「溺愛」「婚約破棄」「ざまあ」短編集5

克全

第35話

精神的にとても疲れてしまいました。
アーレンは交渉相手として最高に手ごわい相手です。
しかもアーレンの言葉を信じるのなら、私を騙し陥れ利を得ようとするのではなく、鍛えるつもりだそうです。
だから簡単に騙して終わる事はありません。
私が疲弊して倒れる寸前まで交渉して、翌日に交渉を持ち込んだりするのです。

本当に余計なおせっかいです。
親切に見えて迷惑極まりないです。
私は一流の権謀術数を身につけたいわけではありません。
並の男爵でいいのです。
お金さえためることができたら、いつでもこの国を逃げ出すことができるのです。
それに協力してくれるのなら、いえ、すでに協力してくれていますが、もうそれ以上の事は不用なのです。

まあ、そうはいっても、また逃げ出すのは大変です。
今はオウエンとオリビア母さんの一族も、命と生活が私の肩にかかっています。
そう考えれば、簡単に逃げ出す事はできません。
だから本気で交渉術を学ぼうとしました。

オウエンもオリビア母さんもミリアムも、本気でアーレンに学び対抗しようとしましたが、最後にはアーレンを交渉役に任じることになっていました。
解せません!
アーレンは最初から、最後はこうするつもりだったのでしょうか?
私達はいいように陥れられたのでしょうか?

ですが、アーレンが漏らしていいと思っていた情報は、得ることができました。
裏世界に勢力を持ち、裏世界の情報に精通しているアーレンは、我が国ではまだ導入できていない技術を知っているのだそうです。
それだけではなく、そういう技術を駆使する集団と交渉できるのだそうです。

我が国では開発不可能な荒地を、農地に変える技術者集団を雇う事も、彼らを移民として集めてくることすら可能だと言うのです
具体的な話では、荒地に疏水と地下用水路を作り、荒地を農地に変えられる鉱山技術者集団がいるのだそうです。
他にも、通潤橋を造る石工技術者集団もいるのだそうです。
さらに言えば、風車や水車、牛に歯車を回させて低い位置から高い位置に水を移動させたり、人力で水を移動させる木工具を作れる技術者集団がいるのだそうです。

彼らを私が受け入れる決断をすれば、荒地は耕作地となり、ノドン男爵家は安定した税収を得られるというのです。
アーレンの話を額面通りに受け取るなら、これほどいい話はありません。
五年くらいは税金を免除してもいいくらいです。
ですが、絶対に何かあります。
アーレンが額大な利益を得られる裏があるはずなのです。
それを見破ることができればいいのですが……

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