「溺愛」「婚約破棄」「ざまあ」短編集5

克全

第22話

「少々手狭で汚いけれど、掃除すれば十分使えるわ。
薬店に比べれば広いし、男爵ならそれくらいの屋敷で十分ね」

「そうですね、ノヴァ。
しっかり掃除して、早く薬を作りましょう」

私とオリビア母さんの会話に、オリビアの実子達が顔色を青くしています。
彼らから見れば、私はまだ公爵令嬢なのでしょう。
彼らにも早く新しい関係に慣れてもらわないといけません。
なんといっても彼らは、私の乳兄弟姉妹なのです。
慣れ過ぎてもらっては困りますが、他人行儀過ぎても困るのです。

私達が公爵家と縁を切る事は、兄レイズ卿のお陰で上手くいきました。
レイズ卿の支援で、男爵位を購入する資金はゴードン公爵家が出してくれました。
当面の生活費も、結構な大金を渡してくれました。
まあ、相続金や持参金と考えれば少なすぎますが、追放された時には銅貨一枚渡されませんでしたから、もらえるだけ儲けモノでしょう。

ただ台所領、領地は割譲されませんでした。
ゴードン公爵から見れば、悪態をついた私に領地を割譲するのなど嫌でしょう。
兄のレイズ卿から見れば、自分が相続する公爵家の領地はわずかでも割譲したくないのが本音でしょう。
当然と言えば当然の結果です。

そんな事よりも、なにより一番大きかったのは、乳母オリビアと守護騎士オウエンの家族です。
今迄はゴードン公爵家に残っていましたが、これからもゴードン公爵家に仕え続けるのは難しいと言うか、肩身が狭いと言うか……
私があれだけの悪態をついて、それにオリビアとオウエンが同調してくれて、ゴードン公爵に敵意まで露にしてくれたのです。
オウエンに至っては、剣まで向けてくれたのです。

残っても居心地が悪いと判断したのか、私についてきてくれました。
公爵家の陪臣から、男爵家の陪臣になってくれました。
もっとも、オリビアとオウエンが合格点をだした者だけです。
オリビアとオウエンに忠誠心を疑われた者は、私に仕える事はできません。
全て私の安全が最優先です。
親兄弟子供であろうと容赦なしです。

それに、受け入れたら生活の面倒を見なければいけません。
公爵家に仕えていた頃と全く同じ待遇は無理ですが、出来るだけ近い待遇を与えないといけませんし、生活の面倒を見なければいけません。
レイズ卿からもらったお金はありますが、座して食らえば山も空し、という言葉があるように、収入がなければ家臣を養うことなど不可能です。

ですが、曲がりなりにも女男爵となったのです。
それなりの家臣数を召し抱えないと体面にかかわります。
私は社交などに興味はりませんが、子供が生まれたらそうも言ってられません。
まだ結婚の話題も出ていませんが……

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