「ざまぁ」「婚約破棄」短編集2巻

克全

第59話

人の心理とは面白いものである。
アレサンランド皇国の家臣とサヴィル王国の家臣。
待遇や給料、仕える場所や仕事は同じでも、身分が全然違う。
アレサンランド皇国の家臣なら皇帝の直臣となれるが、サヴィル王国の家臣では陪臣でしかない。

それは貴族である男爵や子爵も同じで、直臣貴族から見れば、同じ男爵と呼称されてはいても、同輩の家臣でしかないのだ。
表向きは同格とはされているが、実情は全く違う。
特に虎獣人族の貴族からは、人族の陪臣貴族は明らかに蔑んだ目で見られている。
直臣士族から侮蔑の視線を送られる陪臣侯爵すらいるのだ。

それなのに、アレサンランド皇国の家臣だと募集しても集まらなかった女性魔術師が、サヴィル王国の家臣として募集したら、続々と応募があったのだ。
この一事だけで、虎獣人族が人族に警戒されているのが分かる。

続々と集まる女性魔術師は、最初は後宮の人族戦闘侍女が面接をする。
再びカチュア皇妃に仕える事になった、クレア、ノエミ、ミレナの三人だが、彼女達も今は幸せな結婚をして母親となっている。

三人の面接が終わると、虎獣人族の戦闘侍女による面接となる。
三度目の面接で、後宮総取締のマリアムが面接をするのだが、ここまでで、わずかでもカチュア皇妃とベン皇子に危害を加えそうな者は弾かれる。
これは女性魔術師個人の問題だけではすまない。
同居家族はもちろん、一族一門友人知人まで徹底的に調べられ、何が問題で不採用にされたのかが本人にも知らされる。

女性魔術師の名誉と今後の生活のためには、何が理由で不採用にされたかを伝えておかないと、今後誰にも召し抱えてもらえず、困窮して皇室皇国を逆恨みしかねないからだった。
皇室皇国としても、女性魔術師に恨まれ、カチュアとベンに危害を加えられるのは、絶対に避けたい事だったのだ。

幸いな事に、不採用になる女性魔術師はほとんどいなかった。
彼女達を推薦した人族の属国王家も、草食系獣人族大公家も、人族貴族家も、何かあれば自分達の存亡にかかわるので、徹底的な身元調査が行われたからだ。
だが、それでも、人のする事には見落としがある。
多くの人族女性魔術師が募集に応募しだすと、誰の推薦も受けずに面接に来る、少々常識にかけた者もいたので、不採用になる者も少しは出てくるものだった。

四度目の面接はいよいよカチュア皇妃直々の最終面接だ。
だが当然、そこには、カチュアを心から愛し心配するアレサンドもいる。
アレサンド皇帝陛下とカチュア皇妃陛下がいるとなれば、護衛の虎獣人族戦闘侍女の数も半端なく多い。
一人で面接を受ける女性魔術師には地獄の時間だった。

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