魔法武士・種子島時堯
第262話逃散
1547年3月
俺が中国地方で手に入れた、新領地での医療活動に専念した事で、以前に九州で起こった領民の逃散が中国地方で激化してしまった。俺が中国地方での手術拠点とした備後国・兵庫城に向けて、尼子家が支配している石見・出雲からだけではなく、大内家が支配している周防・長門からも続々と領民が逃げて来てしまった。
石見・出雲からの逃散はいい、どうせ俺が侵攻制圧する土地だから、大内家に割譲するまでに、どれほど沢山の領民が種子島家に移住しようが問題にならない。大内家にしても、百姓兼業の自給自足地侍クラスに与える土地が増えて喜ぶだろう。
だが周防・長門の領民が種子島家に逃散するとなると、そうも言っていられない!
武将クラスの土地に住む、奴隷・小作農クラスの領民が逃げ出してしまうと、収穫高や強制徴募の農民兵が激減してしまい、国衆・地侍は戦闘力を失ってしまいかねないのだ。流石にそのような状態になれば、大内家も問答無用で種子島家に合戦を挑んで来るかもしれない。
そこで大内領から種子島領に逃げて来た者は、懲罰を一切与えないと大内義隆・全家臣に誓紙を書かせた上で、治療を施した後で帰郷させた。もちろん尼子領から種子島領に逃げ込んで来た者は受け入れ、屯田兵団・戦闘工兵兵団・漁業艦隊・交易艦隊に配属し、十分暮らして行けるように手配した。
「しかしいったいどう言う事だ?」
「何がでございますか?」
「ここまで大量の領民が逃げ込んで来るのはおかしくないか?」
「そうでございましょうか、権大納言様の徳がようやく中国地方でも知れ渡っただけの事だと思いますが」
「どう言う事だ?」
「権大納言様は大した事と思っておられないでしょうが、領民からすれば信じられない事でございます」
「ふむ? 俺が最近急に重点を置いたのは治療、特に手術だが、それが領民の心を打ったと言う事か?」
「はい」
「具体的には何だ?」
「死ぬはずだった者をお助けになられました、生死を司る神の如き方と思っているのでございましょう」
「そんな力などないぞ、助けられる者を助けただけだ、死ぬべき定めの者はどれほど手を尽そうと死ぬ」
「はい、それはいずれ領民も理解いたしましょう。ですがそれ以前に、権大納言様が死病に取りつかれた者を、祟りも恐れず手ずから治療なされた事が、領民の心を捕えたのでございましょう」
「死病とは言うが、それは種子島家以外の場合だ、我が種子島家の看護部隊なら、今まで助けられなかった病でも助けられる」
「助ける助けないだけの話ではありません、今までは僧侶や神官でさえ、祟りを恐れて病人や死者に手を触れる事はありませんでした」
「俺が死病に取りつかれた者を、分け隔てなく手ずから施術することが、領民の心を掴んだのか?」
「左様でございます」
「だが日本住血吸虫の患者を全て治療したら、直接余が治療する事はなくなるぞ、そうなると領民の心は離れてしまうのか?」
「それは大丈夫でございましょう、治療自体は看護部隊が引き継ぎます。権大納言様は死病を退治されたので、後は弟子に任せて武家・公家としての務めに専念すると、各地の代官や領主に伝えさせれば大丈夫でございます」
「そうか、そうだな。だがあまりに熱狂的な支持は諸刃の剣、危険な兆候が現れないか、細心の注意を払ってくれ」
「承りました」
俺が中国地方で手に入れた、新領地での医療活動に専念した事で、以前に九州で起こった領民の逃散が中国地方で激化してしまった。俺が中国地方での手術拠点とした備後国・兵庫城に向けて、尼子家が支配している石見・出雲からだけではなく、大内家が支配している周防・長門からも続々と領民が逃げて来てしまった。
石見・出雲からの逃散はいい、どうせ俺が侵攻制圧する土地だから、大内家に割譲するまでに、どれほど沢山の領民が種子島家に移住しようが問題にならない。大内家にしても、百姓兼業の自給自足地侍クラスに与える土地が増えて喜ぶだろう。
だが周防・長門の領民が種子島家に逃散するとなると、そうも言っていられない!
武将クラスの土地に住む、奴隷・小作農クラスの領民が逃げ出してしまうと、収穫高や強制徴募の農民兵が激減してしまい、国衆・地侍は戦闘力を失ってしまいかねないのだ。流石にそのような状態になれば、大内家も問答無用で種子島家に合戦を挑んで来るかもしれない。
そこで大内領から種子島領に逃げて来た者は、懲罰を一切与えないと大内義隆・全家臣に誓紙を書かせた上で、治療を施した後で帰郷させた。もちろん尼子領から種子島領に逃げ込んで来た者は受け入れ、屯田兵団・戦闘工兵兵団・漁業艦隊・交易艦隊に配属し、十分暮らして行けるように手配した。
「しかしいったいどう言う事だ?」
「何がでございますか?」
「ここまで大量の領民が逃げ込んで来るのはおかしくないか?」
「そうでございましょうか、権大納言様の徳がようやく中国地方でも知れ渡っただけの事だと思いますが」
「どう言う事だ?」
「権大納言様は大した事と思っておられないでしょうが、領民からすれば信じられない事でございます」
「ふむ? 俺が最近急に重点を置いたのは治療、特に手術だが、それが領民の心を打ったと言う事か?」
「はい」
「具体的には何だ?」
「死ぬはずだった者をお助けになられました、生死を司る神の如き方と思っているのでございましょう」
「そんな力などないぞ、助けられる者を助けただけだ、死ぬべき定めの者はどれほど手を尽そうと死ぬ」
「はい、それはいずれ領民も理解いたしましょう。ですがそれ以前に、権大納言様が死病に取りつかれた者を、祟りも恐れず手ずから治療なされた事が、領民の心を捕えたのでございましょう」
「死病とは言うが、それは種子島家以外の場合だ、我が種子島家の看護部隊なら、今まで助けられなかった病でも助けられる」
「助ける助けないだけの話ではありません、今までは僧侶や神官でさえ、祟りを恐れて病人や死者に手を触れる事はありませんでした」
「俺が死病に取りつかれた者を、分け隔てなく手ずから施術することが、領民の心を掴んだのか?」
「左様でございます」
「だが日本住血吸虫の患者を全て治療したら、直接余が治療する事はなくなるぞ、そうなると領民の心は離れてしまうのか?」
「それは大丈夫でございましょう、治療自体は看護部隊が引き継ぎます。権大納言様は死病を退治されたので、後は弟子に任せて武家・公家としての務めに専念すると、各地の代官や領主に伝えさせれば大丈夫でございます」
「そうか、そうだな。だがあまりに熱狂的な支持は諸刃の剣、危険な兆候が現れないか、細心の注意を払ってくれ」
「承りました」
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