魔法武士・種子島時堯

克全

第274話明国情報

1547年10月:大宰府・本丸:種子島権大納言時堯・三雲壱岐守行定

「権大納言様、お久し振りでございます」

「壱岐守、よくぞ無時に戻ってくれた」

「有り難き御言葉を賜り、感謝の言葉もございません」

「それで明国の状況はどうなっておる?」

「嘉靖帝による大礼の議により、忠臣が投獄されたり遠方に流されました。更に嘉靖帝は政務をかえりみず、道士を高位高官に任じ圧政を強いたため、国内は混乱し怨嗟の声が満ち満ちております」

「民は困窮しておるのだな」

「はい、また道士達が不老不死の仙丹を得るために、初潮を迎えたばかりの女性の経血を用いたため、血を取られて殺されるという噂が広まり、誤解した宮女達が熟睡中の嘉靖帝を絞殺しようとした暗殺未遂が起こってしまいました」

「道士どもは愚かなことをするものだな、だが嘉靖帝は助かったのだな」

「はい、宮女の1人が皇后に通報した事で九死に一生を得たようでございます。ですがどうやら後宮での権力闘争があった物と思われます」

「度し難い話だな、捕まった宮女達は冤罪の可能性もあるのだな」

「はい、可哀想な事ですが、捕まった宮女達は凌遅刑と言う残虐な刑に処されました」

「そうか、それでは明国南部の状況はどうなっている?」

「はい、我が国の民に偽装した倭寇どもが沿岸部を荒らし回っておりますので、民は困窮しております」

「ふむ、壱岐守はどう考えておる」

「権大納言様が明国の混乱に乗じて攻め込む御心算でしたら、偽倭寇どもを利用されるべきかと思われます。しかしながら、権大納言様が明国との交易を望まれるのでしたら、明国が偽倭寇どもを討伐することに協力されるべきかと思われます」

「ふむ、我が国の名誉のためにも偽倭寇を許す訳にはいかぬ、海軍司令長官達と相談の上で討伐計画を決める、今日は御苦労であった、帰って休むがよい」

「は、失礼いたしまする」

さてどうすべきだろう、交易艦隊の所属する密偵は壱岐守だけではない、全ての艦艇は帰国したら交易国交易相手の状況を知らせてくる。密偵だけでなく、各艦長・船長からも公式報告書が上げられてくるが、艦隊司令官や海軍司令長官が情報を精査選別して俺に伝えるから、生の情報と言う訳にはいかない。

さらに精査選別する者の主観が入るから、下手をすれば現状とかけ離れた情報だけしか上がってこない可能性もある。だからこその密偵なのだが、彼だけを信じてしまえば公式報告書は形骸化してしまう。だから確認の為の下問を行う必要が出てくる。

公式の報告官に対しても密偵に対しても、常に俺が厳しい目で報告を聞いている事を知らしめなければならない。商人からも情報を吸い上げ、公式報告官・密偵の情報を精査確認しよう。根来寺商船団と各地の商船団からランダムに船長を選んで報告に来させよう。

状況によったら明国侵攻時期を繰り上げる必要が出てくるかもしれない。国内の統一戦争と明国侵攻戦争の両面作戦は厳しいが、各地の大名を明国に領地替えすることで、早期に国内統一が可能になるかもしれない。

三雲行定
氏族:有道氏流三雲氏
主君:六角定頼→種子島時堯
居城:三雲城
通称:源内左衛門
官位:壱岐守
甲賀五十三家の一つ
単独で明と貿易を行い室町幕府に寄付をするなど、高い経済力を有していた。
現在は種子島海軍交易艦隊に所属し、各地の情報を集めている、明国南部の諜報部隊上忍

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