魔法武士・種子島時堯

克全

第193話石山本願寺合戦直前・根来寺僧兵・雑賀傭兵

1543年7月20日『摂津国・石山本願寺』種子島権大納言時堯・15歳

「筑後守、我が軍のやり方には慣れたか?」

「申し訳ありません、なかなか馴染む事が出来ません」

「何が慣れない?」

「私はともかく、各部隊に配属された元雑兵どもが訓練の厳しさに泣き言を申しております」

「そうであろうな、どんな状況になっても生き残れるように、特に厳しい訓練を施しているからな」

「それと軍律の厳しさに息が詰まると申しております」

「それも当然であろうな、六衛府の軍だけでなく種子島家軍も御上の軍を名乗っている以上、民百姓を害するなど絶対有ってはならないからな」

「はい、その事は私も何度も申し聞かせておるのですが、今までが乱暴狼藉が当たり前だった雑兵です。略奪が出来ない事に不満があるようです」

「不平不満があるのなら、種子島家を辞めて本願寺でも赤松・畠山でも好きな所に行って構わないのだぞ」

「毎日頂ける飯には満足しているようで、出て行きたくはないようです」

「飯などの待遇をそのままに略奪させろと言うのは勝手極まりないな」

「はい、繰り返し叱りつけておきます」

「軍律を守らねば種子島家の法で厳罰に処す、どこに逃げようとも空を翔けて捕まえ地獄の拷問の上で処刑してやる」

「我が有馬家の名誉にかけて、絶対に民百姓に乱暴狼藉はさせませんので、勝手極まる放言をしておりますが御目こぼし願います」

「分かった、明日から本格的な攻撃を始めるから、そのせいで気が高ぶっているのもあるだろう、実際に罪を犯さない限りはしばらく様子を見てやる」

「有り難き幸せでございます」

有馬重則の言う事は、新しく種子島家に加わった摂津国の国衆・地侍・雑兵の全てに言える事で、本来なら隔離した場所で徹底的に訓練してから実戦に加えるべきなのかも知れない。九州ならそうしたのだが、畿内では種子島家の軍律になじんだ将兵自体が数少ない。九州から俺が空輸した上級指揮官か、海軍に輸送された部隊だけだ。

限られた部隊も京を護り、大和国・近江国・若狭国に派遣した軍の要として働いてもらわなければならない。そこで津田監物殿に、僧として兵として軍律に厳し者を傭兵として数多く派遣してもらい、根来寺の僧として監軍として働いてもらう事にした。

そして根来寺を通じて派遣してもらった傭兵の中には、雑賀の鉄砲隊5000兵も含まれていた。監軍僧は各部隊に分散配置したが、雑賀鉄砲隊5000兵には石山本願寺に攻め込む最前線を受け持って貰った。

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