「ざまぁ」「婚約破棄」短編集2巻
第1話
「皆の者、よく聞くがいい。
重大な裏切りが発覚した。
許し難い背信行為だ。
余の婚約者であるベウィッケ伯爵家のフィオナが姦通していたのだ。
それも身分卑しい不可触民をベッドに引き込んでいたのだ!」
王太子が定番のセリフを吐いています。
誰も信じていませんが、信じたふりをしています。
それも当然でしょう。
これで七人目の婚約破棄劇です。
この後のセリフまで宮廷貴族は思い浮かべる事ができます。
宮廷貴族達は表情を変えず、顔を動かさず、王太子の手先に見つからないように、視線だけで犠牲者の様子を窺いました。
小柄で愛らしく幼いフィオナ嬢。
王太子と愛妾の新たな犠牲者。
独立貴族として僻地に蟠踞していたベウィッケ家を、王国の重臣や王太子の側近が何度も通って臣従させたのだ。
臣従させるまでは平身低頭し、本心では与える気もない爵位や褒賞を約束しての勧誘だった。
臣従すれば無条件で伯爵位を与え、長女を王太子の婚約者とする。
南方の珍しい産物や商品を毎年下賜する。
交易の税を免除する。
正式に王太子と長女の結婚が整えば、辺境伯か侯爵の好きな爵位を与える。
守る気の無い約束なのだから、破格の条件だ。
だが、フィオナ嬢は自分が罠に嵌められ追い込まれているのに気がつかないのだろう、顔色も変えずぼんやりとしている。
そのあまりに幼くおとなしい姿は、陰謀渦巻く宮廷には場違いだった。
それを視線の端に捕らえた宮廷貴族の一部には、流石に哀れと感じる者もいたが、そんな事を表情に表したら、王太子の愛妾サリバンノアとその母親にどんな目にあわされるか分からないので、必死で無表情を貫くしかなかった。
「その背信行為を調べてくれたのが、ここにいるサリバンノア嬢だなのだ!
彼女は命の危険があるのにもかかわらず、単身ベウィッケ家の屋敷に乗り込み、背信不貞をその眼で確かめて来てくれた。
多くの国と交易し、その全ての国で絶大な信用を得ているマネー家令嬢の証言に偽りなど無い!」
これもまたいつもの事だった。
六度も見てきた事だから、聞く前見る前から宮廷貴族の頭の中に浮かんでいた。
多国間大商家であるマネー家は、悪辣で有名な女当主ウルスラが率いている。
若い頃は自らの色香を使い、娘が年頃になってからは娘まで色仕掛けに使い、手段を選ばず集めた美女も使って、多くの国の王族と繋がりを作り、莫大な利益をあげ続けている。
今回もベウィッケ伯爵家の領地に欲しい物があるのだろう。
それを手に入れるために、王太子を唆したのだろう。
王太子も莫大な貢物が手に入り、幼いといっていい貴族令嬢を嬲り者にできるので、喜んでサリバンノアの望み通り動いているのだろう。
心ある貴族はどうしても視線が可哀想なフィオナ嬢に向かってしまう。
だが、なんと!
事もあろうに、フィオナ嬢が大きなあくびをしていたのだ!
重大な裏切りが発覚した。
許し難い背信行為だ。
余の婚約者であるベウィッケ伯爵家のフィオナが姦通していたのだ。
それも身分卑しい不可触民をベッドに引き込んでいたのだ!」
王太子が定番のセリフを吐いています。
誰も信じていませんが、信じたふりをしています。
それも当然でしょう。
これで七人目の婚約破棄劇です。
この後のセリフまで宮廷貴族は思い浮かべる事ができます。
宮廷貴族達は表情を変えず、顔を動かさず、王太子の手先に見つからないように、視線だけで犠牲者の様子を窺いました。
小柄で愛らしく幼いフィオナ嬢。
王太子と愛妾の新たな犠牲者。
独立貴族として僻地に蟠踞していたベウィッケ家を、王国の重臣や王太子の側近が何度も通って臣従させたのだ。
臣従させるまでは平身低頭し、本心では与える気もない爵位や褒賞を約束しての勧誘だった。
臣従すれば無条件で伯爵位を与え、長女を王太子の婚約者とする。
南方の珍しい産物や商品を毎年下賜する。
交易の税を免除する。
正式に王太子と長女の結婚が整えば、辺境伯か侯爵の好きな爵位を与える。
守る気の無い約束なのだから、破格の条件だ。
だが、フィオナ嬢は自分が罠に嵌められ追い込まれているのに気がつかないのだろう、顔色も変えずぼんやりとしている。
そのあまりに幼くおとなしい姿は、陰謀渦巻く宮廷には場違いだった。
それを視線の端に捕らえた宮廷貴族の一部には、流石に哀れと感じる者もいたが、そんな事を表情に表したら、王太子の愛妾サリバンノアとその母親にどんな目にあわされるか分からないので、必死で無表情を貫くしかなかった。
「その背信行為を調べてくれたのが、ここにいるサリバンノア嬢だなのだ!
彼女は命の危険があるのにもかかわらず、単身ベウィッケ家の屋敷に乗り込み、背信不貞をその眼で確かめて来てくれた。
多くの国と交易し、その全ての国で絶大な信用を得ているマネー家令嬢の証言に偽りなど無い!」
これもまたいつもの事だった。
六度も見てきた事だから、聞く前見る前から宮廷貴族の頭の中に浮かんでいた。
多国間大商家であるマネー家は、悪辣で有名な女当主ウルスラが率いている。
若い頃は自らの色香を使い、娘が年頃になってからは娘まで色仕掛けに使い、手段を選ばず集めた美女も使って、多くの国の王族と繋がりを作り、莫大な利益をあげ続けている。
今回もベウィッケ伯爵家の領地に欲しい物があるのだろう。
それを手に入れるために、王太子を唆したのだろう。
王太子も莫大な貢物が手に入り、幼いといっていい貴族令嬢を嬲り者にできるので、喜んでサリバンノアの望み通り動いているのだろう。
心ある貴族はどうしても視線が可哀想なフィオナ嬢に向かってしまう。
だが、なんと!
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