「溺愛」「婚約破棄」「ざまあ」短編集5

克全

第30話

「ノヴァ嬢。
ずっと好きでした。
愛していました。
守護騎士としてその思いを秘めて、お護りするつもりでした。
それが、突然の婚約破棄追放劇となりました。
ノヴァ嬢には悲劇かもしれませんが、私には幸運でした。
私はその幸運を上手く利用して、ノヴァ嬢と親しくさせていただきました。
ノヴァ嬢の気持ちを確かめることができました。
もう迷いません。
もうたじろぐことも引くこともありません。
前に出てノヴァ嬢の夫になります。
誰に何を言われても、動じることなく夫として振舞います。
この身の果てる時まで、ノヴァ嬢を愛し護ることを誓います。
私と結婚してください」

嬉しいです!
本当に心から嬉しいです!
こんな日が来るなんて、ゴードン公爵家にいた頃には信じられない事です。
こんな幸運が訪れるなんて、あれほど忌み嫌っていたイーサン王太子に感謝したくなるほどです。

「はい、結婚の申し込みをお受けさせていただきます。
私もずっとオウエン様を愛していました。
初めてお会いした幼い頃から、オウエン様だけを愛していました。
どれほど身分の高い方から言い寄られても、私の心にはオウエン様しかありませんでした。
私もこの幸運に感謝しています。
この幸運に甘えることなく、いつまでもオウエン様と一緒にいられるように、努力します。
この身の果てる時までオウエン様を愛し、その側を離れない事を誓います」

オウエン様が逞しい胸で私を抱きしめてくれます。
ようやくかなった恋です。
胸が高鳴り、心臓がバクバクします。
甘い痛みで死んでしまうかと思われるほどです。
意識が遠くなりそうですが、この瞬間に意識を失うわけにはいきません。

オウエン様の男らしい体臭にめまいがします。
私、臭くないでしょうか?
急に心配になりました。
今この場でこんなことになると思っていませんでしたから、身嗜みが気になり、不安になってしまいます。

ああ、でも、今更離れる事などできません。
高まったこの想いを、今更鎮めるのは不可能です。
いつの間にかオリビアがいなくなっています。
ああ、オウエン様が私の髪に口づけしてくれます。
胸が締め付けられて息苦しくなってしまいます。
顔が熱くなって、燃えているような気がしてしまいます。

オウエン様の口づけが髪から顔に移ってきました。
心臓の高鳴りがさらに激しくなって、口から出てきてしまうのではないかと、怖くなってしまうくらいです。
心臓の音がオウエン様に聞かれてしまっているのではないでしょうか?
ああ、唇を激しく奪われてしまいました。
もう立ってられません!

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