奴隷魔法使い

克全

第222話新屋敷・領地確定計画

『王都大和家上屋敷・奥殿』

「殿様、地下室と魔晶石創成窯の大きさは同じでいいのですか?」

「そうだね、この上屋敷には全く同じものを作ろう。」

「その言い方でしたら、他の場所にも御創りなるのですか?」

「そうだね、俺達が立ちよる可能性の有る場所には、非常時の事も考えて創っておきたいね。」

「でも殿様、今回の手柄で10万石に相応しい大きな所に屋敷替えが有ると言われていませんでした?」

「うんそう言われてるよ、でも登城に便利な上屋敷だけはこのままだそうだよ。それに他に頂いている屋敷は、当初の4万石に相応しいように旗本屋敷を幾つか合わせて石高調整してるからね。これ以上のその場凌ぎは無理だそうだよ。」

「それでは今後どの辺りに屋敷をが頂けそうなのですか?」

「戦船の運用と蔵屋敷との兼用も考えて頂いているから、品川の外(はずれ)で猟師町を含む広大な海岸線と、浜松町の海岸線に有る王国調練城、京橋南築地鉄砲洲の石川嶋と佃嶋、後は沖合のどこにでも自分で島を作るなら屋敷地にしていいそうだ。だがまあ今は証人と被害者たちを守る必要も有るから、早々の屋敷替えは無いと思うよ。」

「石川嶋と佃嶋に手を加える御心算なのですか?」

「よくわかったね。」

「他の貴族家士族家の方々から離れた嶋を拝領する上に、新たな島を作る許可を賜ったのでしたら、殿様なら万全の地下城砦を御創りに成ると思ったのです。」

「流石に彩は俺の事をよく分かってくれているね、そうだよ、盥空船(たらいそらふね)を超巨大化した、城級の空船を創る心算だよ。」

「矢張りそうなのですね、私も御手伝いして宜しいですか?」

「頼むよ、子々孫々まで使えるように、汎用魔晶石と汎用魔法陣で創ろうと思っているから、流石に1人では手に余るかもしれないからね。」

「はい! 精一杯手伝わせていただきます。」

『槍武術大会』

「流石に厳しくすると仕官できる者がいなくなりますね、殿様。」

「まあ最後に家臣と戦って勝つのを条件にしたからね、目ぼしい使い手は既に仕官してるから、各士族家貴族家の国元から、威信をかけて王都に上って来た使い手以外は期待薄だろうね。」

「左様ですね、家臣達も自らの面目が有りますから、必死で戦っておりますものね。」

「まあでも弓術は狩りでの即戦力になるから、弓術系会場では仕官出来る者も出るだろうさ。」

「即戦力に出来るように為さるなら、魔獣を材料とした複合大弓を貸し与えに成るのですね?」

「うん、多摩・常陸の冒険者組合長からの報告では、魔力持ちの人たちが大挙狩場にやってきてるようだよ。複合大弓の使い手を送れば収穫が格段に増えるからね。」

「魔力持ちは充魔のお仕事ですか?」

「うん、魔法袋や魔晶石に充魔するだけで、充分家族を養える報酬が得られるようになったからね。」

「そうですわね、1回の槍の投擲や弓射に補助魔法を加えるだけで、高額の収入が得られるのですものね、家臣達も魔力を買ってでも狩りの回数を増やしたいのでしょうね。」

「家(うち)の家臣達の狩りに便乗する冒険者たちも、魔法使いを仲間に加えたいようだが、それが叶う者たちは少数だからね。」

「そう言えば、以前奴隷冒険者に無理強いして酷い損害を出していたと言う、伊豆大島奴隷千人頭や藤奴隷千人頭配下の人たちはどうなりましたの?」

「俺が古代魔龍が存在するか可能性が有り、下手な狩りは王都の危険を及ぼす諫言したからね、今は全員待機中だよ、何(いず)れ千人頭交代の上で、俺達が新しく設ける予定の木曽・赤石魔境奴隷冒険者千人砦に配置換えになる筈だよ。」

「え? 私たちの指揮下に成るのですか? 余りにも役高が違いすぎませんか?」

「俺達が奴隷千人頭になる訳では無いよ、魔竜魔獣狩りの責任者として大臣並みに遇するそうだよ。」

「王国で大臣職を新設するのですか?」

「さあどうなるだろうね? 無任所大臣に任命されて全役所に口出しさせられるか、総目付に任命させられるか、まあどちらにしても何をやっても大丈夫なような格を与えるってさ。」

「その分責任も増えてしまうのでしょうね?」

「ああ、10万石分の責任が増えて、その責任を果たすとなると、多くの士族貴族に憎まれるだろうね。」

「でも殿様、士族貴族に憎まれようとも、民の手助けになればよいのではありませんか?」

「まあそう思うしかないね。」

『甲府冒険者組合』

「組合長はいるかい?」

「これは大和子爵閣下と子爵夫人、今日は御二人揃われてどのような御用でございますか?」

「狩場の測量がどうなっているか確認したくてね。」

「甲府城代様が、勤番衆200騎を率いて測量されておられます。甲府城守備の任務も有りますので、交代で奉公人も動員されておられます。」

「勤番衆の家臣奉公人も測量をしてくれておるのだな? だが王国の副使殿が甲府の測量を任されておられるのではなかったかな?」

「はい左様でございますが、副使様は諏訪男爵家の測量をなされておられます、諏訪家の御家来衆は測量の手伝いをなされておいでです。」

「ならば余も何かで報いてやらねばならぬな、組合長、甲府の組合に魔法使いはいるのか?」

「はい、6名所属しております。」

「重力軽減魔法で獲物の移動が出来る者はいるのか?」

「はい、4名の者が出来ます。」

「冒険者組合には獲物を保管するは汎用魔法袋はあるのか?」

「全部を合わせれば100トン程度の保管は可能でございます。」

「余と奥で囮を務める故、勤番衆と冒険者合同で狩りをしてみないか? 獲物は公平に均等分配でどうだ?」

「真でございますか? そうして頂ければ勤番衆も冒険者も喜びます。」

「ではこれから甲府城代殿と話をつけてくる、汎用魔法袋が多ければ多いほど利益も大きい。最悪血液だけを魔法袋に集めておけば、帰りに余と奥で獲物を運んでやろう。ただ魔法袋だけは自力で用意いたせ、余と奥の魔法袋は狩りでいつも満杯じゃ。」

「は! 承りました。」

俺と彩は翌日から連日狩りにいそしんだ。赤石魔境の10カ所に囮餌場を設けてボスを誘導、ブレスを吐かせて危険度を下げる。この間に甲府勤番・甲府冒険者連合と、諏訪男爵家家臣団・諏訪冒険者連合が狩りをする。僅か1日の間に甲府も諏訪も、汎用魔法袋と魔法使い魔力持ちを掻き集めたようだ、初日から夫々150トンの汎用魔法袋に獲物を詰め込んだが、輸送して転売するのに時間が掛かっては効率が悪い。俺と彩で多摩冒険者組合・王都冒険者組合にまで運び競売にかけたが、その間の仕官武術大会の検分は、朝野王都家老と7人の物頭に任せた。

10日後に囮狩場を木曽魔境に変える事にした。俺と彩は赤石魔境の魔獣魔竜資源の枯渇を恐れたのだ、2人が本気で狩れば資源の枯渇が半端ない、魔竜魔獣の繁殖に関しては判らない事がまだまだ多いのだ。2人で俯瞰して生息数が目に見えて減っていれば、狩りの頻度を減らすのが安全策だろう。

「御城代、何とかなりませんか?」

「とは申してもな、資源の枯渇の恐れが有るから木曽魔境に移動されたのだ、それを赤石でやって下さいとは申し上げれん。」

「御城代も甲府城勤番士族たちの困窮は御存じでしょう、それがこの10日間の臨時収入で、借入金返済も出来た上に貯えもできました。一緒に組んだ冒険者たちの話では、大和子爵閣下の直轄領になれば、大和家の魔術師たちが囮をしてくれるから、資源枯渇する心配なく狩りが出来るそうでは無いですか。」

「それは儂も聞き及んでおるが、まだ甲府王国領の測量が出来ておらんでは無いか?」

「しかし御城代、赤石魔境沿いの1000石ほどは既に測量を終えておるでは無いですか、そこだけでも大和子爵閣下の領地に確定すれば、又我々も狩りが出来るのは有りませんか?」

「う~む、それが出来れば儂も助かるのじゃ。そなたたち勤番衆だけが困窮しておるのではないぞ、儂も苦しいのじゃ。判った王都に早馬を送って1000石分知可能と奏上しよう。」

「ありがとうございます御城代、勤番衆一同に成り代わり御礼申し上げます。」

『木曽魔境』

「副使殿が随分熱心に働いて下さっているようでございますね。」

「そうだね彩、松本子爵家にも掛けあってくれているようだね、御蔭で飛騨魔境沿いにも飛び地が手に入りそうだね。」

「甲府と諏訪の冒険者たちが松本冒険者組合に遠征するのでございますね?」

「汎用魔法袋の数は限られているからね、俺達が囮しない間遊ばせて置けないだろう。魔術師や冒険者は俺達に付いて移動して狩りをしたいだろうしね。」

「今頃諏訪家の御家来衆が必死で測量しているでしょうね。」

「まあそれはそうだろうね、俺たちの直轄領が確定すれば毎日狩りが出来るんだからね。俺達の家臣達が囮役を務める分には狩り過ぎる事も無いし、近隣諸侯にとっては喉から手が出るほど欲しい副収入源だからね。それに立ち寄るだろう冒険者たちの使う金も馬鹿にならないしね。」

「そうですね、装備の購入や修理強化、日々使う品々も諸侯の領地から購入することになりますものね。」

「彩、飛騨魔境で適当に狩った後は、美濃三河魔境・鈴鹿魔境。紀伊魔境で試し狩りをしよう。」

「はい殿様、何処までも御一緒させて頂きます。」

「大袈裟だよ彩、無理して危険を冒す心算などないよ、ここは安全第一に狩りをするよ。」

「はい、でも急ぎ過ぎたら測量の手配が間に合わないのではありませんか?」

「諸侯や代官所は遅いだろうけど、冒険者組合はこの儲け話を見逃すことは無いよ。」

「多摩・常陸・甲府・諏訪の組合長を通して日本全国の組合に話をしてある。どこでも準備万端整えてくれているさ。」

「それなら宜しいのですが。」

「まあ準備不足なら、一度海魔境を試してみても好いかもしれない。」

「海魔獣・海魔竜は陸の魔獣魔竜より強力と噂が有りますが、大丈夫でございますか?」

「彩が、銃とバズーカ砲で支援してくれれば大丈夫さ、俺も無理せず安全第一で行くよ。」

「はい! 殿様の支援は御任せ下さい。」

「じゃあ飛騨魔境で10日狩りしたら次は美濃三河魔境ね。」

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