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奴隷魔法使い

克全

第231話家内安全・国内視察

『王都・大和家上屋敷』

「殿様、採用人数はどういたしましょう?」

「彩は増やした方が好いと思っているんだね?」

「長崎や朝鮮の事を考えますと、護衛は多い方が好いのではありませんか?」

「確かにそれは有るね、今まで少ない採用人数だった槍と剣を増やそう。」

今までは魔境での狩りに役立つ、弓・投げ縄・魔力魔法を優先的に家臣採用して来たけど、警護役となれば不意打ちの接近戦が殆どだろう、そうなると短槍や刀の達人が必要だ。

「では朝野にそのように伝えましょう。」

「旭(あさひ)!」

「はい!」

俺の呼ぶ声に応えて奥女中を務める旭が入って来た。王都勤めの家臣達の家族の中で、平民身分を決意した者は輸入商品の販売をやらせているが、士族卒族身分に拘りのある者は、能力・忠誠心に応じて仕事を与えた。他家では武家奉公人や平民がやる仕事でも、大和家では士族卒族の仕事とすればいい、家内の事は貴族家の自由だ。旭は魔竜弓の名手・山本秀子の妹で、元々卒族の出だからよく行儀作法を躾けられている。

「朝野を呼んで来てくれ、それとおよね達は仕事に慣れたか?」

「中々行儀作法を覚える事が出来ませんが、掃除や洗濯などは普通に出来ますので、給金相応の仕事は出来ております。」

旭がおよね達を庇うように長所短所を端的に話してくれた。元々貧民で、闇奴隷売買の犠牲になった女子供達だ、碌な教育も受けていないから、貴族家で働く為の作法が出来ないのは当然だ。俺も彩も最初からそんなものは期待していない、証人でもある犠牲者はただ保護するだけでもいいのだが、それでは捜査が終わって保護が無くなれば世間に放り出されて苦労する。王家・王国の奴隷制度で援助されたとしても、50歳まで奴隷として借金返済することになり、人生の大半を奴隷として終える事になる。保護期間中に行儀作法や技術を教えて、このまま家中で働かせてもいいし、どこかに務めに出てもいいだろう。

問題は闇奴隷売買の大切な証人だと言う事だ、そうでなければ家臣の平民家族に委託販売させている、輸入商品小売店の店員として修行させて、将来は店を任せてやってもいいのだが、証人を抹殺しようとする者が出てくるかもしれない。だがら大和家の奥深くで護った上で色々と教えて行かなければならない。

「時間が作って極力武芸の修練もやらせなさい。」

「承りました奥方様。では朝野様を呼んでまります」

彩も随分気に掛けていて、奥女中としての行儀作法だけでなく、料理・裁縫・機織り・仕立てに加えて、狩りで役立つ弓を中心に武芸の修練をやらそうとしている。出来れば大和家の冒険者士族として仕官させてやりたいと考えているのだろう。

暫くして朝野が奥までやって来た。朝野は元々が奴隷出身の王国官吏で、50歳まで奴隷官吏として務めあげて解放奴隷となり、王国の卒族・小人目付として多摩奴隷千人砦で俺の担当だった。腐り切った多摩奴隷千人砦で比較的良心を保ち、俺と彩に好意的に接してくれたので、その経験と良心を評価して王都の家老を任せている。

「朝野、槍や剣の使い手を護衛として増やしたい。身辺調査の終わった者は幾人いる?」

「仕官武芸大会の成績順に調べましたが、日頃の素行のよき者が50人おります。」

「採用条件に考えはあるか?」

「今まで通り6万銅貨でよいと考えます。衣食住は保証されておりますし、家族も優先的に奉公人として採用しております。奉公人の枠が無くなっても、身分にさえ拘らなければ、委託販売を任され商人として身を立てる道もございます。6万銅貨で不足を言う者など採用する必要は無いと考えます。」

「そうか、ならば今まで通りの条件で採用の使者を送ってくれ。当分は各屋敷の警護役として様子を見て、問題が無ければ護衛として側仕えさせよう。」

「承りました。」

大和家が王家に委託して毎日開催している仕官武芸大会で、優秀な成績を修めた者は身辺調査をした上で採用している。特に弓・投げ縄の優秀者は多数採用して、冒険者士族として魔境近くの領地に送り込んでいる、だがその弊害も徐々に表れてきたようで、翌日の御用部屋での会議で議題になった。

『王都・王城・御用部屋』

「大和殿、徐々に魔獣の競売価格・小売価格ともに下落しておる。ここは狩猟数を制限してはどうだ?」

「その必要は無いと考える。比較的簡単に狩れる小型の肉食魔獣や草食魔獣は、国内価格が下がり切り、南蛮・清国の国内価格より下がって初めて輸出できるようになる。私や彩が狩る大型の魔竜や希少種の魔獣・魔竜は永遠に狩れるとは限らん。ここは安定して狩れる魔獣を輸出の主力商品に出来るように、価格下落するほど狩り続ける方が好い。」

「商務大臣の阿部殿の心配も分からなくはないが、大和殿の言う事の方が王国の未来にはよかろう。だが魔獣・魔竜の資源枯渇については、大和殿自身が以前から心配していたはず、そこ件に関してはどうする御心算か?」

一時的な価格より永続的な王家・王国の財政を考える、財務大臣の井上正岑が俺の考えに賛同してくれた。もちろん俺が献上した莫大な御金や魔獣・魔竜素材が無ければ、今年の財政収支を最優先したのだろうが、献上後の今なら例年通りの財政支出に抑えれば、今後10年は備蓄金を取り崩して遣り繰りできる。それに俺と彩が生きている限り、毎年莫大な軍資金が蓄積されていくだろう。

「その件に関しては、古代魔龍の潜む可能性の低い、紀伊山地・中国山地・四国山地の魔境に狩場を設置しようと思う。」

「確かに紀伊山地・中国山地・四国山地に、多摩や甲府と同等の狩場を設置出来れば、魔境の資源枯渇を抑える事が出来るだろう。」

内務大臣の久世重之殿は国内資源の有効活用と安定管理を考えているのだろう。大切な資源である魔獣・魔竜の生息数の把握と管理が出来れば、王家・王国に永続的な財源を確保出来るだけでなく、今まで天災と諦めていた魔獣・魔竜の被害を極限まで減らす事が出来る。内務大臣として国内治安の為にも、天災による国王退陣論は封じたいだろう。

「それと時間を作って東国・蝦夷の視察をしたいと思う。東国や蝦夷にも古代魔龍の住む恐れのない魔境がまだ有るかもしれん。」

「うむ、それも大切な事だ。だがなによりも早くせねばならんのは領地確定だ、紀伊山地・中国山地・四国山地の魔境は、大和殿の領地の確定や奴隷千人砦の設置が終わらねば、どんなに狩りがしたくても出来ん。松平殿、士族卒族子弟から編成した軍は整ったのか?」

「既に千人規模の部隊を40個編成し訓練に励んでおります。特に最初に編成した10個部隊は即戦力の者が多く、元々の家格に囚われず働ける者を選抜しております。」

俺の新たな狩場探査の願いから、間部筆頭大臣の王国子弟の仕官問題に話が変わり、軍務大臣の松平信庸殿の出陣可能の報告に成った。王国も家臣子弟の処遇には頭を悩ませていたから、実家の一族家臣として士族・卒族位を確保したまま、自活出来る道があれば最高だ。

「以前から指摘しているが、優秀な卒族家子弟の指揮に士族家子弟が素直に従うか?」

「それは手を打っている。まあこのままでは部屋住みで一生を終えるか、平民として生きる道を選ぶしか無い者達だ。大和殿の大出世・大抜擢の例もあるから、下手に家格を笠に着た言動をすれば、実家の改易に繋がると言い聞かせている。優秀な卒族を、娘しかいない士族家の婿養子に認めるとも決めた、それでも行いの改まらない者を送り込んだ家は、改易の厳罰で対処する。」

俺の指摘に松平殿は色々な方策を打っていると答えてくれた。事前に俺と彩が陛下と間部殿に献策しておいたものだが、誰が推進しようと人の役に立てばいい。今までは士族家への養子は著しく制限されていた。特に王家の士族家に養子・婿養子に行けるのは、貴族・士族家の子弟に限られていた。だが今度からは、武芸大会で優秀な成績を修めた王家卒族・貴族家の陪臣士族にも、持参金と王家手数料を払えば認められることになった。

この制度は金儲けだけが得意な商人が、子弟の為に士族家・卒族家の家格を買うことを防ぎ、同時に養子を迎える士族家側が、金儲けで養子を迎えてから養子を害する事が無いようにするためだ。あくまで優秀な武人で家臣団を編成することが最優先だ。

「では早急に多摩・常陸・甲府・諏訪の狩場に送り込むのがよい。冒険者では無く王国軍なのだから、雨風が嫌だなどとは申させてはならん、実戦で野営は当たり前だ。」

「確かに大和殿の申される通りだ。陛下、10個部隊の配備を許可願います。」

俺の意見を入れて松平殿が陛下に実戦投入を言上した。

「部隊の実戦投入を認める。多摩に2個・常陸に2個・甲府に3個・諏訪に3個を派遣せよ。同時に大和家領地確定と狩場の測量を急げ、尾張・紀伊の両大公家が条件を申し立てるようなら、中国・四国を優先いたせ。」

「承りました。」

陛下の厳命が下された。これで我が家の領地確定も進むだろう。だが矢張り大公家が条件闘争をしていたのだな、まあ大公家にしても財政が苦しいから、この機会に少しでも有利な条件で狩場を設置したいだろう。だが少し欲をかきすぎたようだ、このままでは何時まで経っても狩場は設置されないだろう。

「尊、彩、他の役目は他人に任せよ。東国・蝦夷の狩場探しを優先させよ。東国では冷害による飢餓・飢饉が度々起こっておる、民を救う為には、今までの生活を支える道以外の方法を早急に見つけてやらねばならん。」

「御下命承りました。」

陛下の厳命を受けて俺達は急いで東国調査に向かう事にした。だが現地の状況を多少は前もって知っておきたい。そこで東国に領地を持つ貴族家・士族家の家を周って、案内役の家臣を貸してくれるように交渉することにしたが、貴族士族の面倒な作法の為に時間が掛かり、初日は仙台家しか訪問できなかったが、2つ返事で多くの家臣を貸し出してくれた。仕方なく他の家々には家臣を使者に送り、事前に訪問時間の調整をすることにした。

陛下の申されたように、東国の家々は冷害で財政が疲弊し、領民に多くの餓死者を出しているようだ。俺が設置した狩場の収益は、既に全貴族家・士族家で評判と成っており、新たな狩場の設置場所になりたいと切望していたのだ。

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