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奴隷魔法使い

克全

第229話唐津城・朝鮮奴婢・試し腹

『長崎奉行所・立山役所内目付屋敷』

5日毎に行われるようになった海魔獣・海魔竜の競売は、落ち着きを持って行われるようになった。既に20回を超えるようになると価格も安定を見せ始めたが、それでも1g単価が陸上の魔獣・魔竜の10倍を付ける物も有る。

そんな競売に元々長崎会所に所属していた商人は1人も参加しなくなった。死んだ訳では無いのだが、皆が大和次席大臣閣下と大和次席大臣添役閣下が創り上げられた牢屋入りしている。1000人を超えた長崎奉行所役人も含めて5000人が入牢しているのだ。

当初は夫々の拘束は緩く、立山屋敷を活用して禁足と言う形式であったが、徐々に犯罪が立証されるにつれて牢屋入りが確定して行った。だが本来囚人を世話する役人が殆ど全て入牢しているため、徐々に増えて行く囚人を世話する事が不可能になってきた。

そこで大和両閣下が長崎・唐津城・王都を毎日往復するついでに、内務大臣配下の徒目付30人・小人目付60人を盥空船で移送し、臨時で長崎目付に付けられた。徒目付1人には軍役として槍持ち1人・中間1人が義務付けられている為、総計150人が増員として送られた事に成る。

『唐津城』

「殿様、御城も随分立派になりましたね。」

「そうだね、城受け渡しも済んだし、管理掃除に唐津家の元家臣家族を臨時で雇ったし、まあ問題無く運営できるだろう。」

「陛下と間部殿との約束では、3年間の内政は三ノ丸にいる代官達が管理してくれるそうですが、その間に家臣団を整えないといけないのですね?」

「そうだよ、まあだけど代官所の地方役人で希望する者は仕官させるから、皆の残ってくれるだろうよ。」

代官    1人・王国150石士族
手付   10人・王国30俵2人扶持卒族
元締手代  1人・地元子弟35人扶持・臨時採用
手代   10人・地元子弟25人扶持・臨時採用
足軽   代官・手付の武家奉公人
中間   代官・手付の武家奉公人

「そうなってくれれば好いのですが。」

「大丈夫だよ、直接の年貢監理は庄屋や大庄屋がやってるからね、彼らは支配者の貴族が変わろうと地元に残る、まあ彼らが自作農や小作農を虐待していないか、不当に利得を独占していなか、そんな事を代官や臨時に派遣する巡検使に見回りさせればいいさ。」

「それならいいのですが、民を治めて平安に住めるように統治する責任を考えると心配になります。」

「大丈夫だよ、王国や貴族家・士族家は身分に縛られてるからね、優秀な元奴隷卒族を陪臣士族として募集すれば幾らでも集まるさ。」

「そうですね、それなら大丈夫ですね。」

「今は唐津城の地下部分を要塞化する事に専念しよう。」

「窯を多摩や王都の10倍の大きさにされるとの仰せですが、材料の木材と属性魔龍ブレスは多摩や赤石から運ばれるのですか?」

「筑紫山地の魔境を狩り場ににすれば、唐津の民も潤うから明日にでも冒険者組合を設立するよ。」

「私設の冒険者組合ですか?」

「そうだよ、多摩と常陸にいる家臣冒険者の一部を此方に移動させるよ。」

「ではそれまでに魔境と奥山の境界を確かめておかねばなりませんね。」

俺と彩は筑紫山地のボスを誘い出す為に魔獣・魔竜を狩りまくった。誘い出されたボスは、多摩と同じくらいの大きさで土属性魔龍だったから、適当にあしらってブレスを吐かせて大量の魔樹を切りだした。この材料を使って唐津の大型窯でも魔晶石から魔性金剛石を創り出したから、石自体の大きさは入れたブレス成分量次第だが、含有させる魔力量は入れた魔樹に比例する為、満量では無いが今までの10倍の魔力が含まれた魔石類を創り出す事が出来た。

唐津の領地経営と唐津城の要塞化を進めながら、長崎・唐津・王都への毎日の移動は欠かさなかった。その移動に鈴木正義目付配下の徒目付組頭5人・徒目付200人を移送する事に成った。もちろん彼らの武家奉公人である槍持ちと中間も移送させなければいけないので、今までの盥空船では不便な為、500人乗りの大型盥空船を新造する羽目になった。

ここで問題となったのが俺と彩の軍事力の突出だった。王国も持っていない盥空船を俺達だけが持っていて、その兵員輸送力が500兵を超えるとなると危険視する者が出てくるのは仕方がない。そこで2隻の500人乗り盥空船を新造して王国に献上せよと言いだす者が出て来てしまった。だが王家・王国が盥空船を運用する為には、新造盥空船の全ての魔法陣を汎用で描かなければならない、それに必要な魔力量と手間は膨大なものだ、それに創ったとしても運用に消費される魔力をどうやって調達するのか? 俺と彩から絞り出す心算なのだろうか? そんな事をするくらいなら亡命する。

そのような事情を土御門蒼主・王国筆頭魔導師に説明して貰う事で話は無くなったが、今まで俺達が使っていた小型の盥空船の汎用型を献上する羽目になった。まあ大臣や重臣達も俺達を追い込めば亡命するかもしれないと、土御門殿に釘を刺されてはそれ以上の無理は言えなかったのだろう。

その他にも色々と雑務は有った。もちろん筑紫山地で狩った魔獣・魔竜を長崎の競売に出品する事に成ったし、海魔獣・海魔竜を購入する資金稼ぎに、清国・南蛮商人達が持ち込む莫大な輸入商品を買って、王都で競売に掛けたり家臣家族に売らせたりした。

特に輸入商品を家臣家族に売らせる政策は大切だった。魔境と接する領地で冒険者家臣として仕える者達の収入は莫大だが、王都の屋敷を預かる家臣の収入は他の貴族家と同等で少ない。そこで家臣家族に輸入商品販売店を経営させ、従業員として働かせたりした。販売店舗は俺達が私的に借りた物件を使わせた。

輸入商品の価格は、商品の半数を王都や各地で競売に掛け、その商品が小売店で販売される価格とした。俺達が家臣家族に商品を降ろす価格(卸値)は競売価格だから小売値との差額は大きく、家臣と家族の収入は一気に改善される。もちろん商品は委託販売としたから家臣家族には仕入れ資金などの開業資金は不要だ。

『朝鮮・草梁倭館』

(酷い!)

(確かに酷すぎるな、我が国でも闇で奴隷は存在するが、このような公衆の面前である道で奴婢を拘束するとは酷すぎる!)

俺と彩は雨森芳洲に案内させて朝鮮領内を密かに検分していた。芳洲と懇意で、対馬との交易で莫大な利益を上げている商人が現地案内人だが、対馬家でも手練れの家臣衆が護衛に付いている。もちろん女性の人権が全く無い朝鮮で彩を連れ歩くのは危険だ、だから今の彩は男装している。その彩が怒りに身を震わせている。

道にいる奴婢の姿は凄惨を極めている。両足を長方形の石錘で固定され、頚と手を縄で固定されている者。首に肩幅以上の正方形の板を嵌められ、その板を鉄鎖で連ねられた者達の連行姿。身体を丁度覆う位の木製の個人檻に、さっき見た拘束用板から首を出した者達が吊るされている、そうなのだ、足を地に着ける事も許されずに、顎や首で全体重を支える状態で檻に入れられているのだ。彩が怒りに身を震わせるのは当然なのだ。俺だって今直ぐ彼らを解放する為に戦いたい気持ちなのだ。だがここは我が国と通商の有る異国、絶対に此方から争いを仕掛ける訳にはいかない、少なくとも全て和人奴婢を救い出すまでは駄目だ。

(彩、我慢してくれ。ここは朝鮮なんだ、何かあったら国交が断絶して和人を助けられなくなる。俺が和人全員を助ける手立てを考えるから、ここは堪えてくれ。)

(分かっています、分かってはいるんです。)

朝鮮人商人に案内されて34人の奴婢を購入し29人の奴婢を販売した。購入した奴婢全てが和人では無く、和人救出を悟られないように10人に1人が和人の割合で、残り9人の朝鮮人奴婢は再販売される。

(好かった! 朝鮮の女性も幸せな結婚が出来るのですね。)

(そうだね、授かり婚なんだね。)

(授かり婚ですか?)

(そうだよ、赤ちゃんを授かってから嫁入りするから幸せの授かり婚だよ。)

俺と彩は念話で嫁入り姿の女性の話をした。だが俺達の護衛と案内を兼ねて前を歩いていた芳洲が、穢い物を見るような眼つきで花嫁を見ている。何かおかしい、普通のこんな目で花嫁を、それも妊婦を睨み付けるなど有り得ない。

「芳洲、あの花嫁に遺恨でも有るのか? 眼つきが尋常じゃないぞ、。」

「両閣下には冷静に聞いて頂きたいのですが、この国には我が国と違う風習が多くございます。その中でも特に馴染めないものが今の嫁入りでございます。」

「どういう意味だ?」

「この国に女性に人権は有りません、物なのでございます。その物である女性が子供を産めなくては不良品と同じなのです。ですから家長である父親は弟や息子に娘を犯させ妊娠させます、妊娠出来る女である事を証明してから嫁がせるのです、これを試し腹と申します。」

彩はショックで倒れそうになった、咄嗟に支えてやったが身体が小刻みに震えて顔面が真っ青だ。怒りなのだろうか? 恐怖や嫌悪なのだろうか? だがこのまま彩を連れて歩く事は出来ない、ここは和館に戻ろう。

「日頃歩かないから日に当てられたようだ、今日は和館に帰ろう。」

「いえ大丈夫です、今日の予定の奴婢購入売買は国との契約です、疲れたからと後回しに出来るものでは有りません!」

彩が必死に男言葉で続ける事を要求してくる。1日でも早く和人を助けたいのだろうが、受けたショックは尋常ではないだろう。朝鮮人の目が有るから、背負ってやる事も肩を貸す事も難しい、どうしても女の挙措が出てしまう。ここは魔力で支えてやるしかないな。

(彩、念動魔法で身体を支えるから楽にして。)

(御免なさい、足手纏いになっていますね、でも御願いです、今日の助ける事が出来る人は助けてあげて下さい。どうか、どうか、御願いします。)

(大丈夫だよ、彩の願いを無下にしたりはしないよ。)

俺は彩を魔力で支えながら検分購入の巡回を続ける事にした。芳洲と護衛の対馬家家臣は朝鮮の風俗になれているのだろう、確かにそうでなければ和館で暮らす事など出来ないし、闇奴隷売買を黙認など出来ない。一旦は対馬家を許す気になったが、本当に対馬家を許していいのだろうか? そんな事を考えていた時、俺達は想像を絶する光景に出くわしてしまった。

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