魔法武士・種子島時堯

克全

第232話敗北

1546年5月:月山富田城

俺たちは尼子晴久にしてやられた!

いや、毛利元就にしてやられた!

証拠はない、だが晴久1人にこれほどの絵図が書けるだろうか?

俺は手柄争いを謀る大内家家臣団の策謀で、直接合戦に協力することができない。遅々として進まない進軍ではあったが、何とか1年をかけて月山富田城を包囲したのはいいものの、尼子軍は固く護るだけでなく、遊軍を駆使してゲリラ戦術て大内軍を苦しめる。

尼子軍によるゲリラ戦術の兵糧攻めは、種子島海軍を使ったり俺が直接輸送をする事で防いだものの、何故か大内軍が直接兵糧を輸送するルートや時間が尼子軍に漏れ、何度も襲撃されて兵糧を奪われてしまった。この体たらくによって月山富田城への兵糧攻めは無力となり、自分たちが兵糧攻めにあうと言う体たらくで、大内軍の士気は目に見えて低下していった。

どう考えても味方の中にスパイがいるのだが、大内家中に武断派と文治派の争いがあって、味方の脚を引きずる降ろそうとするものが多すぎて誰だと断定することができない。俺としては毛利元就だと考えているが、1人だけとも言い切れないのが情けない。

俺の知る第一次月山富田城の戦いと同じように、尼子家から大内家に寝返って味方になっていたはずの三刀屋久扶・三沢為清・本城常光・吉川興経などの国人衆が、俺が戦場から京に移動した事を確認した上で、再び尼子家に寝返ったのだ。これで低下していた士気が回復不可能な状態となり、牢人衆や陣借衆・野盗崩れが逃げ出してしまい、裏崩れや友崩れを起こしたのと同じ状況に陥ってしまった。

もはや撤退するしか生き延びるすべのない状態となったが、史実で海路撤退しようとした大内晴持が、乗船が転覆した事で溺死してしまっている。それを知っていたからこそ、親衛部隊として1000兵を送り込んでいた。指揮官には万が一の場合は、大内晴持を種子島家が常時沖合に停泊させている戦列艦で、山口に帰還させる事にしてあった。

同時に1番危険で疑わしい毛利元就に、殿をさせるように大内義隆に吹き込んでおいた。例え史実通りに逃げおおせたとしても、毛利家の戦力を大きく削ることくらいは可能だろう。戦死してくれれば1番なのだが、簡単に死んでくれるような男ではないだろう。

ここで尼子に寝返ってくれれば誅殺する事も可能なのだが、俺の殺意など重々承知しているだろうから、表向きは大内家に忠誠を尽す振りをし、証拠を残す事無く裏で動き続けるだろう。俺が法と正義で日本を纏める心算なのを承知しているから、証拠を残さなければ無理無体に成敗されないと理解しているのだろう。

本当に嫌な奴だ!

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