「溺愛」「婚約破棄」「ざまあ」短編集5

克全

第49話

「アーレン。
まずアーレンが紹介する者が、本当に自由騎士かどうかが分からん。
次に本当に自由戦士でも、実力を確認しなければならん。
嘘偽りがあれば、俺がアーレンを殺さねばならん。
それを分かって言っているのか?」

私達がこれくらいの事を確認する事は、アーレンなら分かっていたはずです。
それでも交渉する以上、条件を全部満たしていたはずです。
ですが、何か弱い所もあるはずです。
弱い所が全くないのなら、兄上がいる時に交渉して、ゴードン公爵家のお墨付きを得ようとしたはずです。
ですが、どこに弱みがあるのか、私には思いつきません。

「アーレン。
ひとつ確認しておきたいですが、荒地のどこを領地とするのですか?
荒地はとても広大ですよね?
先程から荒地荒地といっているのは、どこからどこまでですか?」

「全部でございますよ。
荒地全てを自由戦士と家族に与える事で、命懸けに忠誠を得るのです」

なるほどそう言う事ですか。
やっとわかりました。
この時のために、私達にわずかな利益を与えたのですね。
たぶん莫大な鉱物が眠る場所は隠しているのですね。
私達から領地を得てから、その大鉱山を開発するのでしょう。

「ふっふふふふ。
そう言う事なのですね。
やっとわかりました。
もうわかっているわよね。
領地を与える事はありませんよ」

私はこれ以上交渉する気が失せました。
少なくとも兄上に相談しなければ、私とオウエンだけでは無理です。

「いやはや、さすがノドン男爵閣下。
全てを見抜かれましたね。
ではどういたしましょうか?
今分かっている農地と鉱山の分だけ領地として頂けますか?」

「もう黙っていろ、アーレン。
これ以上何かしゃべったら、お前を殺さなければけなくなる。
お前の事は好きではないが、世話になった事もある。
好んで殺したい訳ではないから、もう黙っていろ!」

オウエンが完全に本気です。
威圧したり交渉したりする気がないので、普通の態度です。
でもこういう時のオウエンが一番怖いのです。
戦いの場では、普段の状態から不意打ちで殺し合いが始まることもあると、以前オウエンから聞いた事があります。
今のオウエンは、その状態なのでしょう。

「いや、はや、これはやり過ぎてしまいましたか?
おっと、いやですよ、殺さないでください。
最終交渉いたしましょう。
レイズ卿同席で、条件交渉をいたしましょう。
今回はハワード王国もゴードン公爵家も厳しい状況です。
私達の要求もある程度認めて頂けると思うのですよ」

確かにアーレンの言う通りです。
今は厳しい状況です。
戦力を整える為なら、譲らなければいけない事があるでしょう。
ですが私とオウエンにそのような判断は無理です。
兄上に頼むしかありませんね。





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