魔法武士・種子島時堯

克全

第271話淡路国始末

1547年9月:淡路国洲本城:種子島権大納言時堯・安宅摂津守冬康・野口若狭守冬長

「摂津守殿、若狭守殿、もう死のうなどとは考えられるな」

「権大納言様は、我ら兄弟に生き恥を晒せと申されるのか!」

「籠城している一族一門衆の命を懸けて、我と一騎打ちをして敗れたのだ、おめおめと生き恥を晒した訳ではあるまい」

「ですが敗れた以上、切腹するのが筋でありましょう」

「一騎打ちで勝った我が、一族一門衆の助命をする代わりに、御上の為に働けと申しておる。三好家の阿波に攻め込めとは申さん、東征に従軍して天下泰平の為に働いてもらいたいのだ」

「しかしながら、そのような不名誉な行いをすれば、家名に傷をつけることになり、武士の面目が立ちません」

「そうかな、天下統一の軍に加わり、戦に苦しむ民百姓が餓える事も凍える事も略奪される事もない世を作るのが、武士の面目が立たない不名誉な行いなのかな?」

「それは」

「なぁ摂津守、若狭守、主家に叛けとも言わぬし一族を調略せよとも言わぬ、お主らが種子島家に素直に下らねば、ともに最後まで戦い抜いてくれた国衆や地侍からも死を選ぶ者が出るかもしれぬぞ」

「「それは・・・・」」

「どうだ、御上の為に戦ってはくれぬか」

「三好家家臣衆の調略をせよと言われませぬか?」

「言わぬ」

「阿波や讃岐を攻めろとは言われないのですね」

「言わぬ、寒さに我慢できると言うのなら、蝦夷での戦いに送ろう。蝦夷なら一族一門で争う事は絶対ないであろう」

「承りました、御上の為に働かせていただきます」

尼子と蝦夷の事が一息ついた俺は、瀬戸内海を完全に私有するべく淡路国に侵攻する決断をした。

伊予を制圧した時に、表向き村上水軍を配下に加えたものの、彼らは隙あらば裏切ろうとしていた。だからこそ大内家配下の毛利家縁の小早川家と縁を結んでいたのだし、秘かに尼子と連絡をとっていたふしもある。

だが月山富田城の合戦で尼子に敗れた大内家の威信は地に落ち、大内家の力を背景に毛利家が小早川家と吉川家を乗っ取る計画も俺が未然に防いだ。これにより村上水軍の山陽地方沿岸拠点は、ことごとく種子島家が奪い直轄領とした。

これにより遂に村上水軍も心から完全降伏臣従をしたようで、反種子島の当主や嫡男が不慮の死を遂げた。内部粛清されたのだろうが、これに関しては黙認することにした。だがこれで村上水軍の艦船や将兵を、寝返りを恐れず侵攻に使えるようになった。何より村上水軍の反乱に備える海軍艦を侵攻に使えるようになったのが大きかった。

更に種子島家に近い大内晴持が、種子島家が送り込んだ軍師や側近の意見を取り入れ、石見・出雲の内政を成功させ、国衆・地侍の忠誠心を得たことが大きかった。大内義隆よりも家臣団の声望を得たことで、大内義隆側近や周防・長門の国衆が種子島家を攻めることの抑止力となった。

このような状況となった事で、俺は淡路国を攻め込む決断をしたのだ。土佐一条家と約束したのは阿波と讃岐の領有だから、淡路を攻め取っても約束を破った事にはならない。まあいい気はしないだろうから、伊予の土佐一条家縁者が手柄を立てるように陣立てし、畿内や東海に一条家の分家が領地を得るようにしよう。

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