「ざまぁ」「婚約破棄」短編集2巻

克全

第1話

「サヴィル子爵家令嬢ジュリア。
君との婚約を解消させてもらうよ。
理由?
決まっているじゃないか。
君に魅力がないからだよ。
ソバカスだらけの顔をは醜いし、身体は鶏ガラのように貧弱だ。
なにより堅苦し過ぎるよ。
婚前交渉がダメだって、それじゃまるで修道女だ。
いや、最近の修道女はもっと柔らかな考えを持っているよ。
僕の経験上ね!」

腹が立ちます!
怒りで目の前が真っ暗になりそうです!
なにが硬すぎるですか!
貴族令嬢の身持ちが硬いのは当然ではありませんか!

しかも相手は貴男なのです!
婚約者に婚前交渉を迫っては、事が成就すると平然と婚約を解消する。
その所業のために面目を失い、自殺を図った令嬢すらいるのです。
王都にいられなくなって、領地に閉じこもっている令嬢が幾人もいるのです。
国王陛下のお声掛かりでなければ、絶対に断っていた話です。

ですが貴族の方々が多く集まる夜会で公表してくれたのは助かります。
そうしろと言ったのは、私の元婚約者、コータウン伯爵家令息ドミニクにしな垂れかかっているフェリシティでしょう。
腹黒で、常に陰険な意地悪を仕掛けるフェリシティ。
ターナー子爵家令嬢でしかないのに、身分違いもはなはだしい、ジャスパー王太子殿下を籠絡しようとしたフェリシティ。

でも賢明なジャスパー王太子殿下は、大陸一とも評される美貌と、豊満な肢体に騙されることなく、毅然と跳ね除けられたと評判です。
ジャスパー王太子殿下の次は、大金鉱山の発見で急に金持ちになり、この国一番の金満貴族と評判のコータウン伯爵家に狙いを定めたのですね。
おめでとうございます。
そしてありがとうございます。
お陰で私が何も言わなくても、乙女のままだと証明されました。

「私が乙女のままだという事を証明してくれたのですね」

私の言葉にフェリシティが悔しそうに顔をゆがめています。
頭が悪いのに策謀など考えようとするから、自分のバカを証明して悔しい思いをすることになるのです。
これに反省したら、少しは大人しくしている事です。

「でもそれだけでは、婚約解消は認められません。
この婚約は国王陛下のお声掛かりなのですよ。
正規の手続きを踏む必要があるのです。
婚約破棄に伴う賠償金を請求します」

「賠償金?
分かった分かった。
持参金の三倍だったな。
その程度なら安いモノだ。
明日にでも屋敷に届けてやる。
みなも聞いたな、これで僕とジュリアの婚約は正式に解消された。
これでいいだろ、フェリシティ?」

「はい、ありがとうございます、ドミニク様」

これで万々歳の結末だったはずなのです。
私は大嫌いなドミニクと婚約を解消できて、高額の賠償金を手に入れることができました。
ドミニクは大陸一の美人と評判の令嬢を妻にできます。
フェリシティは国一番の金持ちと結婚できます。
三人とも幸せになれるはずだったのです。
兄上が暴走しなければ……

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