「ざまぁ」「婚約破棄」短編集2巻

克全

第58話

皇国領内に大々的な布告が行われた。
直轄領・貴族領・属国領に関係なく、皇帝の勅命として布告が強制された。
アレサンランド連合皇国が建国されて初めての事だった。
虎獣人族が支配者で、物理打撃系の武闘術を最優先にする皇国が、人族中心の魔術師団を設立するというのだから、全ての身分ある者が事の成り行きを固唾を飲んで注目していた。

最初は警戒していた人族魔術師達も、皇国が幾つもの人族王国を併合した一連の戦争で困窮した魔術師の一人が皇国に仕官して、詳しい情報が流れてきて安心した。
想像通り支配者層の虎獣人族が幅を利かせていて、人族を下にみているものの、最初の条件通り、人族王国や貴族に仕えるよりも好待遇だった。

世に出たい魔術師が少しずつ皇国に仕官し始めた。
彼らからの情報も悪いのもではなかった。
だが、肝心の女性魔術師が全然集まらないのだ。
しかし、それもしかたがないと言えばしかたがない。
女性魔術師の配属先警備先は、後宮だとはっきりと発表されている。
その後宮には、人族でありながら皇帝の配偶者に選ばれたつがいがいる。

出世欲に凝り固まった女性や、玉の輿狙いの女性以外は、皇帝に弄ばれるかもしれない後宮勤めを忌避するのは当然なのだ。
そして皇国側も、玉の輿狙いで、事があればカチュア皇妃やアベン皇子に危害を加えかねない女性魔術師など、後宮に入れるわけにはいかなかった。
両者の思惑もあって、なかなか女性魔術師が採用されない状況となっていた。

しかしこんな時こそ、地縁血縁がモノをいうのだ。
少しでも皇帝陛下と首脳陣の心証をよくしたい、属国の人族王国や獣人族大公国はとても多いので、彼らにとって皇国が女性魔術師探しに困っているのは好機だった。
彼らは必死になって女性魔術師を探すと同時に、現在仕えている女性魔術師に、出張扱いで皇国後宮に行ってくれるように説得した。

女性魔術師探しに苦心していた皇国側が、魔術レベルを下げたのもよかった。
後宮に入っても皇帝に弄ばれることがない事を証明するために、とにかく人族女性を後宮入りさせて、安全であることをアピールしようとしえいた。
この事には皇帝アレサンドもお冠で、カチュア以外の人族などに興味はないと、カンカンに怒っていた。

「陛下。
いっそ女性魔術師団は、カチュア皇妃殿下の直属部隊とされてはいかがですか?
皇帝陛下から寵愛を受け、サヴィル王国の女王配下でもあられるカチュア皇妃殿下の直属部隊なら、女性魔術師も安心して仕官に応募するのではないでしょうか?」


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