「溺愛」「婚約破棄」「ざまあ」短編集5

克全

第50話

「やあ、アーレン。
やはり君はやり手だね。
このような状況になる事を、事前に想定していたんだね。
君の情報収集能力と推測力は侮れないね。
だけど、今回はノドン男爵とミルド男爵を舐めすぎたね。
荒地は諦める事だね」

兄上がアーレンを脅かしているのでしょうか?
それとも本気で荒地から追い出すつもりなのでしょうか?
そんな事をすれば、アーレンも強硬策をとると思うのですが。

「それは、今開拓と採掘に励んでいる者達に、出ていけと言われるのですか?
それではノドン男爵が資金に困るのではありませんか?
薬の生産にも問題が出ると思われますが?」

やはり脅してきましたね。
確かに今のノドン男爵家にはお金が必要です。
自由戦士を雇うために必要な資金です。
なくすわけにはいかないのです。

「その心配はしてくれなくても大丈夫だよ。
大陸中に力を持ち、最新の技術を得られるのは、アーレンの裏社会だけではない。
普通の冒険者ギルドも傭兵ギルドも、大陸中に組織があって、最新の技術を手に入れる事ができる。
そしてどのギルドよりも信用信頼がある自由戦士ギルドは、どの組織よりも多くの秘密情報を握っている」

兄上の考えが分かってきました。
兄上の考えておられる事が成功するなら、アーレンに頼る必要などありません。

「確かにレイズ卿の申される通りですが、自由戦士ギルドがそう簡単に依頼者の秘密情報を漏らすと思っておられるのですか?
それは考えが甘いのではありませんか?」

アーレンの言う事ももっともです。
あれほど信義に厳しい自由戦士ギルドです。
私達に依頼者の大切な情報をもらすはずがないのです。

「それは大丈夫だよ。
アーレンも言っていたと聞いているぞ。
自由戦士の領地として荒地を割譲すれば、多くの自由戦士は領内だけ最新の技術を導入してくれる。
何も俺達に教えてくれなくてもいのだよ。
アーレンに中間搾取されることなく、多くの自由戦士を武官家臣や士族として召し抱える事ができるのだよ。
分かるかな?」

そういう事ですか。
やっと理解できました。
私達に自由戦士を雇えと言われた時から、こうなる事を想定されていたのですね。
アーレンを排除して、多くの自由戦士を召し抱える予定だったのですね。

「レイズ卿。
あまり厳しくされますと、余計な敵を作ってしまうのではありませんか。
自由戦士いといえども、全員よい身分の出身ではありませんよ。
それぞれ事情があるのでございます」

アーレンが反論していますが、いつもの余裕がないような気がします。
私とオウエンにもこれだけの力があればいいのですが、欲張り過ぎですね。
この舌戦を聞いている、お腹の子にいい影響があればいいのですが……

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