」

「王国の金利は1割5分だ、これを守らず好意で貸すのは闇貸しだ、闇貸しはそもそも罪である。それに好意と申して金貸しが王国金利を超えて貸すなど詭弁である。」

「恐れながら申し上げます! これは王国の商務省に問い合わせて問題ないと言って頂いております。」

「書面を見せよ。」

「は?」

「3割の金利で貸してもよい、紹介料をとってもよいと書かれた商務省からの回答書面を見せよ。」

「そんなものはございません! 商務省の士族様から口頭で許可頂いたらそれで十分ではございませんか!」

「三井屋は証文を盾に人々から元金と金利を取り立てておるのであろう? その商人の三井屋が書面が無しに証拠と言い立てるのか? まあいい、その商務省の士族の名を言ってもらおうか、一緒に取り調べてやろう。」

「それは、申し兼ねますが、宜しいのでございますか? 次席大臣閣下と次席大臣添役閣下のお立場が悪くなるのではありませんか?」

「脅しか? 三井屋は俺達のことを知らないのか? それは哀れな奴よ。」

「恐れながら重ねてお尋ね申し上げますが、次席大臣閣下と次席大臣添役閣下と申されましても、先任の大臣様方に疎まれては何かと遣り難いのではありませんか、はばかりながら三井屋隆正は、阿部商務大臣閣下と久世内務大臣閣下には懇意にさせていただいております。宜しければ取り持ちの一席設けさせていただきますが?」

「この慮外者が!」

さっきから怒りで肩を震わせていた井出正行が、ついに切れて三井屋をぶちのめした。激怒した正行の顔は赤鬼そのもので、並みの人間なら小便ちびるほど恐ろしいだろう。如何にも叩き上げの武人という180cmを超えるの身長に筋骨隆々の身体、その身体が繰り出す全力の右ストレートだ、殺さないように手加減はしたのだろうが、下顎が砕けたのだろう、見る見る熟したトマトのように顔の下半分が血袋状態だ。

「恐れ多くも次席大臣閣下に格下の大臣を紹介するなどと思い上がりおって! 今の一言だけでお前など磔獄門確定じゃ!」

「まあまて正行、愚か者がものを知らんのは当たり前のことじゃ、余の次席大臣は功績により国王陛下が新設してくださったもの、下々の者が知らぬのは仕方のないことじゃ。」

「はっ! 御前にての不調法、唐津次席大臣閣下・飯豊次席大臣添役閣下・米沢伯爵閣下にお詫び申し上げます。」

「構わぬ、三井屋の無礼には常々怒りを覚えていたのじゃ、正行が殴ってくれて清々したわ!」

米沢伯爵も借金の所為で我慢を重ねてこられたのだな、正行の鉄拳を見て喜色満面(きしょくまんめん)だ。

「三井屋よく聞け、次席大臣は余の功績によって、各大臣の上位に設けられた新設の席だ、だからお前ごときに紹介されなくても各大臣の挨拶は既に受けておる。だがお前の申しようが確かか確認せねば、阿部商務大臣と久世内務大臣の名誉にかかわるな。米沢での詮議が終わったら、王都まで連行して陛下の御前で両大臣ともども再度の詮議をいたす。」

「あぅおぅぃ」

下顎を砕かれた三井屋はもはや何も受け答えできない状態だ、だが結構体力と根性はある。この状態でまだ言い逃れしようとしている。ああそうか、そういうことだな。

「三井屋、余達は貴族になったので家名が代わっておるのじゃ、それ故にお前は勘違いしたのであろう。余は元々大和尊と名乗っており、添役は大和彩と名乗っておった。」

「あぉ~おぉ~う~」

正座していた三井屋は額を畳に擦り付けて土下座を始めたが、そんな事で罪科(つみとが)が無かった事にもならないし、罰が軽くなることもない。

「今まで余達が成した事は知っておろう、先も申したがお前が死罪を逃れることは絶対にない、直接間接の関係者も全て死罪だ、これも逃れる事は出来ない。問題は家族だ、家族を死罪で止めるかお前がやったように奴隷として売り払うかのどちらかだ。」

「あぉぉぉぃ、うぉぃぁぉ、いぅぃぉぁ」

「何を言おうと無駄じゃ、米沢伯爵殿、城の牢屋をお借りしたのだが?」

「どうぞお使いください唐津次席大臣閣下。」

なるほど、米沢伯爵は俺と彩を同じ貴族としてではなく、王家・王国の大臣として遇する心算だな。何としても米沢家の為なら形振り構わず頭を下げる覚悟をされている、出来る限りの助力はしてあげたいな。

「有難うございます。正行、三井屋を牢に入れて治療いたせ、明日からの王都での取り調べでしゃべれねば何も出来ぬ。」

「申し訳ございません! 愚かな事を仕出かしてしまいました、いかようにも御処分願います。」

「構わぬ、取り調べの一環である。だが治療は完璧にいたせ。」

「有り難き幸せにございます、必ず明日までに治療を終わらせます。」

「さて米沢伯爵殿、三井屋をはじめとする金貸しから借りている伯爵家と家臣達の借金であるが、今後は王国の貸金となる。」

三井屋達は闕所となってその全ての財産が王国に没収される。つまり米沢家主従が金貸しから借りていた借金が、王家への借金になる。

「はい、今後は王家にお返しさせていただきますが、出来ましたら返済をお待ちいただければ助かります。」

「これは王国の大臣達と計らねばならないことではありますが、私見としては、金利違反の罪を科して三井屋達を処罰する以上、今一度貸金の元金計算をやり直さねばなりません。筆墨料や踊りなどが無かった場合の、国法通りの1割5分で正しい借金額を計算すべきと考えます。」

「真でございますか? そうして頂ければ私も家臣達も助かります。」

「私の私見ですから、絶対のお約束はできませんが、そうなるように努力いたしましょう。ただ伯爵殿も家臣の方々も出来るだけ早く借金は返したほうが好いでしょう。」

「分かってはおるのですが・・・・・」

「まあ王家・王国への借財なら惨い取り立てはないでしょうが、金利は無駄な出費ですから、私も冒険者組合の報酬計算を急がせましょう。」

「何卒、宜しなお取り計らいください。」

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