魔法武士・種子島時堯

克全

第221話大内晴持

1545年1月「大内氏館」大内兵部権大輔義隆・大内晴持・種子島権大納言時堯

「権大納言殿、今日は急にどうされたのかな?」

「実は九条禅定太閤殿下・鷹司准三宮殿下・鷹司関白殿下・一条左大臣閣下の内意を受けてやって来たのです」

「それは大事ですな、いったい何を言われられたのですか?」

「兵部権大輔・侍従殿、京ではおさいの方が懐妊が流言飛語を呼び、晴持殿が殺されるのではないかと言う噂まで広まっているのです」

「無礼な! 権大納言殿と言えどもそのような根も葉もない噂を口にするなど許されませんぞ!」

「そうなのです、決して許されない無礼千万な噂が京にまで届き、御上を始め五摂家の方々の耳にまで届いてしまってるのですよ」

「何が言いたいのです?」

「京の人々は、やっと治まるかと思った天下が再び乱れることを、とても心配されているのです」

「ですから何を心配しる事があるのです! 大内家の養嗣子は晴持で決まっている事は、一条家を始め権大納言殿も承知している事では無いか!」

「承知していますよ、だからこそ、天下が治まると公家衆も安堵していたのです。ところが兵部権大輔・侍従殿に実子が産まれるとあれば、根本的に話が違ってきます。実子を跡継ぎにしたくなった侍従殿が、晴持殿を殺すのではないか、あるいは侍従殿の気持ちを忖度(そんたく)した家臣が晴持殿を殺すのではないかと、京の公家衆は心から心配しているのです」

「無礼であろう! これほどの屈辱を受けるのは産まれて初めてだ!」

「私に言われても困るのです、全ては京で広まった噂を聞き、公家衆が心配したと言う事です。侍従殿には誤解であり根も葉もない噂であると証明して頂かねば、私としても京に帰る訳にはいかないのです」

「京の公家衆は、いや一条左府殿は具体的に何をせよと仰せなのだ!」

「今度の出雲出陣から晴持殿を外し、側仕えの武士を土佐一条家から呼び寄せ増やして欲しいと言うのが、京の公家衆の総意でございます」

「そのような事は容易い事だ、その程度の事で京の方々の心配がなくなるのなら、直ぐに土佐一条家から人を送ってもらいたい」

「御待ち下さい御屋形様! そのような事になっては私の武士としての一分が立ちません!」

「控えよ晴持! これは朝廷を含めた大事な話なのだ、家族の話では済まぬのだ!」

「分かっております御屋形様、だからこそ言わせていただきたいのです!」

「侍従殿、ここは晴持殿の決意を聞かせてもらいましょう」

「う~む、権大納言殿はそう言われるのなら仕方がないか」

「有難うございます御屋形様、権大納言様。御屋形様に実子が御産まれる成られることで、家中に色々な思惑が産まれることは仕方のない事でございます。将軍家や細川京兆家の跡目争いが応仁の大乱を引き起こし、天下を乱れさせたこと重々承知しております。だからこそ私が館に閉じこもることは許されません、出雲遠征に従軍し武勇を証明せねばならないのです」

「よくぞ申した晴持! これを聞いても従軍に反対なされるのか権大納言殿」

「やれやれ仕方ありませんね、ですが私も京の総意を受けてここに来ております、ですからこうして頂けませんか?」

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