「溺愛」「婚約破棄」「ざまあ」短編集5

克全

第10話

「アーレンが係わっているのならグズグズできねえ!
二重取りは諦めろ。
確実の聖女を殺して首を届ける。
この餓鬼は絶対に傷つけるな。
俺達が皆殺しにされるぞ。
分かったら直ぐに聖女を殺せ!」

失敗しました!
アーレンの名前が危険すぎました。
腐れ外道共を追い込んでしまいました。
これでは自分で自分の首を絞めたも同然です。
やはり私はお嬢様育ちなのですね。
どこかが大きく抜けてしまっているのです。

「ギャアギャア!」
「野郎!
ナニモンだ?!」
「殺せ!
先にこいつらから殺すんだ!」
「動くな!
こっちには人質がいるんだぞ!
こいつはお前らのお頭の息子だぞ!」
「ギャアギャア!」
「やめろ、やめてくれぇ!」
「助けて、助けて、たすけ、ギャアギャア!」

外は酷いことになっているようです。
腐れ外道共が襲撃されているようです。
それも、声から判断すると、一方的な虐殺になっているようです。
オウエンが助けに来てくれたのならいいのですが、それは虫がよすぎますね。
いくらオウエンでも、デイヴィッド達を全て斃してここに来れる訳がありません。

オウエンが助けに来てくれたとしても、その時はデイヴィッド達と一緒です。
彼らと妥協して、私を家に帰す約束で助けにくるしかありません。
でもそれもあり得ない話です。
デイヴィッド達が腐れ外道共を知っているわけがないのです。
知っていれば、私に会いに来る前に腐れ外道共を殺しているはずですから。

となると、今争っているのは第三勢力ですね。
いえ、第四勢力というべきかもしれません。
色情狂の王太子達が第一勢力。
父達が第二勢力。
腐れ外道共が第三勢力として。
恐らくですが、グラント公爵の第四勢力もあるのでしょう。
そうなると、第一勢力の可能性も出てきましたね。

「聖女ノヴァ様。
身の程知らずの愚か者共は皆殺しにしました。
話し合いがしたいので、出てきていただけませんか。
貴族の誇りにかけて、聖女ノヴァ様を傷つけないとお約束いたします。
申し遅れましたが、タッカー男爵家のクロフォードと申します」

第四勢力でしたか。
グラント公爵家の影響下にある、王国第二騎士団所属の槍の名手。
オウエンやデイヴィッドと共に、六竜騎士と褒め称えられる王国の至宝。
誇り高い騎士、タッカー男爵クロフォード卿。
彼なら口にしたことを反故にしたりはしないでしょう。
本当に彼ならば。

「タッカー男爵クロフォード卿。
本当に貴男がタッカー男爵クロフォード卿なら安心して出て行けます。
ですが抜け道の中にいる私には、本人かどうか確かめるすべがありません。
迂闊に出ていって、悪人に捕まるのは間抜けすぎます。
少し遠巻きにして、安全に顔を確かめさせてくれませんか?」

さて、承諾してくれますか?


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