魔法武士・種子島時堯

克全

第234話琉球・台湾開発

1546年5月:高砂国・種子島家政庁

「大丈夫か?」

「お任せ下さいませ、琉球も高砂も順調に開発が進んでおります。唐天竺朝鮮から購入した奴隷で編成した戦闘黒鍬部隊を活用し、小規模なダムや溜池を設け、馬車鉄道兼用の堤防を築き、新田開発も精力的に行っております」

「うむ、毎年の耕作量が倍々に増えているのは黒鬼の功績だ、だが今の開発速度を落とす事無く、新たな奴隷を集めて戦闘黒鍬部隊を編成することが出来るのか?」

「九州の朱雀や海軍の玄武とも話し合いましたが、琉球の産物が順調に南蛮相手に売り払う事が出来ております。価格も若殿が最低価格として設定された価格より、倍近くで売れております」

「それはよかった、それで琉球の特産品・工芸品を高砂で生産する計画はどうなっている?」

「まず壺屋・読谷で登り窯を使って焼かれている陶器ですが、職人を高砂に移住させて焼き物に適した土を探させました。購入した奴隷の中から焼き物の仕事をした事のある者を選別し、職人の下につけて大々的に生産に入らせております」

「うむ、琉球王家に人頭税をかけられ奴隷として売り払われていた、宮古島や石垣島の民の事が気になっているのだが?」

「はい、宮古に関しましては若殿が教えて下さったように織物の技術が進んでおりましたので、それを特産品にすべく支援しておりました。特に苧麻の原料に染色を施し、長さ11・4m幅40cm19ヨミの細目布として織った綾錆布(あやさびふ)が南蛮人に人気でございます」

「そうか、島では人口を増やしたくても土地に限りがある、武士として働きたい者は武士に、職人として働きたい者は職人に、土地を耕したい者は高砂や九州に移民して百姓に成れるようにしてくれて」

「はい、承りました。それと石垣で織られている、白地に紅露による焦げ茶の絣模様がくっきりと浮かぶ清楚な白上布の八重山布でございますが、こちらは南蛮人と共に家中でも人気でございまして、特に奥向きの女たちが欲しがっております」

「そうか、無駄使いは戒めなければならないが、予算内に収まるなら多少着飾るのもよかろう、これも新領地の支援の一環かもしれんな」

「はい、以前から御指示いただいておりましたように、出来る限りの支援を行い島々の振興に務めております。それと若殿、与那国で織られている小花のように可憐な柄の布でございますが、こちらはなぜかいまいち人気が出ておりません」

「確か絹糸・綿糸・芭蕉糸・麻糸を織り交ぜたものであったな?」

「はい、左様でございます」

「ならば俺用に仕立てさせてくれ、俺が毎日着るようになれば、自然と人気が出るかもしれん」

「承りました、左様にさせて頂きます」

「話に出た芭蕉糸で織った芭蕉布はどうなっている?」

「はい、琉球にしかない糸芭蕉の原皮からとれる糸を手で績み、絣糸を手くくりし、琉球藍・車輪梅等の植物染料で染め織りあげております。琉球以外では作りようのない織物で、軽くてさらりとした風合いが南方では何より愛されております。種子島家の戦闘黒鍬部隊にも、夏用の衣服として支給するよう琉球の民から購入しておりますから、琉球の民に安定した収入を与えております」

「そうか、それはよく気がついてくれた」

「いえ、若殿は京や機内で多忙でございますから、九州や高砂・琉球の事は極力我らで裁量させて頂きます」

「そうか、それは助かる、それで久米島の紬はどうなっている?」

「こちらも南蛮人に評判がよく、高値で売る事が出来るようになり、民は豊かに暮らしております」

「久米島が琉球王国に侵攻服属されて以来、税の7割を紬で支払わされていたが、独自で高価に売る事が出来れば今までのような貧しい暮らしから抜け出すことが出来ると思っていたが、その通りになったのだな」

「はい、ただ島の中だけでは養蚕の量に限りがございますので、久米島の技術者も高砂や九州に移民を進めております」

「うむ、引き続き支援をしてやってくれ」

「はい、それと琉球の漆器でございますが」

「九州や畿内と違って、特別に湿度高くする必要がなかったのだな?」

「はい、これは高砂も同じでございますから、九州や畿内で製作するより工程が少なくて済みます。職人を移住させ、漆の植林も進めております」

「唐はもちろんだが、高砂・九州・畿内の漆に違いはないのか?」

「確かに出来上りの風合いが違いますが、それは海軍衆によって各地の漆を高砂や琉球に運ばせる事で、今まで通りの風合いを維持するように努めております」

「そうか、色々試して最善の方法を探し出してくれ。ただし風合いによって人気や価格が違ってくるだろうから、今までの生産地を完全に引き払わないようにしてくれ」

「承りました」

「それらの生産を拡大した上で、農作地の開墾も行う戦闘黒鍬部隊を新設するのだ、海軍衆の奴隷交易に高砂・琉球にもこれまで以上の協力をしてもらわなければならない」

「はい、高砂・琉球の湊で奴隷交易が活発になるように手配いたします」

「頼んだぞ」

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