「ざまぁ」「婚約破棄」短編集2巻

克全

第2話

「あら、珍しい方に会ったわね。
貴女が舞踏会に来るなんて珍しいわね」

「あの、ジョセフィン様。
今夜の舞踏会は、フォーウッド男爵家のルーカス様と私の婚約を披露するための舞踏会ですので、私が出席しなければいけないのです」

「あら、そうでしたの。
全く存じ上げませんでした。
ごめんなさいね」

噂通り嫌味な方です。
我がクリフォード子爵家の事情も、ルーカス様が本当はメギンチ家の五男で、お金でフォーウッド男爵家の籍を買ったことも、全て先刻ご承知なのです。

友人の話では、社交界の噂は怖いものだそうです。
どれほど秘密にしようとしても、隠し切れないのだそうです。
でも、そんな噂をお金に換える強かな貴族士族もいるそうです。

プランプター伯爵家のジョセフィンは、噂をお金に換える方ではありません。
生まれ持った美貌と色香をお金に換える方です。
透き通るような白い肌も。
綺麗に編み込まれた金髪も。
王家御用達で仕立てられたドレスも。
ジョセフィンに群がる取り巻き男性が貢ぐことで、日々グレードがアップしているのです。

「皆さんに聞いてもらいたいことがあります」

ルーカスがジョセフィンをエスコートして壇上に上がったのは、私が一人で多くの貴族からお祝いの言葉を受け終わったころでした。
父も母も私も弟も妹も、初めてといっていい豪華な舞踏会に、ルーカスはもちろんフォーウッド男爵にもルーカスにも何の挨拶もされなかったのに、全く疑念を抱いていませんでした。

ですが、この状況を見れば、何かとんでもない事が起こっているのは分かります。
父も母も私も、これから起こるであろう事を予想して、血の気が引き真っ青になっています。

「本来なら、この壇上には私とクリフォード子爵家のマチルダ嬢が立つはずでした。
そのために、父のフォーウッド男爵も私も精一杯準備をしました。
ところが、マチルダ嬢が裏切ったのです。
あれほど固く約束していたのに、私を裏切ったのです。
私は何も知りませんでした。
マチルダ嬢を信じていたので、特に調査もしていませんでした。
だから知らなかったのです。
マチルダ嬢が社交界で浮気者だと言われている事を。
私は騙され恥をかくところでした。
それを救ってくれたのが、ここにいるプランプター伯爵家のジョセフィン嬢です。
ジョセフィン嬢は私とフォーウッド男爵家の救世主です。
だから私はジョセフィン嬢に御礼がしたいと言ったのです。
ですがジョセフィン嬢は御礼などいらないと言ってくれました
そして恥を忍んで打ち明けてくれたのです。
私の事を愛していると!
全ては愛ゆえいに行ったことだと!」

茶番です。
どうしようもない大茶番劇です。
私とクリフォード子爵家は、茶番劇に無理矢理出された虐められっ子です。


コメント

コメントを書く

「恋愛」の人気作品

書籍化作品