「溺愛」「婚約破棄」「ざまあ」短編集5

克全

第27話

「アーレン。
お前が入札金額をどうするのかは、お前の勝手だ。
ノドン男爵家が関知する事ではない。
好き勝手にするがいい。
入札資格は、既定の参加料を支払えば認めてやる。
それ以上でもそれ以下でもない。
話が理解できたら帰れ」

私が迷ってしまい、オウエンに視線を送ると、直ぐに助けてくれました。
アーレンの敵意が自分向くように、オウエンは尊大な態度をとります。
まあ、そんな事はアーレンも十分理解しているのでしょう。
満面の笑みを浮かべたままです。

「過分のご配慮ありがたき幸せでございます。
そう言っていただければ、不正などを疑われずにすみます。
正々堂々と入札に参加させていただきます」

アーレンは全く動じることなく、にこやかに笑みまで浮かべて返事をします。
本当にいい度胸です。
ダグラスの件もあるのでしょうが、オウエンは本気でアーレンを睨みつけ、殺しかねない殺気を放っていました。
それを平気で受け流すのですから、度胸だけでいえば、アーレンも六竜騎士と同等に肝が太いと言えます。

「お嬢様。
護衛を増やした方がいいと思われます。
アーレンは何を考えているか分かりません。
本当に悪いと思っていればいいのですが、恨んでいる可能性もあります」

アーレンが出て行ってから、オウエンが真剣に諌言してくれます。

「確かにその通りでしょうが、今雇い入れる方が危険ではありませんか。
仕官に来る者がアーレンの手下という可能性もあります」

「はい、その通りです。
人間は信用できません。
それが例え私の親兄弟であろうと、信用しないでください」

私の心配は、オウエンも考えていたようです。
ではどうやって護衛を増やすというのでしょう。
何か特別な策でもあるのでしょうか?
オウエンの親兄弟も信じるなと言うのなら、遠回しにオリビアの家族でも信用するなと言いたいのでしょう。
この条件では護衛など増やしようがありません。

「オウエンの条件では、とても護衛を増やす方法があるとは思えません。
何か特別な方法があるのですか?」

「護衛として動物を飼いましょう。
ただ一般的な犬は駄目です。
油断していると、敵に慣らされてしまう事があります。
草食の馬や羊や山羊を飼いましょう。
彼らはとても憶病なのです、少々の事では慣れたりしません。
直ぐに警戒の声を発してくれます」

オウエンの考えはいいかもしれません。
ですが、どれだけ役に立ってくれるのか、私には分かりません。
オウエンの考えには無条件に従いたくなってしまいますが、それは無責任です。
なにかあった時に、オウエンの苦しみが強くなってしまいます。
ここは私がちゃんと考えて返事しなければいけない時ですね。

「分かりました。
ですが本当にどれだけ効果があるのか私には分かりません。
直ぐに購入して確かめましょう」


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