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奴隷魔法使い

克全

第230話和館・八般私賤・新規狩場

『朝鮮・草梁倭館』

次の奴隷市場の手前に川があった、その河原に無残な遺体が流れ着いていた。若い女の子だと思うのだが、顔が無残いに潰され、身体中に殴打の跡と焼き鏝を当てられたやけどの跡がある、更には秘所に棒きれが突き刺されていた。

彩が遂に我慢の限界を越えたのだろう、意識を失ってしまったが、念動魔法で立っている体裁を整えた。だがもはや限界だ、これ以上彩に精神的負担は掛けられない。

「芳洲、連れの疲れが酷いので、後の奴婢購入を任せたいが大丈夫か?」

「御任せ下さい、御両所の期待を裏切るような真似は致しません。」

芳洲も対馬家の為に必死なのだろう、俺達が対馬家を嫌悪して、取り潰したいと考えている事くらい分かっているだろう。対馬家に異心など無く、王家・王国の役に立つ事を証明しようと死に物狂いで働いている。俺の始めた和館競売で、対馬家の財政に余裕が出て来た事も有るが、朝鮮王家と両班の実力者と掛け合って、朝鮮全土に奴婢購入の家臣を派遣している。

朝鮮側に和人救出の思惑を悟られないように、莫大な私財を得て成り上がった俺達が、蝦夷地開拓の為の奴婢を無制限に購入していると説明している。実際信じたようで、比較的屈強な男の奴婢の売り込みがあるようだ、それに対しては、女の奴婢に子供を産ませる長期奴婢生産計画だと、口が腐るような下劣な理由付けで、和人女性奴婢を購入して周っている。

「念の為に聞いておくが、このような下劣な真似をした婦女暴行犯も、女性が奴婢や白丁で、男がが良民なら罰せられることが無いのだな?」

「はい、朝鮮の風俗でございますが、1つ間違いがございます。あの凶行を行ったのは男では無く女でございます。」

「どういうことだ?」

「朝鮮ではよくあることでございますが、主人が若くて綺麗な女奴婢を手籠めにいたしますと、嫉妬した妻があのような形で女奴婢を殺すのでございます。それがこの国の風習でございます。」

反吐が出る! この国とは絶対係わっちゃ駄目だ、この国の風俗は俺には馴染めない。

(殿様、私があの時殿様に助けて頂けず、闇奴隷売買で売られていたら、このような死に方をしていたのかもしれないのですね。)

何時の間にか彩が目覚めて話を聞いていたようだ、意識を失っていたのは一瞬だったのだろう。

(そんな事は無いよ、彩は優秀な魔法使いだから、例え奴婢に落とされようとも殺される事は無いよ。)

(でも殺されないだけです! それ以外の屈辱と汚辱にまみれた暮らしを、死ぬまで続けなければならなくなります。)

ここは嘘や誤魔化しで慰めるのは逆効果だな。

(そうだね、あの頃の彩のままなら外道に好いようにされていただろうね。でも今の彩は弱くない! そして俺が常に側にいる。だがら今度は外道どもを狩り殺そう、そしてこの前彩が言ったように、売られてしまった人達を助けよう。)

(はい! 倒れている場合ではないですね、私も最後までやり遂げます。)

一旦彩と和館に戻る心算だったが、決意を新たにした彩が気力を絞り出して最後まで行程を遣り遂げた。この後の奴隷市場でも途中の路上でも、見たくない凄惨な現場に度々遭遇したが、彩は最後まで表情を変えずに淡々と為すべき事を成し遂げた。

「革の加工は進んでいるか?」

「はい、翼竜の皮は薄くて軽い上に丈夫なので加工は難しいのですが、御貸し頂いた道具が好いのでいつもより早く進みます。」

芳洲の問いかけに朝鮮人の皮革職人が答えている。何れガスを活用した飛行船を試作就航させたいと考えて、ヘリウムと採掘するか魔法で生成できないかと考えていた。そこで朝鮮国内から大陸にまで、技術を求める使者を対馬家経由で送った。もちろん和人奴婢の調査救出も兼ねさせている。同時にガスを入れる気嚢は翼竜・翼獣の皮を活用する為、国内の皮革職人に試作させていたが、大陸と直接交流の有る朝鮮の方が正直優れている。そこで賤民として差別されている職人を、和館に集めて優遇した上て加工作業に従事させる事にした。

「閣下、朝鮮側の接待の者達が着きました。」

和館の使者役の者が伝言にやって来た。又苦痛の時間がやって来るのか、俺はまだどこかに楽しむ心が無いわけではないが、彩は苦痛だけしか感じないだろう。朝鮮国内は派閥争いが激しく、莫大な利益を上げる和館競売の利権を、どの派閥が確保するか競争になっている。

その為朝鮮側の各派閥からの接待攻勢が激しい。今日は王宮内の一牌 (イルベ)妓生の中でも薬房妓生(医女)を俺と彩の性接待に寄越してきやがった。どの国どの時代でも特殊な遊びは性的興奮を昂らせるが、今朝鮮では医術を修めた奴婢を弄ぶのが1番の楽しみになっているようだ。

彩以外の女性と性交する心算は無いが、完全に断るには理由付けが必要に成る。男色だと断れば、男寺党(なむさだん)からピリと言われるオカマが送られてきて、収拾のつかない事に成ってしまう。色々考えた上で、同じ国民の女性としか交わらない、純国主義と言う事で通す事にした。

彩と2人で純粋に妓生 (きしょう)の奏でる音曲を愉しみ、食事を堪能する事にした。

「両閣下、和人奴婢の情報が入りました。両閣下が帰られた後の事は御任せ下さい。」

「誰が知らせてくれたのだ?」

「才人(河原者)からの通報を挙史が伝えてくれました。」

「事実なら何時も通り礼を与えてくれ。」

俺達は朝鮮で和人奴婢を探し出す為の組織を徐々に構築していった。朝鮮内で八般私賤と言われ差別されている人々など、我々に協力してくれそうな人たちから情報を集めるようにした。もちろん彼らが裏切ったり情報を漏らしたりしないように、家族に和館内で優遇した生活を保障し、功労が大きい者は対馬家の卒族として遇する事も約束している。

「八般私賤」
巫女
鞋匠 革履物の職人
使令・伶人 (宮中音楽の演奏家)
僧侶
才人 (芸人・河原者)
社堂・捨堂 (旅をしながら歌や踊りで生計をたてるグループ、男寺党)
挙史・居士 (女連れで歌・踊り・芸をする人)
白丁

「その他賤民視された人たち」
各種の匠人
盲人の占い師
漁夫
海女
山尺(山で薬草などを採る者)

「協力してくれた者達の安全は保障できているのか?」

「両閣下の御指示通り、対馬島内での自由を保証しております。」

俺も根性が穢いのだが、朝鮮出身の者達を本島に入れる心算は無い。根本的な風俗の違う者が同じ土地で生活すれば、諍いが起こるのは当然だと考えている。未然に争いを防ぐには棲み分けが大切だと思う。対馬家は長年朝鮮との交流があるから、朝鮮人功労者と雑居しても争いは少なく出来るだろう。だが対馬家が持つ肥前国田代・浜崎の飛び地に朝鮮人を住ませない方がいい。

「屋敷の建設や褒美の明細は提出しろ、王家・王国が支払う。だが家臣領民に不正はさせるなよ、そのような事で対馬家を滅ぼしたくはない。」

「心得ております、国元の殿や重臣達には手違い無きように強く言上しておきます。」

まあ俺達も帰りに寄って脅しを掛けておくが、世の中にはどうしようもない馬鹿がいるからな。油断してると信じ難い愚かな真似を仕出かす奴が出てくる。鈴木殿に目付を出すように伝えておこう。

『諏訪奴隷千人砦』

「クミコ、付いてこい。」

「はい!」

王国財政再建の為に積極的に進められている、魔境狩場の再編成の1つとして、諏訪男爵家領とその周辺の士族家領・王家直轄領の再編が急いで進められた。木曽・赤石両魔境の囮場・狩場の両方に使える場所に、王国奴隷千人砦と大和家領の冒険者村が急速建築された。そこで奴隷魔法使いの者達が囮役が務められるように訓練してやる事に成る。

「いいか、決して無理はするな。生きていれば幾らでも挽回の機会がある、だが死んでしまったら取り返しがつかない。」

「はい!」

クミコは初級上の魔法使いで、飛行魔法と防御魔法の2つを使えるが、魔力の総量が少ない為に多くの魔晶石を貸し与えている。

弓の名手のコウゾウが、俺が貸し与えた魔竜弓を使って次々と魔獣・魔竜を射殺している。その獲物を重力軽減魔法が使える初級中の魔法使い・ケイコが軽くし、投げ縄の名手・サイゾウが確保して魔境から引きずり出している。この狩りを繰り返してボスを誘い出す事が出来た、そしてクミコと共にボスを出来る限り引きずり回さなければならない。

それと今まで訓練をさせていた囮隊を再度確認して周った。少しでも油断が有ればボスに殺されてしまう。愛しい弟子達を失いたくないから、厳しいようだが定期的に再訓練を施している。多くの魔法使いを含む囮隊は、奴隷の身分から抜け出し大和家の陪臣士族となっている。特に魔法を使える者は大和家の魔術師団の所属になっている。

杜若智子と椿弘美の2人組は、唐津に新設した冒険者組合を率いて、筑紫山地の魔境で狩りをしてくれている。

アツシ改め伊庭淳史は得意の飛行魔法と今までの経験を生かし、初級下の重力軽減魔法の使い手・石田大輔、魔竜弓の名手・弓岡栄治、投げ縄の名手・大瀬以蔵を率いて多摩で囮役を上手に行ってくれている。

ユウキ改め山田有紀も得意の飛行魔法と今までの経験を生かし、初級下の重力軽減魔法の使い手・大森洋二、魔竜弓の名手・真弓倫理、投げ縄の名手・馬場利治を率いて八講で囮役を上手に行ってくれている。

皆以前組んでいた隊に愛着も未練も有るだろうが、大和家として効率を優先して部隊の再編を指導した。本当に仲間達と隊を組んで狩りがしたいなら、陪臣士族の地位を返上して平民として生きて行けばいい、士族の地位にはそれに伴う責任が有るのだ。責任や義務は負いたくないが権利だけ寄越せと言う奴は大嫌いだ、そんな身勝手な権利屋は側に寄られるだけで虫唾が走る、家臣の列に加えるなど考えられない。

イシマツ改め松田石松は多摩魔境で魔法の使えない狩り部隊を指揮し、キク改め小田菊は甲府魔境の狩り部隊を指揮し、サチコ改め牛島幸子は諏訪魔境の狩り部隊を指揮している。全く魔法の使えない者でも指揮が出来ない訳では無いが、囮部隊として実戦経験の有る無しは、咄嗟の判断で違いが出る可能性が有る、そしてその違いを生かして部隊の全滅に繋がらないようにしたい。

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